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2024.09.09

業務標準化の目的とメリットとは? 進め方の実践フレームワークも解説

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目次

企業の競争力を強化するうえで、業務の標準化は欠かせない要素となっています。
業務標準化とは、特定の業務を一貫した手順で行うようマニュアル化し、効率的、かつ品質の高い成果を維持するための取り組みです。

そこで本記事は、業務標準化の目的やメリット、実践ステップとフレームワークについて解説します。業務の効率化や生産性向上、そして業務品質維持のため、参考になさってください。

業務標準化の目的と重要性

企業や組織のリソースを最大化するために、業務標準化は重要です。「業務標準化」とは何か、そして目的や取り組みの背景などについて解説します。

業務標準化とは何か

業務標準化とは、業務プロセス、手続きの一貫性を持たせるための方針や手段を指します。
具体的には、誰もが同じ手順で業務を遂行できるように体制を整えることです。
例えば、作業手順書やマニュアルを作成して、従業員間の作業のばらつきを抑え、業務レベルの均一性を保つことが業務標準化です。

業務標準化の取り組みの歴史

業務標準化の歴史は、19世紀後半から20世紀初頭にかけての近代工業化と深く関わっています。例えば、フォード社の自動車生産ライン方式は、業務効率化とマニュアルを取り入れて大量生産を実現し、現代の製造業の礎を築きました。

また、20世紀後半には日本の製造業において標準化を推し進め、驚異的な成長を遂げました。
例えば、トヨタ式「カイゼン」は、無駄を排除し、従業員の業務改善提案を促すことで、さらなる効率化を実現しました。この取り組みは全世界に影響を与え、多くの企業が取り入れるようになりました。

しかし、製造の現場では業務標準化により、効率化と品質保持を実現しましたが、日本のホワイトカラーの労働生産性は他の先進国と比較して低いといえます。例えば、日本の時間当たり労働生産性は、OECD加盟国の中で低水準にあります(出所:データブック国際労働比較2024)。

標準化の目的

業務標準化の目的は、主に効率化と品質の向上にあります。繰り返しになりますが、業務手順の標準化により、誰が行っても一貫した結果を得ることができ、生産性を向上させるのです。
そして、標準化はミスやエラーを減少させる効果もあります。これは、内的なメリットだけでなく、顧客満足度の向上、ロイヤルティ向上にもつながるでしょう。

標準化の注意点

一方で、標準化には注意点もあります。
全ての業務を一律に整えた結果、柔軟性や創造性が抑制されかねず、イノベーションを阻害する可能性があります。
これを避けるには、柔軟性とバランスがとれた標準化を進める配慮が重要です。

業務標準化のメリット

業務標準化にはさまざまなメリットがあります。改めて確認していきましょう。

業務の効率化と生産性向上

業務標準化によって、作業手順が明確になります。これにより、どの従業員でも同じ方法で業務を遂行できるため、効率が上がります。
また、無駄な重複作業を減らすことができるため、生産性向上につながります。同時に、熟練度に関係なく一定の品質を維持することで、新しい従業員の教育時間を短縮しながらも、早期に即戦力としての活躍が期待できます。

透明性の確保と情報共有の強化

業務が標準化されると、どの作業が誰によって、どのように行われているか、明確化します。
そのため、業務内容の透明性が高まり、情報の共有がしやすくなります。各メンバーが必要な情報にスムーズにアクセスできるということは、意思決定の迅速化につながります。さらにチーム内の連携が強化され、業務の進捗状況も把握しやすくなるでしょう。
また、問題が生じても、業務が標準化されているため、いち早く原因究明が行えます。
さらにはブラックボックス化が避けられるため、企業全体の透明性確保にも寄与します。

属人化防止と品質の担保

業務標準化は、特定の従業員に依存しない、属人化させない体制を作ります。同じ手順で作業を行うため、歩留まりが高く、誰が業務を行っても同程度の成果が期待でき、かつ品質が一定に保たれます。
例えば、顧客サービスを直接提供する業務においても、担当者が変更しても、変わらぬ一貫したサービス提供が可能なのです。

さらに、業務の属人化を防ぐことは、従業員の異動時や休暇時、さらには退職時に発生する業務の引き継ぎもスムーズに実行できます。

業務標準化のフレームワークとステップ

業務標準化のフレームワークとは、業務の手順や成果物の水準を統一し、従業員全員で共有するための方法や手順を指します。

まず一連のステップを計画することが重要です。
計画では、現状業務の洗い出しと優先順位付け、業務の整理、業務フローの再設計、マニュアルの作成、そして運用と改善まで含まなければなりません。
それぞれのステップを丁寧に行うことで、業務の効率化や品質を向上できるのです。

1.現状業務の洗い出し

まず、現在行っている業務を全てリストアップする必要があります。現状を把握することで、どの業務が重要で、どの業務が改善を要するかを明確にします。この作業は、関係者全員からの情報収集が鍵です。

2.業務の整理

次に、リストアップされた業務を整理します。この段階では、重複している業務や無駄な作業を見つけ出し、それらを排除することで、業務の流れをスムーズ化します。
また、ポイントとして業務整理の過程では、各業務の目的や必要性を再評価することが大切です。

3.業務フローの再設計

整理された業務を基に、業務フローを再設計します。再設計の目的は、業務がスムーズに進むような効率的な流れを作り上げること。このときに、各業務の連携や依存関係を考慮しながら、フロー図を作成します。
具体的な手順を可視化することは、誰がどの作業をどのタイミングで行うべきかが明確になります。そのため、業務の滞りが減少し、効率性向上が期待できます。

4.マニュアルの作成

業務フローが決まったら、次はマニュアルを作成します。
マニュアルは、業務の標準的な手順を詳細に説明する文書です。誰でも同じ品質で業務を遂行できるように、手順を具体的かつ簡潔に記載します。
また、イラストや図表を用いて視覚的に理解しやすいマニュアルにしたり、動画にしたりもおすすめです。新しいスタッフでも迅速に業務を習得できるでしょう。

5.運用と改善の実施

最後に、作成したマニュアルを基に、実際の業務運用を開始します。
業務を行う中で、稼働状況や問題点を定期的にチェックし、改善を行います。現場でフィードバックを受けながら、常に業務の効率化を図ります。
このように改善を繰り返すことで、業務標準化の効果を持続的に高められるのです。

業務標準化による成功事例と実践ケーススタディ

ここでは、大手企業、中小企業、そしてIT企業の業務標準化による成功事例を通じて、効果と実践方法を紹介します。自社の業務改善のヒントにしてください。

大手企業の業務効率化

大手コンビニチェーンでは、店舗運営の標準化を進めるために、現状の業務を詳細に分析し、重複している作業や無駄な手順を洗い出しました。
次に、それぞれの業務において最適な手順を定義し、従業員の教育プログラムを刷新しました。
新しいプログラムでは、接客マナーや商品陳列の方法を徹底的に教育し、どの店舗でも同じサービス品質を提供できるように運営業務を標準化しました。

中小企業の品質改善

ある食品製造業では、製造プロセスを標準化することで品質のばらつきを減少させました。
社内の全ての工程を詳細に見直し、統一した品質基準を設定。また、品質管理のポイントを明確にし、従業員全員に徹底させました。
その結果、品質に対するクレームが大幅に減少しました。
この取り組みにより、製品への信頼性を高めるとともに、売り上げも上昇しました。

IT企業の生産性向上

ある大手ソフトウェア開発会社では、アジャイル開発手法を導入し、業務プロセスを標準化することで生産性を向上させました。
まず、全体の開発プロセスを短期のスプリントに分け、目標を明確に設定しました。次に、チーム内でのコミュニケーションを活性化させ、進行状況の共有を徹底。その結果、納期の厳守と品質向上を実現しました。

業務標準化を成功に導くポイント

業務標準化を成功させるためには、徹底した準備と綿密な計画が必要です。そのポイントを解説します。

実施前の準備と注意点

  • 現状把握とヒアリング
    業務標準化を実施する前に、現状の業務フローをヒアリング関係者全員が理解していなければなりません。そこから現場の意見を積極的に聞き取ることで、詳細な現状把握が実現します。
  • 課題の洗い出しと目標設定
    次に、改善点や課題を具体的に洗い出し、標準化の目標を明確に設定し、関係者全員と共有することが不可欠です。
  • リソースの確保とコミュニケーション
    また、標準化に必要な人員、時間、予算などのリソースを事前に算出し、確保しておくことも重要です。さらに、効果的なコミュニケーションを図るために、チーム全体で共通の目標を共有し、定期的な進捗報告会を実施しましょう。これにより、不安や抵抗感を減らし、スムーズな導入を促進できます。

業務標準化初期の工夫とポイント

  • 段階的な業務標準化でリスクを軽減
    業務標準化の初期段階では、スムーズな移行を図るために、段階的なアプローチが有効です。いきなり全ての業務プロセスを変更するのではなく、まずは一部の業務から始めることで、リスクを軽減することができます。
  • 徹底したサポート体制の構築
    業務標準化の初期段階では、盤石なサポート体制の構築が不可欠です。責任者やサポートチームを配置し、現場からの質問や問題に迅速に対応します。チャットツールやヘルプデスクなど、各種リソースを活用してリアルタイムでコミュニケーションを図り、PDCAサイクルを回すことで、継続的な改善を促します。
  • 全員が参加するトレーニングの実施
    また、定期的なトレーニングやワークショップを開催し、全従業員が新しい標準作業手順を習得できるように図ります。これは、業務への理解を深め、問題解決能力向上に結び付きます。
    これらの取り組みを通じて、初期段階における混乱を最小限に抑え、スムーズな業務標準化が実現できるでしょう。

定着化と継続的な改善

業務標準化の定着には、継続的なモニタリングとフィードバックが不可欠です。現場の声を聞き、標準作業手順にすぐに反映させることで、より実効性の高いものへと進化させます。
また、定量的な評価指標を設定し、目標達成度を定期的に測定しながら、改善効果を可視化しましょう。
さらに、全従業員が主体的に改善提案を行えるような風土を醸成し、報奨制度などの導入により、モチベーションを高めることも重要です。

業務標準化を効率化するサポート

業務標準化を効果的に進めるためには様々なツールやサポートがあります。それらについて解説します。

効率化ツールの活用

効率化ツールを利用することで、業務標準化プロセスの加速が可能です。
例えば、プロジェクト管理ツールやドキュメント共有システムは、全体の進捗状況を把握するために役立ち、関係者が常に最新情報を共有できます。
また、チェックリストやテンプレートを活用することで、作業の漏れやミスを防ぎます。ツール選びのポイントは、現場で使いやすいことが重要です。過剰な機能は避け、必要な機能が効率的に提供されるものを選びましょう。

業務自動化ツールの活用

業務標準化の効果をさらに高めるため、業務自動化ツールは取り入れるべきでしょう。
例えば、定型業務や繰り返し作業を自動化することで、人為的なエラーが減少し、作業時間が短縮されます。自動化と標準化の連携により、持続的な業務効率の向上が期待できます。

外部事業者のサポート

業務標準化を成功させるため、外部サポートの活用は様々なメリットがあります。

  • 専門知識の活用
    外部事業者が提供する専門サービスは、業務標準化に関する豊富な経験と専門知識を持っています。これにより、効率的かつ迅速に標準化プロセスを進めることができます。
  • コスト削減
    内部で標準化プロジェクトを進める場合、トレーニングやツールの導入に多大なコストがかかることがあります。外部サービスを利用することで、これらのコストも削減できる場合があります。
  • 時間の節約
    外部事業者が提供する専門サービスは既に確立されたプロセスとツールを持っているため、標準化プロジェクトを迅速に進めることができます。これにより、内部リソースを他の重要な業務に集中させられます。
  • 客観的な視点
    外部事業者が提供する専門サービスでは、組織の内部事情にとらわれずに客観的な視点からアドバイスを提供しています。より効果的な標準化が可能となるでしょう。
  • 最新技術の導入
    外部事業者が提供する専門サービスでは、最新技術やトレンドに精通しているため、最新のツール・方法論を導入することができます。

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業務標準化は生産性と品質向上を叶える

業務標準化は、企業の生産性向上と品質維持に不可欠な取り組みです。
本記事では、標準化の目的、メリット、そして具体的な進め方について解説しました。
標準化を成功させるためには、現状の業務を徹底的に分析し、改善すべき点を明確にすることが重要です。そして、全従業員が共通の目標を持ち、協力して取り組む体制の構築が不可欠です。
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