企業や組織が保有するPCを安全かつ確実に廃棄するには、個人利用とは異なるルールと実務対応が求められます。
本記事では、法令順守・情報漏えい対策・データ消去方法・業者選定・リプレース戦略までを体系的に解説し、中小企業でも無理なく運用できる具体的なPC廃棄フローと社内ルール作りのポイントを紹介します。
企業のPC廃棄方法を検討する前に理解すべき基礎知識
企業がPCの廃棄方法を検討する際には、単に「古くなったPCを処分する」という視点だけでなく、情報セキュリティやコンプライアンス、資産管理、テレワーク環境の広がりといった周辺要素を総合的に理解したうえで方針を決めることが重要です。
そこで、法人特有の前提条件とリスクの違いを整理し、具体的な廃棄プロセスや業者選定をスムーズに行うための基礎知識を解説します。
法人PC廃棄が個人のPC処分と異なる点
法人が保有するPCには、顧客情報や取引先情報、社内の設計データ、経営会議の資料など、業務に関わる重要情報が大量に保存されています。個人利用のPCでもプライバシー保護は重要ですが、法人PCの場合は情報漏えいが取引停止や損害賠償、ブランド毀損に直結します。中小企業であっても、一度の情報漏えいで顧客との信頼関係が失われ、事業継続が困難になるケースも少なくありません。
また、企業の会計上はPCが固定資産やリース資産として管理されており、廃棄にあたっては減価償却の状況や資産台帳との突合など、経理・総務部門との連携も不可欠です。
さらに、排出事業者の責任の観点から、廃棄の委託先や処理フローを社外に任せきりにせず、社内できちんと記録・管理する体制が求められます。
IT資産の分類や管理の基礎については、「▼IT資産の分類と管理の基礎知識を解説!」もご参考になさってください。
なぜPC廃棄が情報セキュリティ上の重要課題なのか
PCを廃棄するときに最も問題となるのが、ストレージに残存するデータです。通常の「ゴミ箱に入れて削除した」状態やフォーマット済みであっても、専用ツールを用いることでデータが復元されてしまう可能性があります。そのため、廃棄するPCは稼働中のPCと同等、もしくはそれ以上のリスクを持つ情報資産として扱わなければなりません。
実際に、過去には中古PCやハードディスクから企業情報が流出し、大きく報道された事例もあります。このような事故は、一度発生すると取り返しがつきません。PC廃棄を「単なる総務作業」ではなく、情報セキュリティマネジメントの一部として、ルール・手順・記録を一体で整備することが、企業にとっての重要な経営課題になっています。
テレワーク拡大で変わるPC廃棄のリスク
テレワークの定着により、社員が自宅で利用するノートPCが増え、「オフィス外にあるPCをどのように回収し、安全に廃棄するか」という新たな課題が生まれています。
自宅からの宅配便回収や拠点での一時集約など、従来とは異なる回収フローが必要となり、輸送中の盗難・紛失、回収漏れ、個人宅での長期放置といったリスクも高まっています。テレワーク端末の貸与から返却・廃棄までのライフサイクル管理と、明確な社内ルールの整備が不可欠です。
企業向けPC廃棄に関係する主な法令とガイドライン
企業がPC廃棄の方法を検討する際には、コストや手間だけでなく、個人情報保護や環境保全、適正な廃棄物処理を求める日本の法令・ガイドラインを体系的に理解したうえでプロセスを設計することが重要です。ここでは、企業向けPC廃棄に直接関係する代表的な法令と、公的機関が公表している実務上の指針を整理して解説します。
個人情報保護法とマイナンバー法のポイント
企業のPCには、顧客情報や従業員情報、取引先情報など、多くの「個人情報」が保存されています。個人情報保護法では、不要となった個人情報を遅滞なく消去または廃棄する義務があり、PC廃棄時のデータ消去もこの義務の一部として位置付けられます。
特に、氏名や住所、メールアドレスに加え、アクセスログや端末識別子なども個人情報に該当し得るため、ストレージ全体を安全な方式で消去することが求められます。
さらに、「番号法(マイナンバー法)」では、個人番号を含むデータの取扱いがより厳格に定められており、保存期間満了後は復元できない方法で廃棄することが必要です。詳細は個人情報保護委員会が公開するガイドラインを参照し、自社の規程と運用手順を整備しておくとよいでしょう。
廃棄物処理法と産業廃棄物管理票の取り扱い
PC本体やモニターなどのハードウェアは、企業が廃棄する場合、原則として産業廃棄物として「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」の規制対象になります。自社で勝手に処分するのではなく、都道府県等の許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託し、処理委託契約の締結と「産業廃棄物管理票(マニフェスト=廃棄物の処理過程を追跡する伝票)」による処理状況の把握が必要です。マニフェストは、排出から最終処分までの流れを追跡し、不法投棄や不適正処理を防ぐための重要な証憑となるため、PC廃棄時には型式・台数・排出日などを正確に記録し、法令で定められた期間、社内で保管する体制を構築しておくことが求められます。環境省の廃棄物・リサイクル関連情報を参照し、自社の排出区分や委託ルールを事前に確認しておくと安心です。
資源有効利用促進法とPCリサイクルマーク
PC廃棄を検討する際には「資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)」と、これに基づくPCリサイクル制度およびPCリサイクルマークについても理解しておく必要があります。国内メーカーの多くは、事業系PCを対象とした回収・リサイクルスキームを構築しており、筐体や基板、金属資源を再資源化するしくみが整備されています。PCリサイクルマークが付いている機器であっても、事業者が排出する場合は別途料金が発生するケースがあるため、メーカー回収と産業廃棄物処理のどちらを利用するのかを、費用だけでなくリサイクル率やトレーサビリティも含めて比較検討することが重要です。制度の概要は、一般社団法人パソコン3R推進協会の情報を参考にすると整理しやすくなります。
経済産業省や総務省のガイドラインの位置付け
法令そのものに加えて、経済産業省や総務省などが公表している情報セキュリティ関連ガイドラインは、PC廃棄時のデータ消去や委託先管理を検討する際の実務的な指針として活用できます。
例えば、経済産業省の情報セキュリティガイドラインや、総務省が公表するテレワークセキュリティガイドラインでは、端末の廃棄・譲渡にあたってデータを復元不可能な状態にすることや、委託先との契約において守るべき事項が示されています。
これらは法律と同じ拘束力を持つものではありませんが、監査や事故発生時の説明責任の観点から、遵守すべき「最適な方法」として位置付けられることが多いため、自社のPC廃棄手順書や情報セキュリティポリシーを作成・改定する際には、少なくとも一度は経済産業省や総務省の最新資料を確認しておくことが望まれます。
企業におけるPC廃棄の標準プロセス
企業でPCを廃棄する際は、思いつきで処分するのではなく、「台帳での管理」→「社内承認」→「データ消去と搬出」→「証憑保管と監査対応」までを一連の業務フローとして標準化することが重要です。情報システム部門だけでなく、総務、経理、場合によってはコンプライアンス部門も関わるため、部門横断で合意したプロセスを文書化し、社内規程や情報セキュリティポリシーに組み込んでおくと運用が安定します。
PC資産管理台帳の整備と廃棄候補の抽出
最初のステップは、PC資産管理台帳の整備です。
メーカー名、型番、シリアル番号、資産番号、設置部署、利用者、購入年月日、リース・レンタル区分、減価償却の状況などを漏れなく登録し、最新状態を維持します。台帳と現物を定期的に突合し、利用実態がない端末や保守期限切れの端末を洗い出すことで、廃棄候補PCのリストを客観的に抽出できる体制を作れます。
また、テレワーク用に社員宅へ貸与しているPCについても、貸出台帳と紐づけて管理し、所在不明端末が発生しないようにすることが重要です。
PC資産管理台帳の運用については、「▼IT資産管理ツール比較10選! 機能、タイプ別の選び方も紹介」もご参考になさってください。
社内承認ワークフローと決裁の取り方
廃棄候補が確定したら、次に社内承認のワークフローを通します。
現場の所属長が廃棄申請を行い、情報システム部門が技術的な観点(再利用可否、セキュリティリスク)を確認し、最終的に管理部門や経理部門が資産除却の可否を判断する、といった流れが一般的です。ワークフローシステムを利用して、誰がいつどのPCの廃棄を承認したのかをログとして残す仕組みを整えることで、後日の監査やトラブル時の説明責任を果たしやすくなります。
特に大量廃棄やリース満了に伴う返却時は、決裁権限や承認期限を事前に明確化しておくと、入れ替えプロジェクト全体のスケジュールが乱れにくくなります。
データ消去作業から物理搬出までの流れ
承認後は、データ消去と物理搬出の実務フェーズに入ります。
まず、情報システム部門または委託業者が、社内基準や独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の情報セキュリティ関連資料などを参考に策定した手順に従い、ソフトウェア消去や物理破壊など適切な方法でストレージを処理します。
その際、消去対象機器の特定(資産番号・シリアル番号)と、担当者・日時・消去方式を記録することが不可欠です。データ消去が完了したPCは、社内の一時保管エリアに集約し、回収伝票やパレット単位での数量管理を行ったうえで、産業廃棄物収集運搬業者やPCリサイクル業者へ引き渡します。搬出時には、現場と業者双方で台数・識別情報を照合し、積み残しや取り違えがないようにチェックします。
廃棄証憑の保管と監査対応
最終ステップは、廃棄証憑の整理・保管と監査対応です。
業者から発行されるマニフェスト(産業廃棄物管理票)、データ消去証明書、機器引取証、見積書・請求書などを、対象PCの資産情報と紐づけて保管します。これらの書類は、個人情報保護や情報セキュリティ監査、さらには会計監査の場で、適切に廃棄が行われたことを示す根拠資料となるため、紙だけでなくスキャンデータとして電子保管する企業も増えています。
また、廃棄実績を定期的に集計し、CIO(最高情報責任者)や情報セキュリティ委員会に報告することで、PCライフサイクル全体の改善や、次回以降の入れ替え計画立案にも役立てることができます。
PC廃棄前に必ず行うべき準備作業
企業でPCを廃棄する際は、いきなりデータ消去や回収業者への依頼に進むのではなく、あらかじめ社内で計画的な準備を行うことが重要です。特に、業務データやアカウント情報、ライセンス情報、資産管理情報を整理せずに廃棄へ進めてしまうと、後から必要なデータが参照できなくなったり、情報漏えいリスクや監査対応上の問題が発生したりするおそれがあります。
ここでは、企業がPC廃棄を行う前に押さえておくべき具体的な準備作業について解説します。
業務データのバックアップと移行
まず最優先で対応すべきなのが、PC内に保存されている業務データの整理とバックアップです。
経理データや顧客情報、営業資料、設計図書、メールデータなど、利用部門ごとに重要度の高いデータを洗い出し、どのデータをどこへ移行し、どのタイミングで旧PCから削除するのかを明確に決めておくことが重要です。移行先としては、社内ファイルサーバーやクラウドストレージ、グループウェアなど、既存の情報共有基盤を活用すると管理がしやすくなります。
また、共有フォルダの権限設定やフォルダ構成もあわせて見直し、不要な個人保存データを極力残さないようにすることで、情報セキュリティとIT資産管理の両面から運用を最適化できます。
新しいPCへのデータ移行やセットアップについては、「▼パソコン(PC)のキッティングとは? 作業内容、効率化・負担軽減のポイントと注意点、おすすめサービスを解説」もご参考になさってください。
アカウントやライセンスの整理と解除
次に、PCに紐づいている各種アカウントやソフトウェアライセンスの整理を行います。
OSやオフィスソフト、セキュリティソフト、業務アプリケーションなどには、ユーザー単位・デバイス単位でのライセンス管理が求められるものが多くあります。PCを廃棄する際には、利用停止するアカウントの無効化や、ライセンスの解除・再割当てを漏れなく行うことが重要です。
クラウドサービスの場合は、管理コンソール上で対象ユーザーのサインイン履歴や利用状況を確認し、退職者アカウントや未使用ライセンスが残っていないかあわせて点検すると、コスト最適化にもつながります。
資産タグと社内管理シールの取り扱い
多くの企業では、PC本体に資産管理番号やバーコードを記載した資産タグ、社内管理シールを貼付しています。
PC廃棄時には、台帳上のステータス変更とあわせて、現物に貼付されている資産タグや管理シールをどう扱うかをあらかじめルール化しておくことが重要です。シールに社名や部署名、管理番号などの情報が載っている場合、そのまま外部へ搬出すると情報漏えいにつながるおそれがあるため、剥がす・塗りつぶす・シール部分だけを物理破壊するなど、社内の情報セキュリティポリシーに沿った取り扱い方法を定めておきましょう。
また、資産管理台帳と実機の紐づけが取れていない場合は、この機会に棚卸しを実施し、今後のPCリプレース計画や減価償却の管理にも活用できる状態に整備しておくと効果的です。
BYODやリース品が混在している場合の確認事項
テレワークやハイブリッドワークが普及したことで、BYOD(私物PCの業務利用)やレンタル・リース契約のPCが社内に混在しているケースも増えています。
このような環境では、「どのPCが自社所有で、どのPCがリース・レンタル・BYODなのか」を明確に区別したうえで廃棄対象を決定することが不可欠です。
リース品やレンタル品については、契約書や管理台帳を確認し、返却方法・返却期限・原状回復条件(シール跡の有無や付属品の欠品など)を事前に把握しておきます。
BYOD端末については、原則として企業側が物理的な廃棄を行わない方針を明文化し、データ消去ポリシーや業務データの保存禁止ルールを就業規則や情報セキュリティポリシーに反映させることで、従業員と企業双方のトラブルを防ぐことができます。
BYODの運用ルールについては、「▼BYODとは? メリットやデメリット、活用ポイント、導入事例を解説」で詳しく解説しています。
PCデータ消去の種類と選択のポイント
企業のPCを安全に廃棄するうえで、最も重要なのが「どのレベルのデータ消去を、どの手段で行うか」という判断です。
ストレージの種類や保存されている情報の機密度、社内ポリシーや情報処理推進機構(IPA)のガイドラインなどを踏まえ、自社に適した消去方法を選定する必要があります。
ここでは代表的なデータ消去の種類と、その選択時に押さえておきたいポイントを整理します。
ソフトウェア消去の方式とセキュリティ水準
ソフトウェア消去は、専用ソフトを用いてディスク全体に無意味なデータを書き込み、元の情報を論理的に読めなくする方法です。
市販のデータ消去ソフトや、PCメーカーが提供するツール、オープンソースのユーティリティなどがあり、方式としては「1回書き込み(ゼロフィル)」や「複数回上書き」「乱数と固定パターンの組み合わせ」などがあります。
一般的な企業利用では、国際規格や公的なガイドラインに準拠した1回〜3回程度の上書き方式を採用すれば、通常の復元手段では読み出せないレベルの安全性を確保できます。
一方で、ソフトウェア消去はディスクが正常に動作していることが前提となるため、故障して読み書きができない場合には別の方法を検討する必要があります。
物理破壊や磁気消去の特徴
物理破壊は、ハードディスクやSSDを穿孔・裁断・圧壊することでデータ記録部そのものを破壊する方法です。専用のHDD破壊装置やシュレッダーを用いることで、短時間で大量のストレージを処理できるため、退役PCが多い企業や、極めて機密性の高い情報を扱う部門で採用されることが多くなっています。
「確実に読み出せない状態まで破壊されていること」を写真や作業記録で残しておくと、監査対応や社内説明の際にも有効です。
磁気消去(デガウス)は、強力な磁界を当てて磁気ディスクの情報を一括消去する方式で、HDDや磁気テープに対して高い効果がありますが、SSDや光ディスクには原理的に効果がないことに注意が必要です。
HDDとSSDで異なる最適な消去方法
ストレージがHDDかSSDかによって、適切な消去手段は異なります。
HDDの場合、ソフトウェアによる全領域上書きやデガウス(強力な磁気による消去)、物理破壊など複数の選択肢がありますが、SSDではウェアレベリング(書き込み回数を均等化する仕組み)により「理論上は書き込んだはずの領域に、実際にはデータが書かれていない」ケースが発生します。
そのため、SSDではメーカーが提供する「セキュアイレース(SSD専用の完全消去機能)」や、信頼できる消去ツールによる専用コマンド実行、もしくは物理破壊を組み合わせた運用が推奨されます。
また、企業としてはPC資産管理台帳の段階で「内蔵ストレージの種類・容量」を把握しておき、廃棄時に自動的に適切な消去メニューを選べるようなルール設計をしておくと運用負荷を軽減できます。
国家機関や大企業で用いられるレベルの消去基準
機密性が非常に高い情報を扱う組織では、一般的な民間企業より厳格な消去基準が求められる場合があります。
日本国内でも、多くの企業が総務省の情報セキュリティ関連資料やIPAのガイドラインを参照しながら、自社の「データ消去基準」を規程化しています。
具体的には、「機密区分ごとに必要な消去レベルを定める」「外部業者に委託する際の証明書や作業ログの形式を標準化する」といった運用ルールを設け、ソフトウェア消去・物理破壊・保管期間の管理までを一体でマネジメントすることが重要です。中小企業でも、これらの公的ガイドラインをベースに簡易版の基準を定めておくことで、監査や取引先からのセキュリティ要求に対応しやすくなります。
企業全体のセキュリティ対策については、テクバンのセキュリティソリューションもご検討ください。
ソフトを利用したPCデータ消去の具体的手順
この章では、企業でPC廃棄を行う際に利用されるデータ消去ソフトを用いた具体的な進め方を解説します。
社内の情報システム部門だけでなく、総務や経理などPC廃棄の実務を担当する部門でも運用できるように、対象PCの整理からブートメディアの準備、消去ログの取得、消去後の確認までの一連の流れを押さえておくことが重要です。
事前準備と対象PCの切り分け
ソフトを使ったデータ消去を行う前には、まず消去対象となるPCを資産管理台帳やリース契約情報と突き合わせ、一覧化する作業が欠かせません。社内で稼働中のPCと保管中のPC、故障機などの状態を区分し、テレワーク用ノートPCやサーバー用途で利用していたPCなど、役割ごとにグループ分けしておくことで、消去漏れや誤消去のリスクを軽減できます。
また、ローカルに保存されている業務データや設定情報はあらかじめバックアップを取得し、ユーザーごとの退職・異動情報とも突合して、消去してよいPCかどうかを二重チェックする仕組みを整えておくことが求められます。
ブートメディアの作成と起動手順
データ消去ソフトは、通常のOS上から実行する方法と、USBメモリやDVDなどのブートメディアから起動して実行する方法があります。
企業のPC廃棄では、OSに依存しない安定した運用のために、ブートメディア方式での一括消去を採用するケースが一般的です。
まず、管理用PCにデータ消去ソフトをインストールし、メーカーが提供する手順に従ってUSBメモリやDVDにブートメディアを作成します。
その後、対象PCのBIOSやUEFI設定で起動順序を変更し、ブートメディアから起動できるように設定します。大量台数を処理する場合は、同一設定のブートメディアを複数本用意し、作業手順書に沿って誰が実行しても同じ手順で起動・消去できる状態を整えることがポイントです。
消去ログの取得と保管方法
企業のPC廃棄では、データ消去そのものだけでなく、いつ・どのPCに対して・どの方式でデータ消去を行ったかを示す証跡が、監査や外部説明の場で求められます。
多くのデータ消去ソフトには、シリアルナンバーやホスト名、ストレージの型番、消去方式、実行日時などを含む消去レポートやログを出力する機能が備わっています。これらのログをネットワークドライブや文書管理システムに保存し、PC資産管理台帳と紐づけておくことで、後から特定のPCの消去状況を即座に確認できます。
また、ログファイルの改ざん防止のためにアクセス権限を限定し、一定期間(例:5年など)保管するルールを社内規程として明文化しておくと、内部統制の観点からも有効です。
消去後の動作確認と再利用可否の判断
データ消去ソフトによる処理が完了したら、消去結果の画面表示やレポートだけでなく、実際にOSが起動しないことやストレージが未初期化状態になっていることを目視で確認することが大切です。必要に応じて管理用PCからストレージ情報を参照し、パーティション情報が削除されているかをチェックします。
そのうえで、PC本体やストレージの健康状態を簡易診断し、社内再利用や社外へのリユースが可能か、物理破壊を前提とした廃棄に回すかを判定します。
再利用する場合は、次の利用者に紐づいた資産管理番号を再発行し、キッティングやOS再インストールのプロセスにスムーズに引き継げるように、消去プロセスで得られた情報を整理しておくことが、ライフサイクル全体の効率化につながります。
PC廃棄業者の選定基準とチェック項目
企業がPC廃棄を外部委託する際は、価格の安さだけで判断すると、情報漏えいや不法投棄といった重大なリスクを招きかねません。業者を比較・検討する際には、法令順守・情報セキュリティ・運用体制・料金体系の4つの観点から総合的に評価することが重要です。ここでは、実務担当者が見落としがちなポイントも含めて、チェックしておきたい項目を整理します。
許認可や資格から信頼性を見極める方法
まず確認すべきは、PC廃棄を適切に行うための許認可や資格です。
産業廃棄物として処理する場合には、産業廃棄物収集運搬業許可や産業廃棄物処分業許可を保有しているかを必ずチェックします。
また、PCを再利用・再販ルートに乗せる事業者であれば、情報機器のリユース・リサイクルを行う団体への加盟状況や、プライバシーマークやISMS認証(ISO/IEC 27001)など、情報セキュリティ関連の認証も信頼性の判断材料になります。
さらに、許可証の名義・有効期限・対応エリアを実際の原本や公的なWebサイトで確認し、名義が委託先企業と一致しているか、下請け任せになっていないかを確認することも重要です。
社内持ち出しから廃棄完了までの管理体制
次に確認したいのが、PCの社内持ち出しから廃棄完了までの一連の管理体制です。PCが社内から搬出された後も、どの端末がどのタイミングでどこにあるのかを追跡できるトレーサビリティが求められます。
具体的には、シリアル番号や資産管理番号単位でのリスト管理、引き渡し時の受領書、輸送中の封印措置や鍵付きコンテナの利用、入退室管理されたエリアでの保管・作業などです。
また、データ消去や物理破壊を行った時点で証明書や作業ログを端末単位で発行できるかも必ず確認しましょう。
これらの管理プロセスが書面化されているか、作業立ち会いや監査対応の実績があるかも、業者の運用レベルを判断するうえでの重要な指標となります。
オンサイト作業と引き取り作業の比較
PC廃棄の実務では、社内に業者を呼んで作業する「オンサイト作業」と、業者拠点へ輸送して対応する「引き取り作業」の2パターンがあります。機密性の高い情報を扱う部門や、PC台数が多い拠点では、データ消去や物理破壊を社内で完結できるオンサイト作業が有効です。
一方で、拠点数が多い企業や、一定量をまとめて処理したいケースでは、引き取り作業のほうがコスト面で有利になる場合があります。そのため、どちらか一方にこだわるのではなく、情報セキュリティポリシーとコストのバランスを踏まえて、拠点やPCの属性ごとに最適な方式を組み合わせることが重要です。
見積もり段階で、オンサイトと引き取りの両方のパターンを試算してもらい、単価だけでなく、作業時間や社内工数も含めたトータルコストで比較検討するとよいでしょう。
見積書で確認すべき料金とオプション項目
最後に、見積書で必ず確認したいのが料金の内訳とオプション項目です。
基本料金として提示されている金額に、データ消去費用・物理破壊費用・回収運搬費用・証明書発行費用・保管費用などが含まれているかを細かく確認します。同じ「PC廃棄〇台分」と書かれていても、何が含まれているかによって、最終的な支払額が大きく異なるためです。
また、最低利用料金の有無、キャンセル時の取り扱い、想定数量を超過した場合の追加単価なども事前に明確にしておきましょう。
さらに、見積書・契約書・作業報告書の形式が社内の監査やコンプライアンス要件を満たしているかも重要なポイントです。
これらを事前にすり合わせておくことで、後から想定外の追加費用が発生したり、監査対応に必要な証憑が不足したりするリスクを低減できます。
企業のPC廃棄でよくあるトラブルと回避策
企業のPC廃棄では、コストや手間を優先するあまり、法令違反や情報漏えいにつながるトラブルが発生しがちです。
特に、廃棄手順の標準化や業者選定のプロセスが曖昧な企業では、担当者の属人的な判断に依存してしまい、後から重大なリスクが顕在化するケースも少なくありません。
ここでは、企業のPC廃棄で起こりやすい代表的なトラブルと、その回避策について整理します。
無許可業者への依頼による不法投棄リスク
PCを含む産業廃棄物の処理を無許可業者に任せてしまうと、最終処分場までの履歴が追えず、結果的に不法投棄や不適切処理につながるおそれがあります。不法投棄が発覚した場合、排出事業者である企業側も「知らなかった」では済まされません。行政指導や罰則、社会的信用の失墜といった大きなダメージを受ける可能性があります。
回避策としては、産業廃棄物収集運搬業・処分業の許可、古物商許可など必要な許認可の有無を必ず確認し、許可証の写しや契約書に記載された内容を社内で保管することが重要です。
また、マニフェストの発行・回収を確実に行うことで、PCが適正ルートで処理されたことをエビデンスとして残せます。
データ消去の証跡不足による監査指摘
データ消去そのものは実施していても、消去ログや証明書が残っていないために、内部監査やISMS認証の審査で指摘を受けるケースも多く見られます。
特に、個人情報や機密情報を扱う部門のPCでは、「誰が・いつ・どの媒体に対して・どの方式で」データ消去を行ったかを示す証跡が求められます。
このトラブルを防ぐためには、データ消去ソフトのログ出力機能や、業者発行のデータ消去証明書を活用し、台帳と紐づく形で保管する運用を徹底することがポイントです。シリアル番号や資産管理番号と併せて管理することで、後から特定PCの廃棄履歴をトレースしやすくなります。
社内ルール未整備による担当者負担の増加
「不要になったPCを都度、担当者の判断で処分している」「部門ごとに独自ルールで廃棄している」といった状況では、担当者による対応が煩雑化し、抜け漏れや手戻りが発生しやすくなります。結果として、PC廃棄の度に関係部署との調整や承認に時間がかかり、通常業務を圧迫してしまうこともあります。
回避策として、PCライフサイクル全体を見据えた社内規程や運用フローを定め、申請から廃棄完了までの責任範囲と手順を明文化することが有効です。申請フォームやチェックリスト、テンプレート文書を整備しておくことで、担当者が迷わず処理できるようになり、属人化も防げます。
トラブルを防ぐための社内チェックフロー
上記のようなトラブルを未然に防ぐには、PC廃棄のたびに共通して確認すべき項目を整理した社内チェックフローを用意しておくことが重要です。
具体的には、「廃棄対象のPC台数・資産管理番号の確認」「データバックアップの完了」「データ消去方式とログ取得」「委託先業者の許認可確認」「マニフェストおよび各種証憑の回収・保管」などを、フローに沿って網羅的に確認できる状態にしておきます。
チェックフローは、情報システム部門や総務部門だけでなく、実際にPCを利用する各部門にも共有し、定期的な教育や棚卸しのタイミングで周知を図ることが重要です。これにより、担当者が変わっても一定の品質でPC廃棄を進められ、コンプライアンスと情報セキュリティの両面からリスクを抑えた運用が実現できます。
PC廃棄と同時に検討したいリプレース戦略
企業で安全かつ適切にPC廃棄を進めるためには、単発の「処分作業」として捉えるのではなく、調達から運用、廃棄までを一体で設計したリプレース戦略(更改計画)として管理することが重要です。計画的なリプレースを行うことで、情報漏えいリスクの低減に加え、TCO(総保有コスト)の最適化や運用負荷の平準化にもつながります。
入れ替えサイクルと減価償却の考え方
PCの入れ替えサイクルは、一般的に4~5年程度を基準に検討されることが多く、会計上の減価償却期間や保守サポート期間、OSのサポート終了時期などを総合的に踏まえて決定します。
「故障してから廃棄・買い替え」ではなく、減価償却が終了するタイミングに合わせて廃棄とリプレースを計画的に実施することで、突発的な投資や業務停止を防ぎやすくなります。あわせて、部署ごとの利用負荷やモバイル利用の多寡を踏まえ、機種ごとに最適な更新年数を設定することも有効です。
PCの入れ替えについては、「▼法人(PC)パソコン買い替えタイミングはいつ? やるべき準備、注意点を徹底解説! アウトソーシングによる効率化も紹介」もあわせてご覧ください。
リース契約の満了時におけるPC処分のポイント
PCをリース契約で導入している場合、満了時の返却条件とデータ消去の責任分界点を事前に確認しておくことが不可欠です。
リース会社側でデータ消去を行う場合でも、自社の情報セキュリティポリシーに沿った消去方式か、消去証明書が発行されるかを契約書や約款で明確にしておく必要があります。
また、満了時期が集中すると回収や入れ替え作業が逼迫するため、開始時期をずらす、契約期間を分散させるなどして、毎年一定台数を更新できるようなスケジュール設計を行うと運用負荷を抑えられます。
サブスクリプション型PCサービスの活用
近年は、PC本体とOS、保守、場合によってはヘルプデスクやキッティングまでを月額で利用できる「サブスクリプション型PCサービス」や「DaaS(Device as a Service)」も普及しています。
これらのサービスでは、契約期間満了時に廃棄や回収、データ消去までをパッケージとして提供するプランも多く、PC廃棄方法の標準化とガバナンス強化に役立ちます。自社でPCライフサイクルを細かく管理するリソースが不足している場合、こうした外部サービスを活用することで、計画的なリプレースと安全な廃棄を同時に実現しやすくなります。
詳しくは、テクバンの「LCM(ライフサイクルマネジメント)サービス」もご参照ください。
キッティング作業の効率化については、「▼キッティングサービスとは? 任せられる作業範囲とメリット、選び方のポイントを解説」もご参考になさってください。
ライフサイクル全体でコストを最適化する考え方
PCのコストは購入価格やリース料だけでなく、キッティングや運用保守、障害対応、そして廃棄時のデータ消去・回収費用までを含めたライフサイクル全体で評価する必要があります。
「導入費用が安い機種を単発で調達する」のではなく、「標準機種の統一」「入れ替えサイクルの平準化」「廃棄とリプレースを同一プロジェクトとして管理する」といった設計を行うことで、PC廃棄方法の品質を維持しつつ、結果的に総コストを抑えられるケースは少なくありません。また、リプレース計画を情報システム部門だけでなく、経理・総務・調達部門と共有し、中長期の投資計画に組み込むことで、安定したIT基盤の維持につながります。
ライフサイクル全体の管理については、「▼PC LCMサービスとは? 導入メリット、コスト削減・セキュリティ強化の秘訣を解説! 企業のIT資産管理を最適化しよう」で詳しく解説しています。
中小企業が実践しやすいPC廃棄方法モデル
中小企業では、台数規模やIT担当者のリソースが限られている一方で、個人情報や顧客データを安全に扱う責任は大企業と変わりません。そのため、コストを抑えつつ、法令順守と情報セキュリティを両立できる現実的なPC廃棄モデルを採用することが重要です。
ここでは、少数台から利用しやすく、専門部署がなくても運用できるPC廃棄の進め方を整理します。
少数台から利用できる回収サービスの活用
中小企業では、PCの入れ替えが年に数回、数台ずつといったケースが多く見られます。
このような場合は、「最小回収台数の制約が少なく、送料込みのパック料金が明確な回収サービス」を選ぶと、予算計画が立てやすくなります。
メーカーが提供する回収プログラムや、リサイクル認定事業者の法人向けサービスであれば、データ消去証明書やマニフェストの発行にも対応していることが多く、監査対応の手間も軽減できます。
また、社内に長期間眠っている古いPCや周辺機器も同時に回収してもらうことで、オフィススペースの有効活用にもつながります。
テクバンでは、デバイス管理全般をサポートするサービスも提供しています。ぜひご確認ください。
IT担当者不在でも運用できる仕組み作り
専任の情シス担当者がいない中小企業では、総務や経理がPC廃棄を兼務しているケースも少なくありません。
そのような環境では、「誰が担当しても同じ手順で進められる、シンプルな社内ルールとチェックリスト」を用意しておくことがポイントです。
例えば、廃棄候補PCのリスト化、バックアップの有無確認、データ消去方法の選択、回収依頼の連絡先、証憑の保管場所といった項目を1枚のシートや社内ポータルにまとめておけば、担当者交代時の引き継ぎもスムーズになります。
また、年1回程度の棚卸しタイミングに廃棄作業を集約すると、抜け漏れや放置PCの発生を防ぎやすくなります。
IT担当者が不在の企業様には、テクバンのヘルプデスク/BPOサービスもご活用いただけます。
外部業者と長期的なパートナー関係を築くコツ
中小企業がPC廃棄を安定して運用するためには、単発のスポット対応だけでなく、信頼できる外部業者と中長期的なパートナーシップを築くことが有効です。
PCの調達・キッティング・データ消去・廃棄までをワンストップで提供できる事業者であれば、入れ替え計画や予算、セキュリティ要件をまとめて相談でき、結果として総コストを抑えやすくなります。
その際、見積書では、データ消去方式、証明書発行の有無、運搬費や少数台対応の追加料金の条件などを毎回確認し、社内で比較・検証した内容を記録しておくとよいでしょう。こうした蓄積が、将来的なPCリプレース戦略やセキュリティポリシーの見直しにも役立ちます。
IT資産管理全体のアウトソーシングについては、「▼IT資産管理アウトソーシング(LCMサービス)のメリットとは? 選定~廃棄の最適化とコスト削減のポイントを解説」で詳しく解説しています。
社内にPC廃棄のルールを定着させる方法
PCの廃棄ルールは、一度マニュアルを作成しただけでは現場に浸透しません。情報システム部門や総務部門が中心となり、「なぜこの手順が必要なのか」「担当者は何をすべきか」を具体的に示し、日常の業務プロセスに組み込むことが重要です。ISO/IEC 27001などの情報セキュリティマネジメントシステムで求められる「ルールの文書化」と「定期的な見直し」の考え方を参考に、社内規程・運用手順書・チェックリストをセットで整備し、経営層から現場担当者まで一貫したメッセージを発信しましょう。
情報セキュリティ教育で伝えるべき内容
PC廃棄ルールを定着させるには、年1回の全社研修や新入社員研修などのタイミングで、「誤ったPC廃棄が情報漏えいインシデントにつながるリスク」を具体例とともに説明することが効果的です。
単に手順を読み上げるのではなく、データ消去を怠ったまま端末を廃棄・譲渡した場合に想定される損害や、個人情報保護法違反により企業イメージが毀損した事例を取り上げることで、従業員一人ひとりの危機意識を高められます。
また、「PCを更新する際は必ず情報システム部門に引き渡す」「資産管理台帳にないPCを独自に処分しない」といった現場で守るべき行動ルールをチェック項目として示すことで、迷いなく実務に落とし込めるようにします。
部署ごとに異なるPC利用実態の把握
廃棄ルールを形骸化させないためには、部門ごとの運用実態を把握することが欠かせません。
営業部門では持ち出し用ノートPCやモバイル端末が多く、開発部門ではテスト用PCや検証用サーバーなど、「正式な資産管理台帳に載っていないが業務で使われている端末」が発生しやすくなります。
定期的に各部門のPC管理者や情報セキュリティ責任者とヒアリングを行い、利用形態・保管場所・持ち出しの頻度を整理したうえで、部門別の運用ルールや申請フローを調整しましょう。
これにより、「一部の部署だけ独自ルールで廃棄していた」といったガバナンス不全を防ぎ、全社で統一された廃棄プロセスの運用が可能になります。
IT環境全体の改善や社内SE支援をお考えの場合は、テクバンのIT推進/社内SEサービスをご覧ください。
定期的な棚卸しと廃棄キャンペーンの実施
PC廃棄のルールを長期的に定着させるには、「資産棚卸し」と「廃棄キャンペーン」を毎年のイベントとして組み込むことが有効です。決算期や人事異動のタイミングに合わせて、全社一斉で使用端末と保管端末を洗い出し、未使用PCや老朽化したPCをリストアップします。そのうえで、情報システム部門が廃棄スケジュール・回収方法・データ消去方法を案内し、短期間で集中的に廃棄を進めることで、放置端末の発生を防げます。
また、棚卸し結果や廃棄台数、情報セキュリティ上の改善点を社内ポータルで共有し、「ルールを守ることで情報資産のリスクが確実に減っている」ことを可視化することで、従業員の協力を継続的に得やすくなります。
環境配慮型のPC廃棄とリサイクルの進め方
企業がPCを廃棄する際は、情報漏えいリスクだけでなく、廃棄物削減や資源循環、CO2排出削減といった環境負荷の低減も重要なテーマになります。
資源有効利用促進法に基づき、使用済みPCはメーカーによる回収・リサイクルが制度化されており経済産業省「パソコンのリサイクル」でもその仕組みが示されています。
ここでは、企業が実務として取り組みやすい環境配慮型のPC廃棄・リサイクルの進め方を整理します。
リユースとリサイクルを組み合わせた運用
まず前提として、循環型社会では「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」の優先順位が重視されます。
環境省の白書でも、リサイクルより上位に位置づけられる2R(リデュース・リユース)の重要性が繰り返し示されています。企業のPC廃棄でも、単に解体・再資源化するだけでなく、再利用可能な端末はリユース、寿命を迎えた端末はリサイクルへ振り分ける二段階運用が有効です。
具体的には、データ消去済みで性能要件を満たすPCは、社内の別部門やグループ企業、教育機関などへの譲渡を検討し、それ以外はPCリサイクルマーク付き製品であればメーカー回収を基本ルートとします。メーカー回収ができないPCや自作機などについては、一般社団法人パソコン3R推進協会経由での回収が案内されておりJEITAの解説ページから確認できます。
こうした公式のリサイクルルートを活用することで、金属やプラスチックが資源として再利用され、最終処分量を確実に減らせます。
CO2排出削減やCSRの観点から見たPC廃棄
PCの製造・輸送・廃棄には多くのエネルギーが使われており、調達から廃棄までのライフサイクル全体でCO2が排出されます。そのため、廃棄台数を減らすこと(長期利用・適切なメンテナンス)と、廃棄時に正式なリサイクルルートを選択することは、いずれも温室効果ガス削減に直結する環境施策といえます。
近年は、サステナビリティ方針やCSR方針の中で、情報機器を含む廃棄物管理を明示する企業が増えています。PC廃棄プロセスにおいても、PCリサイクルマーク付き製品の優先調達、3Rを意識した機種選定、回収実績の定期的なレビューなどを行うことで、「つくる責任・つかう責任」を果たしていることをステークホルダーに示すことができます。
また、環境省が主催する3R推進月間や各種キャンペーンなど、行政の取り組み情報も参考にしながら、自社の環境コミットメントと整合したPC廃棄ポリシーを策定しておくとよいでしょう。
環境報告書や統合報告書への情報反映
PC廃棄・リサイクルに関する取り組みは、環境報告書や統合報告書、ESGレポートなどの非財務情報開示の重要な要素にもなります。廃棄台数や再資源化量、CO2排出削減効果などを定量的に把握し、年度ごとの改善状況をトレンドとして示すことで、投資家や取引先に対して環境マネジメントの実効性を説明できます。
そのためには、PC資産管理台帳と廃棄・リサイクルの実績を連動させ、メーカー回収証明書やリサイクル証明書の枚数・重量を体系的に集計できる仕組みづくりが欠かせません。
環境目標として「使用済みPCのリサイクル率○%以上」「リユース比率の引き上げ」などのKPIを設定し、達成度を毎年レポートに反映することで、PC廃棄の取り組みを単発のコストではなく、中長期的な価値創造の一部として位置づけることができます。
まとめ:確実なデータ消去と証跡管理で、安心できる廃棄フローの構築を
企業のPC廃棄において重要となるのは、「情報漏えい対策」と「法令遵守」の両立です。媒体特性に応じた適切なデータ消去を行い、マニフェストや消去証明書等の証跡を確実に管理することが、監査対応やリスクヘッジにつながります。
また、テレワーク普及による管理の複雑化には、資産管理台帳の整備や、信頼できるワンストップ業者の活用が有効です。「社内ルールの明確化」「確実な証跡管理」「適切な業者選定」の3点を軸に、安全なPCライフサイクル運用を確立しましょう。
PC廃棄・IT資産管理でお困りの際は
テクバンでは、PC廃棄を含むIT資産のライフサイクル全体をサポートするサービスを提供しています。お気軽にご相談ください。
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