「サーバー」と「クラウド」、その他関連するサーバー運用に関する用語は、微妙に異なる意味、または混同した意味として使われており、実際のビジネスの現場においては混乱の元になることもあるようです。
一方、同一の企業内で用いる分には、それぞれ状況や環境を表す表現としてすんなりと通じるケースも多いでしょう。
本記事では、サーバーやクラウドが示すものを改めて確認したいというニーズに向けて、それぞれの利用シーンや活用シーンから、具体的な違いを解説しています。
「サーバー」「クラウド」それぞれの定義の違いと活用時のメリット
「サーバー」と「クラウド」という言葉自体は、そもそも同列の相反するものを指す言葉ではなく、それぞれ違った観点の見方による呼称です。
そのため、言葉本来の意味で考えると、「クラウド上のサーバー」であったり、「クラウドではなくオンプレミスのサーバー」であったり、あるいは「クラウド上にあるけれどサーバーではなくネットワーク」であったりなど多様な状況が有り得ます。
ただし、実際のビジネスの現場やITの現場においては、本来のそれぞれの言葉の意味よりも少し狭義の使われ方で、特定の機器や利用の仕方を限定して指す場合があります。
こういった実態も踏まえつつ、それぞれの定義の違いや活用時のメリットを網羅的に解説します。
「サーバー」の定義と活用メリット
コンピューター関連、IT関連でいわれる「サーバー」とは、HTTP、FTP、ファイル保存など多様な種類のサービスなど、何らかのサービスを提供するコンピューターを意味します。
例えば、HTTPサーバーは、HTTPサービスが動作しているコンピューターを指します。相対する「クライアントPC」がサーバーへアクセスしてHTTPリクエストを行い、このリクエストに応答したサーバーがHTTPサービスをクライアントPCへ提供して、Webサイトの表示が可能となるといった仕組みです。
大前提として、本来の意味の「サーバー」はサービスを提供するコンピューターのことです。しかし、一般にビジネスの現場で「サーバーにアクセスする」といった場合、現場の状況や業務の内容に応じて、言葉の意味が自然と狭められます。
例えばファイル共有サーバーのことに限定していたり、データベースサーバーとして自然にメンバー間で通じていたり、あるいは「社内のPCではなくクラウド上の共有サーバーへアクセス」といった意味で使われていたりなどがあります。
様々なケースを踏まえた上で、共通する「サーバー活用時のメリット」としては以下のような点が挙げられます。
- 従業員が個々に手元で使用しているPCではなく、サーバーは基本的に他の場所(社内の他の場所や、社外の場合などあり)で常時ネットワークにつながった状態で稼働しているため、いつでも好きなときにアクセスしてデータを取り出したり、プログラムを動作させたりできる
- サーバーは個々のPCと比較して高性能、高耐久性を持つコンピューターであり、同時に複数のアクセス負荷にも対応できる
- 誰がデータ閲覧できるのか、誰をプログラムやサービスの実行ができるようにするかといった、細かな使用権限分けをサーバー側で設定できる
「クラウド」の定義と活用メリット
「クラウド」は「クラウドコンピューティング」という言葉の略語です。本来の意味としてはインターネット上で動作・提供されているプログラムやサービスに、利用者が手元の端末からインターネットを介してアクセスし、利用するという仕組みそのものを指す言葉です。
クラウドの仕組みで提供されているサービスのことは、「クラウドサービス」「クラウド型サービス」、あるいはさらに細分化してSaaS、PaaSなどと称します。
ただし、実際のビジネスの現場において、単に「クラウド」といった場合には自社が利用しているクラウドサービス上の共有ドライブのことを指したり、いつも業務で使用しているクラウドサービス内のプログラムのことを指したりといったことが多くあります。
様々なケースを踏まえた上で、共通する「クラウド活用時のメリット」としては以下のような点が挙げられます。
- クラウドは社内の環境下ではなく、インターネット上で稼働しているため、利用者はインターネット接続環境がある場所(スマホなどからの無線接続含む)であれば、どこからでもクラウドを利用できる
- 多くの場合、利用者はPC上のインターネットブラウザを使って、まるで自分のPCにインストールされているソフトウェアを使っているのと同じ感覚で、簡単にクラウドを利用できる
- クラウドは基本的にサービス提供事業者が提供しているため、細かな管理やメンテナンスなどは主に事業者に任せられる。利用者は可能な範囲での設定調整や利用のみを行う
「ストレージ」の定義と活用メリット
コンピューター関連、IT関連でいわれる「ストレージ」とは、電子データを格納・保存しておく目的で運用しているコンピューターのことを指します。
例えば従業員個々のPC内でも電子データの保存は可能ですが、それらのPCでは一般的にデータ保存以外の作業も随時行われ、データ保存専用のコンピューターというわけではないためストレージと呼ぶことはありません。
ストレージは、前述のクラウドサービスで用意する場合もあれば、社内にストレージ用途専用のサーバー(ファイルサーバー)を設け、それを活用する場合もあります。
様々なケースを踏まえた上で、共通する「ストレージ活用時のメリット」としては以下のような点が挙げられます。
- 重要なデータ、共有データを個々のPCに分散せず、1か所に集約しておける
- 管理側としてもデータの一元管理が容易となる
クラウドサービスの3つの種類
クラウドの仕組みで提供されるサービス、つまりクラウドサービスは、事業者から提供されるサービスの種類(レベル)によって以下の3つに分けられます。
SaaS
SaaSは「Software as a Service」の略称で、アプリケーションレベルのサービスがクラウドで提供されています。
例えば「Gmail」ではクラウドでメールアプリケーションが動作し、「Chatwork」ではチャットコミュニケーションツールが、「Zoom」ではビデオ会議アプリケーションが動作しているという具合です。
SaaSとして各事業者から提供されているアプリケーションやサービスの種類は多種多様であり、セキュリティソフト、画像編集ソフト、会計ソフト、SFA(営業支援システム)、CRM(顧客関係管理)など、従来のインストール型ソフトウェアとして存在していた、ありとあらゆる機能・サービスが提供されているといえます。
PaaS
PaaSは「Platform as a Service」の略称であり、クラウドでプラットフォームレベルの機能が提供されています。
IT分野におけるプラットフォームとは、主にシステムを構築する際の基盤となる開発環境や、ミドルウェア、データベースやライブラリなどのことを指します。
利用者はクラウド上で動作するこれらのプラットフォームへインターネット経由でアクセスし、その基盤上でシステムの構築やアプリケーション開発を自由に行えます。
IaaS
IaaSは「Infrastructure as a Service」の略称であり、クラウドでインフラレベルの機能が提供されています。
IT分野におけるインフラ(ITインフラ)とは、前述のプラットフォームのさらに基盤となる部分、プラットフォームを動作させるためのサーバーやネットワーク、OSなどのことを指します。
本来、サーバーやネットワークというものはコンピューターやルーター、スイッチングHUBやLANケーブルといったように物理的な構成で構築されるものですが、IaaSにおいては多くの場合、これらの構成をすべてソフトウェア上で仮想的に実現しています。
利用者はIaaSで提供されている仮想サーバーや仮想ネットワークにインターネット経由でアクセスし、そのインフラ基盤の上で自由にプラットフォーム構築やアプリケーション開発を行います。
開発用途だけでなく、例えば社内の既存ネットワークの一部をIaaSの仮想ネットワークへ置き換えて、社内ネットワークの可用性向上、冗長化を果たすことも可能です。
ホスティングサーバーなど仕組みや観点の違い、活用方法を解説
ここまで、主にサーバーとクラウドについて基本的な解釈やそれぞれのメリットを解説しましたが、サーバーやクラウドという言葉以外にも、関連して様々な見方による呼び分け方が存在します。
以下で、代表的な呼称についてそれぞれを解説します。
自社サーバー
自社サーバーは、自社環境内で構築しているサーバー全般を指します。
自社サーバーで動作させる機能(サービス)は目的に応じて様々です。例えば自社内でメールサーバーを立てた場合には、外部のネットワークを経由することなく社内環境のみで完結する、社内専用のセキュアなメールのやりとりの仕組みを実現できます。
ファイルサーバー(ストレージ)を自社サーバーとして構築した場合には、社内でのセキュアなファイル共有の仕組みを実現します。
ホスティングサーバー
ホスティングサーバーとは、自社構築ではなく外部の事業者が提供しているサーバーを、借り受けて運用する仕組み、あるいはそのサーバー自体のことを指す言葉です。レンタルサーバーとも言い換えられます。
ホスティングサーバーを活用して、ファイル共有サーバーやデータベースサーバー、HTTPサーバーとして運用した場合、サーバーは社内環境ではなく社外に存在するため、必要に応じて外部への共有を行えます。
社外の環境下でサーバーを設置したい場合、クラウドサービスが台頭するまえの時代では、ホスティングという選択肢が主流でした。
クラウドサーバー
こちらは本記事の冒頭から解説している「クラウド」の仕組みを利用して、クラウド上で運用するサーバー全般のことを指す言葉です。
サーバーの用途は提供事業者のサービスの種類や、利用者の使い方によって様々となるため、例えばクラウドサーバーをストレージとして活用した場合には、「クラウドのストレージサーバー」ということになります。
代表的な法人向けクラウドサーバー
派生的な呼称を含め、様々な言葉を理解したところで、再びクラウドの話題へ戻りましょう。
クラウドサービスとして提供されるサーバー、「クラウドサーバー」は、前述のとおり様々な事業者から多様な種類として提供されており、基本料金や月額費用なども選択するサービス構成やプランによって多くの選択肢が用意されています。
ここでは代表的といえる、いくつかのサービスをおすすめとしてピックアップして、特徴となるポイントや主要機能をご紹介します。
Azure Virtual Machines(Microsoft Azure)
「Azure Virtual Machines」は、マイクロソフト社が提供するトータルクラウドサービス「Microsoft Azure」が備える機能のひとつとして提供されている、IaaSタイプのクラウドサーバー、および仮想マシンです。
仮想マシンとは、ひとつのサーバー内で仮想的に構成された、独立したコンピューター環境のことを指します。
仮想マシンは、例えばひとつのサーバーの中で何個(何台)でも、大元のサーバーのスペックが許すかぎり存在でき、それぞれの仮想マシンが独立した個別のCPU、メモリ、ストレージをもって動作しています。
仮想マシンのもつCPUやメモリとは、つまり大元のサーバーがもつCPUやメモリの機能を仮想的に個々のものとして振り分けたものとなります。
サービス利用者は「Azure Virtual Machines」を利用して、その環境のうえに柔軟にシステムを構築し構成を変更・カスタマイズしながら、開発したプログラムの実行を行うことが可能です。
- Microsoft Azure の仮想マシン以外の主な機能・サービス
AI機械学習、DevOps、バーチャルデスクトップ、コンピューティング、ストレージ、セキュリティ、データベース、ネットワーク、ブロックチェーンなど
テクバンのMicrosoft Azure構築支援
OCI Compute(Oracle Cloud Infrastructure)
「OCI Compute」は、オラクル社が提供するクラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure」が備える機能のひとつとして利用できる、IaaSタイプのクラウドサーバー、および仮想マシンです。
「OCI Compute」では、「インスタンス」と呼ばれる種類の仮想マシンを作成できることが特徴的です。通常のCPUやメモリ構成などを選択して、他の仮想マシンとリソースをシェアしながら作成する仮想マシンの他、インスタンスとして大元のサーバーをユーザーが専有し、リソースを最大限に活用した上で自在な仮想マシン構築を実現できます。
- Oracle Cloud Infrastructureの仮想マシン以外の主な機能・サービス
AI(人工知能)機械学習、開発者サービス、分析、BI(ビジネス・インテリジェンス)、ビッグデータ/データレイク、コンピューティング、データベース、ネットワーク、ストレージ、セキュリティ など
テクバンのOCI(Oracle Cloud Infrastructure)構築支援
Compute Engine(Google Cloud)
「Compute Engine」は、グーグル社が提供しているトータルクラウドサービス「Google Cloud」が備える機能のひとつとして利用できるIaaSタイプのクラウドサーバー、および仮想マシンです。
「Compute Engine」の特徴としては、他社サービスと比較しても劣らない、構築の自由度・柔軟性の高さが挙げられます。
仮想マシンを作成するにあたって、OSやミドルウェアを自由に選択可能で、自社の要件に応じた柔軟なサーバー構築が可能です。LinuxのVMオプションも豊富に用意され、RightScaleやOpsCodeといった外部のSaaSとも簡単に連携できます。
- Google Cloudの仮想マシン以外の主な機能・サービス
AI機械学習、AIインフラストラクチャ、音声翻訳、ストレージ、データベース、SQL、ライブラリ、API管理、コンピューティング、コンテナなど
Amazon EC2(Amazon Web Service)
「Amazon EC2」は、アマゾン社の統合型クラウドサービス「Amazon Web Service」の一環として提供されている仮想サーバーサービスです。
仮想サーバーと同じくAmazon Web Serviceのインフラ上で動作する仮想ファイアウォールや高度なログイン管理機能を利用して、高いセキュリティを保った開発環境がクラウド上で実現できます。
- Amazon Web Serviceの仮想マシン以外の主な機能・サービス
コンピューティング、ストレージ、データベース、DNS、運用監視、ネットワーク、セキュリティ、ブロックチェーン、IoT、量子テクノロジーなど
テクバンのAmazon Web Services構築支援
「サーバー」と「クラウド」それぞれ適切に活用しよう
本記事では、「サーバー」と「クラウド」という言葉のそもそもの意味合いから、ビジネスの現場における使われ方、それぞれの活用シーンなどをまとめて解説しました。
自社サーバーの構築や、オンプレミスの自社サーバーからクラウドへの移行(リプレイス)など、サーバーの運用や構築に関する対応は、事前に収集しておくべき情報や把握しておくべき知識の種類は多くなっています。このため、自社に最適なサービス選びなども含め、担当者の作業工程は膨大となりがちです。
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テクバンのオンプレミスサーバー構築支援
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