IT業務において「システム運用管理」は必須業務です。
システム運用管理について調べていて「運用・管理・保守」というワードを目にすることも多いかと思います。似たような場面で使われる言葉ではあるものの、「運用管理」と「保守」はそれぞれ違う意味や内容を指しています。
業務をこなす中で語意が曖昧になり、なんとなく指示してしまっていることはありませんか。思い描いている業務内容があっても指示内容が曖昧だと、関係者に正しく伝わらないこともあります。
今回は、システムの「運用管理」と「保守」について、あらためて意味や内容を押さえた上で、おすすめの方法もご紹介します。今後の業務を効率よく行うために、ぜひ参考にしてください。
システムの「運用管理」と「保守」の違いについて
「運用管理」と「保守」の言葉が指す意味合いについて、さっそく詳しくみていきましょう。
システム運用管理とは
運用という言葉には「そのものの機能を活用する」という意味があります。機能をそのまま維持するだけでなく、意味のある使い方をすることが必要です。
システム運用管理は、ITシステムがいつでも正常に稼働するように管理し、さらなる安定稼働を目指して変化させていく意味合いも含んでいます。
具体的には、システムそのものだけでなくネットワーク環境やサーバー機器も含め、それぞれが正常に稼働しているかを確認する「システム監視」や、IT機器・ハードウェア・ソフトウェアなどのライセンスやメンテナンス契約の管理を行う「資産管理」、システムやデータの「バックアップ管理」などがあります。
その他、ジョブの実行やバックアップなどのスケジュール確認、システムを利用するユーザーの情報管理などの「業務運用管理」も含まれます。また、周辺機器や消耗品などの備品管理を行うこともシステム運用管理の一部です。
このように、一言でシステム運用管理といっても、業務内容は多岐にわたることを押さえておきましょう。
システム運用管理については、こちらの記事でも詳しく解説していますので、併せてご参考にしてください。
▼システム運用管理とは? 安定稼働を実現するための方法を解説
システム保守とは
保守という言葉は「正常な状態を保つ」という意味があります。
システム運用管理の業務内容にも同じ目的が含まれているため、混同しがちではありますが、システム運用管理とシステム保守は区別して挙げられることが多いです。システム運用管理と比較すると、システム保守は主にトラブルや障害と関係があります。
「システムが異常な動きをしている」「突発的に障害が起きる」などシステムに何らかの問題が起きた場合に、改修や修理、調整などを行うのがシステム保守の役割です。システム保守の業務は、バグの改修をしたり故障したハードウェアを入れ替えたりといった突発的に起こる問題に対応することがメインです。
具体的には、システム障害が発生した際に不具合の原因を究明し復旧させること、システムのアップデートやバージョン管理、セキュリティパッチの適用を行うバッチ処理などの業務があります。また、突発的なトラブルが起きないように、メンテナンスを行い予防することもシステム保守の役割です。
システム保守については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
▼システム保守とは? 運用との違い、対応手段、業務内容を解説
システム運用管理と保守は兼任できる?
システム運用とシステム保守は、業務内容は異なるものの、システムを円滑に動かすという大きな目的は共通しているため切り離すことはできず、密接に関わっています。
そのため、ITシステムの現場では、“システム運用”として定型業務をこなし、トラブルが起きた際には“システム保守”にまわる、という兼任のスタイルで任されているケースも見られるのです。
このように、システム運用とシステム保守を兼任することを「システム運用保守」と呼びます。単純に考えれば、2つの業務を兼任するのは負担が大きくなると予測されますが、ではシステム運用管理と保守は兼任できるのでしょうか。
兼任することの問題点
例えばエンジニアの各業務は、開発や運用、保守などによって区別されますが、システム運用と保守は関連しているため、同じくくりとして取り上げられることもあります。
同じようにシステム運用管理は、システムや開発・プログラミングの知識、観察力、分析力、コミュニケーション能力などのスキルが求められますが、システムやハードウェアに関する知識が深く、かつトラブルに対処する能力があれば、保守の業務も十分に務まります。システム運用管理とシステム保守の業務を兼任で行うことは、スキルがあれば可能だといえます。
しかし、兼任している担当者の中には、業務がつらい・きついと感じる方も珍しくありません。兼任することで業務が効率よく進む側面もありますが、イレギュラーの時間帯に対応しなければならず、業務過多によってワークライフバランスが乱れてしまう恐れもあります。
また、システム運用管理や保守の定型作業としてこなさなければならない業務は多く、新たな分野に挑戦する時間も確保できないことから、スキルアップが難しいという問題点も挙げられます。
担当者が「スキルアップができないことで収入も上がりづらい」「仕事へのモチベーションを保てない」など、働き方に対する悩みを抱くようになるのは想像に難くありません。
このような背景から、担当者が業務負担の大きさを理由に、退職や転職を考えるケースもあります。組織として優秀な人材を失うことは損失だといえるため、全社的にこのような問題の解決に取り組むべきでしょう。
システム運用管理と保守をより効率よく行うために
大切な社員に必要以上の負担をかけることなく、自社にとって生産的・効率的なシステム運用管理と保守を実現するためにはどのような方法があるでしょうか。
以下の2つの方法について解説します。
- 「オンプレミス型」「クラウド型」どちらが最適か見直す
- システム運用管理を自動化するソリューションの活用
「オンプレミス型」「クラウド型」どちらが最適か見直す
自社のシステム環境・運用方法について、現状のメリットとデメリットを見直すことで、業務効率化に役立つヒントを得られるでしょう。
オンプレミス型とクラウド型のメリットとデメリットについて、今一度、把握しておきましょう。
オンプレミスとクラウドについて、関連記事や資料を用意しております。
▼オンプレミスとクラウドの違いは? メリット、デメリットや料金を比較解説
ITインフラの最適解はクラウドか? オンプレミスか?
オンプレミス型のメリット・デメリット
サーバーや通信に必要な機器やハードウェアからソフトウェアまで、自社ですべての環境を整えるのが「オンプレミス型」です。従来の運用管理では主流で、現在も活用している組織も少なくないでしょう。
オンプレミス型は、システム環境を自由に構築できることから、カスタマイズ性が高いことが大きなメリットです。そのため、既存システムとの連携もしやすく、また新システムを導入する場合も、現在の環境に最適なものを選ぶことができます。セキュリティの強度をより高めたい場合も、セキュリティ機能を好みのレベルに拡張することが可能です。
ただし、すべて自社内で行う必要があるため、メンテナンスやトラブル対応まで自社内で行わなければなりません。そのため、安定した運用ができるようになるまで時間と手間がかかる点は、デメリットとして挙げられるでしょう。
また、コストがかさむこともデメリットとして挙げられます。サーバーの構築や運用に必要な機器を購入するだけでなく、業務を行える人材の配置や育成も必要なため、これらの環境・体制を整えるのに費用がかかります。メンテナンスや障害対応も自社で行うため、その負担も大きくなるでしょう。
クラウド型のメリット・デメリット
システム運用管理をオンプレミスではなく、クラウド上で行うのが「クラウド型」です。
ネットワークを通じて外部のシステムやサービスを利用する方法で、オンプレミス型のように自社で必要なものをそろえなくても運用管理が可能になります。
オンプレミス型のコストがかかるデメリットとは対照的に、クラウド型は初期費用のコストを大幅に抑えられることが大きなメリットです。また、近年ではリモートワークも珍しくありませんが、自宅や外出先など場所を選ばず利用できることもメリットでしょう。
また、セキュリティ対策の優れたクラウドサービスを選ぶことで、自社のセキュリティ環境を整える手間が省けるのも長所のひとつです。
しかしクラウド型は、事業者から提供されているシステムやサービスを利用するため、カスタマイズ性はオンプレミス型より制限されるケースがあります。加えて、サービスによっては既存システムとの連携が難しいこともあり、クラウド型システムに合わせて自社の既存システムや業務のやり方を変更しなければいけなくなる可能性も出てくるでしょう。
このように、クラウド型は事業者に依存しがちなスタイルのため、サービス仕様やプラン料金などすべて事業者が提示している範囲から選ぶことになります。また、リソース障害やサービス提供停止などによって、自社だけでなく顧客やユーザーにも影響が及ぶリスクがあることもデメリットです。
システム運用管理を自動化するソリューションの活用
社内システムのトラブルが起きた際には、業務やサービス提供を継続するために迅速に対処しなければなりません。トラブル発生時はシステム保守に人員が多く必要になる場合もあり、人の手だけではシステムのすべてを管理することが難しくなってきました。
このような背景から、限られた人員と時間の中で、定型業務が主であるシステム運用管理を自動化するソリューションが注目されています。
システム運用管理の自動化を成功させるためには、担当者が現在行っている業務を明確にし、どの業務を自動化できるのか可視化しましょう。とはいえ、現在の業務を棚卸しするだけではソリューションを活用しても、思うように自動化できない場合もあるでしょう。
システム運用管理の自動化では、より標準化された定型業務を見出すこともポイントとなります。非定型業務の中から定型化できる部分を探し、業務の自動化を目指しながら、少しずつ取り組むことが大切です。
システム運用管理に役立つ「統合運用管理ツール」
前章で解説した通り、システム運用管理の自動化ではソリューションの活用が役立ちますが、社内システムを一元管理できるのが「統合運用管理ツール」です。
統合運用管理ツールは、業務処理を行うジョブ管理や、ITシステムの水準を保つために監視する可用性管理、ハードウェアやソフトウェアなどの正常な稼働を管理する構成管理、セキュリティ管理、IT資産管理などの機能によってシステム運用管理を一元化。統合運用管理ツールを導入することで、システム運用管理の自動化を実現します。
統合運用管理ツールの選び方
様々な統合運用管理ツールが提供されているため、自社のシステム運用管理に見合ったものを選びましょう。
まずは、自動化したい業務内容を基に、導入の目的を明確にしておくと検討しやすくなります。目的に沿った機能を備えている統合運用管理ツールを探してみてください。
また、個々のツールについて、オンプレミス型かクラウド型かの提供形態を自社のシステム体制に合わせて選ぶこともポイントです。そして、セキュリティ対策や操作性などの管理のしやすさ、その他の機能、サービス内容、費用など、ピンポイントで検討しながら自社に適するツールを探していくのがよいでしょう。
統合運用管理ツールについて、下記記事をご参考にしてください。
▼統合運用管理ツールのメリットや選び方、おすすめツールを解説
システム運用マネジメントサービスを利用するソリューション
「システム運用管理を自動化したいけれど相性のよい方法やツールが見つからない」「システム運用管理の専門知識を有したエンジニアに任せたい」ということもあるでしょう。
そのような場合におすすめしたいのが、システム運用管理の支援サービスの利用です。
テクバンの提供する「システム運用マネジメント」は、経験豊富なエンジニアにシステムの運用・監視を24時間365日任せることが可能なサービスです。
また、オンプレミス型とクラウド型の双方に対応可能で、リモートでの運用と監視を行います。トラブルの際の復旧作業やユーザーからの問い合わせにも対応しているため、システム運用管理のあらゆるサポートが可能です。
導入時に新規環境の運用設計やインストール作業などのオプションメニューを追加いただくことで、スムーズに運用を開始できます。また、オプションメニューにない内容でも、できる限り柔軟に対応しますので、お気軽にご相談ください。
最適なシステム運用管理や保守を確立させよう
システム運用管理やシステム保守では、業務が多岐にわたり、担当者の負担は絶えません。しかし、社内のシステム環境を見直しソリューションを導入すれば、負担削減につながるでしょう。
負担が減った分、自社の利益に直接つながるようなコア業務に集中できるため、企業成長や事業展開を目指せるのではないでしょうか。そのような観点からも、最適なシステム運用管理や保守の確立が組織にとって重要だといえるのです。