企業が持続的な成長を遂げるためには、コア業務に集中し、競争優位性を確立することが不可欠です。しかし、労働力不足が顕著になって久しい今、全ての業務を自社で完結させることは、もはや現実的ではありません。
本記事では、コア業務とノンコア業務の違いについて詳しく紹介。さらにノンコア業務を外部に委託するBPO(Business Process Outsourcing:ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の活用が、企業の生産性向上と成長にどう貢献するかについて、解説します。
コア業務とは?
コア業務は、企業の心臓部であり、その強化と集中こそが企業の発展につながります。では、コア業務とは一体どのようなものでしょうか。
コア業務は企業の成長と利益拡大に直結
コア業務とは、企業の競争優位性を生み出し、収益に直接貢献する業務のことです。言い換えれば、企業が最も得意とし、最も注力すべき業務といえます。さらに、企業のビジョンやミッションと密接に結びついています。企業が目指す方向性、提供したい価値、そして顧客に届けたいものを実現するために不可欠な業務がコア業務なのです。
コア業務の具体例
コア業務は、企業の種類や規模によって大きく異なりますが、一般的には以下のような業務が挙げられます。
- 製品開発・製造
自社製品の企画、設計、製造など、企業の収益基盤となる商品やサービスを生み出す業務です。自動車メーカーの自動車製造、ソフトウェア会社のソフトウェア開発などが該当します。 - 営業・マーケティング
製品やサービスを顧客に届けるための活動です。顧客のニーズを把握し、効果的な販売戦略の立案、新規顧客の開拓、既存顧客へのフォローアップ、プロモーション活動などが含まれます。 - 研究開発
新しい技術や製品の開発を行い、企業の未来を創出する業務です。製薬会社の医薬品開発、IT企業の新規サービス開発などが該当します。 - サービス提供
顧客へのサービス提供そのものがコア業務となります。
例えば業界別に挙げると、IT業界ではソフトウェア開発、クラウドサービスの提供やシステムインテグレーションが、サービス業では顧客対応、コンサルティングや教育、小売業では商品企画、販売促進、顧客サービスなどです。
ノンコア業務とは?
コア業務が企業の成長をけん引する一方で、ノンコア業務は、コア業務を円滑に進めるための補助的な役割を担っています。では、ノンコア業務とは一体どのようなものでしょうか。
ノンコア業務は利益に直結するわけではない補助的な業務全般
コア業務が企業の心臓部であるとすれば、ノンコア業務は、その心臓部を支える血管のようなものです。コア業務が円滑に遂行されるために不可欠な業務ですが、それ自体が企業の競争優位性を直接生み出すわけではありません。
ルーティンワークが多く、比較的標準化しやすい
コア業務が常に変化し、新しいアイデアや創造性を求められるのに対し、ノンコア業務は比較的ルーティンワークが多く、標準化しやすいという特徴があります。例えば、経理処理や人事手続きなどは、一定のルールに基づいて繰り返し行われる業務であり、マニュアル化やシステム化が容易です。
ノンコア業務の具体例
ノンコア業務は、企業の種類や規模によって異なりますが、一般的には以下のような業務が挙げられます。これらは組織運営にとって必要不可欠ですが、コア業務に比べて、外部に委託しやすいという特徴があります。
- ITサポート
コンピューターシステムの運用、保守、トラブルシューティングなど - 経理・財務
会計処理、決算処理、税務申告など、企業の財務状況を管理する業務 - 人事
採用、給与計算、人事評価など、従業員の管理に関する業務 - 総務
オフィス管理、備品管理、契約管理など、企業の一般的な事務処理 - 物流・倉庫管理
商品の入出庫管理、在庫管理など
コア業務への集中がますます求められる理由
競争が激化し、生産性向上と人材不足が深刻化する現代において、企業はますますコア業務へ集中しなければならなくなっています。考えられる理由を解説します。
競争が激化する企業環境
現代のビジネス環境は、グローバル化やデジタル化の進展により、かつてないほどの競争激化に直面しています。生き残りをかけた戦いといえる環境下で、企業は自社の強みを最大限に活かし、競合他社との差別化を図ることが求められています。
自社の独自性と優位性を強化するコア業務への集中により、競争力を高めることが必須なのです。
生産性向上の追求
生産性の向上は、企業の持続的な成長に不可欠です。限られた資源の中で最大限の成果を上げるためには、全ての業務において効率性が求められます。つまり、付加価値の高いコア業務にリソースを集中させることは、生産性向上に直結することなのです。
コア業務に集中するためのポイント
コア業務に集中するためには、どのようなことを行うべきでしょうか。具体的に解説します。
業務の洗い出しと可視化が必要
コア業務に集中するためには、まず自社の全ての業務を洗い出し、可視化することが重要です。
全ての業務を洗い出し、それぞれがどの程度の時間やリソースを消費しているのかを可視化することで、どの業務がコア業務で、どの業務がノンコア業務なのかを明確にできます。
コア業務とノンコア業務を切り分ける
業務を洗い出し、可視化したら、コア業務とノンコア業務を明確に切り分ける必要があります。
コア業務は、企業の競争優位性を生み出し、収益に直結する業務です。
一方、ノンコア業務は、コア業務をサポートする補助的な業務です。この切り分けは、企業の将来的な成長を考えた上で、客観的に行うことが重要です。
ノンコア業務の効率化がカギ
コア業務に集中するには、ノンコア業務の効率化が早道となります。ノンコア業務を効率化することで、コア業務に集中できる時間とリソースを確保できるからです。
例えば、RPA(Robotic Process Automation:ロボティックプロセスオートメーション)の導入、アウトソーシング、業務のマニュアル化など、様々な手法により、ノンコア業務の効率化を図ることができます。
業務の洗い出しと可視化する方法
では、業務の洗い出しと可視化を通じて、どのように業務効率化を実現できるのか、その方法をステップごとにご紹介します。
全業務をリストアップする
業務の洗い出しは、コア業務に集中するための第一歩です。まずは、自社の全ての部門の業務内容を徹底的に把握しましょう。
各部署の担当者にヒアリングを行い、どんな業務を行っているのか、それはどれくらいの時間がかかっているのかなどを、具体的に聞き出すことが重要です。
この際、小さな業務であっても漏れなくリストアップしましょう。
業務を可視化する
リストアップした業務をただ羅列するだけでは、全体像を把握することはできません。
そこで、業務フロー図やプロセスマップを作成し、業務の流れを可視化しましょう。これにより、各業務間の関係性や、無駄な工程などが明確になり、業務改善のヒントを得ることができます。
コア業務とノンコア業務を切り分ける
コア業務とノンコア業務を明確に分けることは、企業の成長戦略を立てる上で非常に重要です。では、どのような基準で切り分ければ良いのでしょうか。
切り分けの基準
切り分けの基準例をご紹介します。これらの基準を総合的に判断し、自社の状況に合わせて、コア業務とノンコア業務を分類していくことが大切です。
- 収益への貢献度
直接的な収益につながる業務かどうか - 競争優位性
競合他社との差別化につながる、独自の強みを活かせる業務かどうか - 顧客との接点
顧客との直接的な関係性を持つ業務かどうか - 将来性
将来的に企業の成長を牽引する可能性がある業務かどうか - 代替可能性
外部委託や自動化が難しい、自社でしかできない業務かどうか
切り分け事例
例えば、製造業であれば、製品の設計・開発や製造がコア業務、経理や人事などはノンコア業務に該当する可能性があります。IT企業では、ソフトウェア開発やシステム設計がコア業務、ヘルプデスクやネットワーク管理がノンコア業務に該当するケースが多いでしょう。
【IT企業のケース】
業務内容 | 分類 | 理由 |
ソフトウェア開発 | コア業務 | 競争優位性の源泉となる |
システム設計 | コア業務 | 顧客への価値提供に直結する |
ヘルプデスク | ノンコア業務 | 社内サポートは重要だが、直接的な収益にはつながらない |
ネットワーク管理 | ノンコア業務 | 業務を円滑に進めるための基盤ではあるが、競争優位性にはつながらない |
ノンコア業務を効率化するポイント
コア業務とノンコア業務の切り分け後は、ノンコア業務をいかに効率化、省力化するかが重要です。
ノンコア業務を効率化するポイントは、業務フローの最適化、自動化ツールの活用、外部リソースの活用という3つのアプローチが考えられます。
プロセスの最適化:業務フローの見直しと改善
ノンコア業務を効率化するためには、まず業務フローを徹底的に見直すことが重要です。
- 無駄な工程の洗い出し
同じ作業が繰り返されている、承認プロセスが複雑になっているなど、無駄な工程がないかチェックする - ボトルネックの特定
業務が滞りがちな部分、つまりボトルネックとなる工程を特定する - 標準化
同じような作業は標準化することで、作業時間を短縮し、ミスの削減が可能
自動化ツールの活用
ルーティンワークが多いノンコア業務は、RPAやAI(人工知能)といった自動化ツールの活用により、大幅に効率化できます。
例えば、データ入力やレポート作成といった単純作業を自動化することで、人的ミスを減らし、作業時間の短縮につながります。AIは、より高度な業務、例えば顧客対応の自動化やデータ分析などにも活用できるでしょう。
外部リソースの活用
ノンコア業務を外部に委託するのも有効な手段です。
例えば、業務委託や人材派遣、BPOなどの活用が考えられます。
BPO活用のコツ
本記事ではノンコア業務を効率化する手段として、外部リソース活用の選択肢のうち、BPOについて解説します。
BPOとは
BPOとは、経理や人事などの業務を専門企業に委託するサービスです。自社で雇用するコストを削減し、専門的な知識や経験を持つ人材によるサービスを受けることができます。
BPOのメリット
BPOには、さまざまなメリットがあります。
- コスト削減
従来、自社で人材を雇用し、オフィスを維持しなければならない分のコストを削減できます。専門企業はスケールメリットを活かして、より低コストでサービスを提供していること多いのです。 - 専門性の活用
専門企業は、特定の業務に特化しており、高度な知識や経験を持っています。そのため、自社で対応が難しい業務を効率的に処理できます。 - 柔軟な対応
業務量やニーズの変化に柔軟に対応できます。繁忙期には人員を増やし、閑散期には人員を減らすなど、状況に合わせて対応可能です。 - スピードアップ
専門企業は、すでに多くの企業に対して同様のサービスを提供しているためノウハウも豊富です。
依頼前に自社で業務の洗い出しや仕分けをすることなく、迅速にアウトソーシングを開始できるノウハウを持つ企業もあります。テクバンではこういったノウハウと事例が豊富で、多忙な現場を支援する「TECHVAN Management Center」サービスを提供しています。詳しくは次項でご紹介いたします。
さらにBPOについて詳しい記事をご用意しております。ぜひご確認ください。
▼BPOサービス選びのポイントを解説! 対象業務と活用メリットは?
BPO活用のコツ
BPOを導入する際は、経営戦略として、企業のリソースや財務環境などの観点から考慮する必要があります。そのため、コンサルタントによる経営視点のアドバイスやサポートは、BPOにおいて重要といえます。
テクバンでは、特に情報システム部門が抱える課題解決のコンサルタントを行う「TECHVAN Management Center」サービスを提供しています。
本サービスでは、経験豊富なコンサルタントがIT情報システム部門の現状から課題を抽出し、優先順位を見極めたアウトソーシングの構想を策定。課題の解決とともに、部門コスト削減やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進など経営視点のゴールをお客様と共有しながら、アウトソーシングを実現させます。
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コア業務への集中でさらなる企業成長を
本記事では、企業の成長に不可欠な「コア業務」と、その周辺を支える「ノンコア業務」の違いを解説しました。コア業務に集中することで、企業は競争優位性を確立し、持続的な成長を実現できるはずです。
一方でノンコア業務を効率化するためには、業務の洗い出しと可視化、そしてRPAやAIといった自動化ツールの導入、BPOなどの外部リソースの活用が効果的です。特に、BPOは、専門的な知識や経験を持つ外部企業に業務を委託することで、コスト削減や専門性の確保を実現できるでしょう。
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