システム開発やITコンサルティングなどの業務を外部に委託する場合、発注者はRFP(提案依頼書)を作成し、受託先候補となる事業者(ベンダー)に提案を依頼します。
RFPは、発注側のニーズを明確にベンダーへ伝え、最適な提案を引き出すための重要なツールなのです。
そこで本記事では、RFPが必要な理由とともに、書面サンプルを提供し、書き方の留意点、委託先選定ポイントについて解説します。
RFPのサンプルをご用意しております。ぜひご活用ください。
RFP(提案依頼書)テンプレート(1分でダウンロード可能です)
RFP(提案依頼書)とは? 必要な理由
RFPは「Request for Proposal」の略で、日本語では「提案依頼書」と訳されます。時間をかけて丁寧に作成し、最適なベンダーを選定することで、プロジェクトの成功に大きく貢献するのが、RFPの役割です。
RFPについて具体的に解説します。
RFPの目的
RFPは、プロジェクト成功を導くために作成します。具体的には次の3つの目的を持ちます。
- プロジェクトの概要と目的を明確に伝える
RFPは、プロジェクトの背景、現状の課題、解決したい課題、目標などを明確に伝えることで、ベンダーがプロジェクトを理解し、適切な提案を行うための基盤となります。
- 複数のベンダーから最適な提案を引き出す
RFPに求める機能・性能、スケジュール、予算などを詳細に記載することで、複数のベンダーから具体的な提案を引き出せます。そして、提案内容を比較検討し、自社のニーズに最も合致するベンダー選定が可能になります。
- プロジェクトの成功を確実にする
RFPはプロジェクトの初期段階で発注者とベンダーの認識合わせに重要なツールです。RFPを事前に作成することで、プロジェクトの進行中に発生する認識違いやトラブルを除外し、プロジェクトの成功確率を高めます。
要求仕様書との違い
RFPに似ている書面として「要求仕様書」があります。要求仕様書もRFPと同様に、プロジェクトに関する詳細な要件や仕様を記述した文書です。しかし両者には明確な違いがあります。
RFPはベンダーに開発提案を依頼するための文書で、一方の要求仕様書はプロジェクトで実現したい具体的な要件や仕様、開発や実装のための基準を記載している文書です。そのため、作成する目的や役割が異なります。
要求仕様書についてさらに詳しくはこちらをご確認ください。
▼要求仕様書とは? 要件定義書・RFPとの違いを解説
RFI(情報提供依頼書)との違い
RFPに似ているもう一つの書面がRFI(Request for Information:情報提供依頼書)です。両者ともプロジェクトの概要などを記載しますが、目的は異なります。
RFPの目的は、プロジェクトの提案を具体的に募集し、最終的に契約締結することです。
一方、RFIは市場調査やベンダーの能力に関する情報を収集し、RFPの前準備やベンダー選定に役立つ情報を取得することを目的としており、契約の締結は目指しません。
RFP(提案依頼書)のテンプレート(サンプル)
これまで解説してきたRFPのサンプルをご提供いたします。ぜひダウンロードして、お手元で確認しながら以降の解説をお読みください。
RFP(提案依頼書)の必要項目
RFPは、企業がベンダーに提案を依頼する際に使用する文書です。
RFPには、プロジェクトの概要、目的、要件、スケジュール、選定基準など、提案に必要な情報を記載します。それら主要な項目について、解説します。
プロジェクトの概要
まず、プロジェクトの概要ではプロジェクト全体を簡潔にまとめた、次のような情報を記載します。
- プロジェクトの背景
RFPに必要なプロジェクトの背景とは、プロジェクトを進めるに至った経緯や状況を説明します。
- プロジェクトの目的
課題を解決するために実施するプロジェクトの目的を具体的に記載します。
- プロジェクトのゴール
プロジェクトの実施によって達成される姿、得られる利益や効果を記載します。
- プロジェクトのスケジュール
プロジェクトの完遂までに想定しているスケジュールを記載します。
提案依頼内容
提案依頼内容では、次のようなプロジェクトの要件・詳細を具体的に記載します。
- 対象システム
提案対象のシステムや機器について記載し、必要に応じてシステム構成一覧・構成図を別紙資料として提供します。 - スコープ
スコープ(プロジェクト範囲)では提案を求める具体的なプロジェクトの範囲を記載します。例えば、システム開発のみなのか、IT機器の購入や運用保守も含むのかといった内容です。 - インフラ基盤要件
機器のスペックやサイズ、ソフトウェアなどのインフラ基盤の要件がある場合に記載します。
- 機能要件
機能要件は、プロジェクトで必要な機能や機能面で要求がある場合、具体的に定義します。
- 非機能要件
非機能要件は、システムやソリューションに関する性能や品質、セキュリティ、可用性などの機能以外の要件です。これらの要件は、システムが適切に機能するための環境や条件、品質基準、制約などを定義します。
- 現行機器構成
既存環境の情報を提供する必要がある場合に記載します。必要に応じてシステム構成一覧・構成図を別紙資料として提供します。
- 想定成果物
プロジェクト実施時の具体的な成果物を記載します。
- プロジェクト体制
プロジェクト実施時の具体的な体制をあらかじめ記載します。
提案要領
提案要領では、提案にあたっての提出書類や提出期限、提出先など、次のようなルールを記載します。
- 提出物
- 提出期限
- 提出先
- 選定基準
- 選定スケジュール
契約内容
プロジェクト実施の際の契約事項について、次のような条件を記載します。
- 契約
契約の種類や契約締結する際の条件を記載します。
- 検収
委託したプロジェクトの検収条件を記載します。
- 支払い条件
委託したプロジェクトの支払い条件を記載します。
- 再委託
プロジェクト実施の際、業務再委託の可否や再委託時の条件を記載します。
RFPの良い書き方のポイントとは?
RFPは、企業がベンダーに提案を依頼する際に使用する文書です。RFPの内容が明確であればあるほど、提案者にとってわかりやすく、質の高い提案を得ることができます。
そこでRFPの書き方のポイントを解説します。
プロジェクトの背景と目的・スコープを明確に記述する
プロジェクトの目的や目標、背景にある課題などを明確に定義します。
また、プロジェクトの対象範囲を過不足なく、明確にすることも重要です。
要求事項を具体的かつ簡潔にする
要求する機能や機能以外の要件を明確に示します。期待する成果を提案者が確実に理解できるようにします。
提案評価基準を明確に設定する
提案書を評価するための客観的な基準を設定します。提案者に対する期待値や評価ポイントを明確に示し、公平かつ透明な評価を実現します。
提案期限や連絡先を記載する
提案の締め切りや提出方法、評価プロセスなどの手順を明確に記述します。提案者が必要な情報を提供するためのガイドラインを提供し、スムーズな提案の受付を確保します。
他に関連記事もご用意しております。
▼仕様書のサンプル、書き方は? わかりやすい仕様書の特長や種類を紹介
RFPを作成してベンダーを選定するまでの流れ
公平かつ透明性を確保して最適な委託先を選定するステップについて、解説します。
システム企画書を作成
システム企画書は、プロジェクトやシステムの計画を明確にし、プロジェクトの成功を確保するための基本的な書面です。RFP作成の前に、正確なシステム企画書を作成することが重要です。
RFIを作成して情報収集
先述したRFIは、RFPで具体的な提案を依頼する前に、ベンダーの製品やサービス、技術情報、価格などを幅広く収集し、比較検討するために作成します。
提案資料の評価、ベンダー選定
システム企画書とRFIを作成したら、RFPを作成します。ベンダーへ提案を募集し、提案資料を受け取った後の委託先を選定するプロセスは、次の通りです。
- 提案資料の受付と確認
提案期日後、まず提案資料の確認作業を行います。提案書が期限内に提出されたか、必要な書類や情報が含まれているか、確認します。
- 提案書の内容の評価
受け取った提案書を評価し、RFPで定義された要件や基準に沿って各提案者の提案内容を比較します。提案書の品質、適合性、価格、技術的な能力、実績などを評価します。
- 提案者とのやり取り
必要に応じて、提案書に関して提案者とやり取りや質疑応答のセッションを行います。これにより、提案者への質問や疑問を解決し、より詳細な情報を収集します。
- 評価基準の適用
RFPで設定された評価基準に基づいて、提案書を評価します。技術的な能力、価格、スケジュール、品質、リスク管理、サポート体制など、複数の要素を考慮して評価を行います。
- 評価委員会の設置
必要に応じて、評価委員会を設置します。プロジェクトの利害関係者や専門家から構成された委員会が、提案書の評価を行い、最終的な決定を下します。
- 提案者の選定と通知
提案書の評価をもとに、最適な提案者を選定します。選定結果を提案者に通知し、選定された提案者との契約交渉のための準備を行います。
- 契約交渉と締結
選定された提案者との間で、契約条件や価格などの詳細についての交渉を行います。双方が合意に達した後、正式な契約を締結します。
- 不採用通知とフィードバック
選定されなかった提案者には、不採用の通知を行います。また、提案者に対して提案書の評価に関するフィードバックを実施し、今後の提案に生かせるようフォローします。
ベンダーを選定するポイントは?
プロジェクトの成功には、最適な委託先ベンダーを選定する必要があります。評価の際の観点や留意事項について解説します。
- 適合性の評価
提案書を評価する際に、提案者がRFPで定義された要件や基準にどの程度、適合しているかを評価します。
- 技術的な能力
提案者の技術やソリューションの技術的な能力、信頼性を評価します。提案された技術がプロジェクトの要件を満たし、安定したパフォーマンスを提供できるかを検証します。
- 価格とコスト効率
提案者の価格提案を評価し、提案された価格が予算と一致しているか、またはコスト効率の観点から妥当な価格であるかを確認します。ただし、価格だけでなく、提供される価値や品質も考慮することが重要です。
- 経験と実績
提案者の実績や経験を評価します。類似プロジェクトの経験や、関連業界での知識や専門性を持っているかどうかを確認します。
- 品質とリスク管理
提案者の品質管理プロセスやリスク管理能力を評価します。品質保証のプロセスやリスク軽減の計画が適切に策定されているかについて確認し、プロジェクトの成功に向けて適切な措置が取られているか検討します。
- コミュニケーションとサポート体制
提案者のコミュニケーション能力やサポート体制を評価します。プロジェクトの進捗状況を報告し、問題解決やコミュニケーションに迅速に対応できる体制が整っているか確認します。
- 契約条件と法的要件
契約条件や法的要件を検討し、提案者との契約がプロジェクトの成功に適しているかどうかを確認します。契約条件が明確で公平であり、法的なリスクが適切に管理されていることを確認します。
- 参考情報の収集
参考情報や顧客のフィードバックなど、提案者に関する追加の情報を収集します。これにより、提案者の信頼性や評判を評価し、最終的な選定に役立てることができます。
RFPは要件を簡潔にわかりやすく
RFPはクライアントがプロジェクトやサービスに関する詳細な要件を定義した書面です。ベンダーはRFPに基づいて必要条件を正確に理解し、提案を行うため、極めて重要といえるでしょう。
そのため、簡潔かつ抜け漏れなく要件を記述することが欠かせません。
本記事でご紹介したRFP作成のポイントを押さえ、要件を明確にイメージできるRFPであれば、委託先ベンダーを適切に選び、プロジェクトはスムーズに遂行するはずです。
ぜひがんばってRFPを作成していきましょう。
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