AWS(Amazon Web services)やMicrosoft Azureを台頭に、様々なクラウドサーバーが提供されるようになり、サーバーを自社構築のサーバー「オンプレミス型」からクラウドサーバーを導入する「クラウド型」に移行し、クラウド構築を行う組織が増えています。
本記事では、クラウドサーバーの構築手順について、クラウドサーバー導入のメリットやデメリットの比較、構築における注意点を踏まえながら解説します。自社サーバーシステムをクラウド化する際のご参考にお役立てください。
クラウドサーバー構築とは? PaaSとIaaSの違い
クラウドサーバーとは、インターネットを介してアクセス可能な、仮想的なサーバーのことを指します。AWSやMicrosoft Azureといったクラウドサーバーなどが有名で、法人に限らず個人利用する方もいます。インターネットを経由して接続するため、社内にサーバー機器を用意する必要がありません。
そのためオンライン環境があれば社外からでもアクセスできる点が、従来のオンプレミスサーバーとは異なるメリットといえるでしょう。クラウドサーバーは用途に応じて「PaaS(パース)」と「IaaS(イアース)」の2種類に分けられます。ここではそれぞれの違いについて簡単に解説します。クラウドとオンプレミスの違いについて理解したい場合は、以下のブログ記事も併せて参考にしてください。
▼オンプレミスとクラウドって何が違うの? 移行の特徴も解説
PaaS
PaaSは「Platform as a Service」の略で、クラウド環境上でソフトウェアやアプリケーション開発に必要なプラットフォームを提供するサービスです。主に開発者を対象としており、クラウド上でのソフトウェア・アプリケーション開発を支援します。
PaaSは、開発言語やフレームワーク、データベース、ウェブサーバーなどの開発に必要なツールと環境を提供してくれるため、開発者はインフラ構築の工数を抑えながらアプリケーション開発に専念できるというメリットがあります。
IaaS
IaaSは「Infrastructure as a Service」の略で、サーバーの構成要素であるOS、CPU、ストレージ、メモリなどを自由に構築できるサービスです。利用者は自身の目的に合わせて必要なリソースを選択し、仮想的にインフラ構築を行うことができます。IaaSの特長は、柔軟性と汎用性の高さです。利用者は自由にリソースを構成することができるため、異なるニーズや要件に対応するためのカスタマイズが可能です。
また、必要に応じてスケールアップやスケールダウンが容易であり、需要の変動に迅速に対応することができます。
クラウドサーバー構築の4つのステップ
ソフトウェア開発や業務システム利用といった用途が限定的な活用方法ならPaaSでも対応できますが、オンプレミス(自社構築)の物理サーバーをまるごとクラウド化するならIaaSの契約が必要です。多くの企業が、現状のオンプレミスサーバーをクラウドサーバーに移行するケースがほとんどであることを踏まえ、ここではIaaS型のクラウドサーバーの構築手順を解説します。
ネットワーク構成図の作成
最初のステップは、クラウドサーバーのネットワーク構成図を作成することです。サーバーの利用用途に応じて、最適なネットワーク構成図を作成します。これは、どのようなネットワーク要素(ネットワークセグメント、サブネット、セキュリティグループなど)が必要かを把握するために行います。サーバー本体の台数だけでなく、サーバーに接続する端末の種類や台数、やり取りする情報の種類などについても反映しておきましょう。
必要なリソースの洗い出し
必要となるサーバーのリソースを見積もるため、クラウドサーバーに必要なリソースを洗い出します。これには、ネットワーク構成図に盛り込んだ使い方や接続端末の台数に対応するためのCPU、メモリ、ストレージ容量などの物理的なリソースの決定や、オペレーティングシステム(OS)やデータベースなどのソフトウェアの選択が含まれます。このタイミングでクラウドサーバーの導入や維持に必要なコストも具体的になるので、プロジェクトの要件や予算に基づいて、十分なリソースを正確に特定しましょう。
リソースの作成と設定
洗い出したリソース計画に従って、クラウドプロバイダーの管理コンソールやAPIを使用して作成し、必要な設定を行います。これには、仮想マシンの作成、ネットワーク構成の設定、ストレージの割り当て、セキュリティグループの設定などが含まれます。各プロバイダーには独自の手順やインターフェースがあるため、ドキュメントやガイドラインに従って設定を行いましょう。
サーバーを構築する
選択したOSやアプリケーションのインストール、必要なパッケージや設定の実施、セキュリティポリシーやアクセス権の設定などが完了したら、サーバーにログインして起動します。管理画面でサーバーの管理状況をチェックして問題なく稼働していれば、クラウドサーバーの構築は完了です。
クラウドサーバーを導入するメリット
ここではクラウドサーバーを導入するメリットについて解説をしていきます。
主にメリットとしては
- 初期費用・ランニングコストの削減
- リソースの増減による安定運用
- BCP対策に効果的
この3つがメリットとして挙げられます。
初期費用・ランニングコストの削減
従来のサーバー構築では、新たな設備の導入費用が企業にとって負担であり、運用やメンテナンスにもコストがかかりました。しかし、クラウドサーバーではハードウェアの調達など物理的な設備の用意が不要であり、導入費用が削減できます。また、サービス提供者が稼働状態で提供するため、利用者は迅速に利用できるのも特長でしょう。さらに、保守運用にかかる手間やコストもクラウドサーバーではサービス提供者が担当するため、運用に置けるコスト・人件費といったコストの削減にもつながります。
リソースの増減による安定運用
オンプレミスの物理サーバーやレンタルサーバーは、アクセス集中時にサーバーダウンのリスクがあります。クラウドサーバーでは、アクセス負荷に合わせてリソースの増減が自由に行えるため、最大負荷時にも柔軟に対応できます。管理画面からの設定変更で、手軽に容量を追加できるため、契約変更の手間もありません。また、クラウドサーバーの場合、保守運用を担当するのはサービス事業者のため運用リソースを割かなくてよいというメリットもあります。
BCP対策に効果的
サーバーに保存されるデータは企業にとって重要な情報資産ですが、オンプレミスの物理サーバーは人為的ミスや物理的障害によるデータ紛失の恐れがあります。災害による長期間のサーバー停止も、事業継続性に大きな影響を及ぼすため、近年対策を求められています。
この点パブリッククラウドは仮想マシンとストレージを別々に管理したり、地理的に離れた複数拠点でサーバーを分散管理したりするのが特長です。ストレージが被害に遭ってもデータはバックアップを利用でき、仮想マシンを提供する物理サーバーに被害があっても仮想マシンを再起動すれば簡単に復旧可能です。高い安全性が確保されているため、BCP対策の観点でも有利です。
クラウドサーバー導入のデメリット
クラウドサーバーの導入自体にはメリットが多数ありますが、デメリットも存在します。導入には、デメリットもしっかり踏まえて検討することをおすすめします。
クラウドサーバーにおける依存性
クラウドサービスを利用する場合、インターネット接続、もしくは提供元のプロバイダーの環境に依存することになります。そのためプロバイダーの問題や、ネットワークの障害などが発生した場合には、サービスが利用できなくなることがあるため注意が必要です。また、プロバイダーによっては、データの保管期間や削除方法などが制限される場合もあります。このようにプロバイダーのサービス、ネットワークの環境によって大きくパフォーマンスが制限される依存性を抱えているのがデメリットといえるでしょう。
セキュリティの課題
クラウドサービスは、オンプレミスサーバーと同様に、攻撃の対象になり得ます。そのためセキュリティインシデントがゼロになるというわけではない、といえます。例えばプロバイダーが適切なセキュリティ対策を講じていない場合、悪意のある攻撃者によってシステムが侵害される可能性があるでしょう。また、プロバイダー自体がハッキングされる可能性もゼロとはいえません。
クラウドサーバー構築の3つのポイント
クラウドサーバーの構築は、自社のビジネスにおける業績や業務に支障をきたすことにもつながるリスクがあるため細心の注意が必要であるといえます。ここでは、構築において踏まえるべきポイントについていくつか解説をします。
安全性・信頼性の高いサービス提供業者を選ぶ
クラウドサーバー構築でもっとも注意しておきたいのは、「利用するサーバーがセキュリティ対策をきちんと行っているか」という点です。不正アクセスや情報漏えいなどは、企業にとって回避したい事態です。念のため、契約の際には仕様書や契約書の詳細までしっかりと確認することが重要です。またどのようなセキュリティ対策を行っているのか、データの暗号化やシステムの脆弱性対策を行っているかは、しっかりと確認しておきましょう。また、地震や津波などの自然災害への対策も施せば、より安心といえます。
容量やスペックに十分な余力を持ったサーバーを使う
クラウドサーバーを導入する際には、容量やスペックに十分な余力を持ったサーバーを選ぶことが重要です。十分な余力がない場合、パフォーマンスの低下やサービスの停止などの問題が発生する可能性があります。そういった予期せぬトラフィックの増加やアプリケーションの拡張に備えて、サーバーの能力に余裕を持たせることで安定性とパフォーマンスを確保できます。将来的な成長や需要の変動を見越して、スケーラブルなリソースプランを検討しましょう。
場合によっては外注も視野に入れる
クラウドサーバーの導入は、自社のリソースだけで対応することが難しい場合が多々あるといえます。そのため、外部の専門業者やサービスプロバイダーに依頼することも検討すべきです。外注を利用することで、クラウドサーバーの設計、構築、管理、セキュリティ対策などの負担を軽減できます。
また外部の専門家によるサポートや管理サービスを活用することで、効率的かつ専門的なサーバー運用が可能となります。さらに、外部の専門家は最新の技術やベストプラクティスに精通している場合が多く、セキュリティリスクの低減や運用の最適化にも役立ちます。
テクバンのインフラ構築サービス
クラウドサーバーの導入、構築は実績のある支援会社に依頼するのが一番の近道といえます。テクバンでは、ITインフラ構築/運用支援サービスを提供しており、お客様のIT環境を快適にし、情シス部の負担を軽減することを目的とした、3つのサービスを保有しております。それぞれご紹介いたします。
サーバー構築支援
「自社に合ったクラウドサーバーがわからない」「古いオンプレミスサーバーをリプレイスしたい」といったお悩みを抱えている方も多いでしょう。テクバンでは、豊富な実績とノウハウを基に、丁寧な要件定義を実施します。最適なサーバー環境を企画・提案し、導入から運用・保守までまとめてサポートいたします。
ヒアリングを行い、OCI(Oracle Cloud Infrastructure)/Azure/AWS、といった様々なサービスの中から適したサービスをご提案します。
サーバー構築支援について、詳細はこちらから。
また、サーバーのクラウド化に成功し、運用保守業務の大きく削減した事例について、下記資料にて紹介しております。
【事例】サーバーのクラウド化で、更改・保守運用業務を大きく削減。DBとOracleライセンスは継続で有効活用
ネットワーク構築支援
クラウドサーバーの構築だけではなく社内のWi-Fi環境や固定電話のコストパフォーマンスが悪いといった、ネットワーク構築の支援も承っております。クラウド型Wi-Fi環境の構築、ネットワーク機器の一元管理ツール「Cisco Meraki」導入支援、クラウド型電話ソリューション「Cisco Webex Calling」導入支援など、豊富なメニューから情シス部の負担が軽減されるような快適な通信環境の実現をサポートいたします。
ネットワーク構築支援について、詳細はこちらから。
また、通信環境を改善し、ネットワーク運用の負担軽減に成功した事例をご用意しております。こちらも併せてご参考ください。
【事例】最新の通信環境をストレスなく構築。少数体制の情シスが抱えるネットワーク運用課題もサポート力で解決
インフラ運用保守/監視/障害対応(Techvan Remote Center)
リソースが必要なのは、導入だけではありません。導入以上に、運用・監視・障害対応の方がリソースは必要ともいます。テクバンでは、経験豊富なエンジニアがリモートセンターから24時間365日、お客様のシステムを監視・運用する「Techvan Remote Center」によりこの導入後のサポートにおいても支援を行い、情シスに負担が過多している状況を解決いたします。お客様のご要望に沿ったプランを選定できるため、必要な業務のみアウトソーシングし、情シス部が抱えている負担軽減やコア業務に集中できる環境整備といったご支援が可能です。
Techvan Remote Centerについて、詳細はこちらから。
Techvan Remote Centerを導入し、情シス部の負担軽減に成功した事例について、下記よりご参考ください。
【事例】柔軟なメニューで実現できた。24時間365日、有人リモート監視で 情シスの負担軽減
オンプレミス環境とのハイブリット環境構築も対応
BCP対策の一環や、自社で今まで使っていたオンプレミスサーバーとの併用といったハイブリット環境の構築の相談にも対応しております。セキュリティ対策、オンプレミス環境構築後の運用保守も対応し、24時間365日、トラブルが発生しても安心のサポート体制を整えています。また、災害発生時などのBCP対策のサポートも可能です。
オンプレミス環境構築支援サービス
クラウドサーバー構築はプロにおまかせ
クラウドサーバーの構築は、自社で対応しきれない部分が多々あるといえます。そのため、できることならば早い段階から他社からの支援を検討すべきでしょう。他社に委託する際は、メリットとデメリット、サービス内容をしっかりと理解した上で、導入の目的を明確にすることが重要です。
また、状況によってはすべてのサーバーをクラウドにリプレイスするのではなく、ハイブリット環境での構築が望ましい場合もあります。このような判断も、知識と経験が豊富な支援企業であれば、きちんとご提案できるため外注企業の選定を慎重に行い、スムーズな導入を目指しましょう。