クラウドサーバーはデータ消失や情報漏えい、不正アクセスなど様々なリスクにさらされています。クラウドサービス提供事業者でも強力なセキュリティ対策を行っていますが、事業者ごとにセキュリティ対策のレベルは異なります。
組織的にクラウドサーバーを安全に利用するには、自社のセキュリティ要件を押さえた対策が必要です。
そこで本記事では、クラウドサーバーのセキュリティ対策を行う方法について解説。さらに、安全なクラウドサーバーを選ぶポイントもまとめています。
クラウドサーバーとは? オンプレミス型との違い
まず、クラウドサーバーについて解説します。
クラウドサーバーとはインターネット回線上にあるサーバーのことを指します。
対して、自社環境に設置するサーバーがオンプレミスサーバーです。
それぞれの特徴を次の表にまとめました。
クラウドサーバー | オンプレミスサーバー | |
インターネット接続 | 必須 | インターネット接続に依存しない |
IT機器の調達 | 不要 | 必須 |
導入 | 提供事業者の構築システムを利用 | 自社でシステムの構築・運用を行う |
クラウドとオンプレミスの決定的な違いは、インターネットに接続するかどうかです。
クラウドは導入や運用などをサービス提供事業者に任せられるため、自社の負担を抑えられるメリットがあります。
▼ファイルサーバーをクラウドへ移行する目的や注意点は?
クラウド構築に関して詳しい記事をご用意しております。ぜひご参考にお読みください。
▼クラウド構築するには? メリット・デメリットや注意点などを解説
クラウドサーバー利用のセキュリティリスク
クラウドサーバーはインターネットに接続して利用するため、回線障害やサイバー攻撃など様々なセキュリティリスクにさらされています。
ここではクラウドサーバー利用時に考えられる、3つのセキュリティリスクについて解説します。
クラウドサーバーの障害に関する記事もご用意しております。ぜひご覧ください。
▼サーバー障害の主な原因は? 対処と回避策について徹底解説
障害によるデータ消失
インターネット障害が起こるとデータをサーバーから取り出せなくなったり、クラウドサーバーのデータが消失するといった事故が実際に起こっています。
一度消失したデータを復旧させるのは難しいため、常にバックアップをとるという体制の自衛策が必要です。
この障害の原因として増加傾向にあるのが、サーバーに負荷をかけるサイバー攻撃であるDDoS攻撃です。情報漏えいやデータ消失の可能性は低いものの、ビジネスに大きな影響を与えます。以下の記事で詳しく解説していますので、参考になさってください。
▼DDoS攻撃の目的や種類、DoS攻撃との違い、対策方法を解説
機密データ漏えい
クラウドサーバーのセキュリティは、一般的にサービス提供事業者に依存しています。そのため、クラウドサーバー提供事業者がサイバー攻撃を受けると、サーバーにある機密データが漏えいする恐れがあります。
また、導入時にセキュリティ設定を誤ってしまった場合、機密データが漏えいすることも。このようなヒューマンエラー要因の情報漏えいは多く起きています。
例えば、特定非営利活動法人日本ネットワークセキュリティ協会が2018年1月1日~12月31日にニュースサイトといったメディアで報道された個人情報漏えいに関するインシデントの記事や、組織がウェブサイトで公表したセキュリティインシデント関連の謝罪文などを対象に分析した調査報告(「2018年情報セキュリティインシデントに関する調査報告書【速報版】」)があります。
ここでは誤操作といったヒューマンエラーによる情報漏えい事案は443件で、1件あたり13,334人の個人情報漏えいがあったことが報告されているのです。
サイバー攻撃だけでなく、リスクはあらゆるところに存在するという考え方を持つ必要があるといえます。
関連の記事もご用意しております。
▼「サーバー」と「クラウド」の違いを徹底解説! 自社サーバー、レンタルサーバー、クラウドサーバーなどの基本も紹介
アカウントの不正利用
ウイルス感染やサイバー攻撃が原因で、クラウドサーバーからIDやパスワードなどが漏えいし、不正にアクセスされる恐れもあります。
複数のアプリケーションで同じパスワードを使い回し、もし、ID・パスワードが漏えいした場合、組織の情報資産すべてがリスクにさらされてしまいます。
不正アクセスは企業に甚大な被害と大きな損失を与えるため、最善の対策を打つことが必要です。下記の記事で不正アクセスの被害事例や手口、対策について解説していますので、セキュリティ対策を講じる上でお役立てください。
▼不正アクセスを防ぐには? 手口や被害事例、対策を徹底解説!
クラウドサーバー・8つのセキュリティ対策方法
クラウドサーバーを安全に利用するには、8つのセキュリティ対策が必要です。それぞれのセキュリティ対策方法について解説します。
1.パスワードの複雑化・強固な認証方式への変更
クラウドサーバーへアクセスするユーザーの認証方式を強化したり、ユーザーを限定したりするのも効果的です。
パスワードの複雑化は「情報セキュリティの3要素」のひとつ「機密性(Confidentiality)」に該当します。
以下の記事では、情報セキュリティにおいて重要となる機密性、完全性、可用性などについて詳しく解説していますので、あわせて参考になさってください。
▼情報セキュリティ3要素のCIAとは?基礎知識から具体的な対策まで徹底解説
パスワードを狙った攻撃に「ブルート・フォース攻撃(総当たり攻撃)」があります。この対策として、複雑なパスワードにすることは解除が困難になり有効です。
また、ワンタイムパスワードや生体認証といった多要素認証(MFA)、SSL証明書などのデジタル証明書の導入もセキュリティを確保する上で重要となります。
2.通信データの暗号化・VPN通信網の構築
クラウドサーバーにデータを保存したりダウンロードをしたりするとき、通信の傍受を防ぐには暗号化が役立ちます。
通信データの暗号化には、VPN通信網の構築が有効ですが、VPNはリスクを考慮した上で構築することが大切です。
下記の記事ではVPNのリスクについて詳しく解説していますので、参考になさってください。
▼VPNに危険性はある?具体的なリスクやセキュリティ対策を解説
3.業務環境の脆弱性の確認
いくらクラウドサーバーのセキュリティを高めても、アプリやOSが脆弱では安全性を確保できません。現状の環境を洗い出し、クラウドサーバーを使用するための推奨環境が整っているか、クラウドサーバーの環境設定を確認することが大切です。
巧妙化するサイバー攻撃から機密データを守るには、多層防御や執務室や建物などの入退室管理も行わなければなりません。社員が外出先や自宅などの社外へ端末を持ちだすときのルールも策定しておきましょう。
4.データは分散保管・所在の明確化
クラウドサーバーを利用するときは、できるだけデータを分散して保管することが大切です。複数箇所に分けて保管しておくことで、トラブルが生じたときにデータ消失のリスクを軽減できます。
また、分散して保管するときは、どこに何のデータを保管しているのか、保管場所を記録しておくことが大切です。適切なデータ管理により、漏えいや消失などのリスクを抑えることができます。
5.定期的なバックアップ
クラウドサーバーを保管目的で利用するにしても、万が一に備えてクラウドサーバー内のデータのバックアップをとっておくことが重要です。バックアップを定期的にとっておくことで、データ消失のトラブルにも迅速に対処できます。
ただし、バックアップの頻度が多いと管理者の負担も重くなってしまいます。そこで、バックアップを自動化できるツールの利用をおすすめします。
ファイルサーバーのクラウド移行も含め、自動で遠隔地バックアップを実現するAzureクラウドファイルサーバーの導入支援をテクバンでは行っております。詳しくは下記をご確認ください。
Microsoft Azureクラウドファイルサーバー導入支援サービス
クラウドサーバーを構築する手順について解説した記事をご用意しております。ぜひご参考になさってください。
▼クラウドサーバーの構築手順とは? 4つのステップとポイントを解説!
6.アクセスログの管理
企業の情報セキュリティ対策において、アクセスログや執務室への入退室履歴など「ログ管理」は重要です。これは「情報セキュリティの3要素」のひとつ「完全性」の準拠につながります。
適切なログ管理により、情報漏えいや不正通信にも迅速な対応が可能です。アクセスログの管理には、ツールや専門のログ管理システムなどを活用すると便利です。これらにより、誰がいつアクセスして、どのような情報を閲覧、ダウンロードしたのか、適切に把握しておきましょう。
ログ管理も自動化できるZscalerについてご紹介した記事をご用意しております。ぜひご参考になさってください。
▼Zscalerとは? クラウド時代に必須のセキュリティ対策とゼロトラストの関係を解説
7.情報セキュリティポリシーの明確化
企業がどのようにデータを扱うのか、情報の機密性や完全性、可用性を維持するために必要な規定や行動指針をまとめた「情報セキュリティポリシー」を定めましょう。
情報セキュリティポリシーは「情報セキュリティの3要素」を維持するために必要な企業や組織の行動指針をまとめたものです。策定したポリシーをもとに、組織におけるサイバーセキュリティを適切に運用・管理することが求められます。
8.クラウドサーバー運用体制の構築
クラウドサーバーのセキュリティ対策は、サービス提供事業者が行いますが、任せっぱなしではいけません。知識を持つ社員を集めて、サーバーの運用体制を構築することが大切です。
またクラウドサーバーを利用する社員一人ひとりのリテラシーを高める教育もセキュリティ対策につながります。ログイン方法やアクセスする端末の持ち出しルールなどを周知してください。
サーバー運用に関する記事をご用意しております。ぜひご覧ください。
▼サーバー運用の業務とは? 内容や管理/保守との違い、効率化の方法を紹介
クラウドサーバーを選ぶ4つのポイント
クラウドサーバーは様々なデータを保管します。安全に利用するためにクラウドサーバーの選び方について解説します。
関連の資料もご用意しております。ダウンロードの上、ぜひご活用ください。
失敗しないパブリッククラウドの選び方。AWS/Azure/OCIの3つを徹底比較
ポイント1.セキュリティ認証
クラウドサーバーを利用するときは、セキュリティ認証を受けているサービスを選ぶことも重要です。ここでは認証制度と取得している事業者について解説します。
認証制度 | 対象 | 認証形態 | 取得している事業者 |
情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)適合性評価制度 | 全世界 | 第三者認証 | アマゾン、マイクロソフト、グーグル、セールスフォース、富士通など |
CSマーク | 日本 | 自主監査可 | 東日本電信電話、セールスフォース、電通国際情報サービスなど |
CSA STAR認証(CSA Security) | 全世界(米国) | 内部監査可 | アマゾンウェブサービスジャパン、トレンドマイクロ、さくら情報システムなど |
FedRAMP | 米国 | 第三者認証 | クラウドフレア、PTCクラウド、ウォークミーなど |
SOC2(SOC2+) | 全世界(米国) | 第三者認証 | アマゾンウェブサービスジャパン、楽天、セールスフォースなど |
上記以外にも、独自のセキュリティ基準を設けている国も多くあります。日本は米国のセキュリティ基準「FedRAMP」をもとに、国独自のセキュリティ基準「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)」を作成しました。「ISMAPクラウドサービスリスト」では、エヌ・ティ・ティや富士通、グーグルなどの大手IT事業者が展開するクラウドサービスを確認できます。
不正アクセスやサイバー攻撃から大切なデータを守るためにも、認証方式を確認して、必要なセキュリティ要件を満たしているクラウドサービスを利用してください。
ポイント2.事業者の信頼性
クラウドサーバーに機密データ、社外秘データを格納する場合、サービス提供事業者の信頼性を確認することは大切です。過去にデータ消失や情報漏えいなどの問題が起きていないかを確認してください。もし、過去に起きた問題を確認できたときは、適切な対処法と二度と発生しないための対策が取られているか、チェックすることが大切です。
他にもISMS認証やクラウドセキュリティ認証などのセキュリティ認証の取得も確認してください。
また事業者だけに頼らず、総務省の「国民のためのサイバーセキュリティサイト」の「企業・組織の対策」を踏まえた利用側のセキュリティ対策も重要です。
ポイント3.自社環境との相性
クラウドサーバーはサービスによって、対応しているソフトウェアやシステムなどが異なります。費用面で納得しても自社環境と相性が悪ければ、システムの入れ替えや運用面の見直しなどコストがかかる可能性も少なくありません。
使い慣れたシステムから環境が変わることに反発する社員もいるかもしれません。そのため、現状の環境で導入できるのか、確認することがポイントです。
ポイント4.サポート体制
サービス提供事業者のサポート体制も確認しましょう。アクセスができなくなったり、データが消失したりした場合、すぐに連絡がとれる窓口があるか、突然のトラブルにも対応してもらえるのか、確認してください。
社内にIT関連の知識を持つ人材がいないときは、導入段階から伴走してサポートしてくれる業者を選ぶことも大切です。
クラウドサーバーのセキュリティ対策をサポート
企業のインフラをクラウド環境へ移行する際、多くの企業から選ばれているのがMicrosoft Azureです。
テクバンではMicrosoft Azureの導入支援サービスを行っております。
また、オンプレミス環境を生かしつつ、クラウドサーバーへ業務の一部移行を検討しているお客様もサポートしております。ぜひお気軽にご相談ください。
Microsoft Azure導入支援サービス
また、Amazon Web Services(AWS)の導入支援も行っております。クラウドサーバーの利用でインシデントを起こさないためにも、プロが丁寧に対応いたします。
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さらに、テクバンではオンプレミス環境構築やOracle Cloud Infrastructureの導入支援を承っています。
サーバー構築支援
クラウドサーバーはセキュリティ対策が大切
クラウドサーバーのセキュリティ対策には、さまざまな留意点があることを理解いただけたでしょうか。
クラウドサーバーは障害によるデータ消失や機密データ漏えい、アカウントの不正利用などのリスクがあります。サイバー攻撃は年々巧妙化しており、日々の管理・運用が欠かせません。
サービスのセキュリティ対策だけに頼らず、自社でもデータの分散保管やバックアップ、ポリシーの策定などセキュリティ対策に努めることも大切です。
まず、利用者としてセキュリティ対策について十分理解し、自社のクラウドセキュリティガイドラインに従って運用する必要があります。外部からの侵入を防止するために、適切なアクセス権限の付与や脆弱性の診断が重要です。
また、データの暗号化や定期的なデータバックアップ、ソフトウェア更新の実施は、情報漏洩を防止し、災害時には迅速な復元を可能にします。
さらに、物理的なセキュリティも考慮し、信頼できるデータセンターやサービスプロバイダーを選定することが重要です。
そして、最新のマルウェア対策やアクセスログの保存を徹底し、社内外からの脅威に対処するために、専門家のアドバイスやセキュリティソリューションの利用も、検討したほうがよいでしょう。
テクバンでは、前章でご紹介した製品によるサポートを、導入から運用まで承ります。セキュリティを強化しながら、安全なクラウド移行をお考えでしたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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