PC管理は昔と現在では内容も目的も大きく変わっています。単にPCという資産の保有状況の確認にとどまらず、業務効率の最大化やコスト削減、そして情報セキュリティの確立やコンプライアンスの順守に不可欠な経営戦略の一つとして、PC管理は位置付けられています。
そこで本記事では、PC管理における意味合いの変遷から、3大基本要素、さらには必要性と直面しがちな課題、さらには効果的な管理体制を築くためのデバイス管理ツールの活用ポイントまで、詳しく解説します。
PC管理の時代変遷
企業へのコンピューター導入が本格化したのは、1980年代後半から1990年代前半にかけてのことです。当初は、特定の部署に大型のオフィスコンピューターが設置される程度でしたが、やがてNECのPC-9801シリーズやDOS/Vマシン、そしてApple社のMacintoshシリーズといったパーソナルコンピューターが、固定資産として各部門に配備されるようになりました。これにより、必然的にPC管理の概念が誕生します。
特に1990年代後半のMicrosoft社のWindows 95の登場は、パーソナルコンピューターの普及に拍車をかけ、企業が保有するデバイスの総数は飛躍的に増加しました。この台数の増加に伴い、PC管理の重要性も増していきます。
当時のPC管理は、主に自社が所有する固定資産の数量を把握することが目的であり、経理部門や総務部門がその責任者を担うことが一般的でした。どのPCがどの部署にあるかといった実態調査は、現在も変わらず行われる業務の基本です。
その後、PCが「部署に1台」から「数人で1台」、さらには「1人1台」へと普及が進むにつれて、ソフトウェアや周辺機器も多様化し、その管理は複雑化の一途を辿ります。
かつてはソフトウェアライセンスの概念が希薄だったため、フロッピーディスクによるプログラムの複製や使い回しが横行していた時代もありました。しかし、知的財産権保護の意識の高まりとともに、制度的なPC管理の必要性が強く認識されるようになります。
単に物理的な存在確認だけでは不十分となり、デバイスがどこにあって誰が使用しているかだけでなく、OSやメモリ、ストレージといったスペック情報、さらには利用するソフトウェアのバージョン情報やライセンス詳細までを含めた統合的な運用が求められるようになりました。
これは、企業の社会的責任と密接に結びついています。
PC管理の3大基本要素
PC管理を効果的に行うためには、大きく分けて以下の3つの基本要素を網羅することが不可欠です。
1.資産管理
PC管理における最初の基本要素は、資産管理です。
PCは企業の物理的資産で、固定資産として厳密に管理されるべき対象です。
取得時には管理番号を付与して他の資産と明確に区別し、廃棄するまで定期的に棚卸しを行い、その所在と状態を把握します。
従来の資産管理の主目的は、保有する固定資産台帳の正確性を担保することにありました。
しかし、現在の資産管理は、PC本体だけでなく、サーバーや周辺機器といったハードウェア、さらにはインストールされているソフトウェアまでを管理対象とし、IT資産管理と呼ばれています。これによって、企業の所有物に対する全体像を把握し、最適化を図ることが可能になるのです。
2.インベントリ管理
PC管理の3大基本要素の2つめは、インベントリ管理です。
インベントリとは「在庫」や「目録」「一覧表」といった意味を持ちます。PCの機種や機番、主要スペック、IPアドレス情報、OSのバージョン、さらにはアプリケーションの利用状況、サブスクリプション契約など、デバイスに関する詳細な情報を台帳形式で一元管理するのがインベントリ管理です。
インベントリ管理の最大のメリットは、情報の一元化による可視化です。これによって、ソフトウェアのアップデートのタイミングやセキュリティ面の脆弱性などを迅速に把握できるようになり、迅速な対応が可能になります。
ネットワークに接続された端末の状態をリアルタイムで把握し、問題が発生する前に予防的な措置を講じることができます。
3.ライセンス管理
PC管理の3大基本要素の3つめは、ライセンス管理です。
インベントリ管理によってソフトウェアライセンスの情報は可視化されますが、その情報と実際にPCにインストールされているソフトウェアのライセンスが常に一致しているとは限りません。インベントリ管理は扱う情報量が膨大で、リアルタイムでの更新が難しいケースも少なくないからです。
そのため、ライセンスの種類、数量、使用者、そして管理部署といったライセンス情報に不一致がないか、契約に違反していないかなど、情報と実態を突き合わせて管理する必要があります。適切なライセンス管理は、コンプライアンスの順守に直結し、知的財産権の侵害によるリスクを回避するために不可欠です。
PC管理による業務効率の向上
多数のPCと周辺機器、ソフトウェアやツールを活用した業務が当たり前となっている現在、PC管理を適切に行うことは、業務効率の観点からも極めて重要です。
そこで、PC管理が重要度を増した背景を業務効率の側面から探ります。
企業内で使用されるデバイスの台数増加
社内にPCが1台しかなかった時代や、部署に1台しかなかった時代には、固定資産管理としてのPC管理は行われていたものの、特段のトラブルに発展する要素は少なかったといえるでしょう。現在と比べると、PC管理は必ずしも厳密な作業を必要としない業務だったかもしれません。
しかし、導入するPCなどの端末の総台数が増え、個人用PCが当たり前の時代となり、さらにはノートPCの社外への持ち出しが一般化したことで、紛失や破損といった事態の把握を含め、どこで誰が使っているかという物理的資産管理としての重要性が増すようになりました。
そのため、管理不足から生じるトラブルを防止し、業務効率を悪化させないよう、システマチックなPC管理が不可欠となっています。
PCで利用するソフトウェアやアプリケーションの多様化への対応
例えば、Exce(エクセル)lやWord(ワード)など、オフィスの定番といえるソフトウェアだけを使っていた時代のPC管理は、管理すべき情報の種類や総量はそこまで多くありませんでした。ネットワークがなかったわけではないものの、これほどインターネットが普及する前は、一般企業ではスタンドアローンで完結していたPCがほとんどでした。
一方、インターネットはもちろんのこと、クラウドの活用が当たり前となっている現在では、様々なソフトウェアやツールを1台のPCで利用するケースが多く、管理が甘いとどのPCで何が使われているかが見えにくくなります。
状況の把握が不正確になると、資産管理の問題になるだけでなく、実態の解明に労力を要するなど業務効率の観点からも好ましくなく、適切なPC管理が強く望まれるのです。
重複購入を避け、統一された環境の構築
人数分の個人用PCでExcelやWordを使用している企業は少なくありません。
このように複数のPCで同一のソフトウェアを使用する場合、全員が使用するために必要な数のライセンスを揃える必要があります。PC管理体制が明確になっておらず、有効に機能していないと、各自が個別にライセンスを用意するといった非効率な状況になりかねません。
また、同じような業務を行うメンバーが思い思いに別々のソフトウェアやツールを使っていては、互換性の面やコスト面でデメリットが生じてしまいます。
適切なPC管理を実行することで、過不足のないライセンス取得やソフトウェア、ツールの統一ができ、効率的な業務で無駄なコスト削減につながる点が大きなメリットです。これによって、社内全体の情報が一元化され、コミュニケーションも円滑になるでしょう。
PC管理とコンプライアンス対策
PC管理には、コンプライアンス対策という極めて重要な役割も存在します。
企業としての責務を果たす
コンプライアンス重視が叫ばれている中で、企業としての責務を全うするためには、ソフトウェアのライセンス違反といった好ましくない行為は断じて避けなければなりません。かつて見られたような違法コピーなどは論外です。仮にうっかりミスなどで、コンプライアンスの観点から問題があった場合は、速やかに是正する態勢を整えることが強く望まれます。
営利企業であっても「企業は社会の公器」といわれることを考えれば、ライセンス管理などのPC管理によってコンプライアンス対策を実行することは、企業の社会的責任でもあります。透明性のある運用は、企業の信頼性を高める上で不可欠です。
損失を回避するためのPC管理
コンプライアンスを重視することは、企業として社会に対する責務を全うすると同時に、損害を回避するためでもあります。
知的財産保護の意識が高まり、権利侵害に対する反応が厳しくなっていることもあり、ソフトウェアのライセンス違反などは、違約金や損害賠償を請求されたり、社会的信用を失墜したりすることが懸念されるネガティブな要素です。
コンプライアンス違反はそのまま企業の損失につながり得る事態であり、場合によっては取り返しがつかないこともあり、PC管理の重要性は必然的に高まるのです。企業の存続に関わる危機を未然に防ぐためにも、厳格な管理が求められます。
PC管理とセキュリティ対策
セキュリティ対策の観点からも、PC管理の重要性は極めて大きいといえます。
増大するセキュリティリスク
PCがネットワークにつながっていなければ、ウイルス感染などのリスクはUSBメモリやSDカードなどの外部装置を経由したケースに限定されます。
しかし、インターネットに常時接続されている環境が一般化している現在、日々新しいウイルスやスパイウェアが生まれていることもあって、セキュリティリスクは増すばかりです。
セキュリティ対策をPC使用者が個々のレベルで行うことは非効率であるだけでなく、企業としてセキュリティレベルの低下につながりかねず、リスクが大きいといえます。
一元的に全社的なセキュリティ対策を実行する上で、適切なPC管理が欠かせません。不正アクセスやデータ漏洩を防ぐためには、統制された環境が必須です。
情報漏えいは死活問題にも
セキュリティ対策が不十分で自社や取引先に関する機密情報が漏えいした場合、まずは経済的な損失の発生が懸念されます。同時にセキュリティリスクへの向き合い方が問題視されかねず、信用失墜から企業の存続にかかわる問題に発展しかねません。
そのリスクを抑えるためにもPC管理は必要不可欠です。パスワードの管理やアクセス権限の徹底など、具体的な対策が求められます。
PC管理の課題
PC管理は、正確な資産管理ができるだけでなく、コンプライアンス対策やセキュリティ対策にも役立つ業務です。しかし、状況によっては次に示すような問題点も存在します。
適任者がいない場合は中途半端な管理になる可能性も
固定資産台帳に記載されている現物の確認をするだけであれば、PC関連の専門知識はなくてもよいでしょう。
しかし、現在のPC管理は社内ネットワークを理解していることが強く求められ、ITやサイバーセキュリティなどの専門知識がある人材の配置が必要です。そのため、情報システム部門やネットワーク部門などで一定の専門知識を持つ担当者が担うべき業務となっています。
とはいえ、すべての企業に専門部署があるわけではなく、全社を見渡しても適任者がいない企業も少なくありません。この場合は他の業務を兼任している担当者が行うことになるでしょう。ただし、PC管理が中途半端になってしまうなど、効率的な管理ができない事態になりかねません。
解決策として、アウトソーシング、つまり外注する手があります。アウトソース先の選択を間違えなければ、最短でしっかりした管理体制が手に入るでしょう。ただし、コスト負担が許容できる範囲に収まるかを検討する必要が生じます。管理者情報の共有と連携も重要です。
アウトソーシング以外の選択肢として考えられるのは、人材の採用や育成です。ただし、こちらも実際に業務が行えるようになるまで、時間とコストがかかることを考慮しなければなりません。
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管理が属人化してしまうリスク
PC管理は一定の人的リソースを割く業務です。一方で、担当者の人数が多すぎると、それぞれの役割があいまいになりかねません。また、権限を分散するとルール外の扱いが起こりやすくなるといえます。
このため、特定の担当者が管理に当たることになりますが、今度は担当者以外、他にわかる人がいないという属人的な業務になってしまうリスクがあります。
担当者が固定されると、応援も支援策もない状況になりがちで、やがて管理が回らなくなり、負荷増大、モチベーション低下から貴重な人材が流出する恐れも生じます。
業務の標準化と複数名での情報共有が不可欠です。業務フローを明確にした表を作成するのも良いでしょう。
海外拠点のPCは管理が難しい
海外に進出している企業が多い現在、国内事業所だけでなく海外の拠点に設置しているPCの管理が課題となるケースもあります。
海外の拠点にあるPCは国内と同様に管理できるわけではありません。現地の法律や規制、ネットワーク環境の違いも考慮に入れる必要があり、必要に迫られて担当者が渡航するケースもあります。遠隔地からの運用には特別なノウハウとツールが求められます。
PC管理ツールの活用
PC管理には、固定資産台帳などの帳簿付けが必要です。PCに関する管理であり、現在でこそ手書きの帳簿を使用することは減っていますが、Excelなどを使用した手作業による管理を行っている企業は少なくないようです。
このExcelベースの管理台帳など、手作業によるPC管理には限界があります。入力する項目や情報量が少ないうちはあまり問題がありません。
しかし、情報量が増えれば手が回らなくなったり、ミスが増えたりといった状況が生まれやすくなります。
また、入力したデータはそのまま完結するわけではなく、状況に変更があれば更新作業が必要です。手が回らないからといって人員を増やせば、人件費という大きなコストがかかってしまいます。
そこで、効率的に正確なPC管理を実行するためには、PC管理ツールの活用が望ましいといえます。PCが増えても対応でき、エクセルを使った管理では手作業が必要だった部分を自動化できるなど、PC管理ツールは企業規模や資産の状態にかかわらずPC管理に正確性と効率化をもたらすソリューションです。
自社に合ったツールを活用することで、台帳の作成と更新に加え、インベントリ収集やライセンス管理までを容易に行えます。名前の登録やパスワードの自動生成なども可能なツールもあります。
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PC管理ツール選びのポイント
PC管理ツールを選ぶ際には、PC管理の3大基本要素で述べた資産管理(IT資産管理)、インベントリ管理、ライセンス管理に対応していることが基本条件となります。
ただし、必ずしも機能すべてを標準装備する必要はありません。オプションも含め、自社に必要な機能が過不足なく用意されていれば、有力な選択肢です。一方で、高機能であるほど素晴らしく感じるものですが、実際に使わない機能はコストアップにつながります。費用対効果を十分に検討しましょう。
PC管理ツール選びでは、ログの監視も含めたセキュリティレベルも、重要なポイントになります。脆弱性の検出や侵入の検知など、多角的な視点からセキュリティ機能を評価することが重要です。
そして、忘れてはならないのが、ツール自体の使い勝手と、サービスを提供するベンダーのサポート体制のチェックです。導入後に「こんなはずではなかった」とならないよう、しっかりと資料や説明に注目して、検討しましょう。導入実績やユーザーレビューも参考になります。
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ITが進化し、PCなしでは業務が回らないといっても過言ではない今日の企業にとって、PC管理の正確性と効率化、セキュリティ面での安全性は優先的に考えたい重要な課題だといえます。もちろん、コストも大事な要素です。
PC管理ツールを導入するのか、一元管理サービスを利用するのかといった方法論の違いこそあれ、円滑なPC管理の実施が求められている点はどの企業でも同じだといえます。自社の状況に応じた手段を選んで、PC管理を正しく効率的に実施しましょう。
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