マイクロソフト社のトータルクラウドプラットフォーム「Azure」では、様々なサービスが提供されています。そのひとつが仮想マシンやデータベースのバックアップを担う「Azure Backup」です。Azure Backupは、オンプレミス環境含めバックアップできる高い利便性を誇ります。Azure Backupの導入を検討しているものの、「月々の料金の見積もりが知りたい」「ランニングコストを最適化できるか不安」といったお悩みを持つ方もいるかもしれません。本記事では、Azure Backupの概要や料金について解説します。
「Azure Backup」とは?
「Azure Backup」とは、マイクロソフト社が提供するクラウドサービス「Azure」で提供されているサービスのひとつで、バックアップやリストアのための補助を行います。
Azure BackupやAzureについてまずは概要を解説します。
Azure Backupは1クリックでクラウド&オンプレミス環境の開発環境をバックアップできる
Azure Backupは、データの自動バックアップを行うサービスです。Azureのクラウド上の仮想マシン(Azure VM)、SQL Serverデータベース、Azure FilesなどAzure内サービスのデータはもちろん、オンプレミス環境で動作している仮想マシンのバックアップも行えます。
万が一、人的ミスやハードウェア・ソフトウェアの障害、災害、悪意のある攻撃などが原因でデータを消失してしまった場合でも、Azure Backupでデータをバックアップしておけば、Microsoft Azureクラウドを通じてデータの復元が可能です。データ消失のリスクに備えた、データを保護できるソリューションとして活用できます。
大本のサービスである「Microsoft Azure」についても知っておこう
Microsoft Azureとは、Windows、Officeなどでも知られるマイクロソフト社が提供しているクラウドサービスで、クラウド上で200を超える製品やサービスを使用できるのが特長です。コンピューティング、AI(人工知能)機械学習、IoT(モノのインターネット)、インフラ、セキュリティ、アプリ作成など利用するツールやフレームワークを自由に選択でき、料金は設定したツールやフレームワーク単位で発生する従量課金制となっています。
選択したツールやフレームワークは、Azure上はもちろん、複数のクラウド上やオンプレミス環境で利用したり、既存のオンプレミスのツール類と連携したりも可能です。
Azureでできることについては、こちらの記事もぜひ併せてご覧ください。
▼Azureとはどのようなサービス? 初心者でもわかる基本から運用のメリットまで徹底解説
Azure Backupの特長
Azure Backupのバックアップの仕組みやサービスの特長を解説します。
データ復元をわずか数クリックのかんたん手順で実現
何かの原因によりデータを消失してしまっても、Azure Backupで保持しているバックアップを利用し、データを復元できます。データの復元は数回のクリックで完了できます。
Azure Backupのバックアップの仕組みは「増分バックアップ」
Azure Backupが採用しているバックアップ方法は、「増分バックアップ」です。増分バックアップとは初回のみバックアップ対象を完全にコピーし、2回目以降は前回バックアップから変更された部分のみをコピーする方法です。他のバックアップ方法と比較するとバックアップにかかる実行時間が短く済みます。
Azureはデータセンターの設置地域が多い
Azureは、データセンターの設置地域が多いのも特長です。万が一局地的な災害がありデータセンターが稼動できなくなったとしても、他のデータセンターでのリカバリーが可能です。複数のデータセンターを利用しての多重バックアップも可能なため、リスク対策としても高い効果を発揮します。
拡張性と可用性が高い
Azureは世界最大級のクラウドプラットフォームであり、世界中にリージョンを持っています。さらにAzureリージョン全体で冗長化に対応しているため、ツールやアプリの高い拡張性と可用性を発揮します。バックアップ基盤としても無制限の容量と高い可用性を実装しています。
強固なセキュリティで安全性を確保
Azure Backupは、マイクロソフト社が管理する仮想ネットワークを利用します。そのため転送中から保存後まで、データは一環した強固なセキュリティで保護され、安全なバックアップが実現します。
Azure Backupの利用料金は?
Azure Backupの利用料金は「バックアップ対象データ(VM、ファイル、DB など)のサイズ+バックアップ対象を保存するバックアップ用ストレージのサイズ」で計算される従量課金制です。ただし、バックアップ対象データのVMサイズ及び、バックアップ用ストレージは高可用性オプションのレベルによって基本料金が異なることに気を付けましょう。
具体的なAzure Backupの利用料金をバックアップ対象データ、バックアップ用ストレージのサイズごとに解説します。
バックアップ対象データのサイズごとの料金目安
バックアップ対象データのサイズごとの料金目安を以下の一覧にまとめました。
※以下金額はすべて、2023年9月1日時点でのアメリカドル/日本円換算をもとにした参考金額です。詳細はMicrosoft公式サイトでご確認ください。
バックアップ対象データ | インスタンス | 月額料金 |
Azure VM、オンプレミスサーバー | 50GB以下 | ¥706.2751 + 使用したストレージ |
50~500GB以下 | ¥1,412.5501 + 使用したストレージ | |
500GB~ | 500GBの増分ごとに ¥1,412.5501 + 使用したストレージ |
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Azure VMでの SQL Server | 500GB以下 | ¥5,120.4938 + 使用したストレージ |
500GB~ | 500GBの増分ごとに ¥5,120.4938 + 使用したストレージ | |
Azure VM上のSAP HANA | 500GB以下 | ¥16,385.5801 + 使用したストレージ |
500GB~ | 500GBの増分ごとに ¥16,385.5801 + 使用したストレージ | |
Azure Files | 250GB以下 | Azure Filesの保護されたインスタンスの月額料金の 60% |
250GB~ | ¥706.2751 | |
Azure Database for PostgreSQL | 250GBあたり | ¥1,059.4126 + 使用したストレージ |
Azure BLOB |
管理料金、インスタンス料金不要 |
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Azure ディスク | マネージドディスク増分スナップショット分の料金が発生 |
詳しいAzure Backupの価格は以下をご参照ください。
Microsoft公式サイト AzureBuckupの価格
バックアップ用ストレージのサイズごとの料金目安
バックアップ用ストレージのサイズごとの料金目安を以下の一覧にまとめました。
※以下金額はすべて、2023年9月1日時点でのアメリカドル/日本円換算をもとにした参考金額です。詳細はMicrosoft公式サイトでご確認ください。
バックアップ対象データ | ストレージ | 月額料金 |
Azure VM、Azure VMでのSQL Server、Azure VM上のSAP HANA | LRS | Standardレベル:¥3.1642/GB Archive レベル: ¥0.3814/GB |
ZRS | Standardレベル:¥3.9552/GB Archive レベル:該当なし |
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GRS | Standardレベル:¥6.3283/GB Archive レベル:¥0.7628/GB |
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RA-GRS | Standardレベル:¥8.0375/GB Archive レベル:該当なし |
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オンプレミスサーバー | LRS | Standardレベル:¥3.1642/GB Archive レベル:該当なし |
ZRS | Standardレベル:¥3.9552/GB Archive レベル:該当なし |
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GRS | Standardレベル:¥6.3283/GB Archive レベル:該当なし |
|
RA-GRS | 該当なし |
オプションを利用したストレージ年間予約で長期コストを抑えることも可能
1年間または3年間の期間、Azureバックアップストレージを契約する「バックアップストレージ予約容量」を利用すると、バックアップデータのストレージにかかるコストを通常よりも抑えられます。
Azure Backupを導入する際のよくある課題
Azure Backupを導入する際のよくある課題と解決方法を解説します。
Azure Backupと、200種以上あるAzureのサービスとの組み合わせ方や連携などの判断が難しい場合がある
Azureはインフラ拡張やセキュリティ強化、アプリ作成機能など200以上のサービス・機能を持つため、Azure Backupとどのサービスを併用すべきか、どのように連携できて何が実現できるか、といった点の判断が難しい場合もあります。
現在のオンプレミス環境や他社クラウドサービスからのリプレイスや併用をどう進めればよいかわからない
現在オンプレミスや他社クラウドサービスを利用している場合、Azureへのデータや環境の移行が難しいことから、乗り換えができず悩む方も多いでしょう。
Azure全体で考えると料金体系が複雑なため、ランニングコストを最適化できるか不安
一般的なクラウドサービスでは定額制が多く、対してAzureは従量課金制のため、ランニングコストの面で不安を感じるケースも多いです。
Azure、Azure Backupの導入や運用にお悩みならテクバンへ
Azure Backupは便利なサービスですが、Azure含めすべてを正しく把握・判断するのは専門的な知識やスキルが必要です。AzureやAzure Backupの導入や運用にお悩みの際には、外部の導入・運用サポートサービスを利用するのも良いでしょう。
例えばテクバンではマイクロソフト社認定パートナーとして、お客様にとって最適なMicrosoft Azureのプランの提案、導入、運用をサポートする「Microsoft Azure導入支援サービス」。お客様が運用するファイルサーバーの課題をヒアリングし、要望に沿った構成の検討、提案、導入までを支援する「Microsoft Azureクラウドファイルサーバー導入支援サービス」などを提供しております。
また、パブリッククラウド構築前に確認しておきたい、「失敗しないパブリッククラウドの選び方。AWS/Azure/OCIの3つを徹底比較」の資料も公開しております。クラウド導入にぜひご活用ください。
失敗しないパブリッククラウドの選び方。AWS/Azure/OCIの3つを徹底比較
Azure Backupの料金体系と機能を理解して適切な導入を
本記事では、Azure Backupの概要や料金について解説しました。Azure Backupでは大切なデータを自動でバックアップし管理できるため、万が一のデータ消失時にも復元ができます。また、プラットフォームであるAzureにも、業務効率化につながる様々なツールや機能が搭載されています。クラウドサービスの導入を検討しているなら、ぜひ選択肢として考えましょう。導入や運用などで課題がある場合にも、支援や運用サポートサービスを上手に活用することで、スムーズな導入や運用につながります。