企業のPC廃棄は、コスト管理・法令遵守・情報セキュリティ対策が求められる業務です。IT資産を適切に管理するには、調達から廃棄までのライフサイクル全体を見据えたPC管理の基本理解が重要です。
本記事では、PC廃棄の費用相場や内訳を解説するとともに、コストを適正化するためのポイントをご紹介します。情報システム(情シス)担当者が遵守すべき法律や安全なデータ消去の方法も網羅し、安さだけでなくコンプライアンスとセキュリティを両立する方法を明らかにします。
PC管理の基本などについてはこちらの記事をご参照ください。
▼企業におけるPC管理とは? 3大基本要素とPC管理ツールの選択ポイントを解説
PC廃棄費用の相場と内訳
企業のPCを廃棄する際には、単に処分するだけでなく、法令を遵守した適切な処理が必要です。それに伴い、さまざまな費用が発生するのが一般的です。情シス担当者として予算を確保し、適正なコストで廃棄を進めるには、まず費用の相場観とその内訳を把握しましょう。
そこで、法人PCの廃棄にかかる費用相場と内訳について解説します。
一般的な費用相場は?
法人PCの廃棄費用は、業者、PCの種類や台数、データ消去方法によって大きく変動します。1台あたりの処理費用としては、無料のケースから数千円程度が目安となります。例えば、PCメーカーに直接依頼する場合、1台あたり3,000~4,000円程度が相場です。
一方、産業廃棄物処理業者やIT資産処分専門業者に依頼する場合、1台1,000円前後から対応しているケースもありますが、これに収集運搬費やデータ消去費などが加算されます。ノートPCよりもデスクトップPC、特にサーバーは重量があるため高額になりがちです。
買い取りに対応している業者に依頼し、比較的新しいモデルやスペックの高いPCを処分する場合は、廃棄費用が相殺されて無料になったり、逆に買取金額を受け取れたりすることもあります。PC資産の価値を最大化するには、LCMサービスを活用した計画的な買い替えが効果的です。
LCMサービスを活用した計画的な買い替えについて詳しくはこちらの記事をご参照ください。
▼PC LCMサービスとは? 導入メリット、コスト削減・セキュリティ強化の秘訣を解説! 企業のIT資産管理を最適化しよう
PC廃棄費用の内訳
PC廃棄費用は、主に以下の項目で構成されています。見積もり取得時は、各費用項目の内訳を明確に確認することが重要です。
収集運搬費
オフィスや指定の保管場所までPCを回収に来てもらうための費用です。費用は、回収エリア、PCの台数・重量、搬出経路(階段作業の有無など)によって変動します。
一般的に、1回の回収で10,000~30,000円程度が目安となりますが、少量の場合は割高になることもあります。
データ消去費
情報漏洩を防ぐために最も重要な工程であり、費用も大きく変動するポイントです。専用ソフトウェアによる上書き消去や、ハードディスク(HDD)を物理的に破壊する方法などがあります。費用相場は1台あたり1,000~5,000円程度で、物理破壊の方が高価になる傾向があります。
また、作業員が現地で消去作業を行う「オンサイト対応」か、業者がPCを引き取ってから作業する「オフサイト対応」かによっても料金が異なります。
廃棄処理費(リサイクル費用)
PCを法令に則って適正に分解し、再資源化するための費用です。業者によっては、この費用が基本料金に含まれている場合や、重量(kg単価)で計算される場合があります。
証明書発行費
「データ消去証明書」や「廃棄証明書(資産滅却証明書)」など、適正に処理されたことを証明する書類の発行にかかる費用です。
監査対応やコンプライアンス遵守の観点から非常に重要な書類で、1枚あたり1,000円程度から、シリアル番号や作業写真を記載する詳細なものでは数千円かかる場合もあります。
台数別の費用シミュレーション表
具体的な費用感をイメージいただくために、東京都内のオフィスからデスクトップPCを廃棄する場合をシミュレーションしました。データ消去は物理破壊を選択し、各種証明書も発行する前提です。
| 費用項目 | 10台の場合 | 50台の場合 | 100台の場合 |
| 収集運搬費 | 15,000円 | 25,000円 | 35,000円 |
| データ消去費(単価2,000円) | 20,000円 | 100,000円 | 200,000円 |
| 廃棄処理費(単価1,000円) | 10,000円 | 50,000円 | 100,000円 |
| 証明書発行費 | 5,000円 | 5,000円 | 5,000円 |
| 合計費用(税抜) | 50,000円 | 180,000円 | 340,000円 |
PC廃棄時に必要な法令・コンプライアンス対応
法人が事業で使用したPCの廃棄は、単に捨てる行為では済みません。家庭ゴミとは異なり、事業活動で利用したPCは「産業廃棄物」として扱われ、複数の法律に基づいた厳格な手続きが必要です。遵守しない場合、罰則だけでなく企業の社会的信用を損なうリスクもあります。
情シス担当者として知っておくべき、PC廃棄に関連する主要な法令とコンプライアンス対応について詳しく解説します。
資源有効利用促進法(PCリサイクル法)
「資源の有効な利用の促進に関する法律」、通称「資源有効利用促進法」は、使用済み製品の3R(リデュース、リユース、リサイクル)を推進するための法律です。
この法律に基づき、PCメーカーは自社で製造・販売したPCの回収とリサイクルを行うことが義務付けられています。法人がPCを廃棄する場合、この法律に則り、原則としてそのPCのメーカーに回収を依頼するのが基本的な流れとなります。複数のメーカーのPCをまとめて廃棄したい場合は、各メーカーに個別に連絡しなければならない点に注意すべきです。なお、一般社団法人パソコン3R推進協会(PC3R)では、メーカーに代わって複数メーカーのPCを一括で回収するサービスも提供しています。
廃棄物処理法
事業活動に伴って生じた廃棄物の処理について定めた法律が「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」、通称「廃棄物処理法」です。法人が事業で利用したPCは、この法律において「産業廃棄物」に分類されます。
法律では、産業廃棄物を排出した事業者(この場合はPCを廃棄する法人)が、その処理について最終的な責任を負う「排出事業者責任」が定められています。
そのため、PCの廃棄を外部業者に委託する場合は、都道府県などから「産業廃棄物収集運搬業」および「産業廃棄物処分業」の許可を得た正規の業者を選定しなければなりません。無許可の業者に委託すると、法律違反として排出事業者も罰せられる可能性があるため、業者選定は極めて重要です。
個人情報保護法とGDPR対応
PCのストレージには、顧客情報、従業員情報、取引先の機密情報など、多くの重要なデータが保存されています。これらの情報を適切に消去せずにPCを廃棄することは、情報漏洩に直結し、「個人情報保護法」に抵触する重大なリスクとなります。
万が一情報漏洩が発生した場合、企業信用の失墜はもちろん、高額な損害賠償請求や行政からの厳しい罰則を科される可能性があります。
また、グローバルに事業を展開する企業の場合、EU一般データ保護規則(GDPR)への対応も欠かせません。日本国内の企業であっても、ECサイトなどでEU居住者の個人データを取り扱っている場合はGDPRの適用対象となり、違反した際には巨額の制裁金が科されるため、国際的な基準に準拠したデータ管理と廃棄を行うべきです。
企業の情報セキュリティを強化するには、不正アクセス対策も含めた総合的なセキュリティ体制の構築が不可欠です。
不正アクセス対策について詳しくはこちらの記事をご参照ください。
▼不正アクセスを防ぐには? 手口や被害事例、対策を徹底解説!
産業廃棄物管理票(マニフェスト)の保管義務
産業廃棄物管理票(マニフェスト)とは、委託した産業廃棄物が契約通りに、かつ適正に処理されたかを確認するための伝票制度です。
PCを産業廃棄物として処理業者に引き渡す際、排出事業者はマニフェストを交付する義務があります。
この伝票は、収集運搬、中間処理、最終処分といった各工程が完了するたびに処理業者から排出事業者へ写しが返送され、これによって処理の全工程を追跡・管理できます。
排出事業者は、返送された全てのマニフェスト(A票、B2票、D票、E票など)を、受け取った日から5年間保管する義務があります。この保管義務を怠ると罰則の対象となるため、厳重な管理が不可欠です。
近年では、紙の代わりにインターネット上で管理する「電子マニフェスト」も普及しており、管理業務の効率化や紛失リスクの低減につながります。
データ消去の重要性とコスト
PC廃棄時には、内部ストレージのデータ消去が重要です。OSの初期化やファイルの削除だけでは、データは容易に復元できてしまいます。顧客情報、財務データ、技術情報といった機密情報が万が一、漏洩すれば、企業の信頼失墜や莫大な損害賠償につながりかねません。
データ消去費用は、単なるコストではなく企業の信用と資産を守るためのセキュリティ投資です。
物理破壊 vs ソフトウェア消去の比較
データ消去には、主に「物理破壊」と「ソフトウェア消去」の2つの方法があり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。
物理破壊は、ハードディスク(HDD)やSSDにドリルで穴を開けたり、破砕機(シュレッダー)で粉々にして記録媒体そのものを使用不可能にする方法です。目の前で破壊されるためデータが復元不可能であることが視覚的に確認でき、最も確実性が高いというメリットがあります。
一方で、破壊されたPCやストレージは再利用や買い取りができないため、資産価値がゼロになる点がデメリットです。
故障して起動しないPCのデータ消去にも有効な手段です。
ソフトウェア消去は、専用のソフトウェアを用いて、ストレージ全体に無意味なデータを複数回上書きし、元のデータを復元不可能な状態にする方法です。
米国国立標準技術研究所(NIST)の定めた「NIST SP800-88」などの国際的な規格に準拠した消去方式が信頼性の指標となります。
この方法の最大のメリットは、データ消去後もPCやストレージを再利用(リユース)したり、買い取りに出したりできる点にあり、廃棄コストの削減につながります。
ただし、正常に起動するPCでなければならず、消去作業に時間がかかる場合があります。
企業のセキュリティポリシー、PCの状態(正常品か故障品か)、リース契約の有無、そしてコストと資産価値を総合的に判断し、最適な方法を選択すべきです。
データ消去証明書の必要性
データ消去作業が完了した後、その事実を客観的に証明するのが「データ消去証明書」です。
この証明書は、いつ、誰が、どのPC(製造番号)の、どのストレージ(シリアルナンバー)を、どのような方法で消去したかを詳細に記録した文書です。
個人情報保護法やマイナンバー法では、情報の適切な管理と廃棄が義務付けられており、証明書はその義務を果たしたことを示す重要な証拠(エビデンス)となります。
また、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)やプライバシーマークの監査においても、情報資産の廃棄プロセスを証明する書類として提出が求められます。
データ消去証明書は、単なる作業報告書ではなく、万が一の情報漏洩インシデント発生時に自社の管理責任を証明し、企業のコンプライアンス遵守を示すための不可欠な書類なのです。クラウドサービスを利用している企業では、Microsoft 365のセキュリティ対策と併せて、オンプレミス資産の適切な廃棄管理が求められます。
Microsoft 365のセキュリティ対策について詳しくはこちらの記事をご参照ください。
▼Microsoft 365のセキュリティ対策と機能を解説
不適切な処理による情報漏洩リスク
データ消去のコストを惜しんだり、知識不足から不適切な処理を行ったりすると、深刻な情報漏洩事故を引き起こすリスクがあります。過去には、リース返却された行政機関のサーバーからデータが消去されないまま中古市場に流通し、大量の個人情報が流出した事件も発生しています。
このように、委託した業者が適切に処理を行わなかった場合でも、最終的な責任は情報を預けていた元の企業や組織が問われることになります。
情報漏洩が発生した場合の損害は、顧客への損害賠償や行政からの罰金といった直接的な金銭的損失だけではありません。企業ブランドの失墜、顧客や取引先からの信用喪失といった無形の損害は、金銭的損失以上に大きく、事業の存続そのものを揺るがしかねません。そのため、信頼できる専門業者を選定し、データ消去証明書を取得するなど、確実なプロセスを踏むことが不可欠です。日々のシステム運用管理においても、廃棄までを見据えた資産管理体制を整えておくべきです。
システム運用管理について詳しくはこちらの記事をご参照ください。
▼システム運用管理とは? 安定稼働を実現するための方法を解説
費用を抑えるための3つのポイント
PCの廃棄には、情報漏洩対策や法令遵守が求められるため、ある程度のコストは避けられません。しかし、ポイントを押さえることで費用の適正化・削減は可能です。
ここでは、情シス担当者が知っておくべき、PC廃棄費用を抑えるための具体的な3つの方法を解説します。
複数業者の相見積もり取得
PC廃棄を業者に依頼する際は、必ず複数の業者から見積もりを取得する「相見積もり」を実施しましょう。
1社だけの見積もりでは、提示された金額が適正価格なのか判断がつきません。複数の業者を比較することで、費用相場を把握できるだけでなく、価格交渉の材料にもなります。
見積もりを依頼する際は、単に総額を比較するのではなく、データ消去費用、運搬費、証明書発行費用などの内訳を詳細に確認すべきです。
また、サービス内容もしっかり比較検討する必要があります。例えば、データ消去の方法は物理破壊かソフトウェア消去か、消去証明書は発行されるか、出張回収に対応しているかなど、自社のセキュリティポリシーや要件に合った業者を選定することが、コストパフォーマンスが高まります。
さらに、業者によっては廃棄するPCの買取サービスを提供している場合があります。比較的新しいモデルや、正常に動作するPCであれば、廃棄費用と相殺、あるいはプラスになる可能性も十分にあります。
そのため、相見積もり時には買取サービスの有無と、その査定額も併せて確認することを強く推奨します。
これにより、IT資産の価値を活かし、トータルコスト削減が期待できます。
まとめて廃棄することでの単価削減
PCを廃棄する際には、複数台をまとめて依頼することで、1台あたりの単価を下げられるケースが一般的です。多くの廃棄業者は、台数に応じたボリュームディスカウントを設定しています。1台ずつ廃棄を依頼すると、その都度、運搬費や作業費といった基本料金が発生し、割高になってしまいます。
しかし、複数拠点に点在する廃棄対象PCを特定の場所に集約し、一度にまとめて依頼することで、運搬費用や作業員の派遣費用といった固定費の割合を下げられるため、トータルコストの削減につながります。
このメリットを最大化するには、社内のPCリプレース計画と連携し、計画的に廃棄スケジュールを立てることが不可欠です。各部署で個別に廃棄するのではなく、情報システム部門が主導して、年に1回や半年に1回など、定期的に社内の不要なPCを回収・集約するルールを設けることが効果的です。計画的な廃棄は、コスト削減だけでなく、管理業務の効率化にも寄与します。
LCMサービス活用による計画的な買い替え・廃棄
より中長期的な視点でコストを最適化する方法として、LCM(ライフサイクルマネジメント)サービスの活用が挙げられます。LCMサービスとは、PCの調達・導入(キッティング)、運用・保守、そして廃棄・リプレースまで、PCのライフサイクル全体を一元的に管理・代行するサービスです。
廃棄を単体の作業として捉えるのではなく、PCライフサイクル全体の一部として管理することで、多くのメリットが生まれます。
LCMサービスを利用すると、あらかじめ定められたサイクルで計画的にPCがリプレースされるため、突発的な大量廃棄の発生を防ぎ、廃棄コストを含むIT資産全体の運用コストを予測しやすくなります。廃棄コストを含むIT資産の運用コスト全体を最適化・平準化できるため、予算管理が容易になります。
また、廃棄プロセスもサービスに含まれているため、業者選定や見積もり、データ消去の管理といった煩雑な業務から解放され、情シス担当者の業務負荷を大幅に軽減し、本来注力すべきコア業務に集中できるという大きなメリットもあります。IT資産管理をアウトソーシングすることで、調達から廃棄まで一貫した管理が可能になり、IT資産の分類と管理も効率化できます。
IT資産管理のアウトソーシングやIT資産の分類と管理について詳しくはこちらの記事をご参照ください。
▼IT資産管理アウトソーシング(LCMサービス)のメリットとは? 選定~廃棄の最適化とコスト削減のポイントを解説
▼IT資産の分類と管理の基礎知識を解説!
情シス担当者が陥りがちな落とし穴
PCの廃棄は、単なる「捨てる」という作業ではありません。コスト削減や効率化を優先するあまり、セキュリティやコンプライアンスに関する重要な視点を見落としてしまうと、企業の信頼を揺るがしかねない重大なインシデントに発展する可能性があります。
そこで、情報システム部門の担当者が特に注意すべき、3つの代表的な落とし穴について具体的に解説します。
無料回収業者のリスク
「PC無料回収」を謳う業者は数多く存在しますが、その利用には慎重な判断が必要です。「無料」という言葉の裏に潜む高額請求、不法投棄、そして情報漏洩という三重のリスクを正しく認識しておく必要があります。
まず、回収後に「データ消去費用」「運搬費用」などの名目で、想定外の高額な費用を請求されるトラブルが報告されています。
また、回収されたPCが適正に処理されず、山林などに不法投棄されるケースも後を絶ちません。不法投棄が発覚した場合、廃棄物処理法に基づき、廃棄を依頼した排出事業者である企業側も責任を問われる可能性があります。
最も深刻なリスクは、情報漏洩です。回収したPCからハードディスクだけが抜き取られ、データが消去されないまま転売されたり、悪用されたりする危険性があります。信頼できる業者かどうかを判断するためには、ウェブサイトなどで「産業廃棄物収集運搬業許可」の有無を確認することが最低限必要です。
不適切なデータ消去による情報漏洩事例
PC廃棄における最大のリスクは情報漏洩であり、その多くはデータ消去に関する誤った認識から発生します。「初期化済みだから安全」という思い込みが、企業の信頼を根底から揺るがす重大なインシデントを引き起こすのです。
OSの初期化(リカバリー)や、ファイルを「ごみ箱」へ移動して空にする操作だけでは、データは完全には消去されていません。専用の復元ソフトを使えば、比較的容易にデータを読み取ることが可能です。
実際に、2019年に発覚した神奈川県庁の事件では、リース返却され、データ消去が不十分なまま業者に渡ったハードディスクがインターネットオークションで転売され、内部の行政文書が流出するという事態に至りました。
この事件は、廃棄処理を業者に委託した場合でも、最終的な責任は排出事業者にあること、そして委託先を盲信することの危険性を明確に示しています。委託した業者がさらに別の業者へ再委託する過程で管理が杜撰になり、情報が漏洩するケースも考えられるため、委託先の選定と管理体制の確認は極めて重要です。
廃棄証明書の未取得による監査対応トラブル
PCの廃棄プロセスが完了した証拠である「廃棄証明書」や「データ消去証明書」の未取得は、監査対応における致命的な不備となり、企業のガバナンス体制そのものが問われる事態につながります。
これらの証明書は、いつ、どのPCを、どのような方法で、誰が適正に処理したかを客観的に証明するための唯一の証跡です。
ISMS(ISO27001)認証やプライバシーマークの監査、あるいは内部統制監査において、IT資産の廃棄プロセスは必ずチェックされる項目の一つです。その際に証明書を提示できなければ、適正な処理が行われたことを証明できず、重大な指摘事項として扱われる可能性があります。
また、法人のPCは産業廃棄物に該当するため、廃棄物処理法で定められたマニフェスト(産業廃棄物管理票)の適切な運用と保管も義務付けられています。証明書の不備は、こうした法令遵守の観点からも問題視されることになります。
PC廃棄をアウトソーシングするメリット
PC廃棄は、機器を処分するだけの作業ではありません。実際には、廃棄対象PCのリストアップからデータ消去、業者選定、法令に準拠した書類管理まで、多岐にわたる煩雑な業務が付随します。
これらの業務を専門の外部業者へアウトソーシング(委託)することは、多くの企業にとって賢明な選択肢です。専門業者を活用することで、情シス担当者の負担を大幅に軽減し、企業全体として享受できる数々のメリットが生まれます。
情シス担当者の業務負荷軽減
PC廃棄をアウトソーシングする最大のメリットは、情シス担当者の業務負荷を劇的に軽減できる点にあります。
自社で廃棄処理を行う場合、担当者は通常業務と並行して、廃棄PCの移動や保管、データ消去作業、梱包・発送、そして煩雑な書類作成や管理といった一連の作業に多くの時間を割かなければなりません。特に数十台、数百台といった規模での入れ替えが発生した場合、その負担は計り知れません。
これらのノンコア業務を専門業者に一任することで、情シス担当者は本来注力すべきIT戦略の立案やシステム改善、セキュリティ強化といったコア業務にリソースを集中できるようになります。
その結果、部門全体の生産性向上や企業競争力強化につながります。
情シス部門が抱える課題解決には、ITヘルプデスクのアウトソーシングやアウトソーシングサービスの種類を理解し、最適な委託先を選ぶことが重要です。
▼アウトソーシングの種類は? ITO・BPO・KPO、派遣などとの違いを解説
コンプライアンス対応の確実性
法人PCの廃棄は、資源有効利用促進法や廃棄物処理法、個人情報保護法など、複数の法律が複雑に絡み合うコンプライアンス上、極めて重要な業務です。
これらの法規制は改正されることもあり、常に最新の知識を持って対応しなければなりません。専門の廃棄業者は、これらの法令を熟知しており、法に準拠した適正なプロセスでPCの回収からデータ消去、リサイクルまでを実行します。
産業廃棄物管理票(マニフェスト)の発行・管理や、データ消去証明書といった、監査時にも求められる各種証明書類を確実に提供してくれるため、企業はコンプライアンス違反のリスクを大幅に低減できます。
担当者の知識不足や多忙によるうっかりミスが、企業の信頼を揺るがす大きな問題に発展する前に、専門家へ委託する安心感は非常に大きなメリットです。
トータルコストの可視化
自社でPCを廃棄する場合、担当者の人件費、データ消去ソフトウェアのライセンス費用、PCの一時保管スペースの賃料など、目に見えにくい「隠れコスト」が発生しています。アウトソーシングを利用すると、これらの費用を含めたPC廃棄に関わる一連の費用が「処理費用」として一括で見積もられ、トータルコストが明確になります。一見、外部への委託費用が高く感じるかもしれませんが、自社対応で発生する人件費や機会損失、さらには情報漏洩といった万一のリスクコストまでを考慮すると、結果的にコストパフォーマンスが高くなるケースが少なくありません。
また、買取サービスを併用している業者を選べば、まだ価値のあるPCを売却することで廃棄費用と相殺し、さらなるコスト削減を実現することも可能です。
PC導入時のキッティング作業から廃棄まで、パソコンのキッティングサービスを活用することで、ライフサイクル全体のコスト最適化が図れます。
キッティング作業やパソコンのキッティングサービスについて詳しくはこちらの記事をご参照ください。
▼キッティング作業とは? 目的から手順、注意点、効率化のポイント、そして外部委託の活用法まで徹底解説!
▼パソコン(PC)のキッティングとは? 作業内容、効率化・負担軽減のポイントと注意点、おすすめサービスを解説
まとめ:PC廃棄は法令対応とセキュリティが重要
本記事では、法人向けPC廃棄における費用相場・法令対応・データ消去方法・コスト削減の考え方を整理して解説しました。
PCの廃棄は、機器処分にとどまらず、企業のコンプライアンスと情報セキュリティを左右する重要な業務です。不適切な対応は、法令違反や情報漏洩による信用失墜など、経営リスクに直結します。
コスト削減は重要ですが、安さだけで無料回収業者を選ぶと、不法投棄や情報漏洩のリスクが高まります。相見積もりを行い、データ消去証明書や産業廃棄物管理票(マニフェスト)の発行可否など、コンプライアンス対応を必ず確認することが重要です。
PC廃棄に伴う煩雑な業務は、専門業者へアウトソーシングすることで、情シス担当者の負荷を軽減しつつ、確実な法令・セキュリティ対応を実現できます。
テクバンのLCM(ライフサイクルマネジメント)では、PC調達から廃棄までを一貫して支援しています。
このような課題をお持ちの方におすすめです!
-
PC廃棄時の法令対応やデータ消去に不安がある
-
無料回収業者のリスクが気になっている
-
廃棄・入替対応で情シスの工数が圧迫されている
-
PC調達〜廃棄までをまとめて管理したい
-
現在の廃棄業者が本当に適切か見直したい
※ 検討初期・情報収集中の段階でもご相談いただけます。






