ストレージやWebサービスのみならず、現在ではありとあらゆる機能やサービスがクラウドで提供されています。数十〜百以上の機能・サービスを備えるクラウドプラットフォームが存在し、実際に自社業務の一部あるいは多くをクラウドで行っている企業は多いでしょう。
本記事では、クラウドプラットフォームを導入するにあたり、比較検討したいとお考えの方へ、代表的なAWS、GCP、Azure、OCI、IBM Cloudの5つのサービスを詳しくご紹介します。
クラウドプラットフォームとは
IT分野において「プラットフォーム」とは、機器やソフトウェアを稼働させるための基盤としての役割を持つ、システムやソフトウェア、サービスなどの総称です。
具体的には、次のようなサービスを「クラウドプラットフォーム」と呼ぶのが一般的です。
- クラウドサービスとして提供され、様々なジャンルで多数のサービス・商品のラインアップがあり、必要なものを自由に選んで利用できる
- サーバーレスのクラウドコンピューティングを実現し、仮想ネットワークや仮想サーバーなどの開発インフラレベルから提供されている
クラウドプラットフォームが提供しているサービスには、提供事業者ごとに細かな違いはあるものの、おおむね共通するサービスジャンルとしては、コンピューティング、ストレージ、データベース、ネットワーク、セキュリティ、分析/解析、AI(人工知能)、仮想現実/拡張現実 (VR/AR)、ロボット工学 (Robotics)などがあります。
クラウドサービスにはIaaS・PaaS・SaaS、3つの種類がある
「クラウドサービス」は、IaaS、PaaS、SaaSの3つに大別されます。
詳しくはこちらの記事でご紹介しております。ぜひご確認ください。
▼クラウドの種類を解説! 提供範囲やアプリケーションの違いから最適に導入するには?
次項から、代表的な5つのクラウドプラットフォームを、概要からご紹介します。
1.AWS(Amazon Web Services)
ECサイト運営や動画配信サイト運営などでおなじみのアマゾン社が提供する、クラウドプラットフォームです。
2006年にサービスが提供開始され、2023年9月時点で200種以上の製品・サービスがリリースされています。
製品・サービスの主なカテゴリとしては、クラウドプラットフォームの基本となるコンピューティング、サーバーレスやストレージを始め、データベース、コンテナ、セキュリティといった多くのビジネスで必須のサービスをラインアップ。
また先進技術が採用されたIoT(モノのインターネット)、ML(機械学習)や分析など、広告やマーケティング、農業、ヘルスケア&ライフサイエンス、メディアといった幅広い業種に対応する機能が豊富です。
2.GCP(Google Cloud Platform)
検索エンジン、地図サービスや動画配信サイト運営などでも知られ、Webメールやファイル共有ドライブも大変多くのビジネス現場で活用されている、グーグル社が提供しているクラウドプラットフォームです。
2008年にサービスが提供開始され、2023年9月時点で160種以上の製品・サービスがリリースされています。
主な製品・サービスは、コンピューティング、サーバーレス、ストレージ、データベースといったクラウドプラットフォームの基本カテゴリに加え、医療とライフサイエンス、ネットワーキング、IoT、Web3、AIとMLなど、多種多様です。
3.Azure(Microsoft Azure)
Windows、Office製品など、ビジネスソフトウェアやツールのスタンダードを提供し続ける、マイクロソフト社によるクラウドプラットフォームです。
2010年にサービスが提供開始され、2023年9月時点で100種以上の製品・サービスがリリースされています。
主な製品・サービスは、開発とテスト、DevOps、マイクロサービスアプリケーション、ストレージ、データベースといった開発環境関連のカテゴリの他、eコマース、IoT、AI、モバイル、Web3といった時代のトレンドに対応する幅広いジャンルをラインアップ。
Azure SaaS開発キットといったマイクロソフト社ならではのサービスもあります。
4.OCI(Oracle Cloud Infrastructure)
世界シェアトップレベルのデータベース「Oracle Database」をはじめ、CRM(顧客関係管理)、SCM(サプライチェーン・マネジメント)製品なども開発しているオラクル社が提供するクラウドプラットフォームです。
2016年にサービスが提供開始され、2023年9月時点で50種以上の製品・サービスがリリースされています。
主な製品・サービスは、コンピューティング、開発者サービス、分析とBI(ビジネスインテリジェンス)、MLとAI、ビッグデータとデータレイク、ストレージ、オープンソースデータベース、ネイティブVMware、カスタムアプリケーションなどを取りそろえ、オラクル社独自のソフトウェアとしてまとめられています。
5.IBM Cloud
コンピューター関連のハードウェア・ソフトウェア開発の他、研究機関としても知られるIBM社が提供するクラウドプラットフォームです。
2017年にサービスが提供開始され、2023年9月時点で170種以上の製品・サービスがリリースされています。
主な製品・サービスは、クラウドネイティブ、インテグレーション、分散クラウド、VMware移行、GPUコンピューティング、DevOpsといった、開発環境の統合や最適化にも活用できるラインアップです。
さらに、バックアップと災害復旧、チャットボット、金融サービスなど広範囲なサービスが用意されています。
5つのクラウドプラットフォームを徹底比較!
AWS、GCP、Azure、OCI、IBM Cloudの5つのクラウドプラットフォームについて、導入検討時に参考になる主要項目を以下に比較します。
- AWS
具体的なサービス例 - Amazon EC2(仮想サーバー/IaaS)
- AWS Lambda(サーバーレスコンピューティング/IaaS)
- Amazon S3(ストレージ/PaaS)
- AWS Elemental MediaConvert(オンデマンド動画作成/SaaS)
クラウドプラットフォームの強み - 全世界30以上のリージョン、102のアベイラビリティーゾーンへ広がるグローバルなネットワーク
- セキュリティ/コンプライアンス/スケーラブルの面で厳しい要件にも適合する設計
- ユーザー数の多さにより、世界中に存在する情報コミュニティ
- GCP
具体的なサービス例 - Compute Engine(サーバーレスコンピューティング/IaaS)
- Cloud Storage(ストレージ/PaaS)
- Cloud Machine Learning Engine(機械学習環境/PaaS)
- BigQuery(ビッグデータ解析/SaaS)
クラウドプラットフォームの強み - 検索エンジンなどの既存サービスに裏打ちされた、Googleデータセンターの安定性
- 独自開発ネットワークによるネットワークスピードの速さ
- 「FIPS 140-2」認証取得の高度なセキュリティ
- Azure
具体的なサービス例 - Azure Virtual Machines(仮想マシン/IaaS)
- Azure Virtual Network(仮想ネットワーク/IaaS)
- Azure SQL Database(データベース/PaaS)
- Azure SaaS開発キット(モジュール型リソースキット/PaaS)
クラウドプラットフォームの強み - Windows関連をはじめとした、マイクロソフト製品との親和性が高く連携しやすい
- オンプレミス環境と同等のワークロードを実行した場合の約54%減をはじめとした大きなコスト削減率
- セキュリティ対策への多大な投資により実現するデータセンター、インフラストラクチャ、オペレーションレベルでの高品質なセキュリティ監視
- OCI
具体的なサービス例 - Oracle Cloud VMware Solution(仮想マシン/IaaS)
- Oracle Database(データベース/PaaS)
- Exadata Database(データベース/PaaS)
- Container Registry(コンテナレジストリ/PaaS)
クラウドプラットフォームの強み - 世界有数のデータベース管理システム「Oracle Database」を利用可能
- クラウド・ネイティブ・アプリケーションの構築時に必要となる機能がすべてそろう
- 主要なセキュリティシステムのほとんどを追加料金なしで利用可能
- IBM Cloud
具体的なサービス例 - IBM Cloud Code Engine(サーバーレスコンピューティング/IaaS)
- HPCaaS from Rescale(開発環境/PaaS)
- IBM Mobile Foundation(モバイルアプリミドルウェア/PaaS)
- IBM Watson Discovery(AI分析/PaaS)
クラウドプラットフォームの強み - 全世界30以上のリージョン、102のアベイラビリティーゾーンへ広がるグローバルなネットワーク
- IBM社の人工知能「Watson」を用いた開発が行える
- 他社クラウドプラットフォームと比較して低コストを維持しやすい
クラウドの料金体系を比較
ご紹介した各クラウドプラットフォームはどのサービスを選択して利用するか、どのようなオプション構成を選ぶかなどによって料金体系が異なってきます。また、クラウドプラットフォームは導入が無料で、使用量(容量、時間など)による従量課金となることが一般的です。
参考に、各クラウドプラットフォームの基本的なクラウドストレージサービスの料金体系を紹介します。
ストレージサービス名および「選択プラン」 | ストレージサービスの基本料金* | |
AWS | Amazon S3「S3標準」 |
最初の50TB/月~0.025USD/GB ※リージョン:東京 |
GCP | Cloud Storage「Standard Storage」 |
0.023USD/GB ※リージョン:東京 |
Azure | Azure Files「冗長性オプションLRS / プランPremium」 |
0.192USD/プロビジョニング済みGiB(ギビバイト) ※リージョン:東日本 |
OCI | Cloud Storage「ブロック・ボリューム・ストレージ」 |
0.0255USD/GB ※リージョン:選択なし |
IBM Cloud | IBM Cloud Object Storage「Smart Tier -Hot」 |
0.0248USD/GB ※リージョン:jp-tok(東京) |
注:各基本料金は2023年9月3日時点の為替レート(USD/円)で換算
* 同環境・条件下ではない
クラウドサービス、オンプレミスを含めた「費用」に関しては、こちらの記事も併せてぜひご覧ください。
▼クラウド運用の費用はどのくらい? オンプレミスとの比較、クラウドサービス同士の比較も
各クラウドプラットフォームのセキュリティ対策もチェック!
各クラウドプラットフォームを選定する際には、ここまでご紹介したサービス内容に加えて、セキュリティ面の確認も大変重要です。
「サービス内容が気に入って導入したが、自社が求めるセキュリティ要件にマッチしていなかった」といった事態を避けるために、各サービスのセキュリティ対策をご確認ください。
AWSのセキュリティ対応状況
AWSでは、「責任共有モデル」という考え方に基づき、AWSの責任範囲であるアプリケーションインフラ部分で高い可用性、障害耐性が約束されています。
世界トップクラスの専門家がAWSのモニタリングを担当し、常に最新のリスク状況を踏まえた対策が行われているため、安心感があります。
また、サービス利用時のデータの通り道であるAWSグローバルネットワークを流れる全てのデータに対し、自動的に暗号化が行われているため、万が一のデータ盗聴にも情報漏えいのリスクが低いといえます。
GCPのセキュリティ対応状況
GCPのクラウドデータが保管されるデータセンターでは、独自設計された電子アクセスカード、車両セキュリティゲート、金属探知機、レーザービーム侵入検知といった多層的・物理的なセキュリティ対策がなされており、データを守るための対策が強固です。
また、世界有数のエキスパートなど500人以上のセキュリティエンジニアが、24時間体制で脅威の早期発見・対処に取り組んでいるため、未知の攻撃手段にも一定以上のレベルで対策がなされています。
ユーザーとGoogleの間、およびデータセンター間で送受信されるデータは全て暗号化され、保存されているデータもクラウド上の仕組みで暗号化されているため、データ盗聴があっても中身を簡単に見られてしまう心配がないといえます。
Azureのセキュリティ対応状況
Windowsを始め、長年にわたり様々なOSやビジネスソフトでセキュリティ対策を行ってきたマイクロソフト社が「きわめて安全なクラウド基盤」を方針として設計したクラウドプラットフォームがAzureです。
特徴として、4,000億件以上のメール、10億件以上のWindowsデバイスの更新情報、180億件以上のBing Webページなど、マイクロソフト社が持つ膨大な情報の分析データによって、脅威の発見・対策が徹底されています。
取り扱いデータのセキュリティ確保の面でも、データが保管されるデータセンターを始め、インフラ、Azureサービスの運用において、多層構造のセキュリティを提供し、対応しているため安心といえます。
OCIのセキュリティ対応状況
OCIは暗号アルゴリズム、コンプライアンス、キー管理のセキュリティなどの要件に基づき、通信接続中のデータや保存済みデータの保護を徹底しています。
例えば、OCIの各サービス上で悪意のある動きや、リスクになりかねない行動を検知した場合には、自動的にアクセスを制限。サービス自体の動作のみならず、クラウド上で利用者が開発を行う際など全ての操作に対して、オラクル社独自の厳格なセキュリティ基準によって制御されます。
IBM Cloudのセキュリティ対応状況
IBM Cloudは、ISO、SOC、CSA STARといった標準的なセキュリティ認証制度への取り組みの他、金融情報システムセンタの「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準」、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」など、国内独自のセキュリティ要求事項を含め、様々に適合しているため、セキュリティ要件レベルが高い企業でもスムーズに導入しやすいでしょう。
サービス内で取り扱われるデータは、使用中、静止中、移動中といったあらゆる段階で脅威を検知。同社ならではの特徴として、「Keep Your Own Key」機能(IBM独自のクラウド向け商用最先端暗号化方式)によって、攻撃者のアクセスをシャットアウトします。
クラウドプラットフォームの導入のご相談はテクバンへ
クラウドプラットフォームは多様な機能を備え、業務遂行やサービス提供、開発・研究といったあらゆる分野のニーズを満たすサービスといえます。
ただし、多機能だからこそ理解しなければならない専門知識も多く、導入しても機能を最大限、生かし切れるか自信がないご担当者もいらっしゃるかもしれません。
そこで、導入支援ソリューションの活用をおすすめします。
テクバンではご紹介したクラウドプラットフォームのうち、下記の導入をサポートしております。
導入に不安がある、運用で課題がある場合は、テクバンへお気軽にご相談ください。お客様のパートナーとして、サービスプラン選定から導入、運用まで状況に応じ、最適なサポートをいたします。
テクバンの各サービスの詳細確認や資料請求はこちらからご確認ください。
Amazon Web Services(AWS)導入支援サービス
Oracle Cloud Infrastructure(OCI)導入支援サービス
Microsoft Azure導入支援サービス
クラウドプラットフォームの導入検討は専門家へ
各社が展開するクラウドプラットフォームはいずれも、多くのビジネスジャンルに対応する多様な機能を提供しています。
ご紹介した情報をもとに、ぜひ自社のニーズに合うクラウドプラットフォームを選定してください。
クラウドプラットフォームの導入検討を進める中で、様々な検討要素がある場合、専門家による導入支援を活用されてはいかがでしょうか。
テクバンではお客様の状況や不安、わからないことに寄り添いながら、真のソリューションをご提供しております。ぜひ一度ご相談ください。
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