システムを運用していく上で、様々な面で改善する必要性が生じることがあります。
システムの簡略化・仮想化やサーバーの負担軽減、運用コストの削減など必要な改善を、最適なコストで行うためにはどうすればよいでしょうか。
本記事では、システム運用の改善について、課題と目的やポイントとともにプロセスやアプローチ方法を解説します。
システム運用面のよくある課題
システム運用で発生しがちな課題には、業務の属人化やシステムの複雑化、管理の形骸化などが挙げられます。以下の4つの課題について、詳細を解説します。
- 運用現場が属人化している
- システムが複雑化し、トラブル対応に追われる
- 予算管理や実績管理が形骸化している
- 費用対効果が見えづらいため、コスト削減を求められてしまう
運用現場が属人化している
「特定の担当者にしか業務内容がわからない」「特定の担当者に頼り切ってしまっている」というような状態を属人化といいますが、システムを運用する現場で属人化が起きてしまうと、以下のような理由から大きな問題につながりかねません。
- 担当者がいないときにシステムにトラブルが発生しても、対応できる人材がいない
- システム運用についてわかる人材が他にいないため、疑問があっても口を挟みにくい
- 担当者に負荷がかかり過ぎる
システムのトラブルは、人材のアサイン状況や会社の都合に関係なく、いつでも起こり得ます。
属人化した運用現場でトラブルが発生した場合、例えば担当者が休暇を取っていたり、外出していて不在だったりすると、すぐには対応できません。そうすると、業務停止といった事態に陥るリスクが高いといえます。
また、システム運用の業務内容は難易度が高く複雑です。そのため、システム運用について理解している人材が限られていると、口を挟みにくい雰囲気になることも属人化した運用現場ではありがちです。
システムが複雑化し、トラブル対応に追われる
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進が叫ばれる中、高度な機能が増えて複雑化するシステムでは、トラブル対応にかかる手間も大きくなっています。ITを利用した運用業務の効率化や改善を図ろうとしても、社内のメンバーだけではその時間すらないケースもあるようです。
システム運用に長けた人材をすぐにアサインできる組織は多くないかもしれませんが、属人化の問題と同様に、トラブル対応まで可能かどうか、現時点での社員のマンパワーについても検討する必要があります。
予算管理や実績管理が形骸化している
システム運用は定型的な業務といったイメージがあり、目的が形骸化してしまうケースが課題としてあります。
作業報告が実際に行った作業と差異があり、正しく反映されていないことも珍しくないでしょう。そうなると、反映しなければならない予算・実績管理が的確に行えず、前年度のものを踏襲してしまうといった形骸化した管理方法が見られるようです。
担当者が作業実態を正しく報告していない、業務を可視化していない、という原因から形骸化を招いてしまいます。
費用対効果が見えづらいため、コスト削減を求められてしまう
システム運用部門の仕事は、契約獲得数や売り上げ高に対する経費といった数字で可視化されている営業部門の仕事と異なり、費用対効果が目に見えづらい仕事です。
そのため、全社的なコスト削減を図る際にシステム運用部門はどこの部署よりも、コスト削減を求められやすい立場なのかもしれません。
費用対効果が目に見えづらい点から、システム運用の担当者と経営層とで業務に対する認識の齟齬(そご)が起こりやすいのも、課題のひとつといえるでしょう。
システム運用に関する様々な知識については、こちらの記事もぜひ併せてご覧ください。
▼システム運用とは? 保守との違い、重要視される理由について解説
▼システム運用と保守の違いを解説! 具体的な業務内容は?
システム運用改善の目的
課題の一つひとつを改善していくことは、組織にとって以下のような目的の達成につながります。
事業の継続
いまや業務システムやITソリューションの活用は、組織にとって当たり前となってきました。それと同時に、システムの安定的な運用なくして事業の継続はないといっても過言ではないほど、システム運用の重要性が増しています。
システムを安定的に運用するためには、日々の改善が欠かせません。システム運用の改善を続けることこそ、事業の継続を支えているといえるのです。
生産性の向上
事業の継続という大きなくくりの目的とは別に、システム運用改善には「生産性の向上」という目的があります。
作業効率のアップや自動化ツールの導入、システム運用業務の可視化といった改善策の多くは、生産性の向上につながるものです。生産性は、以下の3つのタイプに分類されます。
- 資本生産性
機器や設備などの保有資本がどれだけの利益・成果を生み出しているかを定量的な数値で可視化したものが「資本生産性」です。稼働率アップや付加価値の増加が、資本生産性の向上につながります。 - 労働生産性
従業員が1人あたり、または単位時間あたりにどれだけ利益・成果をあげたかを、定量的な数値で可視化したものが「労働生産性」です。
労働生産性を向上させる方法には、業務効率の見直しや従業員のスキルアップが重要です。主な業務効率の改善策としては、不要な作業工程の廃止や業務自動化システムの導入、オンプレミス型システムからクラウドシステムへの変更などがあります。
スキルアップでは、技術や知識を習得するだけでなく、コミュニケーション能力やメンタル面のスキルアップもビジネスパーソンとして重要です。 - 全要素生産性
「全要素生産性」とは、資本や労働など全要素によって得られた利益・成果の指標です。
資本生産性や労働生産性とは異なり、数値化が容易ではありません。労働と資本の投入量の変化率を全体の変化率から引いて算出します。利益・成果の増加が、資本や労働の増加によるものなのか、それ以外の要因によるものかを知ることができます。
システム運用改善時の注意点
システム運用改善にあたり、注意すべき点を紹介します。
運用業務の複雑化を避ける
ITの進化に伴い、新しいツールやITシステムの導入、システム開発の影響、さらには個別のニーズへの対応など、システム運用の業務は複雑化しやすい条件がそろっているといえるでしょう。
とはいえ、運用業務の複雑化は、生産性の向上を目的とするシステム運用改善に逆行するものです。他の業務を効率化したとしても、システム運用の現場が複雑化している状態であれば、全社的な業務効率を落としてしまうトラブル要因になりかねません。
そのため、運用業務はできる限り簡略化し、誰でも行える体制の整備をおすすめします。
運用業務の属人化を避ける
システム運用面のよくある課題で述べたように、運用業務の属人化は、いざというときに対応できる担当者がいない、担当者のキャパシティを超えてしまうといった問題につながります。
しかし、システム運用のスキルをもった人材の確保・アサインはそう簡単ではありません。現時点で専門的な人材が少なければ、採用活動を行うことももちろんですが、新たな担当者に教育・研修を行うといった、属人化を避けるための取り組みが必要です。
安定したシステム稼働と生産性に重きを置く
事業の継続という大きな目的があるシステム運用改善は、安定したシステム稼働を主眼に置く必要があります。そのため、生産性の向上につながる標準化や業務の自動化などの施策を実施するとよいでしょう。
特定のリソースだけに頼らない体制を社内で整えることが大切です。
システム運用改善のプロセス
システム運用改善のプロセスを紹介します。実践できるものから取り組んでみましょう。
現在の運用業務を可視化する
最初に、現在行われている業務を洗い出し、可視化します。「誰が」「何を」「いつ」行っているのかがあいまいなままでは、業務をどう改善すべきかわかりません。
複数の担当者がいる場合は、担当者ごとの業務内容を明確にするとともに、属人化されている業務がないかどうかも確認しましょう。
運用業務を整理する
運用業務の現状を把握できたら、個別に必要性と妥当性を検討します。
無駄な業務だとメンバー内で判断したものは廃止し、必要な業務であっても作業方法が非効率になっている部分があれば適切な方法へ変更するなど、業務の簡略化が重要です。
また、この機会に業務を平準化し、特定の担当者任せにならない体制作りも進めましょう。
運用コストを見直す
システム運用改善では、コストの見直しも重要です。
使用している業務システムの機能やサーバーの台数が、運用目的と必要数にマッチしているかを検討します。分散利用している場合は、統合することでコストダウンが可能です。
ただし、コストばかりに目を奪われると、実用レベルの低下を招きかねないため注意しましょう。
運用の自動化やアウトソースを検討する
ITソリューションや業務システムを導入することで、手作業で行っているアナログ業務の自動化をおすすめします。
また、現状のシステム運用体制が自社に合っているか、外部の専門会社へアウトソースする方が効果的ではないか、などの検討を行いましょう。
アウトソースすることで、人的リソースを他の業務に回せるだけでなく、場合によっては運用コストの削減も期待できます。
さらに、オンプレミス型のシステムからクラウドシステムに移行することで、システム運用の負荷と人件費をはじめとする管理コストを大幅に抑えられます。アウトソースした場合と同じくらいのコスト削減を見込めるでしょう。
もちろん、クラウド化したシステムの運用を外部へアウトソースすることも可能です。
オンプレミスからクラウド移行に関する記事をご用意しております。併せてご参考にしてください。
▼オンプレミスからクラウドへ。移行する判断基準、手順は? 注意点とメリット・デメリットも解説
システム運用改善の着眼点ごとのアプローチ
システム運用改善を行う際、着眼点によってアプローチを変えていくことが大切です。
信頼性、安全性、利便性、そして効率性の4つの着眼点について、アプローチの例を紹介します。
信頼性
信頼性を着眼点とする場合、「冗長性データの保全」「障害検知」「情報の管理・維持」の項目について、それぞれ対策を考えましょう。
冗長性データの保全では、バックアップは定期的に行われているか、障害発生時のリカバリを考慮したルール・運用が徹底されているか、システム障害の発生時に現時点のサービスに戻すための必要なデータのバックアップがされているか、などです。
どんな状況に陥ってもデータが保全できている状態を保つ取り組みが必要となります。
障害検知では、死活監視・ハードウェア監視の対象となっていない機器はないか、サービス監視も行われているか、ユーザーからの障害報告が先となり運用部門で気付けていないことはないか、などをアプローチしましょう。
情報の管理・維持では、各種設計書やマニュアルの作成、ドキュメントの更新などを行います。
メンテナンス・障害対応手順が文書化されているか、文書化されているものが実業務と差異がないか、など確認します。また、システムの変更・改修が行われたら、それら設計書やマニュアルも併せて変更しましょう。
安全性
安全性では、セキュリティに関してアプローチします。ここでは「物理的セキュリティ」「論理的セキュリティ」について紹介します。
物理的セキュリティでは、利用しているデータセンターやクラウドサービスのTier(データセンターの品質を設備の冗長性や稼働信頼性などを基に決められる品質基準のこと。1~4の4段階)レベルはいくつか、データセンターへの入室制限・入退出管理システムは設けているか、などを確認しましょう。
論理的セキュリティでは、システムのアクセス制御・認証は属性に合わせて正しく設定されているか、セキュリティのぜい弱性対応のバッチ適用ルールが徹底されているか、などをアプローチします。
利便性
利便性では、「情報管理」「設備の耐用年数」について取り組みを決定します。
情報管理では、システムを構成する情報が管理されていなければなりません。ネットワーク機器やサーバーなどの設定情報が管理され、必要に応じて更新されているか、アウトソース先の作業報告を管理しているか、障害発生状況や対応内容がインシデントとして記録されているか、などを確認します。
設備の耐用年数では、ソフトウェアやライセンスの更新、ハードウェアの資産管理やリース管理、ネットワーク機器やサーバーのリソース情報を管理し、適切な更新やアップグレードを行っているか、について確認しましょう。
効率性
効率性では、「作業手順」「窓口・連絡体制」の項目について確認を行います。
作業手順はその名の通り、作業を効率化するために手順が記されたマニュアル・操作手順書の存在有無と正確性を確認しましょう。
窓口・連絡体制では、社内システムに介在する外部のベンダー会社を含めた連絡体制が明確化されているか、インシデントごとに連絡体制は整備されているか、担当者にスムーズに連絡を行える仕組みが整っているか、についてアプローチします。
システム運用はテクバンへご相談ください
組織によって、情報システム部門の規模や体制はそれぞれです。
社内で完璧にシステム運用をできている組織もあれば、人的リソースやコストの適正化の点でなかなか難しいという組織もあるでしょう。
システム運用についてお困りごとがある際は、ぜひテクバンへご相談ください。
テクバンでは、情報システム部門や運用担当者にとって負担が大きい業務をまるごとアウトソースできるソリューション「システム運用マネジメント」サービスを提供しています。お客様のシステム運用改善に、テクバンが培ったノウハウをもってサポートいたします。
システム運用改善はクラウドとソリューションの活用がポイント
システム運用改善は、自社の現状を正確に把握し業務の棚卸しを行うことで、業務の継続や生産性の向上という目的を達成できます。
しかし、システムの複雑化や業務属人化を避けて的確なアプローチをするとなると、自社の情シス部門だけでは対応が難しいというケースもあるでしょう。オンプレミス型のシステム運用をしていればなおさらだといえます。
そういった組織における適正コストでのシステム運用改善には、有効なクラウドサービスやソリューションの活用がポイントです。また、専門のベンダー会社に依頼して外部の声を聞くこともひとつの効果的な手段となりますので、ぜひテクバンのサービスをご検討ください。