多くの企業では、DXの推進や人材不足により業務効率化が重要視されています。さらに日本でも近年、働き方改革による長時間労働の解消や、新型コロナウイルスの感染拡大を機に拡大したリモートワークの普及といった、社会情勢が背景となり業務のアウトソーシングが注目されています。
アウトソーシングの中でも特に市場が拡大しているのがBPO(Business Process Outsourcing:ビジネスプロセスアウトソーシング)です。実は細かくいえば、BPOは通常のアウトソーシングとは依頼範囲などが異なります。
そこで、本記事ではアウトソーシングとBPOの知識や概念、サービス形態の違いなどを紹介いたします。
BPOとアウトソーシングの違いがわからない方や、自社の業務の外部委託を考えている方は、概要を簡単に知ることができる本記事を、ぜひ読み進めてください。
BPOとアウトソーシングの違い
一般的に、法人が自らの業務の一部を外部の専門事業者に依頼することを、広義のBPO(※)としていることも少なくありませんが、BPOとアウトソーシングの主な違いは、サービス形態と目的です。この2つのサービスでは委託対象となる業務の範囲や、委託期間が異なります。
※出所:経済産業省「ビジネス支援サービスの活用」報告書
さらに、業務を委託する目的にも明確な違いがあるため、それぞれのサービスの違いを理解したうえで、自社に最適なサービスを利用する必要があります。
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アウトソーシングサービスとは
アウトソーシンサービスとは、自社の業務を一部切り出して、一時的に外部へ業務委託することを指します。
特定の業務に対し負担が大きく自社では対応しきれない、また知識やリソース不足により対応できる人材の確保が難しいといった理由から、導入することが多いサービスです。
アウトソーシングの目的は、業務の適正化と効率化です。社内では手が回らない、リソースが不足している業務に対し、外部から人材を調達し、担当してもらうことで、業務改善を図る経営手法ともいえます。
作業単位で、実績のある専門的な人材が業務を遂行するため、従来のように自社で人材育成するよりもコストをかけず、簡単に対策をとることが可能です。
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アウトソーシングの特徴
業務規模で改善を行うアウトソーシングサービスには、主に以下の3つのような特徴があります。どのような特徴なのか、それぞれ詳しく解説します。
委託対象の業務は作業ベースが多い
アウトソーシングの委託は、作業単位です。例えば、経理部門の業務をアウトソースするのではなく、経理部門の「書類整理」のみを委託するようなイメージです。
このように負担になっていた単一業務をアウトソース(外注)することで、負担が軽減し、業務効率化が実現します。繁忙期に手が回らない業務だけ、作業ベースで委託することが可能なため、人件費のカットも期待できます。
人手不足の解消が目的
部門のリソース不足を補うために、外部の委託業者のリソースを利用し企業活動に生かします。スキルのある委託業者に委託することで、新しい人材の採用や教育にコストをかけずに効率的な人員の配置が可能です。
単純業務から解放されてできた余剰時間で、本来注力すべきだったコア業務に集中できるようになり、適切な対応をとることができるようになります。
一時的な委託で使われるケースが多い
アウトソーシングは長期的な利用ではなく、一時的な委託で使われることが多いようです。繁忙期で手が回らない業務がある、優先すべき作業があり定常業務が負担になっているというような一時的にリソースが必要な時に最適です。
採用活動や入社手続きの手間をかけずに、コア業務に集中できる環境を整えます。
また、一時的なアウトソーシングでも、自社ではなかなか気づきにくい、非効率なやり方やフローを見直しするきっかけになるかもしれません。
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BPOサービスとは何か
BPOサービスとは、専門性の高い委託業者にノンコア業務を委託するアウトソーシングの一種です。様々な専門特化した業務の委託が可能なため、経営基盤を支えるバックオフィスの幅広いデスクワークを委託することで業務効率化を実現できます。
近年では、自社で運用することが多かった人事、経理、総務、情シスなどの幅広いデスクワーク業務のBPOが増加しています。
アウトソーシングサービスのように単一業務だけを委託しているのではなく、業務設計や効果分析、さらに業務改善などの業務を一括して委託できることから注目が高まっているのです。
また、BPOは経営戦略のひとつとして戦略的に実施され、経営改革を目的とされています。単なる業務改善とは根本的に異なり、業務改善を通して企業の利益追求、課題解決に成果を上げることがBPOの本質です。
テクバンでは、情シス業務支援をはじめとしたBPOサービスを行っております。ぜひご相談ください。
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BPOには3つの特徴がある
経営規模で業務改善を行うBPOには、主に以下の3つのような特徴があります。どのような特徴なのかそれぞれ詳しく解説します。
1.対象となる業務の幅が広い
委託対象が作業単位のように業務の一部ではなく、業務機能単位で委託できるのが特徴です。
たとえば、「人事部の書類整理」という人事部内の一部の作業だけでなく、人事部が行う業務の一連の業務プロセスすべてを委託できます。表面的に負担がかかっている作業の対応だけでなく、業務プロセスの構築や設計といった作業の前後も委託対象となります。
部門で行う業務の総合的なサポートが可能なため、定常業務に圧迫されない業務環境を整え委託側がコア業務へ集中できるようになります。
2.業務改善を通した課題解決が目的
BPOは、企業の経営戦略のひとつとして戦略的に実施されます。
単純に業務単位の委託ではなく、経営戦略や社内の人材リソースなど多角的な視点からアウトソーシングの内容を考え、経営レベルの改革を行います。業務改善により、課題を根本的に解決することでコア業務に集中できる環境が整備され重要事業に注力できるようになります。
その結果、企業の状況に応じた適切な人員配置が可能になり経営のスリム化、企業の生産性向上などを実現できます。
3.継続的な委託に使われるケースが多い
一時的な作業の委託ではなく、継続的に業務を委託するサービスの長期性が特徴です。
長期的に委託することで、委託先に自社の業務に対するノウハウが蓄積されます。委託側で業務が属人化している場合、担当者の入れ替わりや突然の退職により社内にノウハウが蓄積されないという問題が発生します。
しかしBPOにより継続的にアウトソースすることで、自社にない専門知識を取り込み、ノウハウの共有ができます。専門知識を持つ委託先と良好な関係を築き、ノウハウを共有することで企業の事業基盤の強化が可能です。
BPOのメリットはどんな点か?
多くの企業では、売り上げに直結せず、誰にでもできると思われがちな定常業務の多いバックオフィス部門に、人材を投資しないケースが多いようです。
しかし、組織を運営していくうえでバックオフィス部門は必要不可欠な存在のため、業務改善が必要です。
BPOは、経理や人事などのバックオフィス部門の単純なコア業務を専門家に委託することで、人件費削減といった固定費の削減が期待できます。リソース不足に悩む企業のバックオフィス機能を強化し効率化を図る業務改善に最適なサービスなのです。
以下では、経理、人事、総務におけるBPOサービスのメリットをご紹介します。
各部署におけるメリット:IT情報システム
業務範囲が広いIT情報システム部門にBPOを活用するメリットは大変大きく、コスト削減、専門知識や技術の活用、業務効率の向上が挙げられます。
また、人件費や設備費用の削減を目指しながら、専門的なスキルを持つ人材の採用や育成が必要なく、即プロフェッショナルによる業務の質の向上が目指せます。
テクバンではお客様が抱えるIT領域の課題解決のために、「TECHVAN Management Center」サービスを提供しています。
このサービスでは、熟練のコンサルタントがIT環境や業務の現状を分析、問題点を特定して、改善策と優先順位をつけたアウトソーシング計画を立案します。
これにより、課題解決や効率化はもちろんのこと、コスト削減やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進といった経営目標もお客様と共有しつつ、アウトソーシングを実現します。
ご相談後、最短1か月で支援を開始することが可能です。
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各部署におけるメリット:経理
経理では専門特化業務が多いことから、俗人化する傾向が高く負担の大きい部門といえます。BPOではそんな経理部門の税務、保険関連業務や資金管理、社内経費といった専門性の高い業務以外にも、業務対応のための関連部署との連携といった手間のかかる業務も担うことができます。
そのため、BPOを導入しスキルのある専門家に委託した方が担当者の退職や入れ替わりに左右されず、安定した運用が可能です。
専門知識を持つ委託先が代行することで、経理の煩雑な業務が正確かつスピーディーに進みます。業務が可視化され業務改善を行うことで、担当者は財務管理の負担から解放されます。
各部署におけるメリット:人事
人事では、従業員の給与計算や勤怠管理、福利厚生といった重要な手続きを担っています。
専門的な知識が必要なため属人化しやすく、さらに、賞与支給や人事異動がある繁忙期があるため業務の繁閑の差が生じやすい環境が課題です。
BPOを導入することで、業務の繁閑に柔軟に対応した人員配置で対応できるため過剰な投資を防ぎコスト削減へつながります。人事部門のコア業務や企業運営に関わる重要な業務に時間を割けるようになり効率化を実現できます。
各部署におけるメリット:総務
総務部門は、受付やオフィス管理、庶務、契約管理など請け負う業務は多岐にわたります。属人化や人材不足になりやすいにもかかわらず、コスト削減の対象になりやすい部門です。
BPOを導入すると、契約書や納品書の書類管理や、受付、郵便、電話対応などの一次対応を委託できます。委託先が提携業務を代行することで、属人化や人材不足が解消され効率的な運用が可能です。
導入した結果、中長期的に固定費や人件費削減を目指せます。
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BPO導入前の確認ポイント
企業にとってメリットの多いBPOサービス。導入を失敗させないためには、自社に適した委託先の選定が重要となってきます。
しかし、BPO市場が拡大している現在、委託先には多くの選択肢があります。自社の環境に適したサービスなのか、セキュリティ対策が万全か、アウトソースしている業務の情報共有がされるのかなど様々な点が委託先を検討する際に重要になってきます。
以下では、BPOを導入する際に確認すべきポイントを2つ紹介します。どのサービスが自社に適しているのかどうか判断材料としてご参考ください。
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▼BPO事業者選びのポイントを解説! 対象業務と活用メリットは?
委託する業務を定める
BPOは、「自社ではどの業務が負担になっているのか」「どの業務をBPOすることが適切なのか」を見極めることが重要です。
委託先へ業務を丸投げするのではなく、社内の業務内容を整理し、負担になっている業務を洗い出します。
自社の課題を明確にしたうえで、BPO導入により、どのように変化していくのかという観点を重視して、最適なBPOを実施することをおすすめします。
また、社内の業務状況を把握することで、どの分野の委託先が自社の業務環境に合っているのか、判断しやすくなります。
これらの観点からBPOの委託先を検討することでスムーズな導入、より高い導入効果を得られます。
セキュリティリスクの確認
業務をアウトソースすれば委託先は、企業の機密情報、従業員や顧客の個人情報に触れる機会が増加します。委託先は、そうした社内情報を使い業務を行わなければいけないため、少なからず情報漏えいのリスクがあります。しかし、コンプライアンスの順守が重要視されている中で情報漏えいが発生することは、企業にとって致命的なダメージです。
こうしたセキュリティリスクを回避するためにも、委託先の情報管理の方法やセキュリティ対策が万全かどうか、契約前に確認することが大切です。リスク管理が行われているか、セキュリティに関して従業員への教育が徹底されているか、プライバシーマークやISMS認証を取得しているかなどを念入りにチェックしましょう。
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▼BPOを依頼するべき会社の選び方と導入のメリットを解説
BPO導入で企業成長を目指す
BPOはアウトソーシングと異なり、業務プロセスから見つめなおすことで組織規模での業務改善を実現できます。他にもBPOの導入により、人件費や固定費などのコスト削減はもちろん、コア事業にリソースを集中させることができるためコア事業の推進も実現できます。
現在、広がりを見せるBPO市場では多くの企業がサービスを提供していますが、導入を検討する際は入念にリサーチしましょう。有名な委託先のBPOサービスが、すべての企業に最適なサービスとは限りません。
自社の業務に適した専門知識を持っているか、業務環境に取り入れやすいサービス形態かなど、多くの企業から総合的に比較して慎重に選びましょう。