情報の重要性が高まる現在のビジネス環境で、企業は自社のデータや業務環境を確実に守るために、慎重なセキュリティ対策の構築と取り組みの徹底が求められています。
サイバー攻撃が頻発する中、企業の規模にかかわらずセキュリティ対策は、もはや社会的な責任といっていいでしょう。
しかし、企業としてビジネス上のセキュリティ対策を全体一律的に実施すればいいかといえば、そうではありません。
ビジネスを支えるITインフラはオンプレミス環境とクラウド環境があり、両者で異なる課題とニーズがあるため、セキュリティ対策の戦略も異なります。
そこで本記事では、オンプレミスとクラウドのセキュリティ面のメリットや違いを詳しく解説します。セキュリティ対策のポイントについて理解を深めることができるため、ぜひお役立てください。
オンプレミス・クラウドとは
まずは、基礎知識としてオンプレミスとクラウドの定義やメリット、デメリットのポイントを簡単にご紹介します。
他にもオンプレミスとクラウドの導入料金などについて解説した記事をご用意しております。
▼オンプレミスとクラウドの違いは? メリット、デメリットや料金を比較解説
オンプレミスとは
オンプレミス(on-premises)とはサーバーやソフトウェア、ネットワーク機器などを自社で調達し運用する方法です。「オンプレ」と略されることが多く、クラウドが登場するまでは、企業でのシステム運用の方法はオンプレミスが主流でした。
自社運用とも呼ばれており、管理する施設内でシステム構築を行い、運用や管理、メンテナンスなどを一貫して行います。
自社の目的や環境に応じてソフトウェアやハードウェアを自由に選択できるため、カスタマイズ性の高いところが特長です。自社の他システムとの連携や強固なセキュリティ対策を構成できます。
一方で、施設内にイチからシステムを構築しなければならないため、導入のハードルが高い点はデメリットです。導入時にサーバー機器やソフトウェアの購入、システム構築に費用がかかるため、初期費用も高くなる傾向があります。
オンプレミスからクラウドへ移行検討の参考となる記事もご用意しております。
▼オンプレミスからクラウドへ。移行する判断基準や手順など幅広く解説
クラウドとは
クラウドとは、インターネット経由でWebサービスやアプリケーションを使用する方法のことです。
総務省が公開している「通信利用動向調査報告書」によると、ファイル共有やデータの保存、電子メールの利用を目的に、ストレージやビジネスプラットフォームといった、さまざまなクラウドサービスが急速に普及し、活用する企業が増えています。
Google Cloud(GCP)、Amazon Web Services(AWS)、 Microsoft Azure(Azure)などを導入されている企業も多いのではないでしょうか。
オンプレミスでは、サーバーやソフトウェアなどを利用する際、自社で購入し保有・設置しなければなりません。
しかし、クラウドでは事業者との契約でサービスの利用権を取得するだけで問題なく活用できることが特長です。そのため、初期費用やランニングコストを抑えながら導入できるクラウドは、スタートアップや新規事業の立ち上げ時に適しているといえるでしょう。
一方で、オンプレミスに比べるとカスタマイズ性が低く、自社の他システムとの連携や自社の目的や必要性に応じた機能の追加などができないケースもあります。
オンプレミス環境でのセキュリティ面のメリット
ここでは、セキュリティ面から見たオンプレミス環境のメリットを紹介します。
オンプレミスは、システムをイチから構築できるところが大きな強みです。強みを生かして、どのようなセキュリティ対策ができるのか、解説していきます。
情報漏洩リスクが低い
オンプレミスは、基本的にローカルネットワーク環境でシステムを構築します。ローカルネットワークとは、社内などの限定された範囲でデータ通信を行うシステムのことです。
外部ネットワークと遮断された環境を構築し、アクセス制限できることが特徴です。そのため、ネットワーク経由での情報漏洩やウイルス感染など、さまざまな脅威の危険性を低減し、内部環境の安全性確保に有効とされています。
一方で、クラウドは基本、オンライン環境でしか作動しないため、常時ネットワーク接続が必要です。
例えば、クラウドサービスを使い、データ保管をしている場合は、常にネットワーク経由でデータの出し入れをしなければなりません。不正アクセスやアカウントの悪用、サイバー攻撃などに遭うと、機密情報や個人情報を漏洩させてしまう可能性があります。
このように、オンプレミスはクラウドと比較すると閉鎖的な環境を作りやすく、外部からの攻撃や不正を未然に防ぐことが可能です。
柔軟なセキュリティ設定ができる
オンプレミスはイチからシステム構築を行うため、自社の目的や課題に応じた柔軟なセキュリティ設定が可能です。
クラウドの場合は一般的にあらかじめ用意されているサービスを選択する形となるため、自由なカスタマイズには限界があります。
オンプレミスでは、ソフトウェアやネットワーク機器などを自由に選択できるため、下記のような柔軟な設定ができます。
- 自社独自のセキュリティポリシーに合わせて設定がしたい
- 一般的なセキュリティ水準より高いセキュリティ設定がしたい
例えば、多くの顧客関連情報や機密情報を扱う企業では一般水準以上のセキュリティを担保したいと考えているでしょう。オンプレミスなら、自社のセキュリティ要件に応じてセキュリティを強化できます。
利用途中の変化に対応しやすい
オンプレミスは、システム運用中の変化に対応しやすいところもメリットです。例えば、実際にシステムを運用してみてセキュリティに不安がある場合は、適宜修正やカスタマイズできます。また、新たな脅威が見つかった場合も適切な対策を検討し、柔軟にカスタマイズすることが可能です。
他にも、新たに導入したシステムやセキュリティサービスとの連携もしやすく、企業内の状況の変化にも柔軟に対応できます。一方で、クラウドは利用できるオプション内でのカスタマイズしかできないため、利用中の変化に対応しきれない場合があります。
例えば、他のサービスやシステムと連携できないクラウドを使う場合、社内のシステム環境が煩雑になりやすいとされています。オンプレミスならセキュリティを強化しながら、運用しやすい環境の構築が可能です。
クラウドのセキュリティ対策のメリット
続いて、クラウドを利用するときのセキュリティ対策のメリットを紹介します。オンプレミスと比較してクラウドは低コストで運用できるところが大きな強みです。どのような特長があるのか参考にしてみてください。
多様な働き方に対応できる
クラウドはオフィスでの勤務だけでなく、リモートワーク勤務や出張など多様な働き方に対応できます。リモートワーク勤務をするときに課題となるのが、一定のセキュリティレベルを担保した情報送信や情報共有です。
一定のセキュリティレベルが備わったクラウドを利用すれば勤務場所を問わず、ネットワーク経由で資料の共有や情報の保存、送信などが実現できます。
オンプレミスは自社内にシステムを構築するため、基本的にオンプレミスのみで社外までセキュリティ範囲を広げられません。リモートワーク導入時には情報の扱い方において、持ち出し方や接続方法など他の課題が発生します。
クラウドならすぐにリモートワーク環境を構築でき、一定のセキュリティレベルを保ちながら多様な働き方に対応可能です。
セキュリティ対策コストを抑えられる
クラウドは、セキュリティ対策のコストが抑えられる点も大きなメリットです。利用するサービス内容にもよりますが、クラウドは初期費用やランニングコスト(月額料金や年契約料金)のみで運用可能です。
一方で、オンプレミスは専門的な知識を持つ人材の配置やハードウェア、ソフトウェアの購入費、メンテナンスコストなどがかかります。とくに現在「2025年の崖」が問題となっているように、古くなったシステムはメンテナンス費用が高騰します。買い替えや再構築が必要となってもコストがかかり、なかなか前に進めなくなる可能性があるのです。
クラウドならセキュリティレベルの維持やシステムのメンテナンスはサービス提供側で行うため、追加でコストをかけなくても一定のセキュリティレベルを維持できます。料金体系が明確になっているサービスがほとんどのため、ランニングコストを把握しやすく無理のない範囲でのセキュリティ対策が可能です。
担当者や利用者のレベルに依存せずセキュリティを維持できる
クラウドは、サービス自体に一定のセキュリティレベルが担保されていれば、担当者や利用者のレベルに左右されることなくセキュリティ維持が可能です。
クラウドはサービス提供側でセキュリティ強化やサービス構築を行っているため、利用者側はすぐに利用できる状態になっています。サービス提供側が提示している使い方やルールさえわかっていれば、難しい知識がなくてもセキュリティを維持できるのです。
一方で、オンプレミスは、自社システムの構築やトラブル対応を行う技術者の知識やレベルに依存します。突然のアクシデントの対処ができ、すぐに復旧できる高度なセキュリティ人材がいなければ、一定のセキュリティレベルを維持することが困難です。
また、自社のシステム構築のレベルによってもセキュリティの強度が変わるため、担当者のレベルに依存する側面があります。
オンプレミスとクラウド、セキュリティ判断は?
オンプレミスとクラウドのセキュリティのメリットが把握できたところで、どちらを選ぶべきか迷う方も多いでしょう。ここでは、どのようなケースにオンプレミス、クラウドが最適なのか理由を踏まえてご紹介します。
厳格なセキュリティ設定をするなら「オンプレミス」
自社の課題や目的に応じて厳格なセキュリティ設定をするなら、オンプレミスが向いています。先ほども触れたように、オンプレミスは自社のセキュリティ要件に応じて一から構築、運用できるからです。
強固なセキュリティ環境に必須のソフトウェアやハードウェアを選定し独自開発が可能なため、必要とするセキュリティ水準を満たせるように柔軟に調整できます。
一方で、クラウドはサービス提供側のセキュリティポリシーに準じたセキュリティ対策にとどまるため、オンプレミスのように自社の基準に合わせて設定するには限界があるでしょう。
- 情報漏洩やウイルス感染リスクをできる限り減らしたい
- 自社のセキュリティポリシーを満たすセキュリティ設定がしたい
- 個人情報や機密情報を扱うためセキュリティを厳格にしたい
など、セキュリティ水準の高さを重視したい場合はオンプレミスを選択するとよいでしょう。
自社で一貫した管理をしたいなら「オンプレミス」
オンプレミスは基本的に自社の施設内にシステムを構築し、運用や管理を行います。システム構築から管理までブラックボックス化することなく、一貫して担いたい場合は、オンプレミスが向いているでしょう。
自社管理をすると災害対策やトラブル発生時の対応、セキュリティ対策内容の変更などが柔軟に行えます。例えば、社内に高度な知見や技術を持つ人材が常駐しており管理を任せられる状態であれば、状況に応じた柔軟な対応が可能です。
一方で、クラウドはサービス提供側でメンテナンスやトラブル対応を行っています。大規模なトラブルが発生した場合は利用者側で対処ができず、長期間使用できないリスクがあります。
- 自社でトラブル対策や災害対策を担う人材確保、基盤構築ができている
- 自社でシステム構築から運用、管理ができる体制を整えたい
という場合には、オンプレミスがおすすめです。
セキュリティコストや運用の手間を省きたいなら「クラウド」
セキュリティ強化にかかるコストや運用の手間を省きたい場合は、クラウドが向いているでしょう。
クラウドはサービス提供側でセキュリティ強化やメンテナンスなどを行うため、一定のセキュリティレベルを確保しているサービスを利用すれば、利用者の運用負担が大幅に軽減できます。社内にセキュリティ対策に詳しい技術者や担当者がいなくても、問題なく運用することが可能です。
また、クラウドのデータセンターでは膨大なデータやアプリケーションが保管、処理されます。自社で情報システムを保有するわけではないため、購入費用や買い替え費用、メンテナンス費用がかからず、オンプレミスよりも低コストでビジネスに必要な環境を整えることが可能です。
下記のような場合は、クラウドを選択したほうが運用しやすいでしょう。
- 高度なセキュリティ業務や保守ができる人材のリソースが難しい
- できる限りコストを抑えて長期的な運用がしたい
最新のセキュリティ対策に迅速に対応するなら「クラウド」
セキュリティ対策を迅速に対応したい場合は、クラウドの方が向いているでしょう。
情報システムを取り巻く環境は、日々変化していきます。特に情報漏洩やサイバー攻撃の手法などは日々アップデートされるため、最新の脅威に備えたセキュリティ対策が必要です。
クラウドでは脆弱性に対し定期的な評価とアップデートが行われるため、ユーザー側が留意しなくても、セキュリティレベルが強化されていきます。
一方オンプレミスでは、セキュリティ対策を強化するにあたり、新しいソフトウェアの購入やシステムの修正など費用や手間・時間がかかります。
セキュリティの強度はオンプレミスの方が高く設計できますが、最新の状態にアップデートしやすいのはクラウドといえるでしょう。
クラウド×オンプレミス=「ハイブリッド型」
ここまで紹介したクラウドとオンプレミス以外にも、最近はクラウドとオンプレミスを融合させたハイブリッドクラウド型が登場したのをご存じでしょうか。最後に、ハイブリッドクラウド型の概要やメリット、デメリットを紹介します。
ハイブリッドクラウドとは
ハイブリッドクラウドとは、クラウドやオンプレミスなど異なる環境を組み合わせて使うクラウドのことです。
例えば、ハイブリッドクラウドでは自社で構築したシステムをクラウドで使用できるようになり、オンプレミスとクラウドの長所を生かした運用ができます。
他にも物理的なサーバーとクラウドサーバーを組み合わせることでリスクを分散し、セキュリティを維持しながら柔軟な環境を構築することも可能です。
さらに詳しい記事もご用意しております。ぜひご覧ください。
▼オンプレミスもクラウドも! ハイブリッドクラウドを解説
ハイブリッドクラウドのメリット
ハイブリッドクラウドのメリットとしては、下記のような点が挙げられます。
- 生産性が向上する
- リスクを分散できる
- セキュリティコストを削減できる
ハイブリッドクラウドではオンプレミスとクラウドの双方の環境を利用するため、リスク分散ができます。複数のサーバーにバックアップを取ることができるため、アクシデントが発生しても短期間で復旧しやすくなります。
ハイブリッドクラウドのデメリット
一方で、デメリットとしては、下記の点が考えられます。
- 構築や運用が難しい
- 構造が複雑化しやすい
ハイブリッドクラウドは複数のサーバーやシステムを利用するため、構造が複雑化しやすいとされています。専門的な知識を持つ技術者に頼る部分が増えるため、運用方法に工夫が必要です。
サーバー構築支援はテクバンにご相談を
オンプレミスとクラウドには一長一短があり、自社の目的や課題に応じて最適な環境を構築することが大切です。テクバンでは最新の技術を使い、ビジネスに欠かせないIT基盤を設計、構築いたします。
クラウドの導入サポートやサーバー構築支援など、課題や要望に応じた支援が可能です。安全性の高いインフラ環境を構築するために幅広いサポートやソリューションの提供を行っていますので、お気軽にお問い合わせください。
テクバンのサーバー構築支援サービス
テクバンのITインフラソリューション
自社の課題に応じたセキュリティ対策を
本記事で紹介したように、オンプレミスとクラウドには様々なメリットやデメリットがあります。自社の課題や求めるセキュリティ基準によって選択することが重要です。
オンプレミスは高度なセキュリティ環境を構築できるカスタマイズ性が、クラウドは運用および管理しやすい手軽さと低コストが強みとされています。
テクバンではIT基盤を構築するサポートを行っているため、どちらが向いているのか迷っている方や自社に合うシステム環境を整えたいという方は、お気軽にご相談ください。
オンプレミスやクラウドについては以下の記事でも紹介しています。ぜひ、ご参考ください。
▼オンプレミスとクラウドって何が違うの? 移行の特徴も解説
▼クラウド構築するには? メリット・デメリットや注意点などを解説