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2025.12.24

MDMソリューションとは? 企業が導入すべき理由と選び方を徹底解説

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モバイルデバイスの増加により、「管理負荷や情報漏えいリスクに課題を感じている」――こうした情シス担当者は少なくありません。2025年現在、従業員一人あたり平均2台以上のデバイスを業務利用しているともいわれています。
本記事では、モバイルデバイスの管理負担を下げるMDMソリューションの基礎から導入メリット、選び方、導入ステップまでを解説します。

MDMソリューションとは?

モバイルデバイスの管理負担の増大は、もはや情シス部門にとって避けて通れない課題です。しかし「MDM」という言葉は聞いたことがあっても、具体的にどのような機能があり、何ができるのかを正確に理解している方は意外と少ないかもしれません。
まずは、MDMの基本的な定義と、関連する用語との違いを整理していきましょう。

MDM(Mobile Device Management)の定義

MDM(Mobile Device Management)とは、企業が利用するスマートフォンやPCなどのモバイルデバイスを一元管理・制御するための仕組みです。
社外に持ち出されるデバイスが増える中、遠隔から安全に管理する手段として重要性が高まっています。
以下のような管理・制御を遠隔から実施します。

  • デバイスの設定やポリシーの統一的な適用
  • アプリケーションの配信と制限
  • セキュリティポリシーの強制
  • デバイスの利用状況の可視化
  • 紛失・盗難時の遠隔ロックやデータ消去

MDMの最大の特徴は、「遠隔管理」が可能な点です。情シス担当者が物理的にデバイスに触れることなく、インターネット経由で設定変更やトラブルシューティングができるため、テレワーク環境でも効率的なデバイス管理を実現します。

EMM、UEMとの違いを整理

デバイス管理の分野では、MDM以外にも「EMM」や「UEM」という用語が頻繁に使われます。これらは混同されやすいため、ここで違いを整理しておきましょう。

用語 正式名称 管理範囲 特徴
MDM Mobile Device Management デバイス本体 デバイスのハードウェア設定、セキュリティポリシーに特化して管理
EMM Enterprise Mobility Management デバイス+アプリ+コンテンツ MDMにアプリ管理(MAM)、コンテンツ管理(MCM)を追加
UEM Unified Endpoint Management すべてのエンドポイント モバイル、PC、IoTデバイスなど全エンドポイントを統合管理

EMMやUEMはMDMを拡張した概念ですが、いずれも中核となるのはMDM機能です。
そのため、自社の管理範囲に応じて、必要なレベルを選択することが重要です。
ソリューション選定時には、自社が「デバイス本体だけを管理したいのか」「アプリやコンテンツも含めて統合管理したいのか」を明確にすることが重要です。

なぜ今、MDMが必要なのか? 3つの背景

MDMソリューションの需要が急速に高まっている現在、その背景には、働き方とIT環境の大きな変化があります。

テレワークの普及とデバイス利用の拡大

テレワークの定着により、社外からのアクセスが常態化し、従来のオフィス勤務前提の管理では対応が難しくなっています。
さらに、ハイブリッドワーク(オフィス勤務とテレワークの組み合わせ)が主流になったことで、同じ従業員が複数の拠点から複数のデバイスを使用するケースも増えています。このような多様な働き方に対応するには、場所を問わず一元管理できるMDMが不可欠です。

BYOD(Bring Your Own Device)の増加

個人所有のデバイスを業務利用するBYODも増加傾向にあります。従業員にとっては使い慣れた端末で作業できるメリットがあり、企業側もデバイス調達コストを削減できる可能性があります。しかし、BYODは柔軟な働き方を実現する一方で、デバイスに企業データと個人データが混在するため、適切な管理が不可欠です。
BYODでは、「業務データだけを管理し、個人データには触れない」という繊細なバランスが求められます。従業員のプライバシーを守りながら、企業のセキュリティも確保する必要があるため、MDMの「コンテナ機能」や「選択的ワイプ」といった高度な機能が重要になります。
BYODについて詳しくはこちらの記事をご参照ください。
▼BYODとは? メリットやデメリット、活用ポイント、導入事例を解説

サイバーセキュリティ脅威の高度化

マルウェア、ランサムウェア、フィッシング攻撃など、サイバー攻撃の手法は日々高度化しています。特にモバイルデバイスは、公衆Wi-Fiへの接続、不正アプリのインストール、OSの脆弱性など、多くの攻撃ベクトルが存在します。
2024年には、モバイルデバイスを標的としたマルウェアが前年比で35%増加したというデータもあります。モバイルデバイスは攻撃の入り口になりやすく、一度侵入を許すと企業ネットワーク全体に被害が広がる可能性があります。このリスクを低減するには、統一されたセキュリティポリシーを全デバイスに適用できるMDMの導入が極めて重要です。
サイバーセキュリティ対策・ゼロトラストセキュリティの実装方法についてはこちらの記事もご参照ください。
▼ZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)とは? 概要から製品比較、導入手順も解説

MDM導入で解決できる5つの課題

MDMソリューションは、情シス部門が日々直面する様々な課題を効果的に解決します。
ここでは、特に多くの企業が抱えている5つの代表的な課題と、MDMによる具体的な解決策を見ていきましょう。これらの課題に一つでも心当たりがある場合、MDM導入を検討する価値は十分にあります。

課題1:デバイス管理の属人化と負荷増大

デバイスが増えるたびに、設定作業やトラブル対応が個別発生し、情シス担当者の負荷が増大しています。特に中小企業では、少人数の情シス部門が数百台のデバイスを管理しているケースも珍しくありません。従業員の入退社や異動のたびに設定作業が発生し、情シス担当者の負荷が大きくなっています。
さらに深刻なのが属人化の問題です。「このデバイスの設定は○○さんしか分からない」という状況が生まれると、その担当者が不在の際にトラブル対応ができなくなります。また、担当者の退職時には貴重なノウハウが失われてしまうリスクもあります。

MDMによる解決

MDMを導入すると、管理コンソールから一括でデバイス設定やアプリ配信が可能になります。新規デバイスの初期設定も、あらかじめテンプレートを作成しておけば、デバイスを開封して電源を入れるだけで自動的に必要な設定が適用される「ゼロタッチプロビジョニング」が実現できます。
設定内容はすべてシステム上に記録されるため、誰でも同じ手順で作業でき、属人化も解消されます。MDMにより設定作業を自動化でき、セットアップ工数を大幅に削減できます。
キッティング作業の効率化について詳しくはこちらの記事をご参照ください。
▼キッティング作業とは? 目的から手順、注意点、効率化のポイント、そして外部委託の活用法まで徹底解説!

課題2:セキュリティポリシーの不統一

デバイスごとにセキュリティ設定が異なり、全社的なセキュリティポリシーを徹底できないという課題があります。例えば、営業部門のスマートフォンは厳格に管理されているが、管理部門のタブレットは野放し状態、といった状況も見受けられます。
パスワード設定、画面ロック時間、暗号化の有無など、セキュリティレベルにばらつきが生じていると、最も脆弱な部分から情報漏えいが発生するリスクがあります。また、コンプライアンス監査の際に「全デバイスが基準を満たしているか」を証明できないという問題も発生します。

MDMによる解決

MDMを使えば、全デバイスに統一されたセキュリティポリシーを強制適用できます。パスワード強度(英数字記号混在、最低8文字など)、画面ロック時間(5分間操作がなければ自動ロック)、ストレージの暗号化など、詳細な設定を一括管理できます。
さらに、ポリシーに違反しているデバイスを自動検知し、管理者にアラートを送る機能もあります。例えば、ジェイルブレイク(脱獄)されたiPhoneや、セキュリティパッチが適用されていないAndroid端末を即座に発見し、企業ネットワークへのアクセスを遮断することも可能です。これにより、コンプライアンスを確実に担保できます。

課題3:紛失・盗難時の情報漏えいリスク

モバイルデバイスは持ち運びが前提であるため、紛失や盗難のリスクは常に存在します。電車内への置き忘れ、飲食店でのひったくり、出張先での盗難など、様々なシーンで発生する可能性があります。
従来の管理方法では、紛失の報告を受けてから対応を検討するため、その間に機密情報が第三者に閲覧されるリスクがあります。特に役員クラスが使用するデバイスには、経営に関わる重要情報が保存されていることも多く、漏えいした場合の影響は計り知れません。

MDMによる解決

MDMを導入していれば、紛失の報告を受けた瞬間に遠隔からデバイスをロックできます。さらに、回復の見込みがない場合は、完全にデータを消去(ワイプ)することも可能です。この操作は管理コンソールから数クリックで実行でき、数分以内にデバイス上のすべてのデータが消去されます。
また、GPS機能を使った位置情報の追跡により、デバイスがどこにあるかをリアルタイムで把握できます。社内に置き忘れただけなのか、本当に盗難にあったのかを判断する材料にもなります。ある企業では、MDMの遠隔ロック機能により、紛失デバイスからの情報漏えいをゼロに抑えることができています。

課題4:アプリケーション配信と更新の手間

業務に必要なアプリケーションを全デバイスにインストールする作業は、想像以上に時間がかかります。従業員一人ひとりにインストール手順を説明し、トラブルがあれば個別対応する必要があります。さらに、アプリのバージョンアップがあるたびに同じ作業を繰り返すことになります。
また、従業員が勝手に業務に関係のないアプリをインストールし、それがセキュリティリスクになるケースもあります。ゲームアプリに見せかけたマルウェアや、過剰な権限を要求する不審なアプリなど、野放しにすると企業の情報資産が危険にさらされます。

MDMによる解決

MDMを使えば、必要なアプリを一括で全デバイスに配信できます。従業員は何もしなくても、自動的に業務アプリがインストールされた状態でデバイスを使い始められます。アップデートも自動で適用されるため、常に最新かつ安全なバージョンを使用できます。
さらに、ブラックリスト機能を使えば、特定のアプリのインストールを禁止できます。逆にホワイトリスト機能では、承認されたアプリのみインストール可能にすることで、より厳格な管理も実現できます。企業によっては、社内アプリストアを構築し、承認済みアプリだけを従業員に提供している例もあります。

課題5:デバイス利用状況の可視化不足

「どのデバイスがどこで誰に使われているか」を正確に把握できていない企業は意外と多いものです。台帳は作成しているものの、異動や退職で実態と合わなくなっている、といったケースも見受けられます。
可視化が不十分だと、適切な資産管理ができません。使われていないデバイスに対してもライセンス料金を支払い続けたり、故障しているデバイスに気づかず放置されたりすることもあります。また、経営層から「IT投資の効果を示せ」と言われても、具体的なデータを提示できないという問題も発生します。

MDMによる解決

MDMは、デバイスのインベントリ情報、利用状況、通信量などをリアルタイムで可視化します。管理コンソールのダッシュボードを見れば、全デバイスの状態を一目で把握できます。
例えば、「過去30日間一度も使用されていないデバイス」を抽出して回収対象にしたり、「通信量が異常に多いデバイス」を発見して不正利用の可能性を調査したりできます。レポート機能を使えば、経営層への報告資料も自動生成でき、IT投資の費用対効果を明確に示せます。
さらにデバイス管理の課題解決ソリューションについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

MDMソリューションの主要機能

ここまでMDMで解決できる課題を見てきましたが、それらを実現するための具体的な機能について詳しく解説します。
MDMソリューションの機能は多岐にわたりますが、主に5つのカテゴリに分類できます。製品選定の際には、これらの機能が自社の要件を満たしているかを確認することが重要です。

1.デバイス管理機能

デバイス管理機能は、離れた場所にある端末を遠隔から一元管理するMDMの中核機能です。

  • リモート設定管理
    Wi-Fi、VPN、メール設定などを遠隔から一括設定できます。例えば、オフィスのWi-Fiパスワードが変更された場合、全デバイスに新しい設定を一度に配信できます。
  • デバイス登録
    新規デバイスの自動登録(ゼロタッチプロビジョニング)により、箱から出してすぐに業務で使える状態になります。従来の手動設定と比べて、セットアップ時間を90%以上削減できます。
  • OS・ファームウェア更新管理
    セキュリティパッチの適用状況を管理し、古いバージョンのOSを使っているデバイスに自動アップデートを促します。
  • インベントリ管理
    ハードウェア情報(機種名、シリアル番号、メモリ容量など)、OSバージョン、インストールアプリの一覧を自動収集し、常に最新の資産台帳を維持できます。

2.セキュリティ機能

セキュリティ機能は、企業の情報資産を守るための防御壁となります。様々な脅威から組織を保護するため、多層的なセキュリティ対策を提供します。

  • パスワードポリシー強制
    パスワードの最低文字数、英数字記号の混在、定期変更などのルールを設定し、すべてのデバイスに強制適用します。
  • デバイス暗号化
    ストレージを強制的に暗号化することで、万が一デバイスが盗まれても、データを読み取られるリスクを最小化します。
  • リモートロック・ワイプ
    紛失・盗難時に、遠隔からデバイスをロックしたり、すべてのデータを消去したりできます。ワイプ機能には、全データを消去する「完全ワイプ」と、業務データのみを消去する「選択的ワイプ」があります。
  • コンプライアンスチェック
    ジェイルブレイク(脱獄)やルート化されたデバイスを自動検知し、企業ネットワークへのアクセスを遮断します。
  • 位置情報追跡
    GPS機能を使ってデバイスの現在位置を特定できます。紛失時の捜索だけでなく、営業担当者の動線分析などにも活用できます。

3.アプリケーション管理機能(MAM)

アプリケーション管理機能は、業務に必要なアプリを適切に配信し、不要なアプリを排除するための機能です。

  • アプリ配信
    業務アプリを一括配信し、自動インストールできます。Salesforce、Microsoft Teams、Zoomなどの主要ビジネスアプリはもちろん、社内開発アプリも配信可能です。
  • アプリブラックリスト/ホワイトリスト
    禁止アプリ(例:ファイル共有アプリ、ゲームアプリ)、許可アプリのリストを作成し、インストールを制御できます。
  • アプリ更新管理
    アプリのバージョンを管理し、古いバージョンを使っているデバイスに自動更新を促します。セキュリティ脆弱性のある旧バージョンの使用を防げます。
  • 社内アプリストア
    承認済みアプリのみを掲載したプライベートアプリストアを構築できます。従業員は安心してアプリを選択できます。

4.コンテンツ管理機能(MCM)

コンテンツ管理機能は、ドキュメントやファイルを安全に配信・管理するための機能です。特にBYODを導入している企業では、業務データと個人データを分離する重要な役割を果たします。

  • セキュアコンテナ
    デバイス内に仮想的な「業務専用エリア」を作成し、業務データと個人データを完全に分離します。BYODでも従業員のプライバシーを侵害せずに管理できます。
  • ドキュメント配信
    マニュアル、規定集、製品カタログなどの資料を安全に配信できます。閲覧期限を設定したり、印刷やコピーを禁止したりすることも可能です。
  • データ暗号化
    コンテンツを暗号化して保存し、権限のない第三者が閲覧できないようにします。
  • データワイプ
    退職時などに、業務データのみを選択的に削除できます。個人の写真やアプリはそのまま残せるため、BYODでも安心です。

5.レポーティング・分析機能

レポーティング・分析機能は、デバイス管理の現状を可視化し、経営判断に必要なデータを提供します。

  • 利用状況ダッシュボード
    デバイス稼働率、通信量、バッテリー状態などをグラフィカルに表示します。一目で全体像を把握できます。
  • コンプライアンスレポート
    セキュリティポリシーへの適合状況を自動集計し、レポートを生成します。監査対応にも活用できます。
  • セキュリティインシデント追跡
    ポリシー違反、不正アクセス試行などのセキュリティイベントを記録し、分析できます。
  • 資産管理レポート
    デバイスのライフサイクル(購入、配布、回収、廃棄)を追跡し、適切な更新タイミングを判断するための情報を提供します。

こちらの関連記事もご参照ください。
▼統合運用管理ツールとは? システム運用管理に役立つツールを解説

失敗しないMDMソリューションの選び方

MDMソリューションは市場に多数存在し、それぞれ特徴や強みが異なります。自社に最適な製品を選ぶには、明確な評価基準を持つことが重要です。
ここでは、選定時に重視すべき5つのポイントを解説します。これらのポイントをチェックリストとして活用することで、導入後の「こんなはずではなかった」を防ぐことができるでしょう。
IT資産管理全般についてはこちらもご参考になさってください。
▼IT資産管理ツール比較10選! 機能、タイプ別の選び方も紹介

ポイント1:対応OS・デバイスの範囲

まず確認すべきは、MDMソリューションが自社で使用している、または今後使用予定のOSやデバイスに対応しているかです。

  • iOS、Android、Windows、macOSなど、自社で利用するOSすべてに対応しているか
  • スマートフォン、タブレット、ノートPC、デスクトップPC、さらにはウェアラブルデバイスなど、管理したいデバイス種別に対応しているか
  • 今後増える可能性のあるデバイス(例:業務用ドローン、IoT機器)にも対応可能か

注意点

OSごとに利用できる機能差があるため、主要OSで必要な機能が使えるか事前確認が必要です。
また、対応OSのバージョンも重要です。最新のiOSやAndroidに対応しているか、逆に古いバージョンのサポートはいつまで続くのかも確認が必要です。

ポイント2:セキュリティレベルと機能

セキュリティ機能の充実度は、MDM選定における最重要ポイントの一つです。

  • 自社のセキュリティポリシーに必要な機能(パスワード強制、暗号化、リモートワイプなど)が揃っているか
  • ゼロトラストセキュリティの考え方に対応しているか
  • 多要素認証(MFA)、生体認証(指紋、顔認証)のサポート状況
  • 業界標準規格(FIPS 140-2、Common Criteria)への準拠状況
  • 脅威検知機能(マルウェアスキャン、異常行動検知)の有無

注意点

セキュリティレベルが高すぎると、ユーザーの利便性が損なわれ、現場から不満が出る可能性があります。例えば、パスワードを毎週変更させる設定にすると、パスワード忘れによるロックアウトが頻発するかもしれません。
また、過度に高機能なソリューションは、運用が複雑化し、かえって管理負荷が増えることもあります。自社のリスク許容度に合わせて、必要十分な機能を見極めることが大切です。金融機関と一般企業では求められるセキュリティレベルが異なることを理解しましょう。
ゼロトラストセキュリティについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
▼ゼロトラストネットワークとは何か? 従来のセキュリティとの違いやメリット・デメリットについて解説

ポイント3:既存システムとの連携性

MDMは単独で動作するものではなく、既存のITインフラと連携して初めて真価を発揮します。

  • Active Directory(AD)、Azure ADなどの既存のID管理システムと連携できるか
  • Microsoft 365、Google Workspaceなどのクラウドサービスとシームレスに統合できるか
  • VPN、ファイアウォール、プロキシサーバーなどのネットワーク機器と連携できるか
  • ウイルス対策ソフト、EDR(エンドポイント検知・対応)ソリューションと統合できるか
  • SIEM(セキュリティ情報イベント管理)にログを送信できるか

注意点

既存インフラとの親和性が低いと、導入後に想定外の追加投資が必要になるケースがあります。例えば、Active Directoryと連携できないMDMを選んでしまうと、ユーザー情報を二重管理する手間が発生します。
また、API連携の可否だけでなく、連携の設定がどれだけ簡単かも重要です。複雑な設定が必要な場合、専門知識を持つエンジニアを雇用するか、外部ベンダーに依頼する必要があり、コストが膨らみます。導入前に実際の連携設定をデモで確認することをお勧めします。
AD連携について詳しくはこちらの記事をご参照ください。
▼AD(Active Directory)連携によるシングルサインオン(SSO)について、目的やメリット・デメリットを解説!

ポイント4:サポート体制と実績

MDMは導入して終わりではなく、継続的な運用が必要です。そのため、ベンダーのサポート体制は重要です。

  • 日本語サポートの有無と対応時間
  • 導入支援サービスの内容(現状分析、要件定義、設計、構築、移行、ユーザー教育)
  • 同業種・同規模企業での導入実績とその成功事例
  • ベンダーの製品開発継続性と市場シェア
  • ユーザーコミュニティやナレッジベースの充実度

注意点

海外製品の場合、日本語対応が不十分なケースがあります。問い合わせが英語のみ、またはドキュメントが英語しかない場合、運用担当者の負担が大きくなります。グローバル企業で英語が標準である場合を除き、日本語サポートが充実しているかは重要な判断基準です。
また、ベンダー自身のサポート体制だけでなく、日本国内にパートナー企業がどれだけ存在するかも確認しましょう。実績豊富なパートナーを選ぶことで、業界特有の課題に対応したノウハウを活用できます。例えば、製造業であれば工場内での特殊な通信環境への対応、医療業界であればHIPAA準拠の実績などが重要になります。

ポイント5:コスト構造と総保有コスト(TCO)

MDM選定において、初期費用や月額ライセンス費用といった目先の価格だけで判断してはいけません。導入から運用、そして廃棄に至るまでにかかる費用の総額、すなわち「総保有コスト(TCO:Total Cost of Ownership)」の視点で評価することが肝要です。

  • ライセンス費用(初期費用および月額費用)
  • 導入支援を依頼する場合のコンサルティング費用
  • 管理者の教育・トレーニング費用
  • 日々の運用・管理にかかる人件費
  • 料金体系の違い(デバイス単位か、ユーザー単位か)

注意点

料金体系が「デバイス単位」なのか「ユーザー単位」なのかによって、総コストは大きく変動するため注意が必要です。昨今では1人の従業員がスマートフォンとタブレットなど複数のデバイスを利用するケースが増えており、その場合はユーザー単位のライセンス(ID課金)を選択する方がコストメリットが出ることがあります。
また、単に安価な製品を選ぶのではなく、複数の製品から見積もりを取得し、「機能」「サポート体制」そして「TCO」のバランスを総合的に見極めることが重要です。見かけの安さだけでなく、最もコストパフォーマンスに優れたソリューションを選定しましょう。
MDMサービスの選び方について、さらに詳しくはこちらの記事もご参考になさってください。
▼MDMサービスとは何か? 機能や必要性、法人の導入・サービス比較ポイントと選び方を徹底解説

MDM導入の5ステップと注意点

MDMソリューションの導入は、単にツールを導入するだけでは成功しません。自社の環境や目的に合わせた計画的な進行が不可欠です。
ここでは、MDM導入を成功に導くための具体的な5つのステップと、各段階での注意点を詳しく解説します。

Step 1:現状分析と要件定義

MDM導入の第一歩は、現状を正確に把握し、何を解決したいのかという「要件」を明確にすることです。
まずは、管理対象となるデバイスの種類(スマートフォン、タブレット、PCなど)、OS、台数、利用している従業員の部署や役職、現在の管理方法などを洗い出します。その上で、「なぜMDMを導入するのか」という目的を具体的に定義します。「セキュリティを強化したい」「デバイス管理の工数を削減したい」「コンプライアンスを遵守したい」など、目的を明確にすることで、導入すべきMDMの機能や必要なスペックが見えてきます。
要件定義が曖昧だと、製品選定や導入後の失敗につながるため、導入プロセスの中でも重要度の高いステップです。

Step 2:製品選定とベンダー比較

要件定義で定めた内容に基づき、複数のMDMソリューションを比較検討します。Step1で明確にした管理対象OSやデバイスに対応していることが大前提です。
その上で、リモートロックやデータ消去といった基本的なセキュリティ機能から、アプリケーションの配布・更新機能、利用状況のレポーティング機能まで、自社の要件を満たす機能を備えているかを確認します。
また、クラウド型かオンプレミス型か、サポート体制(日本語対応、対応時間など)は充実しているか、そして初期費用や月額費用といったコスト面も重要な比較ポイントです。単なる機能の多さだけでなく、自社のIT管理者のスキルや運用体制に見合った製品を選ぶことが、導入後のスムーズな運用につながります。

Step 3:PoC(概念実証)の実施

本格導入の前に、特定の部署や少数のデバイスで試験的に導入し、機能や操作性、業務への影響を検証するPoC(Proof of Concept)を実施します。PoCの目的は、実際の業務シナリオに沿ってMDMが期待通りに機能するかを実証することです。
例えば、管理者が意図した通りにデバイスを制限できるか、従業員がストレスなくデバイスを利用できるか、既存のネットワーク環境で問題なく動作するかなどを確認します。このテストを通じて、本格導入前に設定の不備や潜在的な問題点を洗い出し、修正することが可能になります。PoC自体が目的化しないよう、事前に「何を」「どのように」検証し、「どのような状態になれば成功とするか」という評価基準を明確にしておくことが重要です。

Step 4:本番導入と展開

PoCの結果を基に設定を最適化し、全社的に導入・展開します。このステップで重要なのは、従業員への丁寧な事前説明と周知徹底です。なぜMDMを導入するのかという目的、導入によって何が変わるのか(あるいは変わらないのか)、機能制限の具体的な内容、そして紛失・盗難といったトラブル発生時の連絡先や対応フローなどをまとめたマニュアルを準備し、説明会などを通じて共有します。
事前のコミュニケーションを怠ると、従業員の間に不満や混乱が広がり、「業務効率が落ちた」「監視されているようで不快だ」といった反発を招きかねません。スムーズな導入と定着のためには、従業員の理解と協力が不可欠です。

Step 5:運用定着と改善(継続)

MDMは導入して終わりではありません。むしろ、導入後からが本格的な運用のスタートです。定期的にデバイスの利用状況やログをモニタリングし、セキュリティインシデントが発生していないかを確認します。
また、OSのアップデートや新たなセキュリティ脅威の出現に合わせて、ポリシー設定を随時見直していく必要があります。運用を特定の担当者に依存させず、情報システム部門内で手順を標準化・ドキュメント化し、チームで対応できる体制を構築することが、長期的に安定した運用を実現する鍵となります。
従業員からのフィードバックを収集し、過剰な制限があれば緩和するなど、セキュリティと利便性のバランスを取りながら継続的に改善していく姿勢が求められます。

テクバンのMDMソリューション支援サービス

MDMソリューションの導入を検討する上で、どのベンダーに依頼するかは非常に重要なポイントです。
テクバンでは、企業のデバイス管理課題を包括的に支援するサービスを提供しています。
ここでは、テクバンのMDM支援サービスの特長を紹介します。

豊富な製品ラインナップ

テクバンは、特定の製品に縛られないマルチベンダーとして、お客様の環境や要件に最適なMDMソリューションを提案します。国内外で高い評価を得ている主要なMDMツールを幅広く取り扱っています。
これにより、OS(iOS, Android, Windows, macOS)の多様性や、求めるセキュリティレベル、既存システムとの連携といった様々なニーズに対して、中立的な視点から最も効果的な製品を選定し、ご提案することが可能です。

主な取扱製品

また、MDM機能だけでなく、関連するセキュリティソリューションとの組み合わせもご提案可能です。

関連記事もご用意しております。ぜひご覧ください。
▼【最新版】EDRシェア分析! 世界・日本市場の動向、主要ベンダー、導入メリットまで解説

LCM(ライフサイクル管理)との統合提案

テクバンの強みは、MDMを単体のソリューションとしてではなく、PCやスマートデバイスの調達、設定(キッティング)、運用、保守、そして廃棄に至るまでの一連のプロセスを管理する「LCM(ライフサイクル管理)サービス」と統合して提供できる点にあります。
MDMによるデバイス管理の効率化はもちろんのこと、導入時の煩雑なキッティング作業の代行、故障時の代替機発送やヘルプデスク対応、そして不要になった端末の適切なデータ消去と廃棄までをワンストップでサポートします。
MDMとLCMを組み合わせることで、情報システム部門担当者の負担を大幅に軽減できます。

LCMサービスの内容

  • デバイスの調達から廃棄までの一元管理
  • キッティング(初期設定)作業の代行
  • 故障対応、修理手配
  • 資産管理台帳の作成・更新
  • リプレース計画の策定支援

PC関連の記事もご参考になさってください。
▼法人(PC)パソコン買い替えタイミングはいつ? やるべき準備、注意点を徹底解説! アウトソーシングによる効率化も紹介

導入から運用まで一貫したサポート体制

MDMソリューションは、導入して終わりではありません。
テクバンでは、豊富な経験を持つ専門家が、導入前の要件定義や環境アセスメントから、設計・構築、そして導入後の運用・保守まで、すべてのフェーズで一貫したサポートを提供します。
例えば、導入後の運用フェーズでは、ヘルプデスクサービス「Techvan Support Center」をご利用いただくことで、管理者様からの技術的な問い合わせだけでなく、従業員からの操作方法に関する質問にも対応可能です。
これにより、日常的な運用負荷を大幅に軽減し、MDMの効果を最大限に引き出すことができます。

導入支援

次のような導入サポートメニューを用意しています。

  • 現状分析・要件定義のサポート
  • 最適なソリューション選定支援
  • 設計・構築作業の代行
  • PoC環境の構築支援

運用支援

導入だけでなく、スムーズな運用をサポートするメニューがございます。

  • ヘルプデスク業務の代行
  • テクニカルサポート(管理者向け、ユーザー向け)
  • 定期的な運用レビューと改善提案
  • セキュリティアップデート対応

実績と強み

テクバンは、多様な環境・課題に向き合ってきた経験をもとに、情シス部門の実務に即したサポートを強みとしています。これまでの実績に裏打ちされた特長は次のとおりです。

  • マルチベンダー対応による中立的な提案
  • 豊富な導入実績に基づくノウハウ
  • 情シス部門に寄り添った柔軟なサポート

導入事例のご紹介

テクバンでは、これまで多種多様な業種・規模の企業様へMDMソリューションを導入し、課題解決を支援してまいりました。ここでは、その一部をご紹介します。

事例1: デバイス管理の効率化を実現

従業員数百名規模の企業様で、管理者が手作業で行っていた数十台のスマートフォンの設定作業が大きな負担となっていました。MDMを導入し、キッティングサービスを併用することで、デバイス設定を自動化し、管理工数を大幅に削減。情報システム部門の業務効率化に大きく貢献しました。

事例2: 管理工数とコストの課題を解決

化粧品メーカーの株式会社マンダム様では、約600人の社員からの多岐にわたるIT関連の問い合わせに8名で対応しており、リソース不足が課題でした。テクバンのサポートサービスを導入し、問い合わせ対応やアカウント管理、キッティングなどを包括的に委託。ベンダーを一本化することで管理の手間を省き、コスト削減効果も見込まれるなど、ITリソースの最適化を実現しました。

事例3: 事業立ち上げ時の急速な展開

新規に会社を設立した企業では、キッティング業務に詳しい人材がおらず、ネットワーク設定も複雑で、デバイス導入が思うように進まないという課題がありました。テクバンは、キッティングからIT資産管理までを全面的にサポート。専門スタッフによる運用設計やマニュアル整備に加え、デバイスの選定を調達段階から対応しました。その結果、導入から保守・運用に至るまでの課題を包括的に解消し、スムーズな事業立ち上げを支援しました。
その他のテクバンの企業導入事例はこちら

まとめ:MDM導入で情シス業務を効率化し、セキュリティを強化

本記事では、MDMソリューションの概要から導入効果、選び方、導入ステップまでを解説しました。
テレワークやBYODの定着により、デバイス管理とセキュリティ対策は企業にとって重要なテーマです。
MDMを導入することで、デバイス管理の効率化と情報漏えいリスクの低減を同時に実現できます。
導入効果を最大化するには、自社の課題に合った設計と運用を行うことが不可欠です。
MDMの導入検討や運用に不安がある方は、テクバンにぜひご相談ください。

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