社内システムを構築・運用する方法に、「オンプレミス」と「クラウド」があります。
「オンプレミス」は、物理的にサーバーや設備などを社内に設置し、システムを自社で構築・運用管理する仕組みです。
一方、昨今導入が増える「クラウド」は、ネットワーク上にあるサーバーリソースを活用し、システム構築・運用を行う仕組みです。
そこで、この2つを比較して違いを明らかにし、それぞれのメリットやデメリット、さらに自社のシステム構築で、オンプレミス、クラウドのどちらを導入すべきか選ぶ際の助けとなる基準について紹介します。
オンプレミス、クラウドの基礎から解説しているため、基本的な知識を得たいとお考えの方もお役立てください。
オンプレミスの概要・特徴とは?
重要な機器であるサーバーは自社所有し、運用することが一般的でしたが、「クラウド」が登場したことで、それぞれを区別する言葉として、「オンプレミス」という呼び方が普及しました。
オンプレミスの「プレミス(premises)」とは、英語で「建物」「店舗」「施設」などを意味します。「on the premises」が「建物内で」という意味です。オンプレミスは「オンプレ」「自社運用」と表現されることもあります。
オンプレミスでは、利用するユーザーが自社内に限られ、ネットワークやサーバーといったシステム基盤を自由に自社独自の設定で行えるといった柔軟性が高く、カスタマイズのしやすさなどが特徴です。
クラウドの概要・特徴とは?
従来、業務システムを構築するには、自社の施設内にサーバーやネットワーク回線や必要な環境・ツールをすべてそろえなければならず、オンプレミス一択でした。
ここに変化が起こったのが2006年です。2006年にAWS(Amazon Web Services)がサービスを開始すると、2008年にGCP(Google Cloud Platform)、2010年にはMicrosoft Azureもサービスを開始。以降、世の中にクラウドサービスが浸透し、業務システムをクラウドで運用する企業が多くなりました。
クラウドサービスは、クラウドサービス提供者が保有するデータベース、ストレージ、アプリなどを、オンラインで利用する仕組みのこと。自社でハードウェアを購入したり、ソフトウェアをインストールしたりといった環境を準備することなく、利用したいサービスをニーズに応じて契約する使い方が特徴です。
クラウドには「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」の2つの分類があります。それぞれについて解説します。
パブリッククラウドとは?
まず「パブリッククラウド」とは、企業や個人など不特定多数に利用されるクラウドサービスです。クラウドサービスの種類によって、次の3つがあります。
- SaaS(Software as a Service)
様々なアプリケーションをインターネット経由で利用できるサービス
- PaaS(Platform as a Service)
クラウドにあるサーバー、OS、ミドルウェアなどのプラットフォームをインターネット経由で利用できるサービス
- IaaS(Infrastructure as a Service)
サーバーやストレージ、ネットワークなどのハードウェアやインフラまでをインターネット経由で利用できるサービス
プライベートクラウドとは?
次に「プライベートクラウド」とは、専用のクラウド環境を構築できる仕組みです。他のユーザーは利用しない、文字通りプライベートな環境のため、従来のオンプレミスと同様にカスタマイズの自由度、柔軟性が高いことが特徴です。
また、現在では「ハイブリッドクラウド」でIT環境を構成するケースも増えました。これはパブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせたクラウド環境を指し、用途に応じ、双方のクラウドの良い面を最大限に活用できるメリットがあります。
オンプレミスとクラウドを比較
カスタマイズのしやすさ、柔軟性の高さなどが特長のオンプレミスと、拡張性が高く、多額のコストが不要で利用環境が整うクラウド。導入するならどちらが自社に合っているのか、悩んでいるという企業もあるでしょう。
まずは様々な観点からオンプレミスとクラウドを比較し、異なる点を以下にまとめます。
初期コスト
オンプレミスでは、サーバー・ネットワーク機器やソフトウェアの購入・システム構築などインフラ設備を自社で行う必要があり、初期費用は多額になります。
一方のクラウドは、自社でハードウェアやソフトウェアを購入する必要がなく、オンプレミスに比べてこの費用分がかかりません。
このため、初期コストが抑えられ、予算に課題を抱えがちな中小企業でも、必要な環境を確保しやすくなっています。
ランニングコスト
オンプレミスは自社保有のため、システムを利用する費用は無料ですが、稼働しているサーバーの電気代や、運用保守の人件費に加え、ハードウェアの更新費用などのランニングコストが発生します。
一方のクラウドでは、初期コストがほとんどかかりませんが、月または年単位のライセンス費用(サービス利用料)は従量課金制のため、使えば使うほど高額になる仕組みです。つまり利用状況によって費用が変動するため、想定していたコストをオーバーするリスクがあり、注意が必要です。ただ、逆にとらえれば使う分だけのため、コスト削減と環境の最適化が実現可能です。
導入にかかる期間
オンプレミスは、機器の調達・設定など環境を整えるプロセスに長い時間がかかりますが、クラウドでは事業者が提供する環境に接続し、利用するだけ。そのため、導入にかかる時間は、オンプレミスよりもクラウドの方がかなり短く、利用スタートまで素早いといえます。
カスタマイズの柔軟性・拡張性
オンプレミスのメリットは、自社の要件に合わせて、どこまでも自由にカスタマイズができる点です。とはいえ、状況によって都度リソースを追加、削除はできません。例えば、アクセス数の急増でサーバー容量がオーバーしそうになっても、すぐに対応はできません。
一方のクラウドの場合、不特定多数のユーザーが利用するパブリッククラウドでは、あらかじめ用意されたシステムを利用するため、カスタマイズはある程度まで対応可能ですが、柔軟性は低いでしょう。
ただし、プライベートクラウドを利用するなら、オンプレミスと同等のカスタマイズがかなえられるはずです。また、拡張性に優れるクラウドは、利用ユーザー数や規模・データ容量などを自由に変更でき、目的に応じて必要な分だけサービスを利用することができます。
セキュリティ対策
オンプレミスではデータが自社ネットワーク内にあるため比較的安全性は保たれている上、様々な対策を取り入れて、どこまでもセキュリティレベルを高めることが可能です。
しかし近年では、アクセスするデバイスが多岐にわたり、自社ネットワーク内にあっても、サイバー攻撃の対して安全とはいえない状況となってきました。
一方のクラウドは、データがクラウドサービス提供者のデータセンター内で管理され、原則として、運用やデータ管理、セキュリティ対策はクラウド提供者が実施します。そのため、パブリッククラウドでは、同じサービスを利用している他社がサイバー攻撃を受けた場合、影響を受ける可能性はゼロとはいえません。
インターネットがあれば、リモートワークや出張先といった社外からでもデータにアクセスできる利便性と表裏一体なのです。ただ、近年はクラウドのセキュリティ対策技術も日進月歩で、以前のように「クラウドはセキュリティが不安」と一概にはいえない状況になっています。
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社内システムとの連携
オンプレミスであれば既存システムに合わせた構築ができるため、統合、連携の実施もスムーズに行えます。
一方のクラウドでは、インターネットを経由するため、既存システムとの連携に苦労するケースが多いようです。しかし近年、これを解消するAPIを提供するクラウドサービスも増え、社内システムとの連携も容易になってきたようです。
運用・保守
オンプレミスの場合、サーバーの日々の定期的なメンテナンス作業やアップデート、急な障害の発生時に対する復旧対応といった運用・保守はすべて自社で対応する必要があります。
一方のクラウドの場合は、運用・保守業務はクラウドサービス提供者が対応するため、自社で対応する必要はありません。しかし、対応の手間が少ないとはいえ、障害発生の場合、対応はクラウド提供者待ちになってしまうことには注意が必要です。
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両者のメリット・デメリット
これまで紹介した両者の違いを踏まえた上で、次はそれぞれのメリットとデメリットについて整理します。
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オンプレミスのメリット・デメリットとは?
オンプレミスのメリット
オンプレミス環境のメリットは、主に次のようなものです。
- 比較的制限がなくカスタマイズしやすいため、他システムとの統合、連携の柔軟性が高い
- 自社の任意でセキュリティレベルを高められる
テクバンでは、オンプレミス環境の構築を支援するサービスを提供しています。お客様に最適なプランのご提案が可能です。ご興味のある方は、ぜひ一度テクバンまでご相談ください。
オンプレミス環境構築支援サービス
オンプレミスのデメリット
次にオンプレミスのデメリットは、主に次のようなものが挙げられます。
- 初期コストが高い
- 導入、運用開始までに時間がかかる
- 運用保守業務、障害対応は自社で行うため、負荷が高い
クラウドのメリット・デメリットとは?
クラウドのメリット
クラウドサービスのメリットは、主に次のようなものです。
- 短期間で簡単に導入できる
- 初期コストが少なく、導入後も従量課金制のためコストを抑えることが可能
- 保守業務や障害対応をクラウドサービス提供者に任せられる
- どこからでも場所を問わず、インターネット経由で手軽にアクセス可能
クラウドのデメリット
次にクラウドのデメリットは、主に次のようなものが挙げられます。
- カスタマイズ性が低い
- 既存システムとの連携が難しい場合がある
- 障害発生の場合、独自に対応・対策ができない
オンプレミスとクラウドの最適解は?
オンプレミスとクラウド、それぞれのメリット・デメリットを紹介しました。では自社の最適解はどちらなのか、一方に決めることは難しいところです。しかし、自社のインフラ環境やビジネスの特性などに応じて、オンプレミスとクラウドの双方を取り入れて、使い分けている企業もあります。
そこで、どんな環境であればそれぞれの特性を発揮できるのか、オンプレミスとクラウドで向いている場面について紹介します。
オンプレミスが向いているのは?
独自の社内システムとの連携が必要な場合や特殊なセキュリティ要件を満たさなければならない場合は、カスタマイズしやすいオンプレミスがおすすめといえます。
特に個人情報や機密情報を扱うシステムでは、インターネット経由のクラウドではセキュリティ上の懸念があるため、オンプレミスが適しているといえるでしょう。
テクバンでは、オンプレミス・クラウド環境を問わず、お客様のシステムをリモートセンターから監視・運用するサービスをご提供しております。ぜひご相談ください。
システム運用マネジメント
オンプレミスが適切なケース
- 独自開発したシステムなどと密接な連携が必要である
- 社外流出しては困る機密性の高い情報を扱っている
- システム開発・運用保守に費用や人的リソースを割ける
クラウドが向いているのは?
初期コストを抑えたい、なるべく早く使用開始したい、リソースや負担もかけたくないといった場合は、クラウドの利用がおすすめです。クラウドサービスは、試用期間が設けられている場合もあり、導入を検討しやすいといえます。
また、使用人数やデータ容量を柔軟に変更したいといった場合や、国内外の複数拠点、外出先からアクセスする必要がある、システムをネットワーク上に上げておきたい場合も、クラウドが向いています。
テクバンでは、お客様の環境・要望に最適なクラウドインフラの導入支援を行っております。ぜひご相談ください。詳しくはこちら。
クラウドが適切なケース
- 初期コストや人的リソースを抑えてシステムを運用したい
- 業容の変化に合わせてデータ容量や機能を柔軟に変更したい
- 場所を問わずアクセスが可能な環境を必要としている
それぞれの特徴を生かした活用を
「オンプレミス」と「クラウド」の特徴の違いやメリット・デメリット、向いている条件について解説しました。
日本の企業ではインフラやシステムのクラウド化が加速していますが、逆にオンプレミスならではのカスタマイズのしやすさや柔軟性、セキュリティの高さなどといったメリットも見直されています。
また近年では、オンプレミスとクラウドを組み合わせて、ハイブリッド運用するといった例もあります。
それぞれの特徴やメリット、デメリットを十分に理解・検討し、自社環境に適した導入を進め、ぜひ業務の効率化、生産性向上を実現してください。
イチから自社で検討することが難しい場合は、ノウハウや代行業務の実績が豊富な専門業者に相談している企業も多いようです。まずは相談からスタートしてみてはいかがでしょうか。
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