皆さんは「サーバー」と聞くと、何をイメージされるでしょうか。
「サーバー」といっても、Webサーバー、アプリケーションサーバーなど様々な種類・用途があります。また、用途観点での分類の他に「物理サーバー」「仮想サーバー」といったハードウェアの有無によって分類することもできます。
そこで本記事では、サーバーの種類とともに用途についても詳しく解説します。
IT業界に身を置く方であればご存じかもしれませんが、基本知識のおさらいや新人教育用などにご活用ください。
「サーバー」とはそもそも何か?
サーバーとは、データやコンテンツ、情報などの「サービスを提供するコンピューター」のことです。
サーバーという言葉は、ビールサーバーのように「サーブ(Serve:提供、支給)する存在」としての意味があり、IT関連以外でも使われているようです。
サーバーは用途によって「提供するサービス」が異なります。どのようなサービスを提供しているのかは、後ほどご紹介します。
「サーバー」と「クライアント」の関係
「サービスを提供する」サーバーに対して、「サービスを要求する」側をクライアントといいます。
クライアントがコンテンツや情報などをサーバーに要求し、サーバーが要求に応じてサービスを提供する、という構成を「クライアント・サーバー構成」と呼びます。
現在では、インターネットを介して、クライアントとサーバーが通信するクライアント・サーバー構成が普及しています。この構成の歴史を見ていきましょう。
1970年代、コンピューターは非常に高価だったため、複数の専用端末が接続してコンピューターを利用する集中型の構成でした。
しかし、1980年代にかけて、インターネットの普及やコンピューターの低価格化・高性能化など、急速に技術が発展し、少しずつ構成が変化していきます。専用端末として汎用性を持つPCが爆発的に普及し、また集中型のコンピューターはサーバーとして多くのPCにコンテンツを提供するようになりました。
そして、現在のようにPCをはじめとした様々なコンピューターが、インターネット経由で情報をやりとりする「クライアント・サーバー構成」を採用するようになったのです。
サーバーに求められる条件
サーバーとPCは同じコンピューターですが、異なる部分があります。
サーバーはサービスを提供し続けるために、以下のような条件が求められます。
- 基本的に24時間365日常時稼働してネットワークに接続でき、利用できる安定性
- 複数の同時アクセスに耐えられるスペック
- 障害が発生しても影響を抑える耐障害性
- データ保護、認証機能などのセキュリティ
サーバーはPCと異なり多くの人が利用するため、「スペック不足で処理が重くなる」「障害が発生してサーバーが停止する」といった問題が発生すると、その影響も非常に大きくなります。それらを防ぐために、サーバーは高いスペックや耐障害性に優れたコンピューターであることが求められるのです。
テクバンではビジネスに欠かせないIT基盤であるサーバーの構築支援を行っております。
サーバーには2種類ある
サーバーは2つの構成があります。
ハードウェアで構成された「物理サーバー」と、ソフトウェアによって構成された「仮想サーバー」です。
ここではその2つの特徴について解説します。
物理サーバーとは
物理サーバーとは、物理的にある1台のサーバーのことです。サーバー用のハードウェア、もしくは1つのサーバー用ハードウェア上に1つのOSをインストールして運用するものを指します。
物理サーバーは利用の仕方によって、さらに「共有サーバー」と「専用サーバー」に分類されます。
共用サーバーとは、1つの物理サーバーを複数のユーザーで共用する使い方です。
1つのサーバーで多くのユーザーが利用できるためコストパフォーマンスに優れていますが、1人のユーザーが重い処理を実行して多くのリソースを消費すると、他のユーザーにも影響するため、利用の際には注意が必要です。
専用サーバーとは、1つの物理サーバーを1人のユーザーが占有する使い方です。サーバーが持つリソースを自由に使えるため、独自の設定を行ったり、利用目的・状況に最適化するように環境を構築したりできます。
しかし、導入・運用コストが高額になるというデメリットがあります。導入・運用・保守まで自分で行わなければならず、サーバーの提供会社によっては管理・保守を請け負ってくれることもありますが、その分契約料は追加となるでしょう。
仮想サーバーとは
仮想サーバーとは、仮想化ソフトウェアを使って物理サーバー内に構築されたサーバーのことです。1台の物理サーバーに仮想化ソフトウェアを使用して複数の仮想サーバーを構築すれば、異なる役割をもたせた仮想サーバーを複数稼働できます。これにより、物理サーバーのリソースを効率よく使用することが可能です。
テクバンではサーバー仮想化製品である「VMware vSphere」の導入支援を行っております。
なお、提供される方式によって「VPS」と「クラウドサーバー」の2つの種類があります。
VPS(Virtual Private Server:仮想専用サーバー)は、レンタルサーバー事業者によって提供されるサービスのひとつで、1台の仮想サーバーを提供する方式です。
前述の通り、専用サーバーと同じような使い方が可能です。また、あらかじめ決められたリソースが割り当てられているため、共用サーバーのように他のユーザーに影響を与えることなく利用できます。VPSはスペックに応じての月額課金が一般的です。
クラウドサーバーは、クラウドベンダーによって提供されるクラウドサービスのひとつで、VPSと同じく仮想サーバーが提供されます。
VPSと比べ、柔軟にリソースを変えられる上に、導入も容易です。課金は従量制となることが一般的で、利用した分だけ費用が発生します。
ところで、「サーバー+SANスイッチ+ストレージ」で構成される従来の3Tier型仮想化基盤では、運用管理面や拡張性などの課題がありました。
これが、HCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)なら、SDS(Software Defined Storage)技術によりローカルディスクを共有ディスクとして提供することにより、サーバーのみでシンプルで拡張性の高い仮想化基盤を構成することが可能です。
HCI製品である「Cisco HyperFlex」は、従来のサーバーとストレージが統合しているだけのHCI製品と異なり、ネットワークも統合したオールインワンパッケージのため、サーバー・ストレージに加え、ネットワークも一元管理することができます。
テクバンでは、このCisco HyperFlexの導入を支援しております。ぜひご検討ください。
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その他サーバーに関する用語
物理サーバーと仮想サーバーは、他の呼び方もあります。
例えば、クラウドサービスを利用して運用するクラウドサーバーに対して、組織のサーバールームやデータセンターに設置した物理サーバーのことを「オンプレミスサーバー」と呼びます。
この他、レンタルサーバー事業者からレンタルする物理サーバー、またはVPSを「レンタルサーバー」(ホスティングサーバー)と呼びます。
オンプレミスサーバーの関連記事をご用意しております。ぜひ、ご参考ください。
▼オンプレミスとクラウドって何が違うの? 移行の特徴も解説
▼オンプレミスからクラウドへ。移行する判断基準、手順は? 注意点とメリット・デメリットも解説
サーバーの用途別分類
サーバーの用途別分類として、Webサーバー/DNSサーバー/FTPサーバー/メールサーバー/ファイルサーバー/データベースサーバー/アプリケーションサーバーについて、ご紹介します。
Webサーバー
Webサーバーは、Webサイトやブログなどのコンテンツを提供するサービスです。サーバー上でWebサーバーソフトウェアを動かし、Webサーバーとして機能します。
Webサーバーは、クライアントの要求に対してコンテンツを提供します。
例えば、PCやスマホのブラウザからWebサイトにアクセスすると、該当のコンテンツが格納されているWebサーバーに接続します。Webサーバーからデータをダウンロードし画面を表示する、という仕組みです。
DNSサーバー
DNS(Domain Name System)とは、ドメイン名とIPアドレスを変換する機能です。この機能を提供するサーバーをDNSサーバーと呼びます。
IPアドレスはコンピューターの住所のようなもので、コンピューターにとってわかりやすい数字で表されます。しかし、数字の羅列では人間にわかりにくいため、人間が見てわかりやすい名前にしたのがドメイン名です。
例えば、Webサーバーにアクセスしたいのに、IPアドレス「192.168.0.10」といった数字での羅列は覚えにくく、馴染みがありません。そこで「www.techvan.co.jp」のようなドメイン名だと、人にとって扱いやすいものとなります。
仕組みとしては、ブラウザからドメイン名を含んだURLで接続すると、最初にDNSサーバーにアクセスし、ドメイン名をIPアドレスに変換します。その後、IPアドレスから該当のWebサーバーにアクセスしてデータを受け取る、という流れです。多くのURLが数字ではなくドメイン名で利用できるのは、DNSサーバーのおかげです。
FTPサーバー
FTP(File Transfer Protocol:ファイル転送プロトコル)は、クライアントとサーバー間でファイル送受信を行うサービスです。このサービスを提供するサーバーがFTPサーバーです。
例えば、Webサイトを作成する際は、Webサーバー上で作成するのではなく、PCでWebページやコンテンツを先に作成し、その後Webサーバーに転送するのが一般的です。このときに、クライアントとサーバー間でファイル転送を行うのがFTPサーバーの役割になります。
メールサーバー
メールサーバーは、SMTPやPOP3などのプロトコルを制御し、電子メールのやりとりを実現するサーバーです。PCやスマホから電子メールを送信すると、送信されたメールはサーバーに格納されます。また、メールを受信する際は、サーバーから自分宛てのメールを受信する、というのがメールの送受信の仕組みです。
ファイルサーバー
ファイルサーバーは、PCやスマホなど複数の端末でのファイルの共有を制御します。
例えば、PCでファイルを作成・保存したものは、そのPC内でしかアクセスできません。これでは、複数のユーザーがそのファイルへ自由にアクセスできず、業務によっては不便になることもあるでしょう。
そこで、ファイルサーバーにファイルを格納すれば、複数の端末から該当ファイルにアクセスが可能になります。また、ファイルにアクセス権限を設定する機能や、ファイルのバックアップを取得する機能も備わっているため、セキュリティ面も考慮した活用にもつなげられます。
ファイルサーバーのクラウド化に関する導入事例をご用意しておりますので、併せてご参考ください。
【事例】ファイルサーバーのクラウド化で、従業員のリモートワークを拡大、業務効率化を実現
データベースサーバー
電子データを構造化して整理・格納し、様々なアプリケーションで利用できる形として保存するシステムがデータベースです。データベースサーバーは、データを格納するデータベースとしての役割を持ちます。
データベースに保存されたデータは、様々なアプリケーションやサーバーとの連携が可能です。
例えば、商品情報や顧客情報を保存し、Webサーバーやアプリケーションサーバーなどと組み合わせることで、ECサイトの構築に活用できます。
アプリケーションサーバー
アプリケーションサーバーは、プログラムの実行環境を提供します。
Webサーバーはコンテンツを提供しますが、JavaやPHPといったプログラムを実行することはできません。しかし、アプリケーションサーバーを使うことで、JavaやPHPなどで開発されたプログラムを実行できるのです。
アプリケーションサーバーの仕組みを、ECサイトで商品情報を検索するときの流れで考えてみましょう。
以下のような流れで実現しています。
- ECサイトのコンテンツをWebサーバーが提供
- 情報を入力して検索ボタンを押下
- Webサーバーを経由し、アプリケーションサーバー上のプログラムに情報が送られる
- プログラムは入力された情報を基に、データベースサーバーに検索結果を要求
- データベースサーバーはデータを検索し、結果をアプリケーションサーバーに返す
- プログラムは検索結果をWebサーバーに返す
- Webサーバーは検索結果を含んだコンテンツをクライアントに返信
アプリケーションサーバーを使えば、プログラムを開発してWeb上で様々な処理を実現できます。ECサイトの他、オンラインゲームもアプリケーションサーバーを使って実現しているのです。
サーバーの運用保守は重要
サーバーは様々なサービスを提供し、ユーザーにとって大変便利で欠かせないものです。
インターネットを経由せずとも利用できるため、社内ネットワーク内でサーバーを構築したいと考える人もいるでしょう。
しかし、利用者を想定したサーバーの構築・運用・保守を安定的に実行するには、専門的な知識や技術が求められます。
また万が一、サーバーに障害が発生しサーバーダウンしてしまうと、組織に大きな影響を及ぼします。特に、ECサイトのような多くのユーザーに利用されるサービスのサーバーが停止してしまうと、経済的損失や信用失墜など多大な損失が発生する恐れがあります。そのため、サーバーの運用・保守は非常に重要です。
テクバンでは、サーバー構築支援サービス、インフラ運用保守・監視サービスを提供しています。サーバー構築や運用・保守について知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。
サーバー構築支援サービス
サーバー運用・保守について、それぞれ関連記事をご用意しています。こちらもご覧ください。
▼サーバー運用の業務とは? 内容や管理/保守との違い、効率化の方法を紹介
▼サーバー保守ってどんな業務? 業務内容や保守の重要性を解説
サーバーの種類を最適に選ぶ
本記事では、サーバーの種類について解説しました。
サーバーは、構成や用途などによって複数の種類に分類されます。これらを考慮して、自社の環境にとって最適なサーバーを構築することが大切です。
例えば、多くのアクセスを受け付けるWebサーバーは、VPSやクラウドサーバーを利用して構築する、大切なデータを格納するデータベースはオンプレミスサーバーで構築する、といった目的に沿ったサーバーの正しい選定をするとよいでしょう。
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