日々のヘルプデスク業務が、情シス部門の負担になっている企業は少なくありません。ヘルプデスクサービスとは、リソースが不足している企業に代わってヘルプデスク業務をサポートするソリューションです。そこで、ヘルプデスクサービスの具体的な内容と導入メリット、さらに自社にサービス導入を検討する際に、選定するポイントなどを解説します。
ヘルプデスクサービスとは?
ヘルプデスクサービスとは、ヘルプデスク業務を自社以外にアウトソーシングして、様々な問い合わせに対し、対応し、問題解決に導いてもらうサービスです。
ヘルプデスクサービスがカバーする業務は、オフィス製品や業務アプリなど企業が提供する製品・サービスに関する顧客からの問い合わせ、社内業務にかかわるシステムやデバイス、ITに関する従業員からの問い合わせ、PCのハードウエアやソフトウエアの操作方法など技術的な問い合わせ対応です。社内に常駐スタッフを配置したり、企業のコンタクトセンターに問い合わせたり多様な形態があります。
あらゆる問い合わせに関する豊富な知見を持って、素早い対応が求められる専門的なサービスです。
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ヘルプデスクサービスの種類は3つ
ヘルプデスクサービスの業務内容にはいくつかの種類があります。ここでは代表的な3つのサービスについて、具体的に解説します。
社外ヘルプデスク
まず、社外ヘルプデスクについて解説します。
社外ヘルプデスクは企業の製品やサービス利用者からの問い合わせやトラブルの相談に応じ、専門的な知識で解決まで導くことが主なサービス内容です。
社外ヘルプデスクは、企業によってはコールセンターと呼ばれることもあります。これは、問い合わせ対応が電話だけで行われてきた名残りといえますが、現在では電話を含め、メールやチャットなど様々なチャネルで問い合わせを受けている企業が多くなっています。
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社内ヘルプデスクサービス
次に、社内ヘルプデスクサービスについて解説します。
社内ヘルプデスクサービスは、企業内の従業員から寄せられる、システムやIT関連のトラブルや問い合わせ、相談全般に対応するサービスです。通常は企業内の情シス部門が対応していることが多い業務ですが、ひっきりなしに寄せられる社内からの問い合わせにリソースがひっ迫し負荷がかかっている情シスも少なくありません。
例えば、「PCの電源が入らない」「パスワードロックがかかってしまい、どうすればいいかわからない」など、初歩レベルな問い合わせなどもあり、少人数体制で情シス部門を担っている企業も多く、貴重なリソースが無駄になりかねません。
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テクニカルサポート
最後にテクニカルサポートについて解説します。
テクニカルサポートは、企業内で使用する特定のハードウエアやソフトウエアやサービスの操作方法や、セキュリティインシデント、トラブル・故障など技術的な問い合わせに対応するサービスです。
社内ヘルプデスクと似ていますが、違いがあります。
社内ヘルプデスクは、まず従業員からの問い合わせに一次対応する役目です。問い合わせが個別のハードウエアやソフトウエアに関する内容の場合、これらに精通している専門家のいるテクニカルサポートにエスカレーションすることになります。
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ヘルプデスクサービスのメリット
次はヘルプデスクサービスを自社に導入した場合、具体的にはどんなメリットがあるのか、解説します。
ニーズに合わせたヘルプデスクサービスが受けられる
まず、ヘルプデスク業務をアウトソースする場合、プロダクトが決まっているヘルプデスクツールと異なり、自社に合わせたサービスの提供を受けることができます。
例えば、問い合わせが多岐にわたるため、担当者はサービスへの深い理解が欠かせない、比較的高齢の従業員が多いためIT関連の初歩的な問い合わせを受けやすいなど、自社の事情や製品・サービスにカスタマイズした柔軟なサポートを受けられることがメリットです。
対応が難しい夜間・休日のヘルプデスクサポートを任せられる
問い合わせ対応を日中の時間帯だけに絞っている企業がある一方、製品・サービスごとに24時間365日、いつでも問い合わせに応じる窓口を設ける企業もあります。
しかし、自社従業員だけで夜間や休日のシフト調整を行うには限界があり、対策が求められます。そこで、社内のリソースが不足する夜間・休日だけヘルプデスクをアウトソースできる受託先もあり、その点がメリットともいえるでしょう。必要なときに必要なリソースを補足することができるため、従業員の負担軽減にも大きな役割を果たします。
情シス部門のリソース不足を解消できる
顧客からの問い合わせ数や相談内容のコントロールができないため、ヘルプデスク業務がもともとリソースの不足しがちな情シス部門の負担になっているケースは多いようです。
これらの問題解決にむけて、ヘルプデスク業務の部分をアウトソースすることで、教育コストを割かずに情シス部門のリソース不足を補うことが可能です。問い合わせ内容の共有もなされるため、自社内にもナレッジを蓄積し、業務効率化も実現できるメリットがあります。
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応対品質の向上が期待できる
ヘルプデスク業務をアウトソースすると、業務に合った知識と経験が豊富なヘルプデスクのプロが対応するため、応対品質と顧客満足度の向上が期待できます。
例えば、自社対応では正確に回答するあまり、専門的になりすぎてしまい、なかなか顧客に伝わらなかったというケースもあるでしょう。これがヘルプデスク業務のプロなら、専門的なノウハウを備えながらも、顧客視点に立った説明をする訓練がなされているため、適切で丁寧な応対により、顧客満足度の向上にも寄与します。また委託した業務をフロー化し、マニュアル作成も併せて依頼することで、その後の自社の運用改善にも生かすことが可能です。
コア業務に注力できる
ヘルプデスク業務はいわば、情シス部門が必ず対応しなければならない業務ではありません。作業レベルで誰でも対応できる業務とITの専門的知識が高いため、対応せざるを得ない業務が混在している業務です。
ヘルプデスク業務をアウトソースすることができれば、情シス部門が本来やるべき重要なコア業務に注力できます。事業計画や将来を見据えたIT戦略の立案や、システム運用、新規事業開発するなど、情シス部門が重要度の高い業務に従事することにより、ビジネスの機会損失を避け、社内全体の労働生産性と業務効率の向上が期待できるといえるでしょう。
ヘルプデスクサービスの選定基準
導入メリットが高いといえるヘルプデスクサービスは多くの会社が提供しています。そこで、情シスの労働生産性を向上させるためのヘルプデスクサービス導入で失敗しないために、比較検討、選定の際のポイントを解説します。
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自社の業種に合う実績があるか
ヘルプデスクサービスを選ぶポイントとして、まず自社の業種や業務内容と同様の企業へのサポート実績、または似た業種へのサポート実績があるかどうか確認しましょう。ヘルプデスクの対応には一般的に専門性が求められることも多く、自社の業務と似た企業に対する実績があれば、導入後のイメージを具体的に把握することができます。さらに、この実績を基に自社向けに具体的なサポート追加要望も相談しやすいでしょう。
自社の状況に合ったサービスが受けられるか
自社のリソースや状況に合ったサービスを受けられるか、確認することが必要です。
例えば、問い合わせ対応のチャネルが電話のみ、またはウェブサイトからの受付のみといった場合もあるでしょう。または、電話やメール対応はすでに行っているものの、SNSでの問い合わせ対応を始めたいと考える企業なら、これも含めて任せられるかどうか、具体的に確認しましょう。
さらに、ヘルプデスクサービスだけでなく、社内の情シス業務のサポートも依頼したい要望があれば、どこまでサポートしてもらえるのか、こちらも具体的に確認しましょう。
これによって、導入後の「こんなはずではなかった」という失敗も避けられるでしょう。
現状改善が明確か
多忙な日常業務を少しでも軽減するため、ヘルプデスクサービス導入を急ぎたい気持ちになるのは当たり前です。しかし、現状のどの業務がどれくらい改善されるのか問題点を可視化し、定量的に想定しておくべきです。
応対品質や満足度の向上といった定性的な改善についても、あらかじめ数値化できるデータによって客観的に改善度が判断できる材料を用意しておくこともポイントです。
また、場合によっては管理や認識合わせ、キャッチアップに時間がかかり過ぎて、思ったほど労働生産性が上がらなかったとならないよう、ヘルプデスクサービスの導入によって、現状が想定通り改善できるのかどうか、十分に見極めが必要です。
費用対効果が見込めるか
サービスの導入による費用対効果を事前に明確化するため、イレギュラー対応が発生した際に追加料金がどれくらいかかるかなど、詳細に見積もりを取ることが重要です。場合によっては複数の企業に見積もりを依頼することも視野に入れましょう。
たしかに業務効率が進み、情シスのコア業務に集中することができたものの、コストがかさんでしまい、逆に人員削減、サービスを縮小することになってしまう事態は避けなければなりません。
ヘルプデスクツールとの違い
ヘルプデスク業務を効率化するには、主に2つの手段があります。これまで解説してきたヘルプデスクサービスを利用してアウトソースする方法と、もうひとつはヘルプデスク管理ツールやチャットボットなどのヘルプデスクツールを社内の対応部署に導入する方法です。
ここからは、ヘルプデスクツールについて解説します。
ヘルプデスクツールにはどんな種類がある?
ヘルプデスクツールとはヘルプデスク業務をサポートするツールです。大きく分けて「問い合わせの一元管理」が機能の中心になっているものと、「メール」「チャット」「コミュニティ」などのメッセージ機能に特化したツールの2種類があります。
ヘルプデスクツールのメリットとデメリットは?
ヘルプデスクツールを活用から得られる主なメリットは、属人化を避けられる、問い合わせ対応のスピードアップが期待できる、問い合わせ内容のDB化がスムーズなどです。特に、「問い合わせの一括管理」ができるため、どのような問い合わせが多いか分析し、今後の対応に生かすことが可能です。
一方、デメリットはツールに合わせた運用が必要なこと、メンテナンスの手間がかかること、常に品質管理が必要であることなどです。うまくランディングできれば費用対効果も高そうですが、導入時の研修や設定、常時メンテナンスする必要があり、自社の状況がツールの特徴に合うかどうか見極めが重要です。そのため、トライアル制度などがあるなら、ツールの本格導入前にぜひお試ししてみるといいでしょう。
もし、自社のニーズに合うヘルプデスクツールがない、導入時に調整する時間もリソースもない状況なら、企業の状況に沿った対応が可能なヘルプデスクサービスを検討するほうが早道かもしれません。
ヘルプデスクサービスを活用しよう
情シス部門のリソースを圧迫するといわれがちなヘルプデスク業務。しかし、顧客や社内のニーズが具体的に把握できる大事な業務です。
ヘルプデスクサービスは、自社のリソース不足を補うために夜間・休日だけアウトソースできる、ニーズに合ったサービス内容にできる、コスト削減が実現できる、応対品質向上が期待できるなど、導入メリットは高いといえます。
社内のリソース不足などヘルプデスク業務に課題がある場合、ヘルプデスクサービスの導入を一度検討してみてはいかがでしょうか。