ショッピングサイトや情報提供サービスなど、企業が提供するWebサービスはどんどん多機能化しています。訪問者ごとの表示内容の最適化や、AI(人工知能)を利用したQ&Aなどもその一例です。
また、社内の様々な業務においても専用のシステムが導入され、さらにそれらを統合し業務効率を高めることが求められています。
本記事では、そのようなIT環境をクラウドで提供する、マイクロソフト社のソリューションサービス「Azure」について、わかりやすく解説します。
さらに導入時に検討すべきアウトソーシングサービスについてもご紹介します。ぜひご参考になさってください。
AzureはMicrosoftのクラウドサービス
Azureは、マイクロソフト社が提供するクラウドソリューションシステムの総称です。「ソリューション」とは解決、解答という意味ですが、ビジネス用語では企業が抱える様々な課題を、ITを活用して解決するためのサービスを指す言葉として用いられています。
したがってクラウドソリューションとは、「クラウド技術を通じて様々な問題を解決するサービス」です。
ではAzureによって、どのような問題を解決することが期待できるのでしょうか。
クラウドサービスという製品性からメリットを探っていきます。
情シス部門の負担を軽減
情報システム部門にかかる負担は、ITの進化とともに大きくなっています。
20~30年前に使われていたような小規模なシステムなら、社内に機器を設置し情報システム部が管理するオンプレミスと呼ばれる形で運用することも可能でした。
しかし、近年の複雑かつ多様化するシステムをオンプレミスのみで運用することは、コスト面でも担当部門への負担の面でも現実的ではありません。
Azureをはじめ、クラウドソリューションサービスの活用は、情シスにかかる金銭的および人的コストを大きく改善してくれます。
利便性の高いクラウドサービス
Azureなどクラウドサービスでは、自社内でサーバーやネットワーク機器を設置したり運用したりする必要はありません。契約したサービス先が保有・管理するサーバーやネットワーク機器、その他ストレージをインターネット経由で利用します。
また、Azureなどのクラウドサービスの利用により、データセンターを社外に置くことで、万一の災害への備えにもなります。
データセンターに収められたデータの所有権は変わらず利用者にあり、Azureを提供するマイクロソフト社がそれらを利用することはありません。
さらにAzureといったクラウドサービスでは、オンプレミスと同じ感覚でクラウド上のサーバーを利用できます。社内に機器を設置する必要がなく、運用管理もすべて任せることができるため設置スペースや管理に関わる多くの人件費や負担の軽減へつながるでしょう。
クラウドの概要に関しては下記記事でも紹介しています。ぜひ、ご参考ください。
▼オンプレミスとクラウドの違いは? メリット、デメリットや料金を比較解説
▼クラウド監視とは? 運用負荷を軽減させるポイントを解説
自社ニーズに合わせたソリューションサービス
ビジネスの業態によって、求めるシステム構成が変わることは当たり前です。
これに対応するため、利用者の各分野に合ったシステムを構築できる柔軟さが、Azureの特長のひとつです。
さらに、Azureはデータ分析や集計、統計のための様々なツールを備えており、迅速に導入・活用できます。
また必要に応じて、独自のツールやユーザーインターフェースの構築もAzure上の開発環境を利用して行えます。
導入の手軽さや、ツール開発の利便性の高さもAzureの特長です。
企業が抱える様々な問題への対策に、豊富なツールとサービスでAzureは応えます。幅広く、かゆいところに手が届くサービスといってもよいでしょう。
なお、このようにクラウドサービスの根幹部分からアプリケーション開発環境までを提供するクラウドソリューションを、PaaS(パース)と呼びます。
ハードウェア面のみを提供するものはIaaS(イアース)、Webアプリケーションまで用意してあるものはSaaS(サース)です。
自社に合ったクラウドソリューションを徹底的に調べるなら、このような種類も頭にいれておきましょう。
さらに詳しい記事もご用意しております。ぜひご参考になさってください。
▼SaaS、クラウドとは? IaaS、PaaSとの違いやサービス、メリットを解説
Azureは企業に不可欠
Azureとはどのようなサービスなのか、どのような効果が期待できるのかを前節で簡単に紹介しました。本節では情報システムの内製化が困難である背景と、クラウドソリューション活用のメリットについて掘り下げます。
企業の活動に欠かせないIT
今では、IT抜きのビジネスを考えられません。文書作成や資材管理、メールやSNS、人事や財務管理など、日常的な業務の中でITが利用されています。
一方で業務によっては、どうしても紙やファックスなどのアナログ手法から脱却できないこともありますが、経済産業省は2018年から「DX推進ガイドライン」を策定し、IT活用を推進。2024年1月には改正電子帳簿保存法が義務化されました。
いつまでも、アナログ対応のままというわけにはいかないのかもしれません。
環境に合わせたシステム開発
DX移行では、既存システムとの連携も考慮しながら、新たに各部門の業務負担の軽減や処理日数の短縮などの目に見えるメリットを打ち出していかなければなりません。
既存システムとの連携も可能なAzureは、企業に合わせたシステム導入も可能なため、社内のIT環境に合わせた設計が可能です。
柔軟で運用しやすいサービス
社内のDX化を一気に進めることは、変化に追いつけない従業員が出てくる、やり方が変わることへの反発、システムに慣れるまでの混乱が生じるなど、多くのリスクが付きまといます。
Azure導入によってDX化する場合、支援サポートもあるため、負担の軽減が可能です。
どのように導入を進めていくのか、ゴールを共有しながら現場や業務ごとに最適な解決方法を検討できます。
Azure選択のメリット
クラウドソリューションサービスの選択肢はAzureだけではありません。アマゾン社のAWS(Amazon Web Services)やオラクル社のOCI(Oracle Cloud Infrastructure)など、Azure以外の選択肢もあります。
その中で、Azureを選択する理由はどこにあるのでしょうか。他社製品に引けを取らない、Azureの多様な機能の中から、代表的なメリットやポイントを紹介します。
関連記事もご用意しております。ぜひご参考になさってください。
▼AWSとAzureの特徴を徹底比較! メリット、選定基準も解説
信頼性の高いクラウドサービス
クラウドサービスは自社外に大切なデータを保存します。当然そのシステムの堅牢性、安定性は高いものが求められます。
Azureではシステムの基盤となるIT infrastructure(ITインフラ)の面でもセキュリティなどソフトウェアの面でも、多くの専門家によって適切な監視が行われているのです。
現在利用しているシステムとも併用可能
現在使用している自社内サービスや、Azure以外のクラウドサービスなどの別システムともシームレスに連携を図れます。またWindowsやMicrosoft Officeとの親和性が大変高く、既存のWindows環境での業務からの移行もスムーズです。
システム開発の自由度の高さ
クラウドデータを取り扱うためのアプリケーション開発には、好みのプログラム言語とプラットフォームが利用できます。統合開発環境であるVisual StudioとVisual Studio CodeでAzureの組み込みサポートを利用可能です。
またAzureでは開発(development)と運用(operation)など、これまで分断されていたチームを統合したDevOps文化を浸透させることで、顧客のニーズへの対応スピードを上げ、ビジネスの目標達成を強力にサポートします。
Azureでできること
自由度の高いAzureのアプリケーション開発環境ですが、あらかじめ組み込まれている機能も充実しています。事前に用意されたツール類で何ができるのか、そのうちのいくつかを紹介しましょう。
さらに他の機能もチェックしたい方は、マイクロソフト社のAzureの製品一覧から200以上の製品をチェックできます。
Azure Active Directory(Azure AD)
クラウドサービスを利用するには、ユーザーごとにログインが必要です。Azure Active Directoryは、そのためのID管理とセキュリティ管理を行うプラットフォームです。
MFA(多要素認証)でセキュリティを強化し、クラウド上で複数のサービスが稼働している場合でも、一度のログインで完了するSSO(シングルサインオン)も利用できます。
人事異動などによるアカウントの権限変更も確実に行えます。
Azure OpenAI Service
対話型生成AIであるChatGPTが2022年11月に公開されてから、常識が一変したといっていいほど、世界にインパクトを与えました。そしてAIが一気に身近になり、業務活用する企業が増えました。
AzureではこのChatGPTを利用できる「Azure OpenAI Service」を備えています。どのようなメリットがあるのか、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ChatGPTを企業利用するには? 導入方法や活用事例を解説
さらに、ChatGPTを企業が利用することで懸念されるセキュリティリスクを挙げながら、その対策を解説。安心してビジネス利用できる方法を下記の記事でご紹介しています。ぜひご参考になさってください。
ChatGPTを安全にビジネス利用するには? リスクと対策を解説
Azure Bot Service
会話型AIボットを簡単に設置できます。Webサイトだけでなく、モバイルアプリやフェイスブック、Microsoft Teamsなどの様々なチャネルで利用できます。ボット以外にも、多くの人工知能を活用したAI関連のツールが利用可能です。
Data Science Virtual Machine
蓄積されたデータベースの分析もAzureで行えます。ただ、いきなり本番データで分析ツールを実行することはリスクを伴います。そのため、データサイエンスのトレーニングと教育に必要な仮想マシンをクラウド上に構築して教育が可能です。
また、Azureでは保存されたデータを元に様々な分析ができるため、学習に必要な教育環境を簡単に利用できます。
App Service
クラウド内でWebアプリや、APIを迅速に構築できます。好みのフレームワーク言語、platform(プラットフォーム)、OSの利用が可能です。
Azure Virtual Desktop
どこからでもログインできる、仮想Windows環境を提供可能なため安全なリモートワークの実現に役立ちます。また既存のWindowsライセンスを使用し、使った分だけライセンス料が発生するため、新たにライセンスを購入する必要がありません。
さらに、Azureで提供している他のサービスについて解説した記事をご用意しております。ぜひご参考になさってください。
▼Azure仮想ネットワークゲートウェイ(VPN Gateway)の接続構成や価格を徹底解説
Azureは、こんな企業にすすめたい
多機能で活用シーンの多いクラウドソリューションAzureについて、導入をおすすめできる企業の例をご紹介します。
導入を検討しているものの、自社が実際に導入すべきかわからない、という方はぜひ判断材料にしてください。
マイクロソフト社の製品を積極的に活用している企業
Azureは他のシステムとの連携も得意なパッケージですが、中でも自社製品であるMicrosoft 365、Teamsなどは連携が容易です。積極的にマイクロソフト社の製品を導入しているのであれば、Azureもより親しみやすいでしょう。
高い安全性が必要な企業
前項でも紹介したAzure Active Directoryのような、ID管理の優れたソフトをすぐに使用できます。多くの従業員を抱える企業や職務、部署ごとに細かなアクセス制限が必要な場合、Azureはおすすめです。
コストを少しでも削減したい企業
元々社内でサーバーを設置していた企業なら、サーバーそのもののコストやメンテナンス費用や人件費を大幅に削減できます。
また、リモートワークで使用する仮想デスクトップも従量課金制であり、追加ライセンス料が不要です。使用状況のモニタリングも同様に従量課金制のため、ムダを抑えることができます。
Azureにかかる費用
Azureの導入および月額料金の目安ですが、ニーズや規模、利用するサービスや利用時間などによって変動するので一概にいくらとはいえません。変動の仕組みを知っておき、無駄づかいを抑える工夫を考えることが重要でしょう。
詳しい記事もご用意しております。ぜひご参考になさってください。
▼Microsoft Azureの利用料金を事前に見積もりする方法は?
利用製品の組み合わせと利用時間で変動する従量課金制
Azureには多くのサービスがありますが、ほとんどが従量課金制です。単に時間だけで変動するものもあれば、SQLや分析ツールのようにハードウェアのリソースの割当量で変動するものもあります。自社に必要なツールを見極め、効率よく使うことが求められます。
各種割引サービスを活用しよう
Azureには導入を後押しする割引サービスがあります。
例えば、Windows ServerやSQL Serverからの乗り換え割引、 Visual Studioのサブスクリプション利用中の方が受けられる割引などが代表的です。
また機能は限定されますが、1年間の無料お試しサービスもあります。
サポート費用は要注意
サポートは利用プランによって受けられる範囲、時間帯、マイクロソフト社からの応答時間に違いがあります。事業におけるAzureの活用度によってプランを検討しましょう。導入ベンダーを通してAzureを導入した場合、導入ベンダーでもサポートが受けられることがあります。
Azure導入のハードル
本記事ではAzureの利点を中心に紹介しましたが、実際の導入時には一定以上のIT知識が求められます。IT業界の技術の進歩は速い上に、Azureは常に最新技術が採り入れられるサービスでもあるため、その全容を理解するのは困難なこともあるでしょう。
そのような導入時のハードルを理解しておくことも重要です。
多機能すぎて活用しきれない
多機能なAzureですが、あったら便利かもと導入してしまうと使わないままコストだけかかるということになりかねません。Azure導入は必要な機能を選び、自社業務にちょうどいい機能を設定すべきです。
そのためには既存の業務で使用しているツールやこのような機能が欲しいといった現場の声を汲み取ったシステム構成を検討することが重要です。
情報システム部への負担増
システム運用や開発において社内での負担軽減を目的にAzureを導入したのに、Azureについて学ぶことが多くなりすぎて、逆に負担が大きくなってしまったのでは意味がありません。
Azure導入はマイクロソフト社を通して行うこともできますが、Azureをよく理解していないとメリットを最大限に生かすことができず、またコスト増、社内担当者の負担増の恐れもあります。
Azure導入支援サービスの活用を
多機能化が加速するIT環境の構築や運用について、社内の負担を軽減することがクラウドソリューション利用の目的です。Azureを導入した結果、かえって運用の負担が増してしまったのでは本末転倒といえるでしょう。
ぜひ、導入時から積極的にアウトソーシングを活用することをおすすめします。
アウトソーシング活用がおすすめ
アウトソーシングすることで、一時的には費用がかかっても長期的にはコストダウン、業務環境の改善に結びつきます。
自社のITインフラ環境や求める要件を整理して、Azureの導入をサポートしているベンダーへアウトソーシングしましょう。
現状把握から開発、運用までワンストップでのサポートが理想
業務用PCの購入で付き合いのある業者などが、Azureの導入サポートを行っているかもしれません。気軽に相談しやすいというメリットはありますが、Azure導入については現状把握から開発、運用、サポートまでをまとめて任せることができるかどうかを重視しましょう。
Azureは基本となるサービスがあり、そこに必要な機能を付け加え、必要があればアプリケーション開発を行い、全社のシステムをシームレスに連携できます。ピンポイントの対応でなく、一気通貫の情報を共有することで、柔軟なAzureの特徴が生かされ、使いやすい仕組みの構築につながります。
他社のクラウドサービスともスムーズに連携できますが、Azureの機能強化に伴いレガシーサービスが使えなくなることもあります。
Azureのアップデート情報を、きちんと把握している業者を選別するようにしましょう。
導入後サポートやシステム拡張もお任せ
導入時にいくら満足できる仕組みを作っても、新しい技術が開発されたり、社内から必要な機能の要望があがってきたりすることは十分予想されます。将来的な拡張や平時の問い合わせにも対応できるパートナーを選びましょう。
テクバンでは「Microsoft Azure導入支援サービス」を提供し、導入からサポートまでワンストップで対応しています。
Azureを導入するには
サービスの黎明期には「外部ストレージの一種」という程度の扱いだったともいえるクラウドサービスは、今では遠隔操作可能な自社の複合システムサーバーとして活用できるものへと変化しています。
提供される機能も続々と追加されており、近年話題のAIサービスの追加など、スピード感のある対応が各社のクラウドプラットフォームで行われています。
そういった多機能なクラウドサービスを使いこなすために、自社内にスキルや知識を持った技術者を用意したり、教育したりといった対応を行っていては、本業の運営にも大きな負荷がかかってしまうでしょう。
Azureのような総合クラウドソリューションサービスの活用には、専門的な知識を有するサポート企業へ相談されることをおすすめします。