ITシステムの構築・運用に欠かせないオンプレミスとクラウド。双方を比較していくと、サーバーの運用形態の違いだけでなく、利用時の特徴が異なることがわかります。
また、近年はオンプレミスサーバーのサポートが終了するにあたり、クラウドへ移行する企業も増えているようです。総務省でもこの傾向について、情報通信白書令和5年版で取り上げています。
本記事ではオンプレミスとクラウドの違いを紹介するとともに、クラウド移行のメリット・デメリットや注意点などを紹介します。
クラウドに関する理解を深めたい方、これからクラウド移行を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
クラウドと異なるオンプレミスとは?
オンプレミス(オンプレ)とは、購入またはリース契約したサーバーやネットワーク機器を社内に設置し、自社でシステムの構築・運用を行う方式です。自社運用型とも呼ばれ、クラウドが普及する以前から企業で広く採用されていました。
システム構築に関する設備の調達や保守管理といったすべての工程を自社で行うため、独自の既存システムとの連携や、企業ごとの社内ルールに沿った環境構築・設定が可能です。
一方で、自社でサーバーやネットワーク機器を用意する必要があるため、調達に時間がかかる、資産管理が必要になるといった特徴もあります。テクバンではオンプレミスサーバーの構築支援もサポートしておりますので、ぜひご相談ください。
高度なセキュリティを実現
オンプレミスは自社内の閉じたネットワーク環境で運用するため、クラウドと比較すると安全性が高いとされています。
オンプレミスサーバーの利用は自社内のユーザーに限定されており、第三者の侵入が難しく、外部からの攻撃を受けづらいので、安心して業務に取り組むことができる環境といえます。
また、利用制限も自由に調整できるため、セキュリティの強化が可能です。安全性の高さから、ビジネス上、顧客の情報を取り扱う、機密情報を多く持つといった企業に向いているでしょう。
カスタマイズしやすい
オンプレミスは非常にカスタマイズ性が高いといわれています。
情報システムにおけるインフラ・機器の構築・管理を自社で行うため、企業の要件に応じて自由にカスタマイズしたシステムの構築が可能です。
サーバーの構築に使用するOSやソフトウェアを自由に選べたり、運用するためのインフラを自社のポリシーに則って選択できたりします。また、メンテナンスを自社の都合のよい日程・体制で行えるのも魅力といえます。
関連の記事もご用意しております。
▼オンプレミスとクラウドの違いは? メリット、デメリットや料金を比較解説
クラウドとは? その特長を解説
クラウドとは自社で物理的なサーバーを保有せず、サーバーなどをはじめとしたクラウドサービス提供会社の設備を、使用する期間、使用する分だけサービス利用料金を支払う方式です。
クラウドベンダーが用意したネットワーク上に仮想化された設備を使用するため、提供会社側でサーバーやソフトウェアの運用を行います。
サービスが提供される範囲内という制約から、オンプレミスと比べるとカスタマイズの自由度は劣るようです。
コストがかからない
クラウドは、オンプレミスのようにサーバーやネットワーク機器を自社に設置しないため、コストを抑えられます。物理的なサーバーの購入費用や、システム構築の費用といった初期費用がかかりません。
加えて、サービス提供会社側にシステム運用・保守を任せられるため、サーバーを稼働させる維持費や、監視するための人的コストなどの運用費も削減できます。使用する分だけの利用料を払えばよいため、最低限の経費で運用可能です。
費用面について、さらに詳しく解説した記事をご用意しております。
▼クラウド運用の費用はどのくらい? オンプレミスとの比較、クラウドサービス同士の比較も
優れた拡張性
クラウドは、データ容量を柔軟に拡張できることが特長です。
オンプレミスであればデータ容量を拡張するには、サーバーを増設したり容量の大きいサーバーへ変更したりする必要があるため、担当者に負担がかかります。
クラウドの場合は、契約内容を変更すれば簡単に容量を拡張できるためコストも手間もかからないのです。
オンプレミスとクラウドをデータ連携する方法もあります。詳しくは下記の記事をご参照ください。
▼オンプレミスとクラウドをデータ連携するには? その方法を解説
すぐに利用できる
サーバーやネットワーク機器を自社に設置する必要がないクラウドは導入しやすく、導入後すぐに使い始めることが可能です。ベンダーにサービスを申し込み後、契約完了次第、インターネット通信回線に接続すれば、すでに完成されているサービスを利用開始できます。
自社でシステムを開発するとなれば、かなりの時間を要するため、スピーディーに社内のシステム環境を整えられる点が魅力でしょう。
クラウドの種類。 主な3つの種類を紹介
ここまでオンプレミスやクラウドの特長を紹介してきましたが、クラウドはサービスの提供範囲によって、3つに分類されていることをご存じでしょうか。以下の3種類のクラウドを解説いたします。
- IaaS(Infrastructure as a Service)
- PaaS(Platform as a Service)
- SaaS(Software as a Service)
IaaS(Infrastructure as a Service)
IaaSとは、インターネットを介してOSやサーバー、ネットワークを提供するサービスです。インターネット経由で必要な分だけサーバーやストレージなどを利用できるため、自社でサーバーやネットワーク機器の購入や運用管理の手間が必要ありません。
ただし、カスタマイズの自由度は低いといえます。
IaaSの主なサービスは以下です。
- Amazon Web Service(AWS)
- Microsoft Azure
- IDCFクラウド
AWSについて詳しい記事もご用意しております。
▼オンプレミスとAWSの特徴を比較紹介! 両者の連携や活用できるサポートサービスも解説
PaaS(Platform as a Service)
PaaSとは、インターネットを介してミドルウェアやアプリケーションの実行環境といった開発環境を提供するサービスです。OSやサーバーを開発するための機能一式を利用できます。開発者はクラウドに用意されたプラットフォーム上で開発作業を行えます。
PaaSの主なサービスは以下です。
- Google App Engine
- Zenlogic
- Microsoft Azure
Microsoft Azureについて詳しい記事もご用意しております。
▼Azureとはどのようなサービス? 初心者でもわかる基本から運用のメリットまで徹底解説
SaaS(Software as a Service)
SaaSとは、インターネット経由でアプリケーションやソフトウェアを提供するサービスです。アカウントがあれば、インターネット経由でアクセスしてサービスソフトウェアを利用できます。
パソコンやサーバーに入れて使用するソフトウェアをブラウザから利用できるため、ソフトウェアの購入やインストールをする必要がありません。
SaaSの主なサービスは以下です。
- Gmail
- Dropbox
- Microsoft Office 365
さらに詳しい記事もご用意しております。
▼「SaaS」と「クラウド」それぞれの定義や導入時のチェックポイントを解説
クラウドとオンプレミスの比較表
オンプレミスとクラウドの特徴を、以下の表にまとめています。それぞれのメリット・デメリットを確認しましょう。
オンプレミス | クラウド | |
コスト | ✕ | 〇 |
導入スピード | △ | 〇 |
カスタマイズ | 〇 | △ |
トラブル対応 | ✕ | △ |
既存システムとの連携 | 〇 | △ |
セキュリティ | 〇 | △ |
クラウド移行が注目されている背景
近年、「クラウド移行」という言葉をよく耳にします。
ITソリューション技術の発展やリモートワークの普及を背景とした働き方改革の影響などにより、働き方が多様化したこともあり、業務効率化を進めるため、社内システムのクラウド移行が加速しているようです。
クラウド移行とは、自社にサーバーを設置する従来の運用方法ではなく、インターネット経由でインフラやアプリケーションを利用できるようにオンプレミスからクラウドに移行することを指します。
ここからは、オンプレミスから移行する際のメリット・デメリットや注意点を解説します。
クラウド移行の事例資料をご用意しております。ダウンロードしてぜひご活用ください。
オンプレミスからの脱却を、スモールスタートでスムーズに実現
クラウド移行におけるメリット
まずは、オンプレミスからクラウド移行する場合のメリットを紹介します。
導入時のハードルが下がる
クラウドに移行すれば、導入に必要な準備やコストがかからないため、導入ハードルを下げることが可能です。
オンプレミスでは、導入スケジュールの作成・調整、ハードウェア・ソフトウェアの確保や技術者の選定、そして実際のシステム構築といった様々な工数がかかります。そのため、時間もコストもかかり導入作業が大きな負担となってしまうかもしれません。
こうした理由から、使用しているサーバーのサポートが終了してリプレイスする際には、クラウドを選ぶ方がスムーズな導入を実現できるでしょう。
維持費が安い
維持費を抑えることができるのも、クラウド移行のメリットです。
オンプレミスでは、トラブルが起こった際に、自社で対応しなければなりません。そのため、サーバーやネットワーク機器の管理をする必要があり、メンテナンス費用や障害対応に必要な人件費といった維持費がかかります。
そこでクラウドに移行して自社管理を不要にすることで、コストの大幅削減を実現できるのです。
自社で障害対応の必要がない
クラウド移行すれば、自社で障害対応をする必要がありません。
オンプレミスの場合、システムの障害や災害などトラブルが発生したら、社内の担当者が緊急対応します。24時間365日の監視やマニュアルの策定など、緊急時に備える必要があるのです。
クラウドではサーバーを提供している事業者側が復旧対応を行うため、自社の対応負担が大きく削減されます。
また、データセンター内に設置されていることが多いため、災害によるトラブルのリスクを抑えることが可能です。
関連の記事もご用意しております。
▼オンプレミスもクラウドも! ハイブリッドクラウドを解説
クラウド移行におけるデメリット
ここからは、オンプレミスからクラウドに移行する場合のデメリットを紹介します。
カスタマイズの自由度が下がる
独自にシステムを構築できるオンプレミスと異なり、クラウドへ移行すると自由なカスタマイズは難しくなるでしょう。
オンプレミスの場合は、サーバーのメモリやディスク容量などを自由に選択できますが、クラウドではサービス提供会社が構築したシステムを利用するため、自社の都合でカスタマイズできる範囲が限られています。
オンプレミスと同等の環境を構築できるプライベートクラウドや、一般のパブリッククラウドについて解説した記事もご用意しております。クラウド移行の選択肢をご確認ください。
▼クラウドの種類を解説! 提供範囲やアプリケーションの違いから最適に導入するには?
既存システムとの連携が難しいことも
クラウドに移行すると、既存システムとの連携が難しくなる場合があります。インターネット利用を前提としたクラウドでは、連携ができない場合も。
従来のシステムとは機能や操作性が大きく変わる可能性もあるため、クラウドへ移行する前に、既存システムがそのクラウドサービスに対応しているかどうかを確認する必要があります。
クラウド構築のメリットやデメリットについて、さらに詳しい記事もご用意しております。
▼クラウド構築するには? メリット・デメリットや注意点などを解説
クラウド移行する際の注意点
システムをクラウドに移行するにあたって、注意するポイントもあります。
クラウド移行を検討している方は、以下の注意点に気を付けて移行してください。
セキュリティ面をチェックする
まず、クラウドのセキュリティ面に問題がないかチェックしましょう。
クラウドサービスは、インターネットを介してサービスを利用するため、セキュリティ対策が欠かせません。
クラウド提供会社の多くは、各セキュリティ規格を保持した大手IT企業のため、大きな問題は少ないはずですが、契約時には慎重にセキュリティ面の確認をおすすめします。
さらに詳しい記事をご用意しております。ぜひご確認ください。
▼オンプレミスとクラウドのセキュリティ対策を比較! メリットや違いを解説
コスト削減につながるのか検討する
本記事内で、クラウドはコストの削減が可能と紹介してきましたが、本当にコスト削減につながるのか、正確に検討することが重要です。
クラウドは使いたい分だけ利用料を支払う従量課金制ということが多いため、使いすぎると想像よりもコストがかかってしまうのです。
クラウド提供会社と相談して予算を超えない仕組みや制度を作るなどして、上手に運用していきましょう。
双方の性能を見極めて自社に最適な選択を
オンプレミスとクラウドの違いについて、理解できたでしょうか。
オンプレミスで運用していくのか、クラウドに移行するのかは、双方のメリットやデメリットを見極めた上で、自社の業務を最適化できるサービスを利用することが大切です。
どちらかだけの導入を検討するのではなく、事業や業務目的に合わせて、オンプレミスとクラウドを組み合わせるハイブリッドクラウドでの運用という選択肢もあります。
またテクバンでは、多くの実績と専門知識を有するスペシャリストがお客様に代わり、サーバーやネットワークの監視・運用、障害対応を行うサービス「システム運用マネジメント」を提供しています。
例えば、クラウド移行にお悩みのお客様のパートナーとして、クラウド移行の運用設計からサポートが可能です。
ご興味のある方は、ぜひ一度テクバンまでご相談ください。
テクバンに相談する
オンプレミスやクラウドについて、こちらの記事で詳細を解説しています。ぜひ、ご参考ください。
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