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2023.09.20

クラウド化で生じるネットワーク運用の課題とは? 各ケースにおける解決策も紹介

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目次

業種・業態や規模を問わず、あらゆる組織でクラウドの導入が一般化しており、自社の基幹業務を担うシステムや基盤ネットワークとしてクラウドを活用するケースも増えています。
しかし、クラウド化には多くのメリットがある一方で、いくつかの課題も存在します。

この記事では、クラウド化で生じるネットワーク運用の課題を中心に情報をまとめています。各ケースにおける解決策についても紹介していますので、ご参考ください。

トラブルは最小限に! サーバー、ネットワーク 管理を最適化するポイント

クラウド化のメリット

まず、クラウド化のメリットを簡単に振り返りましょう。

クラウド化で得られるメリットとして「運用費用や運用の人的コストが削減できる」ことが挙げられます。
オンプレミス運用では、サーバーやネットワーク機器などが故障した場合の修理費や新調する費用が当然のことながら自社負担となります。
また、日々のメンテナンスや、OSやミドルウェア、アプリケーションなどのソフトウェアの更新、セキュリティ対応も自社の担当者の責任で行うこととなるため、オンプレミス運用は人的コストも継続的に発生し、対応する人材も専門的なスキル・知識が求められます。
このような負担がクラウド運用では解消され、多くの組織で採用されているのです。

次に挙げられるメリットとして「ネットワーク構築時や、構成の増減時の対応が容易」という点があります。
オンプレミス環境の構築では、機器の準備やセッティングの負担に加え、ネットワークへの対応も常に必要です。
例えば、営業活動面やネットワーク運用面での要望により、繁忙期にはネットワークを増強させたり、サーバーのCPUやメモリといった構成要素をパワーアップさせたりという対応をしなければなりません。
繁忙期を終えたら、増設したサーバーが不要となるため、元のサーバー構成に戻す、もしくは増やしたままという組織もあるのではないでしょうか。
オンプレミスでは、サーバーの増強・増加の必要性に応じて都度大きな費用と手間がかかり、不要となった場合でも、不要となった機器類が手元に残ってしまうだけなのです。

しかし、クラウドであれば、構成の変更や増強はサービス事業者が用意しているセッティングやオプションを選択するだけで済むため、手間はまったくかからず、費用もかなり抑えられます。
さらに、増強した台数やスペックが不要になった段階で、元の構成に戻すのも簡単な手続きだけで済み、手続きが終わった段階でかかる費用も元の契約分のみです。このような手軽さもクラウドのメリットのひとつです。

クラウドであれば、ネットワーク構成の変更や増強は、事業者に連絡・Web上での設定で簡単に完了できる

その他クラウド化には、社外の環境にシステムやネットワークを設置できるため、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)対策やDR(Disaster Recovery:災害の復旧計画)対策に最適である、リモートワークといった多用な働き方に柔軟に適応しやすい、など多くのメリットがあります。

オンプレミスからクラウドへの移行、クラウドの種類といった基本知識は、以下の関連記事も併せてご覧ください。
▼オンプレミスからクラウドへ。移行する判断基準、手順は? 注意点とメリット・デメリットも解説
▼クラウド構築するには? メリット・デメリットや注意点などを解説

クラウド利用時のネットワーク運用の課題

それでは、クラウドネットワーク運用時の課題についてみていきましょう。
課題として、以下5つのことが挙げられます。

  • データトラフィック増大による通信遅延
  • ネットワーク障害が発生すると機能が利用できなくなる
  • セキュリティリスクの懸念
  • システム運用負荷と管理コストの増大
  • カスタマイズ性の不足が問題になるケースも

課題①データトラフィック増大による通信遅延

社内LANといったクローズドな環境で完結するネットワークと異なり、クラウドネットワークサービスはサービス事業者からインターネット回線を通じて提供されます。クラウドネットワークサービス内で構築したものが、仮想ネットワーク/仮想サーバー/アプリケーションのいずれでも、利用する際にはインターネット経由でアクセスする形式です。
そのため、クラウド上で業務を行い大容量のデータのやりとりを日々続けるには、社内のインターネット回線の品質を一定以上に強化する必要があり、一定レベル以下になると帯域が不足してしまうこともあります。

社内で使うインターネット回線のトラフィックが、回線のスペック以上に増大してしまうと、全般的な通信速度の低下が発生します。社内インターネットの通信速度低下は、クラウドネットワークサービスのみならず、社内でのメール送受信、Webからのダウンロード、Web検索、グループウェア、ビデオ会議などあらゆる業務に影響を及ぼすため、様々な業務の効率性や業績の低下にまで至ってしまう可能性もあるのです。

解決策:ネットワークの増強・改善を行う

社内インターネットのトラフィック増大への対応策としては、通信回線の増設、通信サービス・プランの変更などが挙げられます。
いずれかの方法で、社内のインターネット接続で使用できる通信帯域や速度の増強を行っておくことが重要です。

課題②ネットワーク障害が発生すると機能が利用できなくなる

クラウドネットワークを活用して業務を行っている場合、事業者側でネットワーク障害や機器故障が発生し、クラウドネットワークサービス自体が使えなくなってしまうと、途端に社内の関連業務が停止するでしょう。
業務がストップすることは、組織にとって大きな損失となりかねません。絶対に避けたい事象のひとつです。

解決策:事前に障害発生時の対策を講じる

このケースへの対策としては、平時から万が一に備えることが重要です。
例えば、
クラウドネットワークサービスが停止しても当該業務を継続できるように、定期的に関連データのバックアップをローカル環境にとる、必要なアプリケーションは二重化する、といった方法が挙げられます。

また、クラウドネットワークサービス側の障害に影響されないよう「安定性の高いサービスを選定する」「障害発生時も迅速な復旧を行った実績がある事業者を選ぶ」といった視点からサービスを選定することも大切です。

課題③セキュリティリスクの懸念

ネットワークに限らず、クラウドサービス全般を検討する際に多くの組織や担当者が気にかける点として、セキュリティリスクがあるのではないでしょうか。

特に、クラウドネットワークでセキュリティがぜい弱だった場合、業務データや顧客・取引先に関する機密情報などが、外部漏えいする危険があります。

クラウドネットワークは、自社でセキュリティ対策や管理を強化できません。さらに、インターネットを介し、社内情報を外部環境に預けているため、セキュリティリスクには注意を払うべきです。

解決策:セキュリティレベルの高いクラウドサービスを選択する

クラウドサービスのセキュリティ面に関して、例えば「IaaSにおけるインフラ部分」「PaaSにおけるプラットフォーム」「SaaSにおけるアプリケーション部分」など、事業者の管理範囲に該当する部分のセキュリティ対策は、その事業者任せとなります。

そのため、サービス事業者の選定時に、自社のセキュリティ要件を満たしているか、事業者側で十分な対策を行っているか、ということを確認した上でサービスを選定するようにしましょう。CSA(Cloud Security Alliance)PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)などのセキュリティ機関からの認証・認定を取得している、新たな手法の脅威やぜい弱性についての最新状況にも迅速に対応している、といったことが判断基準となります。

クラウドサービス事業者が、「自社のセキュリティ要件を満たしているか」「セキュリティ機関からの認証・認定を取得しているか」を確認しよう

課題④システム運用負荷と管理コストの増大

クラウド普及が進んだ現代において、新たに顕在化してきた課題が、クラウドサービス導入後の運用負荷の増大です。

先述のように、本来クラウドサービスの導入やオンプレミスからクラウドへの移行は、業務負担や運用負担を軽減できるという利点があります。
しかし、クラウドサービス選定時に自社業務との親和性をきちんと確認しないまま選んでしまっていたり、自社で以前から使用している業務アプリケーションとの互換性がなかったり、という問題がサービス導入後に判明する場合もあるでしょう。そうなれば、自社内の業務運用や既存システムを慌てて見直す・・・といった本末転倒な事態が起こってしまいます。

このようなことが起こると、担当者の負担はさらに増え、また社内システムの改修・通信コストの予算超過となり、想定していなかったコストが必要となるでしょう。

解決策:クラウドサービスに明るい優秀なIT人材を確保する

このケースの解決策としては、社内でまずクラウドやネットワーク構築に精通しているスキルの高い人材を確保し、その人物が中心となって業務や既存システムとの親和性・適応性を確認しながらクラウドサービスを導入することが大切です。

なお、情報システム部門の人材だからといって必ずしもクラウドの最近の事情にまで通じているとは限りません。特に、クラウド活用の実績がほとんどないような組織では、情シス担当者がオンプレミス環境下でのエキスパートであっても、クラウドサービスに関するノウハウはそれほど蓄積できていない場合もあります。
スキルがある人材を確保できなければ、クラウドサービス導入・運用の実績が豊富な外部のベンダー企業に依頼することをおすすめします。

課題⑤カスタマイズ性の不足が問題になるケースも

クラウドネットワークサービスは、様々な事業者から提供されており、そのサービス内容や機能性も多種多様です。クラウドネットワークサービスを実際に導入してから「既存の社内システムを再現するための、クラウドネットワークサービス側のカスタマイズ性が不足していた」ということが判明するケースもあるようです。

クラウドネットワークサービスは基本的に、サービス事業者があらかじめ用意している範囲でのカスタマイズしか行えません

解決策:拡張性の高いクラウドサービスを導入する

外部連携や機能拡張など将来的なことも踏まえて、自社での要望をすべて実現できるクラウドネットワークサービスを選定することが大切です。

「クラウドネットワークサービスとの兼ね合いで必要となること」という観点で考える際には、クラウドネットワークサービス自体に関する深い知識が必要になるため、その知識を十分に有した人材に任せることをおすすめします。

適した人材を確保できなければ、前出の運用負荷や管理コストと同様に、クラウドネットワークサービス導入・運用のソリューションを行っているサポート会社に相談することが大きな選択肢となります。
このようなサポート会社では、まずは無料の資料請求や概要だけの相談といった受け入れ体制が整っているところも多くあるため、気軽に相談してみるとよいでしょう。

クラウドからオンプレまで、最適なサーバー環境をご提案

ここまでご紹介したように、本来大変便利で、組織の業務負担軽減に大きく寄与するはずのクラウドネットワークサービスが、逆に負担増大につながってしまったというケースは少なくありません。
従来のオンプレミス運用を継続するにしても、クラウドへ切り替えるにしても、「オンプレミスとクラウドの共存(ハイブリッド)」を選択するとしても、大切なのはネットワークに関する正しい知識とスキルに基づき、適切な事前検討と運用判断を行うことです。

今回ご紹介したようなケースも含め、クラウドやオンプレミスにおけるネットワーク構築・サーバー構築について課題を抱えているお客様は、ぜひテクバンまでお気軽にお声がけください。テクバンでは、クラウド/オンプレミス/ハイブリッドの種類を問わず、お客様の状況やニーズごとに最適な提案を行い、様々な課題解決を行ってきた実績がございます。

サーバー構築支援サービスでは、豊富な導入支援・運用支援のソリューションをご用意しております。

オンプレミスとクラウドの違いやそれぞれのメリット・デメリットについては、こちらの関連記事をご覧ください。
▼オンプレミスとクラウドって何が違うの? 移行の特徴も解説
▼オンプレミスとクラウドの違いは? メリット、デメリットや料金を比較解説

クラウド化の課題をひとつずつ解決しよう

本記事では、クラウド化で生じるネットワーク運用の課題、その解決策について解説しました。クラウドネットワークの利用にはいくつかの課題がありますが、適切な対応を行うことでトラブルやリスクを最小限に抑えられます。

通常、クラウド管理を行う組織の情シス部門は業務が多岐にわたり、負担は膨大となります。そんな情シス部門の負担を軽減するには、ネットワークのクラウド化は大きな解決策となるでしょう。そして、快適なクラウドネットワークの運用を行うには、クラウド化することで生じやすい課題をひとつずつ解決することです。

事前の入念な検討を含め、適切な対策を講じて課題解決を目指しましょう。

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