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2023.05.30

クラウド構築するには? メリット・デメリットや注意点などを解説

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目次

AWS(Amazon Web services)やMicrosoft Azureを筆頭に、様々なクラウドサービスが提供されています。ITソリューションの導入やリモートワークの普及などに伴い、サーバーを自社構築の「オンプレミス型」からクラウドサーバーに移行し、クラウド構築を行う組織が増えています。

本記事では、クラウドの種類やサーバー導入時の注意点、クラウド構築のメリット・デメリットについて解説します。自社システムのクラウド構築を行う際に、お役立てになれば幸いです。

オンプレミスとクラウドの違いについて、下記記事にて解説していますので、ご参考ください。
▼オンプレミスとクラウドって何が違うの? 移行の特徴も解説
▼オンプレミスとクラウドの違いは? メリット、デメリットやコストを比較解説

自社に合わせた導入を実現! パブリッククラウドの 失敗しない選び方とは?

クラウドはインターネットを通じたサービス

今日では当たり前に「クラウド」という言葉を耳にしますが、クラウドの定義について説明できる人は意外に少ないのではないでしょうか。

クラウドとは、ユーザーがITインフラ(サーバー、ネットワークなど)やソフトウェアを持たなくても、インターネットを通じてサービスを必要な時に利用できる形態をいいます。クラウド・コンピューティングと呼ばれることもあります。

かつては、ハードウェアを購入したり、ソフトウェアをPCにインストールしたり、ソフトウェアのライセンスを購入しなければサービスが使えないことが一般的でした。しかし、クラウドの出現に伴い、ハードウェアの購入やソフトウェアのインストールが不要となり、利用できるサービスがたくさん誕生したのです。

クラウドには、以下3つの種類があります。

  • SaaS(Software as a Service)
  • PaaS(Platform as a Service)
  • IaaS(Infrastructure as a Service)

SaaSは、ソフトウェアを提供するクラウドサービスのことで、サースあるいはサーズと呼びます。メールソフト「Gmail」やオンライン会議ソフト「Zoom」など、多くの人が利用しているサービスだと思いますが、これらはSaaSに該当します。
インターネットにつながっていればどこからでもサービスを利用でき、また複数人で同時に作業できる利点があります。

PaaSは、特定のソフトウェアを動作させるための開発環境を提供するクラウドサービスです。パースと呼びます。
PaaSを利用すれば開発環境を自社で用意する必要がないため、スピーディかつ低コストで構築可能です。代表的なサービスとして、先述しているAWSやAzureなどが挙げられます。

IaaSは、システム稼働に不可欠なサーバーやネットワークなどのインフラを提供するクラウドサービスです。イアースまたはアイアースと呼びます。
従来では自社のインフラは自社で構築・運用保守を行う必要がありましたが、IaaSに切り替えることで業務の負担軽減やコストの削減が期待できます。
セキュリティレベルや拡張性も高い反面、利用するには専門的な知識を要するのが特徴です。代表的なサービスとして、Amazon EC2(Amazon Elastic Compute Cloud)が挙げられます。

クラウドサービスには「SaaS」「PaaS」「IaaS」の3つのタイプがあります

クラウドサービスは3つの形態がある

前章にて、クラウドサービスの3つの種類について説明しましたが、さらにユーザーの利用環境によって、クラウドサービスは以下3つの形態に分けられます。

  • パブリッククラウド
  • プライベートクラウド
  • ハイブリッドクラウド

パブリッククラウドとは、事業者が提供するクラウドサービスのサーバーを不特定多数の利用者が利用できる形態です。
事業者は何台ものサーバーを所持しており、それらを「仮想化」という技術でユーザーごとに分割し与えます。仮想化によって、同じサーバーを複数社が使用していても、ユーザーは自社専用のインフラ環境を構築できるようになり、また他ユーザーの影響を受けることもありません。
先述のPaaSとIaaSが該当し、アマゾン社やマイクロソフト社といったグローバル企業が提供するサービスは、パフォーマンスとセキュリティレベルが高いため人気を集めています。

プライベートクラウドとは、組織に対して専用のクラウド環境を構築する形態です。
パブリッククラウドは事業者がサーバーを運営し、ユーザーに分け与える形態に対し、プライベートクラウドは各ユーザーの社内に専用のサーバーを設置します。そして、自社に適したクラウド環境を一から構築します。
セキュリティ面でも、高度なセキュリティレベルを求める際には、自社の水準に合わせてセキュリティレベルをカスタマイズできます。また、自社で占有しているクラウド環境を利用するため、利用者は社内に限定されることにより、システムも自社の管理下で保有が可能です。社外からの影響を防ぎ、障害が発生するリスクを低減させることにもつながるでしょう。

ハイブリッドクラウドは、パブリッククラウドとプライベートクラウドの両方を使い分ける形態です。
形態の異なるクラウドを組み合わせて利用することから、それぞれの長所を生かしつつ、短所を補えるという特長があります。
例えば、セキュリティ面やカスタマイズの柔軟性についてはプライベートクラウドの方が優れていますが、プライベートクラウドのみですべてを賄おうとすると、費用が想像以上に増大する可能性があります。そこで、比較的費用を抑えやすいパブリッククラウドを組み合わせ、部分的にコストカットする、というような利用方法があります。

クラウド構築のメリット

クラウド構築を行うメリットについて、以下4点を解説します。

  • 初期費用・ランニングコストの削減
  • リソースの増減調整による安定運用
  • BCP(事業継続計画)対策にも有効
  • ネット環境があればどこでも利用可能

1.初期費用・ランニングコストの削減

クラウド構築を行うと、自社でインフラ構築・管理する場合より、費用を削減できます。

従来のサーバー構築の方法では、サーバーや周辺機器といった新たな設備の導入費用が大きな負担となっていました。さらに、必要な設備を調達するだけでなく、実際に使用できる状態にしなければならず、運用やメンテナンス時にも費用の発生は避けられません。

クラウドであればサーバーや周辺機器などの設備費用は不要です。クラウドサービスに対して月額もしくは年間料金を支払う必要はありますが、インフラ環境を一から整備する費用と比べると、非常に低コストで済みます。

このメリットが該当するのはパブリッククラウドの場合です。プライベートクラウドの場合、自社専用環境を構築するとなると初期費用が高額になる可能性もあります。

サーバーや周辺機器などの設備費用は不要のため、ランニングコストの削減が可能

2.リソースの増減調整による安定運用

従来の物理サーバーは、アクセス集中時にサーバーダウンの恐れがあります。
サーバーダウンを防止するにはネットワークリソース(リソース:メモリやCPU、ストレージなどサーバーのスペックを決める要素)の拡大が必要ですが、最大負荷時に基準を合わせた拡張は、平時には余計なコストがかかってしまいます。

しかしクラウドサーバーでは、アクセス負荷に合わせて自由にリソースの増減が可能です。管理画面からリソースの増減設定が行えるため、レンタルサーバーのような契約変更手続きを行う必要はありません。

アクセス負荷の少ない時期・多い時期によってスムーズにリソースの増減が調整できることは、サーバーダウンを防ぎ、安定稼働につながるでしょう。

3.BCP対策にも有効

BCPとは「Business Continuity Plan(事業継続計画)」の略称で、自然災害などの緊急事態に備え、損害を最小限にし、事業の続行や早期の復旧をするために準備することをいいます。
組織にとってIT資産はとても重要なものです。BCP対策の中でも、災害時に向けたデータの保管や運用を計画した「IT-BCP対策」を立てておく必要があります。

物理サーバーを利用していれば、事業者のデータセンターが被害を受けた際、社内の業務が停滞してしまう恐れがあります。

一方、パブリッククラウドでは、仮想マシンとストレージを別々に管理したり、地理的に離れた複数拠点でサーバーを分散して管理していたりします。
ストレージが被害に遭ってもデータはバックアップでき、また仮想マシンを提供する物理サーバーが被害を受けても、仮想マシンを再起動すれば迅速に復旧できるのです。

BCP対策の観点でもクラウドサーバーの利用は有効だといえるでしょう。

4.ネット環境があればどこでも利用可能

クラウドサービスはインターネットにつながっている環境であれば、どこでも利用可能です。

オンプレミス型のサーバーの場合、社外からアクセスする際にVPNの構築や、必要な環境を整えなければなりません。

一方で、クラウドであれば社外からのアクセスは容易なため、リモートワークに適しているといえます。離れた場所にいるメンバーと共同で作業することも可能です。
また、PCだけでなくスマホやタブレットなどのモバイル端末からのアクセスも可能。ネット環境があれば使用する端末や場所を限定せずに利用できることは、クラウドの代表的はメリットといえるのです。

クラウド構築のデメリット

クラウド構築には様々な魅力がありますが、一方でパブリッククラウドの場合、以下のようなデメリットも存在します。

  • 利用状況によっては高コストになる場合も
  • オンプレミス型の物理サーバーより拡張性は低い
  • サーバー運用管理に高度な専門知識が必要

1.利用状況によっては高コストになる場合も

初期の導入コストが抑えられる反面、クラウドサーバーは月々の利用コストがかかります。
長期間利用するほどコストは増すため、長期的にみると、自社構築のサーバーよりも総コストが高くなるケースもあるかもしれません。

特に、パブリッククラウドは従量課金制となるため、アクセス集中が続く状況では費用も高騰する可能性があります。
費用だけを考えれば、オンプレミスの物理サーバーの方が抑えられるケースもあるのです。パブリッククラウドは利用状況次第で高コストになる懸念があります。

2.オンプレミス型の物理サーバーより拡張性は低い

パブリッククラウドは柔軟な設計が可能ですが、オンプレミス型の物理サーバーに比較すると拡張性は低いといえます。
パブリッククラウドは事業者があらかじめ用意してあるものを利用して社内に構築しますが、オンプレミス型サーバーでは一から自分たちで好きなように構築できるため、拡張することも可能です。

IaaSであってもパブリッククラウドで変更できる構成の範囲は、自業者が定める仕様の範囲内となるため、カスタマイズには限度があります。社内の環境やニーズによっては、オンプレミス型の物理サーバーやプライベートクラウドの方が適するケースもあるのです。

3.サーバー運用管理に高度な専門知識が必要

IaaS型のパブリッククラウドでは、OS・ミドルウェア・アプリケーションソフトウェア・ネットワーク構成など、幅広い知識が必要です。
これらはオンプレミス型の物理サーバーでも同様ですが、パブリッククラウドには事業者の定める仕様があるため、それらをすべて把握し、特殊な専門知識を所持しているエンジニアでないとサーバー運用管理は難しいかもしれません。

例えば、AWSではサービス利用に関する資格を定めており、完全に使いこなす認定がある人材や組織が強みとなるほどです。サーバーの運用管理業務には高度な知識が必要であり、単にネットワーク技術があるだけで対応できるとはいえないでしょう。

関連記事をご用意しております。ぜひ、ご参考ください。
▼クラウド監視とは? 運用負荷を軽減させるポイントを解説

AWS・Azureなどのサーバー運用管理業務は、専門知識を所持しているエンジニアでないと難しいこともある

クラウドを構築する手順

クラウド構築の基本的な手順について、以下の流れで説明していきます。

  1. ネットワーク設計を行う
  2. 必要なリソースの洗い出しを行い、リソースの作成・設定
  3. クラウドサーバーを起動

1.ネットワーク設計を行う

まずはネットワークの設計が必要です。具体的には「ネットワーク構成図」の作成です。

ネットワーク構成図とは、ネットワークを構成する各要素がどのように関係しているのか、詳細を記した図のことです。構成図を作成することで、現状のインフラ環境の全体を把握できたり、クラウドのリソースを見積もりやすくなったりと、スムーズな運用につながります。

ネットワーク設計について、関連記事を用意しております。こちらも併せてご参考ください。
▼ネットワーク設計書は難しい⁉ 書き方や掲載する項目について解説

2.必要なリソースの洗い出しを行い、リソースの作成・設定

ネットワーク構成図を参考に、利用が必要なサーバーやネットワークスイッチ(コンピューターネットワークの集線装置のひとつ)などのリソースを洗い出します。具体的なネットワーク構成を決定するプロセスです。通信データの種類や通信量も踏まえ、必要なマシンパワーやストレージを決定します。

必要なリソースを洗い出したら、実際にパブリッククラウドのコントロールパネルからリソースを作成・設定します。CPU・メモリ・ストレージなどの項目を設定し、仮想マシンを作成(サーバーを追加)する流れになります。

3.クラウドサーバーを起動

最後に、クラウドサーバーにログインして起動します。稼働状況に問題がなければ、空のクラウドサーバーの構築が完了です。

次にソフトウェア面の機能を設定しましょう。実際に運用できるクラウドサーバーに仕上げるには、既存・新規システムの導入・設定が必要です。IaaSは、活用目的によって方法を自由に選べる特長があるため、目的に沿ったクラウドサーバーの構築を実現できます。

クラウドサーバー導入時の注意点

クラウドサーバーを導入する際の注意点について解説します。
ITインフラの外部サービスを利用する際、トラブル発生時のリスクは大きくなるため、サービス選定においては事業者の信頼性やサポート体制の確認が必要です。

セキュリティ面で信頼できる業者を選ぶ

パブリッククラウドは、誰でも使いやすいサービスであることが利点ですが、セキュリティレベルは事業者に依存しています。もちろん、事業者はセキュリティ面を第一に考慮したサービスを提供しているのは間違いありませんが、セキュリティレベルが自社の基準に達しているか確認を行いましょう。

「サービス提供者が信頼できる企業であるか」は重要なポイントです。

クラウドセキュリティについて、下記記事にて解説していますので、ぜひご参考ください。
▼Zscalerとは? クラウド時代に必須のセキュリティ対策とゼロトラストの関係を解説

自社のストレージやデータの使用量・通信量を把握する

自社のストレージの使用量やデータの通信量は、事前に把握しておきましょう。

クラウドサービスは使用量に応じて、月額料金が変動するものがほとんどです。ストレージ使用量とデータ通信量をあらかじめ予測し、どのサービスが自社にとって最もコストパフォーマンスを発揮するか、複数サービスを比較することが重要です。

業者のサポートサービスについて確認する

業者のサポート体制についても、事前に確認しましょう。

障害や外部からの攻撃が発生した際、迅速に解決・復旧に導けるかがポイントとなります。24時間365日対応のサポート窓口はあるのか、土日・祝日や早朝・深夜でも障害対応してくれるのかどうか、業者によってサポート内容は様々です。
このようなサポート体制があれば、サービスを利用する際にわからないことをすぐに質問できたり、使用方法について相談できたりするため、手厚いサポートサービスを提供している業者の選定をおすすめします。

テクバンのITインフラ構築/運用支援サービスについて

テクバンでは、ITインフラ構築/運用支援サービスを提供しております。
お客様のIT環境を快適にし、情シス部の負担を軽減することを目的とした、3つのサービスについて紹介します。

サーバー構築支援

「どのサーバーを選べばよいかわからない」「古いオンプレミスサーバーをリプレイスしたい」などのお悩みをお持ちの方は、テクバンのサーバー構築支援をぜひご検討ください。

OCI(Oracle Cloud Infrastructure)/Azure/AWS/オンプレミスサーバーと、様々な形態に対応いたします。
テクバンの豊富な実績とノウハウを基に、丁寧な要件定義を実施。最適なサーバー環境を企画・提案し、導入から運用・保守まで柔軟にサポートいたします。

サーバー構築支援について、詳細はこちらから。

また、サーバーのクラウド化に成功し、運用保守業務を大きく削減した事例について、下記資料にて紹介しております。
【事例】サーバーのクラウド化で、更改・保守運用業務を大きく削減。DBとOracleライセンスは継続で有効活用

ネットワーク構築支援

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テクバンでは、クラウド型Wi-Fi環境の構築、ネットワーク機器の一元管理ツール「Cisco Meraki」導入支援、クラウド型電話ソリューション「Cisco Webex Calling」導入支援を行っております。
お客様のオフィス環境を診断し、通信環境の課題の洗い出しを行い、情シス部の負担が軽減されるような快適な通信環境の実現をサポートいたします。

ネットワーク構築支援について、詳細はこちらから。

また、通信環境を改善し、ネットワーク運用の負担軽減に成功した事例をご用意しております。こちらも併せてご参考ください。
【事例】最新の通信環境をストレスなく構築。少数体制の情シスが抱えるネットワーク運用課題もサポート力で解決

インフラ運用保守/監視/障害対応(Techvan Remote Center)

ITインフラの運用・監視・障害対応をテクバンがトータルサポートし、負担過多となっている情シス部の状況を解決いたします。

テクバンの「Techvan Remote Center」は、経験豊富なエンジニアがリモートセンターから24時間365日、お客様のシステムを監視・運用するサービスです。
ITインフラに異常が発生した際、速やかに障害調査・復旧作業を行う運用サポート。また、システムに関するトラブル・質問などお客様からのお問い合わせに回答するサービスなど、サーバー/ネットワークに関するお悩みに迅速に対応いたします。

お客様のご要望に沿ったプランを選定できるため、必要な業務のみアウトソーシングすることが可能です。情シス部が抱えている負担を軽減し、コア業務に集中できる環境を設備するサポートをテクバンが行います。

Techvan Remote Centerについて、詳細はこちらから。

Techvan Remote Centerを導入し、情シス部の負担軽減に成功した事例について、下記よりご参考ください。
【事例】柔軟なメニューで実現できた。24時間365日、有人リモート監視で情シスの負担軽減

適切なクラウド構築でより良い社内環境を

組織のビジネス発展を支えるITインフラにおいて、クラウド構築はとても有効であるといえます。

クラウド構築のメリットとデメリットについて紹介しましたが、どちらが自社にとって最適なのか、運用保守業務も含めて自社で対応できるかどうか、初めから判断することは非常に難しいでしょう。ベンダー探しにも時間がかかるものです。

そのようなお悩みを抱えている方は、ぜひ一度テクバンまでお気軽にご相談ください。お客様の将来を見据えたITインフラの構築や、企業成長につながるIT環境の整備など、柔軟にサポートいたします。

お気軽に
ご相談ください