近年、企業を取り巻く環境は大きく変化し、ITの活用が不可欠となっています。さらにDX(デジタルトランスフォーメーション)は、もはや選択ではなく、企業の存続をかけたミッションといえるでしょう。
しかし、「DXをどのように進めれば良いのかわからない」「具体的な手順が知りたい」といった声もよく聞かれます。
本記事では、そんなお悩みを抱える企業に向けて、DXをスムーズに推進するための6つのステップと、それぞれのステップで注意すべきポイントを解説します。
DXとは何か?
DXとはITを活用して、ビジネスモデルや業務プロセスを根本から変革する取り組みです。従来のIT化とは異なり、DXは単にITシステムを導入するだけではなく、企業文化や組織体制、そして顧客との関係性まで含めた包括的な変革により、新たな価値を生み出すのです。
例えば、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)といったテクノロジーを活用し、製品やサービスの開発、顧客とのコミュニケーション、業務の効率化など、企業のあらゆる側面をデジタル化することで、新たな価値を創造し、競争優位性の確立を目指します。DX推進は企業が生き残るために不可欠であり、だからこそ多くの企業がDX推進に取り組んでいます。
DXを推進するメリット
DXを推進することで、企業は様々なメリットを享受できます。
業務効率化
これまで人手で行っていた業務を自動化できることもDXのメリットです。RPA(Robotic Process Automation)の導入やAIの活用により、データ入力、レポート作成など、反復的な作業を効率化し、人的リソースをより創造的な業務へ集中させられるようになります。
コスト削減
DXによる業務効率化に伴い、人件費や時間といったコストを削減できます。また、ペーパーレス化を進めることで、印刷費や保管費用などの間接費も削減可能です。
さらに、クラウドサービスの活用により、ITインフラにかかるコストも抑えることができます。
新たな企業価値の創出
DXは、新しい製品やサービスを生み出すための基盤となります。例えば、顧客データの分析により、顧客のニーズを深く理解し、それに合わせた製品やサービスを提供することができます。
競争力強化
ITの活用によるDXは、企業の競争力を強化するための強力な武器となります。さらに、データに基づいた意思決定が可能になり、市場の変化に迅速に対応できるようになるでしょう。
企業の持続的な成長
DXは、企業の持続的な成長を支える重要な要素です。DXを推進することで、企業は常に変化し続ける市場環境に対応し、新たなビジネスチャンスを創出することができます。また、DXによる業務効率の改善は非効率な業務がなくなるため、従業員のモチベーション維持にもつながり、企業全体の活性化にも貢献します。
DX推進の課題
DXは、企業の成長に不可欠な取り組みですが、その推進には様々な課題が立ちはだかります。ここでは、DX推進における一般的な課題を4つの視点から解説します。
- 具体的な推進方法がわからない
DXは、単なるITツールの導入ではなく、企業全体の変革を伴うため、具体的な推進方法が不明確であることが大きな課題です。 - 従業員のリテラシーが低い
DXを成功させるためには、従業員全員がITに対する理解を深め、新しい技術を活用できるようになる必要があります - 予算や人材が不足している
DXの推進には、多くのIT投資と専門知識を持つ人材が必要です。 - 経営層の理解が得られない
DXは、中長期的な視点での投資が必要となるため、できるだけ短期的な利益を求める経営層の理解を得ることが難しい場合があります。しかし、先に挙げた課題を克服するためには、経営層の強いコミットメントが不可欠です。
DXを成功させるための6つのステップ
DXを実現させるためには、適切な計画策定と実行が必要です。そこで、DX推進の流れを、6つのステップに分けて解説します。
ステップ1:現状分析と目標設定
DXの成功には、まず自社の現状を正確に把握し、目指すべき未来を明確にすることが重要です。
自社の課題や問題点、強みの分析
自社のビジネスにおける課題や問題点を洗い出し、同時に自社の強みを明確にする必要があります。例えば、業務の効率化、顧客満足度の向上、新たな収益源の開拓など、課題を明らかにしましょう。
市場や競合の動向を調査する
自社の置かれている市場環境を把握し、競合他社の動向の分析によって、DXで実現する目標を明確にします。
目標設定する
現状分析の結果に基づき、具体的な目標を設定します。目標は、数値化できるものが望ましく、達成期限の設定により進捗状況を測りやすくします。
現状把握のポイント
現状把握するためのポイントを解説します。
- 目的を見失わない
DXを推進する上で目的を常に意識しましょう。 - 現状を客観的に分析する
感情に左右されず、データに基づいて現状を分析しましょう。 - 関係者全員を巻き込む
経営層から現場の従業員まで、関係者全員が現状を共有し、共通の目標に向かって取り組めるようにしましょう。
ステップ2:DX戦略の策定
次に現状分析に基づいて、具体的なDX戦略を策定します。
具体的な施策とスケジュールを策定する
具体的な施策とスケジュールを策定する際のポイントを解説します。
- ロードマップの作成
DX推進のスケジュールを明確化し、各フェーズにおける具体的な施策を定めます。 - 責任者の配分を決める
各施策の責任者を明確にすることで、責任の所在を明確にし、進捗管理を円滑に行います。
経営層のコミットメントを得る
経営層の理解と支持を得ることが、DXの成功には絶対不可欠です。
- 経営層への説明
DXの必要性とメリットをわかりやすく説明し、経営層の理解を得ます。 - 経営層の参加
経営層が積極的にDX推進に関わることは、従業員の意識向上につながります。
ビジョンとミッションを明確化する
全従業員が共有できるビジョンとミッションを策定します。
- 共通の目標を設定
全員が同じ方向に向かって取り組めるように、共通の目標を共有します。 - 企業文化と整合させる
企業文化と整合性の取れたビジョンにすることで、従業員の共感が得られ、主体的にDXに取り組むことにつながります。
DX戦略策定のポイント
DX戦略策定のポイントを解説します。
- 現状と目標のギャップを適切につかむ
現状と目標の間にどのようなギャップがあるのかを明確にすることで、必要な施策を特定できます。 - 経営層と共有し、合意形成する
経営層と戦略を共有し、合意を得ることで、スムーズな推進が可能になります。
ステップ3:DX推進体制の構築
DXの実現には、適切な推進体制の構築が重要です。
DX推進組織を立ち上げる
専任で行う組織を立ち上げることは、DXの着実な推進につながります。
責任者を任命する
DX推進の責任者を任命し、責任と権限を与えることで、スムーズな推進を図ります。
必要なスキルを持つ人材を適切に配置する
デジタルIT技術や業務、経営に関する知識やスキルを持った人材を確保します。
DX推進体制の構築のポイント
DX推進体制を構築する際のポイントを解説します。
- 社内横断的な体制を構築する
異なる部門の連携を強化することで、より効果的なDX推進が可能になります。 - 外部の専門家を活用する
必要に応じて、外部の専門家からアドバイスを受けたり、人材を雇用したりすることで、専門性の高い取り組みを実現します。
ステップ4:リソースの導入とITインフラの整備
DXを推進するためには、必要なリソースの導入、ITインフラの整備が欠かせません。
導入するリソースの例
導入するリソースの例を挙げます。
- AI(人工知能)
- IoT(モノのインターネット)
- ビッグデータ
ITインフラの整備
ITインフラ整備の観点を解説します。
- クラウド
クラウドサービスを活用することで、ITインフラの構築・運用コストや時間の削減が可能です。 - セキュリティ対策
情報漏洩を防ぐためのセキュリティ対策の徹底が必要です。
リソースの導入とITインフラ整備のポイント
クラウドサービスは、柔軟かつ迅速にIT環境を構築・変更できるため、積極的に活用を検討しましょう。また、情報漏洩は企業にとって大きな損失につながるため、セキュリティ対策を徹底することが重要です。
ステップ5:DX施策の実行
策定したDX戦略に基づいて、いよいよ具体的な施策を実行します。
テストプロジェクトを繰り返し検証、改善する
小規模なプロジェクトから開始し、成功事例を積み重ねていくことで、リスクを最小限に抑えながら、モチベーションアップにつなげます。
進捗状況を定期的に確認する
進捗状況を定量的に評価し、目標達成に向けて適切な施策を実行できているか、定期的に確認します。
施策実行のポイント
DX化する現場の意見を常に聞きながら、DXを実行することが重要です。
ステップ6:DXの評価・改善
DXは、一度完了すれば終わりではなく、継続的な改善が必要です。
定期的に成果を測定する
成果を測定する際のポイントを解説します。
- KPIに基づいた評価
設定したKPIに基づいて、成果を定量的に評価します。 - アンケート調査
従業員や顧客へのアンケート調査を実施し、定性的な評価を行います。
PDCAサイクルを回す
PDCAサイクルを回すことで継続的な改善を行い、DXを促進します。
課題を分析し、改善策を講じる
途中で問題が発生した場合、原因を究明、改善策を検討し、実行に移します。
評価・改善のポイント
定量的な指標に基づく評価は、客観的な評価を可能にします。そして、取り組みの成功例を他の部門やプロジェクトに展開することで、DXの推進を加速させることができるでしょう。
DX推進のポイント
DXを成功させるためには、技術的な側面だけでなく、組織的な側面も考慮する必要があります。ここでは、改めてDX推進における重要なポイントを、まとめてご紹介します。
- 経営層のコミットメントが重要
DXは、企業全体の変革を伴うため、経営層の強いコミットメントが不可欠です。経営層がDXの重要性を認識し、積極的に推進することで、社員のモチベーション向上や社内全体の意識改革を促せます。 - 社員全体を巻き込む
DXは、社員一人ひとりの意識改革なくして成功しません。全社員がDXの目標を共有し、主体的に取り組めるような環境づくりが重要です。 - 長期的な視点で取り組む
DXは、一朝一夕に実現できるものではありません。短期的な成果にとらわれず、長期的な視点を持って計画的に取り組む必要があります。 - 変化を恐れず、チャレンジする
DXは、新しい技術やビジネスモデルの導入を伴うため、変化を恐れずにチャレンジすることが重要です。失敗したとしても、PDCAサイクルを回しながら、改善を続けていく姿勢が求められます。 - 専門家の力を活用することも
DXは、幅広い知識と経験が必要となるため、専門家の力を活用することも有効です。
テクバンでは、DX推進を支援するための様々なソリューションを提供しています。ご相談いただければ、お客様のニーズ・現場に合わせて最適なソリューションをご提案いたします。
テクバンへDXについて相談する
DX成功事例:飲食業界の革新
飲食業界では、DXがCX(顧客体験)の向上と業務効率化に大きな影響を与えています。ある回転寿司チェーンでは、DXを通じて顧客満足度の向上と運営コストの削減を実現しました。
課題と目標
この回転寿司チェーンは、従来、仕入れ管理や顧客対応は人手に依存しており、仕入れミスや顧客対応の遅れが課題となっていました。そこで、最新のデジタル技術を活用し、仕入れ管理の効率化と顧客サービスの向上を目指しました。
導入したソリューション
DXを実現させた際に導入したソリューションは次の通りです。
- AI画像認識技術の導入
マグロの仕入れにAI画像認識技術を導入し、目利き職人の過去の判定データを活用。90%以上の精度でマグロの品質を判定することで、目利き職人の負担を軽減しました。 - オンライン予約システムの導入
ウェブサイトとモバイルアプリを通じて、24時間いつでも予約が可能なシステムを導入。顧客は簡単に予約を行うことができ、待ち時間が大幅に短縮されました。 - データ分析プラットフォーム
顧客データを分析し、個々のニーズに合わせたサービスやプロモーションを提供。顧客満足度の向上とリピーターの増加を実現しました。
DXの成果
これらの取り組みにより、仕入れ管理の効率が大幅に向上し、仕入れミスは50%減少しました。
また、顧客対応を迅速化させた結果、顧客満足度は20%向上しました。さらに、データに基づくパーソナライズドサービスを提することで、リピーター率が15%増加しました。
DXが進められない場合は?
DX推進は、企業にとって大きなチャレンジですが、専門家の力を借りることで、課題や障壁を克服できます。
専門家を活用するメリット
社内では気づきにくい問題点や改善点を、客観的な視点から指摘してもらうことができます。また、最新の技術や業界の動向に関する豊富な知識と経験に加えて、短期間で効率的にDXを推進するためのノウハウを持っているため、強力な推進力となるでしょう。さらに、専門家のアドバイスを受けることで、失敗のリスクを減らし、スムーズなプロジェクト進行を期待できます。
専門家を選ぶ際のポイント
専門家を選ぶ際のポイントは、まず実績です。過去にどのようなDXプロジェクトに関わってきたのか、自社の課題解決に必要な専門知識を持っているか、実績をしっかりと確認しましょう。
そして社員とのコミュニケーションが円滑にとれるかどうかも重要な点です。
最後に提供されるサービスの費用対効果をしっかり見極めなければなりません。
テクバンのソリューションとは?
テクバンでは、お客様のDX推進を支援するための様々なソリューションを提供しています。
一例として、情報システム部門が抱える課題解決のコンサルタントを行う「TECHVAN Management Center」サービスでは、業務改善のご提案、そしてDXを実現させるためノウハウと経験を持ったコンサルタントが、お客様とともにプロジェクトを推進します。
どのようにDXを進めていいかわからない、DXで何を目標にすればいいかわからないなど、どんな課題にも対応いたします。ご相談いただいてから最短1か月でサポートが可能です。まずはお気軽にご相談ください。
DXをあきらめないことが企業成長につながる
DXは、企業の成長に不可欠な取り組みですが、多くの企業が途中で挫折してしまうといわれています。その理由は、DXが大きな変革を伴い、時間と労力、そして投資が必要だからです。
しかし、DXを成功させれば、業務効率化、コスト削減、新たなビジネスチャンスの創出など、多くのメリットが得られます。
DXはゴールではなく、常に変化し続けるプロセスなのです。大切なのは、あきらめずに、一歩ずつ前進していくことです。
本記事で紹介した6つのステップとポイントを参考に、自社に合ったDX推進方法を検討し、取り組みましょう。DXは、企業の未来を大きく変える可能性を秘めています。