「情報システム」は日々の業務で必要な情報と従業員や顧客データといった機密情報の記録・処理・保存など、大量の情報を扱う仕組みのことを指しますが、その仕組みを整備し、その運用・管理業務を担うのが、IT情報システム部門、通称「情シス」です。
その情シス部門の多岐にわたる業務範囲と慢性的なIT人材不足は、多くの企業が抱える共通の課題です。業務の属人化や継続性の問題も無視できません。
本記事では、これらの課題を解決する「情シスアウトソーシング」に焦点を当て、その導入によって業務効率化、コスト削減、専門性の高いIT人材確保を実現する方法を解説。具体的な導入ステップから失敗しない委託先の選び方まで、情シス部門の強化と事業成長につながる情報を紹介します。
情シス部門が抱える共通の課題とは?
現代の企業活動において、ITの活用は不可欠であり、情シス部門は企業の根幹を支える重要な役割を担っています。
しかし、その重要性とは裏腹に、多くの情シス部門が様々な課題を抱えているのが現状です。これらの課題は、企業の成長を阻害し、競争力低下につながる可能性もあります。
本章では、情シス部門が共通して直面している具体的な課題について、その背景と企業への影響を詳しく解説します。
多岐にわたる業務範囲と担当者の業務負荷
情シス部門の業務は、非常に多岐にわたります。従業員のPCやモバイルデバイスのセットアップ、社内ネットワークの構築・運用、基幹システムの保守・改善、セキュリティ対策の実施、さらにはIT戦略の立案や新規技術の導入支援など、その範囲は広大です。ビジネスのデジタル化が加速する現代において、これらの業務は年々複雑化・高度化しており、情シス担当者にかかる業務負荷は増大の一途をたどっています。
特に中小企業では、専任の情シス担当者が少なく、他の業務と兼任しているケースも珍しくありません。このような状況では、定常的な運用・保守業務に加えて、突発的なトラブル対応や社内からの問い合わせが頻繁に発生するため、担当者は常に多忙を極め、本来注力すべき戦略的なIT投資やDX推進といったコア業務に十分な時間を割くことが困難になっています。
過度な業務負荷は、担当者の疲弊やストレスを招き、ミスの発生率を高めるだけでなく、離職率の上昇にもつながりかねません。結果として、IT環境の安定稼働が脅かされ、企業全体の生産性低下やビジネス機会の損失を引き起こすリスクがあります。
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慢性的なIT人材不足と採用・育成の困難さ
日本国内において、IT人材の不足は長年にわたる深刻な課題であり、情シス部門も例外ではありません。特に、クラウド技術、サイバーセキュリティ、データ分析、AIといった最新技術に対応できる高度な専門知識と経験を持つIT人材は、市場全体で奪い合いの状態にあります。
情シス部門では、幅広いIT知識に加えて、自社のビジネスプロセスや業界特有のシステムに関する深い理解も求められるため、求める人材像はより複雑になります。このような専門性の高い人材を採用しようとしても、適切な候補者が見つからなかったり、高額な採用コストがかかったりするケースが頻発しています。また、採用できたとしても、最新技術の進化に対応するための継続的な教育・育成には多大な時間と費用が必要となり、企業の負担となっています。
既存の情シス担当者が高齢化している企業では、後継者育成が間に合わず、技術やノウハウの継承が滞るという問題も顕在化しています。これにより、特定の技術やシステムに関する知識が失われ、将来的なITインフラの維持・発展に支障をきたす恐れがあります。
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業務の属人化によるリスクと継続性の問題
多くの情シス部門、特に少人数体制の企業では、特定の業務が特定の担当者のみに依存する「属人化」が起こりやすい傾向にあります。これは、ITシステムが複雑で専門性が高く、かつ日々の運用業務が多忙であるため、業務手順やノウハウが十分に文書化されず、担当者の頭の中にのみ存在してしまうことが主な原因です。
業務が属人化すると、担当者が急な病気や退職などで不在になった場合、その業務が滞ったり、最悪の場合は停止してしまうリスクがあります。これにより、システムトラブルへの対応が遅れたり、新たなIT導入プロジェクトが中断したりするなど、企業の事業継続性に深刻な影響を及ぼす可能性があります。また、業務の透明性が失われるため、不正行為のリスクが高まったり、業務改善の機会が見過ごされたりすることも考えられます。
業務の属人化は、情シス部門の柔軟性を著しく低下させ、組織全体のITガバナンスを弱体化させます。長期的な視点で見ると、ノウハウが社内に蓄積されず、常に外部の専門知識に依存せざるを得ない状況に陥り、結果的にITコストの増加や技術革新への対応遅れにつながる可能性も否定できません。
情シスアウトソーシングがなぜ今、注目されるのか
現代の企業経営において、ITはビジネスの基盤であり、競争力を左右する重要な要素です。しかし、多くの企業で情シス部門は、増え続ける業務量、専門性の高いIT人材の確保難、そして業務の属人化といった共通の課題に直面しています。こうした背景から、情シス業務を外部の専門企業に委託する「情シスアウトソーシング」が、その課題を解決し、企業の成長を加速させる有効な手段として、今、大きな注目を集めています。
アウトソーシングの基本概念と情シスにおける有効性
アウトソーシングとは、企業が自社の業務の一部またはすべてを外部の専門業者に委託することです。これにより、企業はコア業務に経営資源を集中させ、業務の効率化やコスト削減を図ることができます。情シス部門におけるアウトソーシングは、IT機器の管理、ヘルプデスク業務、サーバー・ネットワークの運用保守、さらにはシステム開発の企画支援といった多岐にわたる業務を外部に任せることを指します。
情シス業務は専門性が高く、かつ日々の運用からトラブル対応まで幅広い対応が求められます。特に中小企業においては、専任の情シス担当者が不在であったり、他の業務と兼任しているケースも少なくありません。このような状況下で、アウトソーシングは、社内リソースの不足を補い、専門性の高いサービスを必要な時に必要なだけ活用できるという点で非常に有効です。これにより、情シス部門が抱える慢性的な課題を根本から解決し、企業全体のITインフラを安定稼働させることが可能になります。
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情シス業務を外部委託するメリット
情シス業務をアウトソーシングすることには、多くのメリットがあります。これらのメリットは、企業のIT環境を最適化し、ビジネスの成長を支援する上で不可欠な要素となります。
業務効率化と生産性向上への貢献
情シス部門の業務範囲は非常に幅広く、PCのセットアップからネットワークの保守、社員からの問い合わせ対応(ヘルプデスク)まで多岐にわたります。
ビジネスの拡大や事業の多角化に伴い、その業務内容も多様化しており、担当者の業務負荷は年々増加傾向にあります。特に、企業規模の大きい会社であれば「情報システム部」として部署が設立されていることが多いですが、中小企業の場合、コア業務と兼任して情シス業務を行うのは珍しくありません。
そこで、問い合わせ対応や運用・保守など負担の大きいノンコア業務をアウトソーシングすることで、情シス担当者の負担を軽減できます。担当者は、本来注力すべきシステム戦略の立案や新規事業のためのIT導入といったコア業務に集中することができ、結果的に業務の効率化や業務品質・生産性の向上にもつながります。
また、特定の担当者に業務が集中し、業務内容がブラックボックス化する「属人化」のリスクも、アウトソーシングによって回避できます。外部委託により業務内容やフローが明確化され、定期的な業務報告や情報共有を行うことで、業務の継続性を高め、不正防止にもつながるでしょう。
コスト削減と専門性の高いIT人材の確保
情シス担当者には幅広いITスキルや知識が求められますが、そのような優秀な人材を採用したり育成したりするには、求人広告費や面接にかかる人件費、入社後の研修費など多額のコストや労力が発生します。
少子高齢化が進行するとともに国内の労働人口は年々減少し、中でもITエンジニアは慢性的に不足しているため、専門的な知識を持った優秀な人材を社内で確保するのは困難な状況が続いています。
アウトソーシングでは、IT知識のある専門業者が対応するため、人材採用や育成をしなくても効率的に業務を任せることができます。委託先への外注費用は発生しますが、採用費や人件費、教育費と比べて大幅なコスト削減が見込めます。
また、専門業者がパートナーとなることで、ITの知識や専門性の高い最新情報を常に社内へ取り入れられることも大きなメリットです。システムに関する問い合わせや社内で発生したトラブルにも迅速に対応してくれるため、安定したIT環境を維持できます。
知っておくべきデメリットと事前対策
情シスアウトソーシングは多くのメリットをもたらしますが、導入にあたってはデメリットも存在します。これらを事前に理解し、適切な対策を講じることで、リスクを最小限に抑え、アウトソーシングを成功に導くことができます。
導入前の準備と業務の切り分けの重要性
アウトソーシングは、企業の業務効率化やコスト削減に大きなメリットをもたらす有効な手段です。
しかし、業務を委託する前には、しっかりとした準備が必要です。単に外部に業務を任せるだけでは、期待する成果は得られません。
まず、現在の業務全体を詳細に分析し、どの業務がアウトソーシングに適しているか、またどの業務をアウトソーシングすることで最大の費用対効果が得られるかを見極める必要があります。
いわゆる「業務の切り分け」です。この作業は簡単に見えるかもしれませんが、実際には多くの時間と労力を要する重要なプロセスです。
そのため、この段階で多くの企業が挫折し、アウトソーシングを導入できずに非効率な業務を続けざるを得ない状況に陥っています。
このような課題を解決するためには、現状のIT環境と情シス業務を徹底的に可視化し、課題を明確にすることが不可欠です。
例えば、ヘルプデスク業務であれば、問い合わせ内容の種類や頻度、対応にかかる時間などをデータとして把握します。
これにより、どの業務を外部委託すべきか、またどこまでを自社で担うべきかの判断基準が明確になります。曖昧なまま委託を進めると、期待した効果が得られないだけでなく、かえってコストが増加する可能性もあるため、初期段階での丁寧な準備が成功の鍵となります。
テクバンではこういった「業務の切り分け」の課題をいち早く解決するために、「TECHVAN Management Center」サービスをご提供しています。
このサービスでは、経験豊富なスタッフが現場の根本的な課題と改善のターゲットを迅速に特定します。そして、多数の企業のIT情報システム部門を再構築してきた知見を活かし、業務全体を整理し、アウトソーシングによる費用対効果が高い業務を選別します。また、企業のコア業務をより効率的に行うための改善策も提案し、業務全体の最適化をお手伝いします。
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社内ノウハウ蓄積のための工夫
業務を外部に委託するため、社内にノウハウや知見が蓄積しにくくなるというデメリットがあります。社内からの問い合わせをどのような方法で解決したか、トラブル発生時にどんな原因が考えられるか、解決手段はあるかなど、それらのナレッジはすべて委託先に蓄積されていく傾向にあります。
トラブルが発生し自社で解決しなければいけない場合や、将来的に内製化を考えている場合などに備え、あらかじめ対策しておく必要があります。例えば、以下のような対策を行い、デメリットを補うことができます。
- 社内FAQやナレッジベースを構築する
委託先が対応した内容や解決策を定期的に共有してもらい、社内データベースに蓄積します。 - トラブル発生時のマニュアルを作成する
重要なトラブル対応については、委託先と協力して詳細なマニュアルを作成し、社内で共有します。 - 定例会を実施し、情報共有を徹底する
定期的に委託先との会議を設け、業務の状況、課題、改善点などを共有し、連携を強化します。
これらの工夫により、外部委託によるノウハウ流出のリスクを軽減し、社内での知見蓄積を促進することが可能です。
費用対効果の適正な見極め方
社内にITについての専門知識を持つ人がいなければ、対応業務に対する費用が適正なのかを判断することは困難でしょう。
適正な費用感がわからず、相場よりも高い費用で委託してしまい、無駄なコストが発生してしまう可能性もあります。スキルや対応範囲はアウトソーシング先の企業によって様々であり、いざ蓋を開けてみたら費用対効果が悪くなってしまうこともあるため注意が必要です。
対策として、アウトソーシングする前に委託会社と委託を希望する業務について、必ず詳細なすり合わせを行います。適正金額を見極めるために、予算上限をあらかじめ設定した上で、各社から見積もりをとってサービス内容と価格を比較検討するといいでしょう。
この際、単に料金の安さだけでなく、サービス品質、対応範囲、サポート体制、実績なども総合的に評価することが重要です。また、中には基本料金とは別に、イレギュラーな案件を対応するたびに追加費用が発生する料金設定になっている場合もありますので、あらかじめどんな場合に追加費用が発生するかよく確認しておきましょう。
▼キッティング代行の費用相場は? 作業内容とサービス業者の選び方、コストダウンの秘訣も解説
情シスアウトソーシングで解決できる具体的な業務
情シス部門が抱える多岐にわたる業務は、専門的な知識と継続的な対応が求められるため、すべてを自社で賄うのは容易ではありません。しかし、多くの情シス業務は外部への委託が可能です。
そこで、特にアウトソーシングによって効果を発揮しやすい具体的な業務について、その内容と委託によって得られるメリットを詳しく解説します。
日常的なIT機器管理・設定(PC、モバイルデバイスなど)
企業で使用されるPCやスマートフォン、タブレットなどのIT機器は、導入から廃棄まで一連のライフサイクルがあり、その各段階で様々な管理業務が発生します。これらの業務は定型的でありながら、台数が増えるほど情シス担当者の大きな負担となります。
アウトソーシングでは、これらのIT機器管理業務全般を専門業者に委託することが可能です。具体的には、以下のような業務が挙げられます。
IT機器管理・設定でアウトソーシングできる業務例
業務カテゴリ | 具体的な業務内容 | アウトソーシングのメリット |
調達・導入 | キッティング(PCやモバイルデバイスの初期設定、OSインストール、ソフトウェア導入、ネットワーク設定、セキュリティ設定など) | 大量の機器導入時でも、専門家が安定した品質で迅速に作業を進め、情シス担当者の初期導入負荷を大幅に軽減します。 |
インベントリ管理(IT資産台帳の作成・更新、ライセンス管理、契約情報管理) | 正確な資産状況を把握し、無駄なコストを削減。棚卸し作業などの手間を省きます。 | |
ソフトウェアのインストール・アップデート、パッチ適用 | 最新のセキュリティ対策や機能改善を漏れなく適用し、システムを常に最適な状態に保ちます。 | |
トラブルシューティング(軽微な故障対応、設定変更支援など) | 迅速な一次対応により、従業員の業務中断を最小限に抑えます。 | |
廃棄 | データ消去、機器の廃棄処理 | 情報漏洩リスクを排除し、法規制に準拠した安全な廃棄を支援します。 |
特に、新入社員の入社や組織変更に伴うPCの大量導入、あるいは古い機器の入れ替え時には、キッティング作業が情シス担当者の大きな負担となりがちです。アウトソーシングを活用することで、最新のPCやOSの知識を持ったプロが、安定した品質でスピーディーに作業を進めてくれます。これにより、情シス担当者は本来のコア業務に集中できる環境を整えることが可能です。
テクバンでは、デバイスの調達から廃棄までサポートしています。「キッティング代行」「レンタル/リースPC」「ユーザーサポート」「資産管理」「動作検証対応」など、コストと効率性のバランスから、お客様の環境に最適なIT資産管理を実施します。
さらに、当社のヘルプデスクサポートサービス「Techvan Support Center」などと組み合わせることで、より包括的なサポートのご提供も可能です。
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安定稼働を支えるサーバー・ネットワークの運用・保守
企業のITインフラの根幹を成すサーバーやネットワークは、24時間365日の安定稼働が求められます。しかし、その運用・保守には高度な専門知識と継続的な監視が必要であり、障害発生時には迅速な対応が不可欠です。
これらの業務は情シス担当者にとって大きなプレッシャーとなり、夜間や休日を問わない対応が求められることも少なくありません。
アウトソーシングを活用することで、サーバーやネットワークの構築から日々の運用、障害発生時の対応まで、専門業者に一貫して任せることが可能になります。
具体的な業務内容は以下の通りです。
サーバー・ネットワーク運用・保守でアウトソーシングできる業務例
業務カテゴリ | 具体的な業務内容 | アウトソーシングのメリット |
構築・設計支援 | オンプレミス、クラウド(AWS、Azure、GCPなど)環境のサーバー・ネットワーク設計・構築、VPN構築、クラウド移行支援 | 最新技術に基づいた最適なインフラ構築を支援し、将来的な拡張性や柔軟性を確保します。 |
運用・監視 | 24時間365日の稼働監視(サーバー、ネットワーク機器、回線状況など) | 異常発生を早期に検知し、ダウンタイムを最小限に抑えます。 |
パフォーマンスチューニング、リソース管理 | システムの安定性と効率性を維持し、快適な動作環境を提供します。 | |
バックアップ・リカバリ運用、災害対策(DR)支援 | データ損失リスクを低減し、万一の事態にも迅速な復旧を可能にします。 |
これらをお任せいただけるテクバンのサービスについて、詳しくはこちらをご覧ください。
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失敗しない!情シスアウトソーシング導入のステップと選定ポイント
情シスアウトソーシングは、企業のIT部門が抱える多くの課題を解決する強力な手段ですが、その導入には計画的なアプローチと慎重な選定が不可欠です。適切なプロセスを踏むことで、期待通りの効果を得て、長期的なパートナーシップを構築することができます。
ここでは、情シスアウトソーシングを成功に導くための具体的なステップと、委託先を選定する際の重要なポイントを解説します。
ステップ1:現状課題の明確化と業務の切り分け
先ほどから繰り返してお伝えしている通り、情シスアウトソーシングを検討する上で、最も重要な最初のステップは、自社の現状課題を明確にし、どの業務を外部に委託すべきかを正確に切り分けることです。このプロセスを怠ると、期待した効果が得られなかったり、かえってコストが増加したりするリスクがあります。
まず、現在の情シス業務を洗い出し、それぞれの業務にかかる時間、リソース、コスト、そして抱えている問題点(例:特定の担当者への業務集中、問い合わせ対応の遅延、専門知識の不足など)を詳細に分析します。
これにより、「ノンコア業務」と呼ばれる定型的な運用・保守業務やヘルプデスク業務など、外部委託に適した業務を特定できます。
一方で、企業の競争優位性に関わる戦略的な企画や、社内独自の深い知見が必要な業務は「コア業務」として内製を維持すべき業務です。
この業務の切り分け作業は、単に業務をリストアップするだけでなく、それぞれの業務の依存関係や、アウトソーシングした場合の社内への影響も考慮する必要があります。
例えば、ヘルプデスク業務を委託する場合、社内からの問い合わせフローがどのように変わるか、情報共有の方法はどうするかなどを具体的に検討することが求められます。この初期段階での丁寧な準備が、その後のスムーズな導入と成功に直結します。
この課題の洗い出しや業務の切り分けがうまく進まず、アウトソースまでに時間がかかる、アウトソースに漕ぎ着けても、なかなか成果が出ないといったお悩みを持つ組織は少なくありません。
そうした場合は、外部の専門コンサルティングサービスを活用することも有効な手段です。客観的な視点から現状を分析し、最適なアウトソーシング戦略の立案も支援します。
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ステップ2:最適な委託先の選定基準
現状課題と委託範囲が明確になったら、次に重要なのが最適なアウトソーシングパートナーを選定することです。数多くのサービス提供企業の中から、自社のニーズに合致した信頼できる委託先を見つけるためには、いくつかの重要な選定基準があります。
サービス提供範囲と専門分野の確認
委託先を選定する際には、まず自社がアウトソーシングしたい業務に対して、その企業がどの程度のサービス提供範囲と専門性を持っているかを確認することが不可欠です。情シスアウトソーシングと一口に言っても、ヘルプデスク業務に特化している企業、サーバー・ネットワークの運用保守に強みを持つ企業、あるいはシステム開発やITコンサルティングまで幅広く対応できる企業など、その専門分野は多岐にわたります。
例えば、PCのキッティングから日常のトラブル対応、サーバーの監視、さらにはセキュリティ対策までを一元的に任せたいのであれば、広範なサービスを提供できる企業が適しています。
一方、特定の業務(例:夜間・休日のヘルプデスク対応のみ)に絞って委託したい場合は、その分野に特化した専門性の高い企業を選ぶことで、より効率的かつ高品質なサービスを期待できます。各社のウェブサイトやパンフレットで提供サービス内容を詳しく確認し、必要に応じて具体的な対応範囲について直接問い合わせて確認しましょう。
テクバンでは広範なサービスの提供はもちろん、お客様の必要範囲に応じてサポートサービスをご用意しております。
ぜひお気軽にお問い合わせください。
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豊富な導入実績と信頼性
アウトソーシングパートナーを選ぶ上で、豊富な導入実績は、その企業の信頼性と提供サービスの品質を測る重要な指標となります。特に、自社と同じ業種や規模の企業での実績があるかどうかは、非常に参考になります。類似の環境での経験があれば、自社のビジネスモデルやIT環境に対する理解が深く、スムーズな導入と運用が期待できるためです。
実績を確認する際には、単に導入企業数だけでなく、具体的な事例の内容(どのような課題を解決し、どのような成果を出したか)まで掘り下げて確認することをおすすめします。
企業のウェブサイトに掲載されている導入事例や、問い合わせ時に提供されるケーススタディ資料などを参考にしましょう。
また、顧客からの評価や第三者機関による認証なども、信頼性を判断する上で役立ちます。
例えば、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であるISO/IEC 27001などの認証を取得している企業は、情報セキュリティに対する意識が高いと判断できます。
テクバンのIT運用サポート導入事例
料金体系の透明性と見積もり比較
アウトソーシングの費用は、企業にとって重要な判断材料です。委託先を選定する際には、料金体系が明確で透明性があるかをしっかりと確認しましょう。サービス内容と料金が明確に紐づけられているか、追加費用が発生するケース(例:夜間対応、緊急トラブル対応、対応件数超過など)が具体的に提示されているかなどを確認することが重要です。
複数の企業から見積もりを取得し、サービス内容と費用を比較検討することをおすすめします。単に金額の安さだけで判断するのではなく、提供されるサービスの品質、対応範囲、サポート体制などを総合的に評価することが大切です。安価なサービスが必ずしも費用対効果が高いとは限りませんし、逆に高額なサービスでもその品質や専門性が自社のニーズに合致していれば、長期的に見てメリットが大きい場合もあります。
見積もりを比較する際は、以下の点をチェックリストとして活用すると良いでしょう。
比較項目 | 確認ポイント |
基本料金に含まれるサービス範囲 | どのような業務が基本料金内で対応されるか |
追加料金が発生する条件 | 時間外対応、緊急対応、対応件数超過、特殊な技術要件など |
料金体系の種類 | 月額固定、従量課金、人月単価など、自社のニーズに合った形式か |
契約期間と解約条件 | 長期契約の割引、中途解約時のペナルティなど |
初期費用・導入費用 | 導入時に発生する費用があるか |
SLA(サービスレベルアグリーメント) | サービス品質の保証内容(応答時間、解決率など)が料金に見合っているか |
これらの項目を比較することで、各社の提案を客観的に評価し、自社にとって最も費用対効果の高いパートナーを選定できます。

ステップ3:長期的な計画とパートナーシップの構築
情シスアウトソーシングは、単なる業務委託ではなく、企業と委託先との長期的なパートナーシップと捉えることが成功の鍵となります。一度契約を結んだら終わりではなく、継続的なコミュニケーションと協力体制を築くことが重要です。
アウトソーシングを導入する際は、短期的な課題解決だけでなく、将来的なビジネス戦略やIT環境の変化を見据えた長期的な計画を立てましょう。
例えば、数年後の事業拡大に伴うITインフラの増強や、新しいシステムの導入計画などを委託先と共有することで、より戦略的な提案やサポートを受けることができます。委託先も自社のビジネス目標を理解することで、単なる作業代行ではなく、「ビジネスパートナー」として、IT戦略の立案や業務改善の提案に積極的に貢献してくれるでしょう。
また、定期的な定例会や進捗報告会を設け、業務の進捗状況、課題、改善点などを密に情報共有することも不可欠です。これにより、認識のずれを防ぎ、問題が顕在化する前に対応できるようになります。委託先からのフィードバックを積極的に受け入れ、必要に応じて業務プロセスやSLA(サービスレベルアグリーメント)を見直す柔軟性も持ち合わせることが、成功するアウトソーシングの秘訣です。
信頼関係を構築し、オープンなコミュニケーションを維持することで、委託先は自社の一部門のように機能し、情シス部門全体のパフォーマンス向上に大きく貢献してくれるはずです。
失敗しない情シスアウトソーシングの重要事項
情シスアウトソーシングを成功に導くためには、単に業務を外部に委託するだけでなく、委託先との強固な連携体制を築き、予期せぬ事態への備えを徹底することが不可欠です。特に、ITインフラや機密情報を扱う情シス業務においては、トラブル発生時の迅速な対応フローと、情報セキュリティ対策の徹底が成功の鍵を握ります。
トラブル発生時の対応フローと情報共有体制
情シス業務においては、システム障害、IT機器の故障、マルウェア感染など、予期せぬトラブルが日常的に発生する可能性があります。これらのイレギュラーな事態に備え、委託先との間で明確な対応フローを事前に確立しておくことが、事業継続性を確保する上で極めて重要です。
具体的には、トラブル発生時に「いつ」「誰が」「どのような手段で」連絡し、報告するかを詳細に定めます。電話、メール、チャット、専用のインシデント管理システムなど、利用可能な連絡手段とその優先順位を明確にし、夜間や休日における緊急対応の体制や追加費用についても合意形成を図ることが求められます。また、トラブル発生から解決までの流れ(一次対応、エスカレーション、原因究明、復旧、再発防止策の検討)を明確にし、それぞれのフェーズにおける役割分担を明確にしておくことで、スムーズな運用を実現できます。
さらに、定期的な情報共有体制の構築も成功の重要な要素です。委託先との定例会を設け、業務の進捗状況、発生した課題、今後の改善計画などを共有することで、相互理解を深め、信頼関係を構築できます。また、ヘルプデスクの問い合わせ内容やトラブル事例をナレッジとして蓄積し、FAQやマニュアルとして共有することで、社内での自己解決能力の向上にもつながり、長期的な視点での業務効率化に貢献します。
以下に、トラブル発生時の対応フローの例を示します。
フェーズ | 主な内容 | 担当者 | 連絡手段 | 備考 |
発生 | 異常検知、ユーザーからの報告 | ユーザー / 監視システム | 電話、メール、チャット、専用ポータル | 状況の一次把握 |
報告 | 委託先への連絡 | ユーザー / 社内担当者 | 専用窓口(電話、チャット) | 発生日時、事象、影響範囲を明確に |
一次対応 | 事象の切り分け、簡易な復旧試行 | 委託先ヘルプデスク | 電話、リモートアクセス | FAQやマニュアルに基づく対応 |
調査・特定 | 詳細調査、原因特定、解決策の検討 | 委託先専門チーム | 報告書、定例会 | 必要に応じて社内担当者と連携 |
解決・復旧 | 恒久対策の実施、システム復旧 | 委託先専門チーム | - | 復旧後の動作確認 |
報告・共有 | 解決報告、再発防止策の提案 | 委託先 | 報告書、定例会 | ナレッジとして蓄積 |
情報セキュリティ対策の徹底と機密保持契約
情シス業務は、企業の重要な情報資産や個人情報を取り扱うため、情報セキュリティ対策はアウトソーシングにおける最重要課題の一つです。委託先に機密情報を提供する以上、情報漏洩や不正アクセスなどのセキュリティリスクに最大限備える必要があります。
まず、委託先を選定する際には、その企業の情報セキュリティに対する取り組みを厳しくチェックすることが不可欠です。具体的には、ISO 27001(ISMS)やプライバシーマーク(Pマーク)などの情報セキュリティに関する認証を取得しているか、データセンターの物理的セキュリティ(入退室管理、監視カメラなど)は万全か、システム上のアクセス制御やログ管理、脆弱性診断などの論理的セキュリティ対策は適切か、従業員へのセキュリティ教育は定期的に実施されているかなどを確認しましょう。
また、機密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)の内容を事前にしっかりと確認し、セキュリティ面の取り決めを明確にしておくことが極めて重要です。契約書には、機密情報の定義とその範囲、利用目的の限定、情報の保管方法と管理体制、第三者への開示制限、契約終了時の情報の返却・破棄義務、情報漏洩などが発生した場合の損害賠償に関する条項などを具体的に盛り込む必要があります。再委託の可否や条件についても明確にすることで、情報セキュリティガバナンスを維持し、万が一の事態に備えることができます。
以下に、情報セキュリティ対策と機密保持契約における確認ポイントを示します。
分類 | 確認項目 | 詳細 |
認証取得 | ISMS(ISO 27001) | 情報セキュリティマネジメントシステムが国際標準に準拠しているか |
プライバシーマーク(Pマーク) | 個人情報保護体制が適切に整備されているか | |
物理的対策 | データセンターのセキュリティ | 入退室管理、監視カメラ、生体認証など |
機器の保管・管理 | 施錠管理、盗難防止対策 | |
論理的対策 | アクセス制御 | 権限に応じたアクセス制限、不正アクセス対策 |
ログ管理 | アクセス履歴や操作履歴の記録と監視 | |
脆弱性診断・対策 | 定期的なシステム診断とパッチ適用 | |
バックアップ体制 | 定期的なデータバックアップと復旧テスト | |
人員対策 | 従業員へのセキュリティ教育 | 定期的な情報セキュリティ研修の実施 |
誓約書の取得 | 従業員からの機密保持誓約 | |
監査体制 | 内部監査・外部監査 | 定期的なセキュリティ監査の実施 |
インシデント対応計画 | 情報漏洩などの緊急時対応計画の有無 |
項目 | 確認すべき内容 |
機密情報の定義と範囲 | どのような情報が機密情報として扱われるか、その範囲は明確か |
利用目的の限定 | 委託された機密情報を何のために利用するか、目的外利用が禁止されているか |
管理方法と保管体制 | 機密情報の保管場所、アクセス権限、物理的・論理的セキュリティ対策 |
情報の開示制限 | 第三者への開示禁止、再委託時の機密保持義務の継承 |
契約終了後の対応 | 契約終了時に機密情報を返却または破棄する義務、その方法 |
損害賠償に関する条項 | 情報漏洩などが発生した場合の損害賠償責任、その範囲 |
再委託の可否と条件 | 委託先がさらに第三者に業務を再委託する場合の条件や承諾 |
プロセス監査権 | 委託先が適切に機密情報を管理しているか、委託元が監査できるか |

信頼できるアウトソーシング先を選ぼう
本記事では、情シス部門が抱える業務負荷、IT人材不足、属人化といった課題に対し、情シスアウトソーシングが有効な解決策となることを解説しました。
外部委託により、業務効率化、専門性の高いIT人材の確保、コスト削減が期待できます。
また、導入の成功には、現状課題の明確化、適切な委託先の選定、長期的なパートナーシップ構築が重要です。情報セキュリティ対策や情報共有体制の確立も欠かせません。
情シスアウトソーシングは、企業がIT戦略を強化し、本業に集中するための強力な手段となるでしょう。
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