クラウドサービスはビジネスにおいて、もはや欠かすことのできない存在となっています。中でも、AWSとAzure(アジュール)は世界中の多くの組織が導入し、シェアの半数以上を占めています。ただ、両者はあまりにも有名なサービスで信頼性が高い上、評価も様々でどちらを選ぶべきか比較し、悩んでいる方も多いことでしょう。
実はそれぞれのサービスには得意分野があるため、サービスを最大限活用するには適切に比較し、自社の状況に合わせた選択をすることが重要です。
本記事では、AWS、Azureおのおのの特徴や強み、メリット・デメリットの他、どちらが自社の規模や要望、状況にマッチするのかについても、まとめて解説します。
クラウドサービスの導入や変更を検討中の方はぜひ参考にしてください。
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失敗しないパブリッククラウドの選び方。AWS/Azure/OCIの3つを徹底比較
AWSとAzureはクラウドサービス製品
AWSとAzureは、代表的なパブリッククラウドのプラットフォームです。
パブリッククラウドとは、事業者が所有・管理しているリソースを、一般のユーザーや企業に広く提供しているサービスです。対義語となるプライベートクラウドは、特定の組織やユーザーのためだけにリソースを確保しており、他のユーザーや企業とは共有されません。
また、クラウドのプラットフォームとは、オンプレミス環境より導入しやすくコスト削減が可能で、柔軟性かつ拡張性をもってアプリやデータをインターネット経由で管理し、様々なツールや豊富な機能を利用できるサービスです。
クラウドというと実態がないものという感じがする方も多いかもしれませんが、実際には各社が運用する大規模なデータセンターの一部を利用するイメージです。
クラウドコンピューティング市場は、このAWSとAzureに加えて、GCP(Google Cloud Platform)の3つのサービスでほぼ寡占状態になっており、多くの組織が利用しています。他に著名なものでは、OCI(Oracle Cloud Infrastructure)があります。
AWSはAmazon Web Servicesの略で、アマゾン社が2006年にリリース。一方のAzureはMicrosoft Azureの通称で、マイクロソフト社が2010年にリリースしました。
まず、AWSとAzure両者の特徴について簡単に解説します。
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Microsoft Azure導入支援サービス
テクバンの Amazon Web Services(AWS)導入支援サービス
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AWSとAzureの特徴をクローズアップ
AWSの特徴
AWSは、ニーズに応じて構築できるという柔軟性の高さが特徴のひとつです。スケールアップやスケールダウンが簡単で、コスト効率がよいといえます。ただし、自社向けにカスタマイズするには、オンプレミスに比べ、やや制約があります。
また、AWSは250以上の多様なサービスを提供し、高度なセキュリティ対策が整備されている点も特徴として挙げられます。
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Azureの特徴
Azureは250以上もの機能を備え、VDI、ネットワーク、データ分析ツール、アプリ作成機能、インフラの拡張などを提供しています。世界55か所のデータセンターを持ち、堅牢なWAN(Wide Area Network)バックボーンを備えています。
さらに、Azureの特徴として、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドを容易に実現することが可能です。
また、自社環境に合わせた設定を細かくできるメリットがAzureにはありますが、これを対応するには専門知識が必要になります。
AWSとAzureのメリット
AWSのメリットとは?
AWSはAzureと比較して、どのようなメリットがあるのでしょうか。まずAWSの代表的な利点について3つ紹介します。
1.柔軟性がある
AWSのメリットとして、柔軟性に優れている点が挙げられます。
具体的には、拡張性が高く需要に応じてリソースをスケールアップ・ダウンできること、また提供サービスやリソースが多く必要に応じて選択できるメリットがあります。
2.DR構成を考慮した設計ができる
AWSは、DR(Disaster Recovery)構成を考慮した設計がしやすいというメリットがあります。複数のリージョンとAZ(アベイラビリティゾーン)を提供し、データ保護が容易なストレージサービスやオートスケーリング機能があるため、災害時の負荷分散やシステムの可用性向上が可能になります。
3.使いたいリソースに絞ってコストを抑えられる
AWSは従量制課金モデルを採用しており、使用したリソースに応じて課金されます。このため、必要なときだけリソースを利用し、必要のないときには使用を停止する使い方で、コストを抑えられます。
Azureのメリットとは?
AzureはAWSと比較して、どのようなメリットがあるのでしょうか。次にAzureの代表的な利点について3つ紹介します。
1.Microsoft製品と親和性が高い
Azureはマイクロソフト社が提供しているサービスのため、Microsoft製品との連携がスムーズです。また、Azure AD(Active Directory)を使用することで、Microsoft 365の認証情報をAzure ADに任せ、クラウド上のアプリやサービスへのアクセスを一元化できます。
このため、既にMicrosoft製品を導入している組織にとっては、シームレスな環境の構築が容易であり、メリットが高いといえるでしょう。
また、生成AI(人工知能)を業務に活用する企業が増えていますが、 AzureではChatGPTを利用できる「Azure OpenAI Service」を備えています。
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2.多様な選択肢がある
Azureは、データベースやストレージ、ネットワーキング、セキュリティなど、様々なサービスを提供しており、自由度が高く、サーバー容量の拡張も柔軟です。
また、仮想デスクトップとアプリを利用できる環境が迅速に整うため、場所を問わず安全なリモートワークを可能にします。
3.オンプレミスと親和性が高い
AzureはAWSと比較して、オンプレミスサーバーとの親和性が高いことがメリットとして挙げられます。
以前多くの組織は、自社のオンプレミス環境でネットワークやアプリケーションを運用していました。オンプレミスサーバーは、Windows OSの採用がほとんどだったため、相性がよく、クラウドとオンプレミスのハイブリッド運用しやすいこともAzureの利点でしょう。
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AWSとAzureのデメリットは?
AWSとAzure、それぞれのデメリットについても把握しておきましょう。
AWSのデメリット
導入メリットが高く、機能も多いAWSですが、デメリットとしてどのようなことが挙げられるのでしょうか。代表的な2点について解説します。
- 保守運用の自由度が低い
AWSはオンプレミスに比べ、保守や運用面で自由度が低く、カスタマイズできる範囲が制限されることがデメリットとして挙げられます。
保守の点でいえば、AWSは世界中にサービスを提供しているため、メンテナンスを行う日は決定事項として通知され、否応なしにサービスが停止されることがあります。
通常は数か月に一度程度で定期メンテナンスを実施することになっていますが、あくまでもAWSの都合になっている点には注意が必要です。 - 法律の適用に注意が必要
AWS特有の留意点として、法律面の問題が挙げられます。
日本企業がAWSを利用していても、基本的にはアメリカの法律が適用されることがルールでしたが、2017年4月から利用者の任意で、日本の法律と東京地方裁判所を適用できるようになりました。
ただし、この適用の選択を忘れるとアメリカの法律が適用されるため、十分に注意しましょう。
Azureのデメリットは?
次にAzureのデメリットについても把握しておきましょう。
- 専門知識や技術が必要
Azureを最大限に活用するには、専門的な知識や技術が必要になってしまうため、導入の際にはIT専門の人材やリソースの確保を検討しなければなりません。
また、Azureはカスタマイズの自由度が高いものの、AWSに比べてネット上の情報やコミュニティが少ないという点もデメリットといえるでしょう。 - 仮想マシンの起動が遅い
Azureの仮想マシンの起動時間は構成やサイズ、リージョンによって異なるものの、一般的には数分から数十分かかります。
この起動時間はAWSに比べて遅く、迅速なサービス提供に支障をきたす可能性があるでしょう。Azureの仮想マシンを利用する際には、この起動時間の影響を考慮し、適切な対応を行う必要があります。
AWSとAzureの違いとは?
AWSとAzureのメリット・デメリットについて解説してきました。では両者を比較したとき、どのような違いがあるのでしょうか。それぞれ紹介します。
サービスの多様性
AWSは約250以上のサービスを提供しており、データストレージ、コンピューティング、ネットワーキング、セキュリティなどの分野において、多数の製品を提供しています。
一方のAzureも約250以上のサービスを提供しており、同様に多数の分野に対応しています。
コンピューティングのアプローチ
AWSはAmazon EC2と呼ばれる仮想マシンを提供し、仮想マシンイメージをカスタマイズして利用できます。
AzureはAzure VMと呼ばれる仮想マシンを提供し、同様にカスタマイズが可能ですが、仮想マシンよりもサーバーレスコンピューティングに重点を置いています。
ハイブリッドクラウドのアプローチ
Azureは、オンプレミスのシステムとクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウド環境に対応しており、簡単にオンプレミスのシステムとクラウドの統合が可能です。
一方のAWSは、同様に対応しているものの、Azureに比べるとその機能性は低くなっています。
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AWS・Azureがおすすめのケース
では特徴やメリット・デメリットを踏まえて、どちらを選択するべきなのでしょうか。選び方の参考として、それぞれの導入が向いているケースについて紹介します。
AWSを使った方が良いケース
AWSを導入することをおすすめできるケースは、以下のような観点があります。
- 複数の国や地域に展開する必要がある
- 複数のOSやアプリと連携させる必要がある
- 多様な機能を必要としている
AWSは世界中にリージョンを展開し、多数のアベイラビリティゾーンを提供しています。そのため、複数の地域に展開する必要がある場合には、AWSを導入することで適切な地域にアプリケーションやデータを配置できます。
またAWSは、複数の異なるアプリケーションを連動させることで工程を効率化したい場合にも適しています。Macの利用環境が必要な場合にも、AWSのMac OS対応サービスを利用すれば、Mac OSの機能をスムーズに利用できます。
さらに、AWSは多様な機能を提供しており、日々新しいサービスをリリースしています。新しく多様な機能を活用したい場合は、AWSが向いているといえるでしょう。
Azureを使った方が良いケース
Azureを導入することをおすすめできるケースは、次のようなものがあります。
- Windows製品と連携させる必要がある
- オンプレミスと連携させる必要がある
- アクセス制御やライセンス管理の一元化したい場合
Windows製品との連携を考える場合、マイクロソフト社が提供するAzureがおすすめです。
AWSの場合は、APIなどの外部連携が必要になるため、Windows連携自体の安定性や構築のしやすさではAzureが優位といえるでしょう。
そして、Azureはオンプレミス環境との連携も容易です。Azureの機能であるハイブリッドクラウドソリューションを利用することで、オンプレミス環境とAzureの間でデータやアプリケーションをシームレスに移行・共有できます。
また、自社オンプレミス環境内にAzureと同等のクラウド環境を作ることができるMicrosoft Azure Stackを使えば、オンプレミス環境でもAzureと同様の機能を提供できます。Azureは、オンプレミス環境とクラウド環境を柔軟に連携させることが可能なクラウドサービスといえるのです。
さらにAzureを利用することで、Azure ADを使用して、社員のアカウント管理や認証を一元管理することができます。Azure ADは、多要素認証(MTA)、シングルサインオン(SSO)、条件付きアクセス、アクセスレビューなどの高度なセキュリティ機能を提供しており、セキュリティ強化に役立ちます。
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AWSとAzureの双方を併用する方法も
最近、組織では2つ以上のクラウドサービスを組み合わせて運用する傾向があります。中でもAWSとAzureを併用する組織が多いようです。両者を組み合わせることで、それぞれの強みを生かしたシステム構築が可能になる他、リスク分散や新しいサービスの展開に対応することもできるというメリットがあります。
AWSは堅牢なストレージ、高速処理能力、大規模なデータベースなど、様々な分野で高いパフォーマンスを発揮します。
一方Azureは、Windowsとの親和性が高く、既に社内でMicrosoft製品を使っている組織にとってはより使いやすいサービスといえるでしょう。
ただし、これら両者の強みを生かすためには、運用面での工夫が必要です。
例えば、業務に合わせてどちらのクラウドサービスを使うか明確にする、両者のインターフェースをつなぐツールを活用することなどが挙げられます。また、運用にはスキルと知識が必要なため、従業員への研修や専門家によるコンサルティングが必要になる場合もあります。
適切な運用により、AWSとAzureの両方の強みを生かして、より高度なクラウド環境の構築することは組織にとって有益になるはずです。
AWSとAzure、強みを生かす運用を
クラウドサービスの両巨頭といえる、AWSとAzureについて解説してきました。両者の違いや強みを認識しながら、自社に合ったクラウドの運用をすることが重要です。
しかし、AWSとAzure、GCP、OCIなど、どのクラウドが自社にとって最適か判断できない場合や、クラウドを併用した運用に自信がないといった場合は、専門の事業者に相談することがひとつの解決策となります。
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