多数のITサービスやシステムが生まれ、その活用なくしてはビジネスが成り立たなくなりました。さらに近年では、クラウドサービスが急速に浸透。日々刻々とIT環境は変化し続けています。
しかし、ITの利便性が高まる一方で、ビジネスを支えるITインフラの管理は複雑化。いったんITインフラやシステムに障害が発生してしまうと、取り返しのつかない深刻なダメージをビジネスに与える危険もはらんでいます。このリスクを極力避けるためには、IT環境の維持・管理は不可欠です。中でも管理の基本となるサーバーの死活監視が重要視されています。
そこで本記事では、情シス担当者以外の方にも理解できるよう、サーバーの死活監視の目的や監視方法、注意点などについて、わかりやすく解説します。
サーバーの死活監視とは?
サーバーの死活監視とは、サーバーが正常に動いているか見張ることです。サーバーとは、他のコンピューターに対してサービスを提供するコンピューターのこと。例えば、Webサイトのデータを提供するWebサーバーや、ファイル共有サービスを提供するファイルサーバーなどがあります。
サーバーの死活監視の目的は、こういったサービスの提供に必要なサーバーの稼働状況を把握し、障害やトラブルを早期に発見することです。
そして万が一、サーバーがダウンした場合、サービス提供を早急に復活させるため、サーバーの再起動や代替サーバーへの切り替えといった対処を行うことになります。
では、この一連のサーバーの死活監視が行われなかった場合、どうなってしまうのでしょうか。
サーバーダウンが続いてしまうと、ビジネスに必要なデータにアクセスできなくなり、業務がストップしてしまう事態を招くでしょう。また、Webサイトの利用者はサービスが停止されているため、大きな負担や機会損失を被る可能性があります。
さらには、サーバー停止が続くことでセキュリティのリスクが生じ、機密情報の漏えいやハッキングなど重大なインシデントに発展する可能性もあるのです。
これらを引き起こさないためには、サーバーの死活監視は大変重要な業務となっています。特に、オンラインショップやネットバンキングサービスなど、24時間体制で稼働しているサーバーの監視は不可欠といえるでしょう。
関連の記事をご用意しております。ぜひご覧ください。
▼なぜネットワーク障害は起きるのか? 原因を徹底解説
サーバーの死活監視・3つの種類
死活監視の方法には、Ping監視やHTTP監視、プロセス監視などがあります。これらの監視方法を組み合わせることで、サーバーの稼働状況を監視し、障害やトラブルを早期に発見することができます。それぞれについて解説します。
関連の記事をご用意しております。ぜひご覧ください。
▼サーバー保守ってどんな業務? 業務内容や保守の重要性を解説
Ping監視
サーバーに対して定期的にPingパケットを送信し、応答が返ってくるかどうかで稼働状況を確認する方法です。Pingが応答しない場合は、サーバーがダウンしていると判断します。
Pingとは、インターネット上で通信を行う際に使用されるプロトコルのひとつで、ネットワーク機器間の接続状態を確認するために使用されます。
Ping監視のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 実装が容易で手軽に導入できる
- 死活監視の基本的な機能を備えており、異常の早期発見が可能
- 異常が発生するとすぐに通知が届くため、迅速な対応が可能
- パフォーマンス監視などの別種の監視と併用することで、より詳細な監視が可能
ただし、Ping監視は単純な応答確認する以外、サーバーの異常稼働といった総合的なトラブル監視をするには足りません。また、ネットワークの影響で応答が遅延する場合もあり、正常稼働しているサーバーでも応答なしと誤認する可能性があるため、適切な監視間隔や閾(しきい)値の設定が必要です。
関連の記事をご用意しております。ぜひご覧ください。
▼サーバー運用の業務とは? 仕事内容やサーバー管理/保守との違い、効率的な方法をご紹介
HTTP監視
定期的にWebページへアクセスし、応答コードや時間などを監視して正常稼働しているか確認する方法です。異常がある場合はサーバーのダウンと見なします。
HTTP監視のメリットは次のような点が挙げられます。
- サービス停止の早期発見が可能
- ユーザーがWebサイトにアクセスできない事態を自動検知できる
- エラーの詳細情報がログに残るため、トラブル発生時に原因特定が容易
- リクエストからレスポンスまでの時間を計測するため、Webサイトのパフォーマンス評価にも役立つ
ただし、HTTP監視はWebアプリの内部エラーは検知できないことや、Webサイトの一部に対してアクセスして確認するため、全体の状態を把握できないといった課題があります。
プロセス監視
プロセス監視とは、監視対象のサーバー上のプロセス稼働状況を監視することで死活監視を行う方法です。プロセスとはサーバー上のデータベースやアプリケーションの動作を指します。
プロセス監視では、プロセスの異常終了やクラッシュを検知し、自動的にプロセスを再起動することができます。監視手法には、ハートビート監視、ログファイル監視などがあります。
プロセス監視によってサーバーの信頼性は向上しますが、誤検知が発生する、再起動による影響が生じるなどの課題もあるため、死活監視には複数の方法を組み合わせることが一般的です。
関連の記事をご用意しております。ぜひご覧ください。
▼クラウド監視とは? オンプレミスとの違いやメリット、運用負荷を軽減するポイントを解説
死活監視以外のサーバー監視方法
サーバーの異常を監視するためには、死活監視以外にもいくつかの方法があります。代表的なものについて紹介します。
アプリケーション監視
アプリケーション監視は、サーバー上で実行されているアプリケーションの正常性を確認する監視方法です。アプリケーションの起動状態、応答時間、エラー率、ログファイルの出力内容などを監視することでサーバーの異常を察知します。
パフォーマンス監視
パフォーマンス監視は、サーバーのパフォーマンスを監視し、リソースの使用状況や負荷状況を把握する方法です。CPU使用率、メモリ使用率、ハードディスクの使用状況、ネットワーク帯域などを監視することで、システムの負荷状況や不具合の原因を特定できます。
関連の記事をご用意しております。ぜひご覧ください。
▼システム監視とは? 必要性や監視項目をわかりやすく解説
スクリプト監視
スクリプト監視は、サーバーにインストールされたアプリケーションやスクリプトの稼働状況を監視する方法です。スクリプトが定期的に実行され、想定する出力が得られるかどうか確認します。これにより、サーバーの機能やアプリケーションの異常を把握します。
ログ監視
サーバーから送信されるログを監視することで、アプリケーションのエラー、アクセス拒否、その他の異常を察知します。サーバーのログは、セキュリティ侵害の早期検出にも役立ちます。
組織で死活監視を行う方法
では組織が実際にサーバーの死活監視を行う場合、どんな方法があるのでしょうか。代表的な方法について紹介します。
手動による実施
サーバーの死活監視を行う最も基本的な方法は、手動でPingコマンドなどを実行して監視を行うことです。定期的にPingコマンドを実行したり、Webサイトであれば目視で稼働状況を確認したりすることになります。
しかし、手動による死活監視は監視対象が少ない場合にできる方法といえるでしょう。監視対象が増えるにつれて手動での対応は難しくなるため、以降で紹介する監視ツールの活用や代行サービスの利用を検討することになります。
また、手動による監視は運用チームの知識と経験に強く依存するため、ヒューマンエラーのリスクが否めません。より効果的かつ信頼性の高い死活監視を実施するには、やはり監視ツールの活用や代行サービスの利用をおすすめします。
監視ツールの利用
死活監視を自動化し、運用負荷を下げるためには、運用監視ツールを導入することが一般的です。監視対象のサーバーのIPアドレスや監視の頻度を設定すれば、自動的に死活監視を行えるようになります。このため、手動でPingコマンドなどを実行する手間が省けるだけでなく、常時監視を行うことができるため、監視精度が高まるでしょう。
また、監視ツールによっては、死活監視以外にも、パフォーマンス監視やログ監視など、より高度な監視機能を提供しているものがあります。
これらのことから運用監視ツールの導入は、死活監視の自動化だけでなく、監視業務全体の効率化や早期の問題発見につながるといえるのです。
関連の記事をご用意しております。ぜひご覧ください。
▼サーバー監視ツールとは? 導入のメリット・デメリットを解説
代行サービスの利用
自社でサーバーの死活監視が難しい場合、監視代行サービスの活用も手段のひとつです。代行サービスを利用することで、専門知識やリソースが不足する場合でも、安心して監視業務を行えます。
テクバンが提供している Techvan Remote Center とは、24時間体制で運用監視業務を担う代行サービスの一例です。Techvan Remote Center では、サーバーやネットワークの稼働監視だけでなく、トラブル発生時の対応やセキュリティ対策も行うことができます。
Techvan Remote Center を活用すると、運用監視に費やすリソースを削減し、従業員を自社のコア業務に注力させることも可能になります。詳しくは下記でサービスをご案内しております。
Techvan Remote Center とは?
また、Techvan Remote Center を導入し、課題解決につなげた事例の資料もご用意しています。ぜひご覧ください。
【事例】柔軟なメニューで実現できた。24時間365日、有人リモート監視で 情シスの負担軽減
サーバーの死活監視の注意点
サーバーの死活監視は障害を早期発見するために必要ですが、システムを安定稼働させるには、死活監視だけでは不十分です。サーバーの死活監視は、システム全体を網羅的に監視するのではなく、スポット的に異常をチェックする手法だからです。例えば、Ping監視では、サーバーが動いているかどうかリアルタイムでチェックできますが、CPUリソースの不足によりアプリケーションの応答速度が低下している場合や、アプリケーションのエラーにより正常な処理が行われていない場合など、異常を詳細には検知できません。
このため、リソース監視やログ監視など、他の監視手法を組み合わせて、システムの状態を監視する必要がある点には注意が必要です。
サーバーの死活監視はビジネス継続の基本タスク
ここまで、サーバーの死活監視の基礎知識から実施方法などについて、広く紹介してきました。
死活監視はITシステムの監視業務において欠かせない要素のため、正しく運用することでビジネスの継続性を担保します。ただしサーバーの死活監視はサーバーの動作のみに絞って監視するため、サービスの提供やITシステムの安定運用には、その他の監視手法も併用することが必要です。
ITシステムの重要度がますます高まる昨今、その障害発生を完全に回避することはできません。しかし、死活監視を含めた総合的な監視体制を整えることで、早期発見と迅速な対応を行い、システムダウンの影響を最小限に抑えることができるはずです。
監視ツールや代行サービスを適切に活用してサーバーの監視業務を効率的に行い、ITシステムの安定稼働を実現して、成長や発展につながるビジネスに人的資源を集中投下していきましょう。