働き方改革やリモートワーク定着化、インターネット技術の発展、人材不足など様々な理由によって業務システムのクラウド化が進んでいます。実際、企業において業務の一部、あるいはほとんどをオンプレミス環境ではなくクラウドサービスへと移している事例が増えている状況です。
ただ、クラウド化にはコストがつきものです。導入や運用にかかる費用が気になっている人も多いでしょう。
そこで本記事では、様々な角度からクラウド運用の費用について解説します。これからクラウドへの移行を検討されているご担当者様は、ぜひ参考にしてください。
クラウドサーバーの導入にかかる費用
クラウドサーバーとは、インターネット上(クラウド環境)に設置されたサーバーのことです。
クラウドのサービスにも多種多様なものがありますが、本記事ではわかりやすいように「サーバー(コンピューティング)」に主軸を置き、代表的なクラウドコンピューティングのひとつであるAWS(Amazon Web Services)を例に交えながら導入費用を紹介します。
初期費用は無料の場合が多い
クラウドサーバーでは、導入における初期費用を抑えられるのがメリットです。
初期契約費用や初期設定費用などがかかるケースもありますが、初期導入費用を無料としているサービスも多く見られます。
運用コストは従量課金制が多い
クラウドサーバーの料金体系は、利用時間(稼働時間)による従量課金制が一般的です。
例えば、仮想サーバーをクラウド上で構築・レンタルできる「Amazon EC2」では、1秒単位で料金が加算される仕組みとなっています。
利用時間に応じて料金が加算されるため、利用時間の調節や、休日や深夜などのサービスを稼働する必要がないタイミングは停止することで、余計なコストの削減が可能です。
課金額は契約内容によって異なりますが、以下のような組み合わせで決まります。
- 利用するサーバーの台数
- 使用したストレージの容量
- データの転送量
- インスタンスの種類(契約の期間、サービス内容、適合する用途などの組み合わせ)
サーバー利用の場合、概算としては「1時間あたり約0.03USD(約4円※1)」(24時間で換算した場合、約96円※1)が目安です。
例えば、Amazon EC2からインターネットへのデータ転送では、利用量ごとに次のようなテーブルで価格が設定されています。
月単位 | 料金 |
最初の10TB | 0.1368USD/GB |
次の40TB | 0.1068USD/GB |
次の100TB | 0.1032USD/GB |
150TB以上 | 0.1008USD/GB |
従量課金のため、利用量が多いほどコストがかかりますが、次のテーブルへ進むほど1GBあたりの利用料金は安くなる傾向です。
また、クラウドサーバーの場合は、稼働台数の変化により利用量の急激な増減があったとしても、それに併せて従量課金額が変わるだけで済みます。
一方、次章で紹介するオンプレミスの場合は、必要な稼働台数が増えると物理的にサーバーを増やさなければなりません。機器代のみならず、準備するための人的リソースもかかります。
※1:2023年9月26日時点の為替レート1米ドル=148.92円で算出
導入費用やランニングコストがかかりにくい
クラウドサーバーでは、サーバーのハードウェア導入費用やメンテナンス費用、セキュリティ対策費用などがかかりません。ハードウェアの管理は、サービス提供事業者が行うため、ハードウェアの導入費用は不要です。
また、メンテナンスや障害発生時の対応、セキュリティ対策もサービス提供業者に任せられます。
復旧や対応にかかる費用はサービス提供事業者が負担するため、導入や管理のためのランニングコストもかかりにくいのはクラウドサーバーのメリットのひとつです。
オンプレミスサーバーの導入にかかる費用
オンプレミスとは、システムやインフラの構築に必要なサーバー機器やソフトウェアなどの設備を自社内の環境に設置し、運用するシステム形態のことです。
クラウドコンピューティングが一般化する以前は、サーバー構築というとオンプレミスサーバーが主流でした。
初期費用として多くのコストがかかる
オンプレミスサーバーは、ハードウェア費用、インストールするOSの費用などの機器や設備に関する初期コストが必要です。必要な規模に合わせた設備や機器を用意するとなると、コストも大きくなります。
また、一から構築する場合、サーバー構築の人的リソースやセッティングのための費用も、初期費用として準備しなければなりません。
運用コストはおもに人件費
自社用意でオンプレミスのサーバーを準備できたあとは外部へ支払う月額費用などは基本的にかかりませんが、運用を継続するための人件費が高額になりやすい傾向にあります。
以下の点で、おもに自社の人員を配置してまかなう必要があります。
- 持続的なサーバーの保守とメンテナンス
- 故障や障害発生時の対応
- セキュリティ対策
- OSやその他プラットフォームの更新に併せた対応
- 利用量の急激な増減に対応するための人的費用や物的費用
- ホスティングを利用して二重化する場合は場所代
- その他、サーバーを稼働させるための電気代 など
オンプレミスと比較したクラウドサーバーのメリット・デメリット
ここまで紹介したように、クラウドサーバーとオンプレミスサーバーでは、費用が発生するタイミングや要因が異なります。
この費用における違いを踏まえながら、かつて主流だったオンプレミスと比較した場合のクラウドサーバーのメリット・デメリットについて見ていきましょう。
クラウドサーバーのメリット
クラウドサーバーならではのメリットとしては、次の2つが挙げられます。
〈クラウドサーバーのメリット〉
- ハードウェアやインフラ面の管理が不要
- 台数の増減などニーズの変化にも最低限のコストで対応できる
先述の通りクラウドサーバーの場合は、インターネット上の仮想サーバーを利用するため、PCと通信環境さえあればいつでも保存されたデータやシステムにアクセス可能です。オンプレミスサーバーのように、ハードウェアの購入やシステム構築のための人件費がかからず、管理もサービス提供事業者に一括して行ってもらえます。
インフラ面でも管理が不要で、費用もかからないため、導入後のランニングコストが抑えやすいのは、クラウドサーバーの大きなメリットといえるでしょう。
また、事業拡大などによりサーバーのキャパシティや機能の追加ニーズがあった場合も、従量課金制の利用量が増えるだけでその他の追加コストは、ほとんどかかりません。ニーズの変化に合わせ、こまめに設定変更することで最低限のコストで運用可能なため、無駄なコストの削減も期待できます。
クラウドサーバーのデメリット
クラウドサーバーの費用におけるメリットを見てきましたが、よい面だけではありません。うまく使いこなさなければ、デメリットとなる可能性があります。
〈クラウドサーバーのデメリット〉
- セキュリティやトラブル発生時の対応はサービス提供事業者へ任せきりになる
- 選定サービスの組み合わせによっては、長期的にみるとコストアップの場合がある
クラウド上に保存されたデータやシステムの管理は、サービス提供事業者が行うため、セキュリティやトラブル発生時も任せきりになってしまいます。
例えば自社サーバーの場合、トラブルが起こった際は、事前に自社でお金をかけてシステムを強化するといった対策で、トラブルに対応することが可能です。しかし、クラウドサーバーの場合は、サービス提供事業者の対応を待つ以外の選択肢がありません。
また、クラウドサーバーのサービスも多種多様で、必要なサービスが多くなると、その分コストがかかります。クラウドサーバーとオンプレミスサーバーでは、料金体系や仕組みが異なるため、単純な比較は難しい状況です。
ただ、長期的な目でみた時に、組み合わせによってクラウドサーバーの方がコストがかかる可能性には注意しましょう。
代表的なクラウドサービスを費用面で比較!
クラウドサーバーのメリット・デメリットを把握し、「クラウドサーバーを利用してみよう」と思った時に気になるのが、実際にサービスを利用した場合の費用ではないでしょうか。
そこで今回は、次の4つのクラウドプラットフォームをピックアップし、それぞれを比較して紹介します。
- AWS
- GCP(Google Cloud Platform)
- Azure(Microsoft Azure)
- OCI(Oracle Cloud Infrastructure)
自社の考える利用条件や目的に合ったサービスを見つけるきっかけや、よりよいサービスを見極める情報としてご活用ください。
- クラウドストレージサービス
クラウドプラットフォーム サービス名 1000GBのランニングコスト(月額) AWS Amazon Simple Storage Service (S3) 2万円前後 GCP Cloud Storage 2万円前後 Azure ストレージ アカウント 2万円前後 OCI Storage-File Storage 4万円前後 - クラウドデータベースサービス
クラウドプラットフォーム サービス名 1000GBのランニングコスト(月額) AWS Amazon Aurora MySQL-Compatible 3万円前後 GCP Cloud SQL 5万円前後 Azure Azure Cosmos DB 3万円前後 OCI Database-Autonomous Database 5万円前後 - 仮想サーバーサービス
クラウドプラットフォーム サービス名 ランニングコスト(月額) AWS Amazon EC2 1万円前後 GCP Compute Engine 7,000円前後 Azure Virtual Machines 2万円前後 OCI Compute-Virtual Machine 1万円前後
ここで取りあげた費用は一例ですが、ストレージ、データベース、仮想サーバーの3つを利用すると、毎月5万~10万円ほどのコストがかかるイメージです。
ただし、クラウドプラットフォームでは、プランを細かく設定できます。契約内容によって価格が変動しやすいため、あくまでも参考としてお考えください。
クラウドのコスト最適化には、サービス選定や構成検討を慎重に行う必要がある
前項の費用比較をご覧いただいた通り、クラウドサーバーの運用コストは基本的に選択したサービス、及び構成などで細かく変わる従量課金制です。クラウドサービスを適当に選んでしまうと、余計なコストがかかってしまうだけでなく、業務効率化などの狙った効果を得られない可能性もあります。
また、価格が安いほどよいという判断基準もおすすめできません。充実したサービスを受けられなければ業務の遂行に悪影響を与え、社員の不満が募ってしまうからです。
ランニングコストを最適化するには、自社のニーズを把握し必要なシステムと不要なシステムをしっかりと精査して、プランやサービスを選択する必要があります。そのため、クラウドサービスを選ぶ際は、導入候補のサービスを決定した時点で資料請求を行い、サービス内容をよく確認した上で選ぶことが大切です。
費用だけに注目するのではなく、コスト&パフォーマンス(コスパ)のバランスを見て、慎重に判断しましょう。
クラウドサービスの費用最適化、導入相談はテクバンへ
自社のニーズに合ったサービスや、クラウドサービスにかかる費用の最適化を意識していても、初めて導入する場合は自社で判断するのは難しいと感じている人もいるのではないでしょうか。また、導入準備に十分な時間と人的リソースを割けないという状況でお困りの人も多いようです。
「クラウドサービスを導入したいのに、判断に困っている」「すぐにでもクラウドサービスを導入したいが人員を割けず、準備が進んでいない」といった状況の方は、ぜひテクバンへご相談ください。
テクバンは、お客様のニーズに沿った提案で情シスの課題を解決へ導きます。規模を問わない豊富かつ柔軟なサービスを取りそろえており、クラウド導入支援サービスも充実しております。
【Amazon Web Services(AWS)導入支援】
AWSには、ストレージ、データベースからAI、セキュリティまで、200以上の機能があり、ニーズに合った機能を適切に導入することで、生産性の向上が期待できます。
多機能であるがゆえにプラン選定で迷うことも多いですが、テクバンへご相談いただければ、最適化された環境を実現するための提案をいたします。
Amazon Web Services(AWS)導入支援サービス
【Oracle Cloud Infrastructure(OCI)導入支援】
OCIは、オンプレミスと同等レベルの環境構築が可能なクラウドサービスです。既存の基幹システムからの移行においても、豊富な経験とノウハウを生かした提案でスムーズな導入・切り替えをかなえます。
Oracle Cloud Infrastructure(OCI)導入支援
【Microsoft Azure導入支援】
Azureは、世界トップクラスのバックボーンネットワークを保有するクラウドプラットフォームです。250以上ものサービスと機能が、フレキシブルな運用を実現してくれます。
テクバンはマイクロソフト認定パートナーに選ばれるほどの、高い解決力と技術力で、ニーズに合ったサービスの提案とスムーズな導入のお手伝いをいたします。
費用比較で取りあげた、上記3つのサービスの導入サポートを行っており、これまでの導入経験をもとに、最適な導入プランの提案が可能です。環境構築から運用まで、ワンストップでサポートいたしますので、まずはお気軽にご相談ください。
ニーズに合わせて無駄なく利用することが費用削減のポイント
クラウドサービスは多種多様で、選ぶプランによって費用も大きく変わってきます。
使った分だけ請求される従量課金制が基本ですが、余計なコストをかけず費用最適化を実現するためには、ニーズに合ったプランを適切に選び、無駄なく利用することが大切です。
「余計な費用をかけたくない」「自分では選べない」という人は、専門業者に相談してみることで、効率的かつ効果的に導入を進められるでしょう。