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2023.09.01

システム開発後の「運用設計」とは? 重要性や進め方を解説

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目次

開発を終えローンチしたシステムは、そのサービス提供期間中、安定したシステム運用を続けていくことがもっとも重要です。そのためには、しっかりとした運用設計を行っておく必要があります。けれども、「運用設計の進め方がわからない」「運用設計書の書き方がわからない」といった悩みを持つ方もいるかもしれません。

この記事では、運用設計の進め方、メリット、ポイント、運用設計書の書き方について紹介します。

運用設計書のサンプルもご用意しております。よろしければご活用ください。

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「運用設計」とは? 具体的にはどういった設計?

まず運用設計の概要と、運用設計と業務設計、開発設計との違いを解説します。

開発したシステムの安定運用を目的とした、運用のためのフレームワーク

「運用設計」とは、納品後・運用開始後のシステムを安定稼働させるために必要な要件・フレームワークです。システムは開発・構築をして終わりではありません。サービス終了まで安定的にサービスを提供するためには、以下のような要件を満たしながら運用する必要があります。

  • 障害対策および対応
  • 事業持続性
  • ユーザーから求められる要件
  • ビジネス面で求められる要件
  • 開発チームから求められる要件(機能追加時にも安定運用できるなど)

運用設計では運用ルール、運用方法、障害対応の方法などの情報をまとめてフレームワーク化し、システムを安定的に運用できる環境や体制を整えます。

運用設計についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
▼運用設計とは? システムの安定稼働における重要性や行うべきタイミングを解説

「運用」と「運用設計」の関係

システムはローンチ後、長期的なサービス提供のためにシステム自体を安定運用させる必要があります。運用は、まず運用担当者へ必要なフローや手順書が渡され、さらに運用担当者、監視オペレータ、保守担当者が連携しあって行います。

運用に携わる担当者の役割や業務内容を以下の一覧にまとめました。

担当者の種類 業務内容
運用担当者 利用者からの問い合わせ対応を行う「サービスデスク」
手順書を元に日時や週次で行う「定型作業」
依頼を元にアカウント作成、パッチ適用、ログ取得を行う「非定型作業」
インシデント発生時にも情報の集約先となる
運用全体を把握しておく必要がある、システムにとって重要な役割
監視オペレータ 不具合の監視
不具合時の一次切り分け
運用担当者へエスカレーション
不具合時の一次対応
不正アクセスなどのセキュリティ監視
保守担当者 障害発生時の部品交換
定期メンテナンス

ローンチしたシステムの複雑化により、運用担当者もすべてを把握するのが困難となりがちです。運用担当者が適切なシステム運用を実行するためにも、運用設計による運用要件のフレームワーク化が必要です。運用設計を行い、文書化することで、例えば新人運用担当者への「指南書」としても活用できます。

「開発設計」と 運用設計の違い

「開発設計」とは、システムの機能や仕組み、設定、提供可能なサービスなどを具体的に設計することです。一方で運用設計はシステムの利用者、利用時期や利用場所・環境、利用目的などを考慮した上で、安定したサービスを提供するために運用面を設計することを指します。例えば障害発生時の対処、ライセンスおよびアカウント類の管理、定期メンテナンスの項目検討および実施など「システムを常時、快適に安定利用できる環境を設計する」のが、運用設計です。

開発設計と運用設計の違い

「業務設計」と運用設計の違い

「業務設計」とは業務全体の最適化、企業のパフォーマンス向上などを目的に業務プロセスごとの最適化、業務フロー作成、可視化などを行うことです。例えば作業量の超過や不足、人的リソースの過不足といった問題や課題の洗い出しや、作業スケジュールや製品の品質/コスト/納期(QCD)観点での改善を行うのは、業務設計にあたります。

業務設計と運用設計の違いについて、詳しくは下記記事でも解説しています。
▼「業務設計」と「運用設計」の違いは? それぞれの基本知識から設計時のポイント、進め方などを解説

運用設計は大きく分けて3種類

運用設計には「業務運用設計」「基盤運用設計」「運用管理設計」の3種類があります。それぞれの設計対象や要件を解説します。

業務運用設計

業務運用設計とは、ユーザー側とシステム運用管理者側両方が円滑に業務を行うために、以下の要件の設計を行うことです。

  • アプリケーションの起動や停止、監視方式
  • アプリケーションの異常終了時の復旧方法
  • システム利用者の管理運用
  • サポートデスク運用
  • 貸与PCなどのライフサイクル(交換、メンテナンス)管理運用 など

基盤運用設計

「基盤運用設計」とは、業務アプリケーションが稼働するための土台システムである基盤を、安定して運用するために要件を決めることです。サーバー機器、ネットワーク機器などのハードウェア、OS(オペレーティングシステム)、ミドルウェアの運用方法や方向性を決めるために、以下のような設計を行います。

  • OSやミドルウェアへのパッチ適用などの管理運用
  • ジョブ・スクリプトなどの運用
  • バックアップ・リストア運用
  • システムの監視運用
  • ログ管理
  • アカウント管理
  • 保守管理 など

運用管理設計

「運用管理設計」とは、システム管理や運用に携わる人が守るべきルールと基準を設計することです。運用管理設計により業務運用と基盤運用に関する業務の基準を設けることで、対応にばらつきがなくなり、より確実で迅速な対応ができるようになります。

運用管理設計では、以下のような要件を設計します。

  • クラウド、システム、CPU、メモリなどのリソース使用率やシステム稼働状況などのデータ収集の仕組み
  • システムを横断した統一基準の設定
  • 運用維持管理
  • 運用情報統制
  • 運用に関する定期レポートの作成 など
運用設計の設計対象

運用設計を行うことのメリット

運用設計を行うことで、システムの運用管理上で様々なメリットが得られます。運用設計を行うことで得られる具体的なメリットを解説します。

効率的で円滑な運用が可能となる

システム運用に関する業務はもともと複雑であり、また職種の異なる複数の担当者が携わっています。そのため、システム運用に関する業務の明確な設計がないと「対応にばらつきが出る」「イレギュラーな対応はできない」などといった問題が発生することもあるでしょう。

運用設計をあらかじめしっかりと行っておくことで、日々の業務を細かくルール化できます。運用設計で定めたルールや基準を業務に導入することで、スムーズかつ効率的なシステム運用が可能となるでしょう。

運用範囲を明確化できる

システム運用は「運用」「監視」「保守」など取り扱う対象の異なる様々な業務が発生します。担当者の運用範囲が曖昧なままの場合、業務の作業量が適正化できない、万が一のトラブルが発生しても責任の所在が分からないといった問題が発生することになるでしょう。

運用設計は、業務担当者の運用範囲も設計します。運用範囲が明確になるため、担当者ごとのシステム運用業務の適正化にもつながります。

障害の発生を防止し、万が一障害発生した際も適切な対応を行える

運用設計では、障害やトラブル発生防止のための仕組みも構築します。システム障害やトラブルの発生件数を減少させ、システムを安定的に運用できるのもメリットのひとつです。

万が一障害やトラブルが起きてしまった場合の対応方法や連絡フローなどを設計しておくことで、インシデント・アクシデントへの迅速な対応が可能です。障害やトラブルによる業務の滞りも最小限に抑えられます。

運用業務の属人化を防ぐことができる

システム運用に関する業務は多岐にわたり、複雑なため属人化しやすいという特徴があります。業務のルール化、マニュアル化を行っていない場合、業務フローやイレギュラー対応の属人化を招き、担当者が休日などで不在の際や、人事異動で別の担当者となった場合の対応が難しくなります。運用設計によって業務が統一化されれば、基準や業務の流れが適切に定義され共有されるため、業務が属人化しにくくなります。

具体的な運用設計の進め方・流れ

運用設計は、以下の流れで進めていきます。

提案・計画

「運用設計の基本指針や方向性」「運用対象の詳細」を元に運用設計の計画を立てて、提案を行います。

要件定義

クライアントや現場担当者などへのヒアリングを元に要件定義を行い、システム運用に必要な要件をまとめます。

運用テスト

要件を元に運用設計を行い、運用設計書としてまとめます。運用設計書を元に実際に運用テストを行い、業務上での実用性の確認とフィードバックの取得を行います。

サービス提供

運用テストの結果を踏まえて改善を行い、運用設計に生かします。その後サービスの提供を行います。

フィードバック・改善

サービス提供で実施した結果を踏まえ、定期的に改善点の発見とフィードバックの取得を行い、必要に応じた運用設計の見直しを行ってシステムを運用していきます。

運用設計の流れ・進め方

運用設計書の書き方

運用設計の成果物として、運用設計書を作成します。
この章では、運用設計書の作成手順や書き方を解説します。

必須項目

運用設計書では、以下の項目を記載します。

  • 運用に求められていること
  • 知っておくべきシステムの知識
  • 登場人物とその役割
  • 運用項目ごとの目的とゴール
  • 各運用項目で利用するドキュメント
  • 採用されなかった運用方針とその理由

運用設計書の冒頭(「はじめに」にあたる部分)

運用設計書の冒頭には「目的」「対象読者」「本書の構成」を記載します。

システム構成に関する設計

運用対象となる「システムの全体像」を把握するための項目を記載します。「イメージ図」「各所の役割」などの記載、および「運用体制図」「システム構成図」「ネットワーク構成図」「システムを実装している運用対象のハードウェア」「運用対象のソフトウェア」などを記載します。

共通運用に関する設計

「アカウント管理」「役割」「運用時間」「サーバー起動・停止」など、共通運用として記載されるべき項目を記載します。

通常運用に関する設計

「バックアップ・リストア運用」「監視運用」「ログ運用」など、通常運用として記載される項目を記載します。

障害運用に関する設計

「基本方針」「台帳管理」「障害運用フロー」「障害復旧方式」など、システムに合う障害運用の項目を記載します。

保守運用に関する設計

「基本方針」「保守の種類」「保守の対象」「保守の定期実施」「保守管理台帳」「保守運用フロー」について記載します。

セキュリティ運用に関する設計

「アクセス制限運用」「セキュリティパッチ適用」「セキュリティ定義情報適用」「セキュリティ監視運用」「セキュリティインシデント運用」について記載します。

運用設計を行う際の注意点

運用設計を行う際に覚えておきたい注意点を順に解説します。

運用設計を行うタイミングで開発設計も同時に行っておく

運用設計時には、開発設計の詳細や資料の参照が必要になります。運用設計と同じタイミングで開発設計も行っておきましょう。

システムの機能維持を意識した設計を行う

運用設計では、情報を使いたいときに使える状態にしておく「可用性要件」を優先して設計しましょう。運用設計では障害やトラブルの防止策を重視しがちですが、万が一のアクシデントで迅速に復旧できること、業務維持できることが重要になるためです。

機密性を最大限重視する

システム運用においては業務根幹に関わる機密情報を取り扱います。セキュリティ対策やアクセス制限、ログ収集による監視、ぜい弱性への対応など、情報が漏れないようにするための定義である「機密性要件」を最大限重視して設計を行いましょう。

運用設計で課題を感じられたらテクバンのサポートを活用ください

「システムやサーバーの運用設計がうまくできない」「設計すべき要件がわからない」など、運用設計に関する課題をお持ちなら、テクバンのサポートをご活用ください。「ITインフラ構築/運用支援」のほか、5つのサービスで情シスの運用をサポートしています。ノウハウを持つ専門家へ運用設計を任せたり、必要なときだけリソースを追加したりといった各種支援が可能です。多くのお客様の導入実績がありますので、お気軽にご相談ください。

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システム運用やシステム運用管理については、こちらの関連記事でも詳しく解説しています。
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しっかりとした運用設計を行いシステムの安定稼働を担保

本記事ではシステム開発後の運用設計の概要やメリット、設計の流れについて解説しました。システムローンチ後は、安定して運用するためにしっかりとした運用設計が必要です。運用設計や運用設計書の作成を行い、サービス終了まで安定して提供できるシステム運用へとつなげましょう。

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