クラウドサービスの中で広く知られ、シェアが高いのは「AWS(Amazon Web Service)」です。2022年10月にデジタル庁よりガバメント・クラウドのサービスに選定された「OCI(Oracle Cloud Infrastructure)」も、注目を集めています。
本記事では、OCIを含むクラウドサービスであるOracle Cloud(オラクルクラウド)とAWSを比較し、それぞれの特長や違いについて解説します。
そもそもクラウドとは
オラクル社のOracle Cloudとアマゾン社のAWSは、どちらもクラウドサービスです。
そもそもクラウドサービスとは何でしょうか。
クラウドとは、インターネットを経由して様々なサービスを提供する形態のことをいい、oracle cloudやAWSのようなプラットフォームが存在します。
従来では、ソフトウェアを利用する場合、自分でPCとソフトウェアパッケージを購入した上で、ソフトウェアをインストールし使用を開始する、という流れが一般的でした。今では、インターネット上のクラウドサービスに登録・契約し、ブラウザ上でソフトウェアを利用する形態が主流となっています。
クラウドサービスには、主にソフトウェアを提供する「SaaS(Software as a Service)」、開発環境のプラットフォームを提供する「PaaS(Platform as a Service)」、インフラを提供する「IaaS(Infrastructure as a Service)」の3種類があります。
クラウドの大きなメリットは「サービスに登録すればすぐ利用できる」という点にあります。かつてはサーバーを構築するのにも機器の購入から始め、実際にサーバーを使えるようになるのに時間がかかっていました。しかし、クラウドであればブラウザ上で操作するだけで、すぐに仮想サーバーを使うことができます。
さらに、クラウドはリソースを柔軟に利用できるメリットもあります。例えば、Oracle cloudでは、必要に応じて仮想マシンをスケールアップできます。
イベントやキャンペーンなどでユーザーのアクセス数が集中する際に、一時的にリソースを増強して対応することが可能です。
このように、Oracle cloudといったクラウドは、ソフトウェアだけでなく、環境やインフラまで、インターネット経由で調達することができます。
一方、クラウドに対して、サーバーやネットワーク、ソフトウェアを自前で調達し、システムを運用する形態を「オンプレミス」と呼びます。クラウドの普及に伴い、オンプレミスからOracle cloudやAWSなどのクラウドへ多くの組織が移行を進めています。
今やビジネスにおいて、変化の激しい市場に対応するためにクラウドは重要なサービスです。Oracle cloudや他のプロバイダーの利用が進んでいます。
移行する際の判断基準や、特徴について、以下の記事で詳しく紹介しています。
▼オンプレミスからクラウドへ。移行する判断基準、手順は? 注意点とメリット・デメリットも解説
▼オンプレミスとクラウドって何が違うの? 移行の特徴も解説
Oracle cloudとは? AWSとは?
Oracle Cloudの特長として、特にデータベースサービスに強みがあります。Oracleは長年にわたりデータベースソリューションを提供してきた実績があり、高いパフォーマンスと信頼性を持つデータベースサービスを提供しています。特に、Oracle Autonomous Databaseは自動運用による効率的な管理が可能で、運用コストの削減につながります。
一方、AWS(Amazon Web Services)はその豊富なサービスラインナップとグローバルなインフラストラクチャで知られています。AWSは世界中に多数のデータセンターを持ち、多種多様なサービスを提供しており、スタートアップから大企業まで幅広いニーズに対応しています。また、AWSのスケーラビリティとセキュリティは、特に大規模なプロジェクトにおいて評価されています。
両者ともに独自の強みを持ち、選択肢として非常に魅力的です。ユーザーはそれぞれの特長を理解し、自社のビジネスニーズに最も適したクラウドサービスを選ぶことが成功への鍵となります。
Oracle CloudとAWS、それぞれの特長
代表的なクラウドサービスである両者は、どのような特長があるのか、さらに詳しく解説します。
Oracle Cloud(オラクルクラウド)の特長
Oracle Cloudの特長として、大きく4つに分け、解説します。
- クラウドへの移行が容易
オラクル社は、大規模システムで利用されるデータベース「Oracle Database」や、アプリケーションサーバー「Oracle Weblogic Server」など、多くのソフトウェアを提供しています。
このようなソフトウェアが、そのままクラウド上でも動作するようにクラウド技術が設計されているため、大規模システムでもスムーズな移行が可能です。 - 高いコストパフォーマンス
Oracle Cloudは、コストパフォーマンスが非常に高いクラウドサービスです。他社のクラウドサービスと比較しても高性能で、大容量のリソースを非常に安く利用できます。 - セキュリティツールのほとんどが無償提供
Oracle Cloudのセキュリティツールは、サービスの一部として無料提供されています。そのため、構築段階からセキュリティを考慮した設計が可能です。 - ハイブリッドクラウドの完全なサポート
ハイブリッドクラウドとは、オンプレミスとクラウド両方を利用してシステムを構築する戦略のことです。Oracle Cloudは、ハイブリッドクラウドにも対応しています。
例えば、Oracle Cloudの機能すべてをクライアントのデータセンターに展開できる「OCI Exadata Cloud@Custemer」や「OCI Dedicated Region」、ネットワークが切断していても利用できる「Oracle Roving Edge Infrastructure」といったサービスがあります。
AWS(Amazon Web Service)の特長
次に、AWSの特長をご紹介します。
- 利用シェアNo.1、豊富な実績
調査会社シナジーリサーチグループ社とカナリス社が発表した、2023年第1四半期時点のグローバルにおけるクラウドインフラのシェアによると、AWSは、2023年第1四半期でも世界で約3割のシェアを持ち、クラウド利用シェアNo.1のクラウドサービスです。
また、提供されるサービスは200を超えており、サービスを組み合わせることで、あらゆるシステムをクラウド上に構築できます。 - 政府機関も採用している、高いセキュリティ
AWSは、政府機関や金融機関も利用しています。その理由は、高いセキュリティ水準を保っているからです。
PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard:国際的なクレジット産業向けのデータセキュリティ基準)やCSA(Cloud Security Alliance:クラウドセキュリティアライアンス)、FIPS 140-2(Federal Information Processing Standard:米国連邦情報処理規格)など、様々なセキュリティ機関から認証・認定を得ており、高いセキュリティレベルを維持しています。 - 値下げが頻繁に行われる
AWSは、2006年にサービスが開始されて以降、120回を超える値下げが実施されており、頻繁に価格改定が行われています。今後も長期的に利用することで、コスト削減が期待できるかもしれません。
Oracle CloudとAWS、それぞれのメリット・デメリット
Oracle CloudとAWSの特長について説明しました。
本章では、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
Oracle Cloudのメリット・デメリット
初めに、Oracle Cloudのメリットをご紹介します。
- 充実した無料枠
Oracle Cloudでは、30日間無料トライアルだけでなく、容量制限があるものの期間無制限で利用できる「Oracle Cloud Always Free」サービスが提供されています。OCIの使い勝手を確認したい方におすすめのサービスです。 - オンプレミスの既存Oracle製品を使っている場合、移行がスムーズ
オンプレミス上で稼働しているOracle製品のソフトウェア・ライセンスを、Oracle Cloudでも利用できます。そのため、オンプレミスで保有するライセンスが無駄になりません。また、オンプレミスと同等のパフォーマンスや専有性を備えているため、クラウドでもオンプレミスと同じ使い勝手を実現できます。
以下の資料では、Oracleライセンスを有効活用した事例をご紹介しています。併せてご覧ください。
【事例】サーバーのクラウド化で、更改・保守運用業務を大きく削減。DBとOracleライセンスは継続で有効活用
次にデメリットについて解説します。
- 他のクラウドサービスと比べて、提供サービスが少ない
Oracle Cloudはクラウドサービスの中でも後発であるため、提供されるサービスの数は他のクラウドサービスと比較しても少ないといえるでしょう。しかし、IaaS、PaaS、SaaSすべてでサービスが提供されており、クラウド上でシステムを構築するための必要なサービスはそろっています。 - 技術情報が少ない
AWSと比べると利用者も少ないこともあり、書籍や公開されている技術情報も少ない点が挙げられます。基本的に、公式ドキュメントやサポートから技術情報を得る必要があります。
AWSのメリット・デメリット
続いて、AWSのメリットを紹介します。
- サービスが豊富、高い柔軟性と拡張性
AWSの大きなメリットとして、サービスが豊富に提供されていることが挙げられます。
基本的なITインフラはもちろん、データ分析やIoTにも対応しています。サービスを組み合わせることで複雑なシステムも構築でき、また柔軟性・拡張性にも優れています。 - 技術情報が充実
AWSは、ホワイトペーパーやセミナー動画が多数公開されており、他のクラウドサービスと比べて技術情報が充実しています。また、AWSは利用者が多いこともあり、多くのエンジニアが利用し、ノウハウや知識を共有しています。日本語の情報も多いため、これからクラウドサービスのスキルを身につけたいと考えている人にも、AWSは学びやすいといえるでしょう。
AWSのデメリットは、以下の通りです。
- 提供サービスが多すぎて選定が難しい
AWSが提供するサービスの数が多いのは利点ですが、その中から適切なサービスを選択するには、各サービスに関する知識が求められます。そのため、AWS自体にあまり詳しくない人にとっては、数が多すぎるのもデメリットだと感じられるかもしれません。 - 利用料金がドル換算のため、見通しが立てづらい
AWSの利用料金はドル換算となっているため、為替レートによって費用が変動します。時期によって利用料金が変わってしまうため、中・長期的に見てコストの見通しが立てにくい可能性があります。
OCIとAWSのサービス/コストの比較
本章では、Oracle Cloud製品のOCIとAWSを「サービス」と「コスト」の観点から比較します。
サービスについては、どちらも数多く提供されているため、ここでは一部のサービスを抜粋してご紹介します。
サービスの比較
まずは、コンピュート・サービスの比較です。コンピュート・サービスとは、サーバーを提供するサービスのことです。仮想マシンのほか、ベアメタル(物理マシン)を提供し、サーバーを占有できるサービスもあります。
OCIのコンピュート・サービスでは、仮想マシンに加えてベアメタルサーバーの提供が可能で、これにより高いパフォーマンスと柔軟な構成が必要なワークロードに適しています。一方、AWSのEC2は豊富なインスタンスタイプとオートスケーリング機能を備えており、多様なニーズに応えることができます。また、AWSのLambdaを利用することで、サーバーレスアーキテクチャを実現し、リソース管理の手間を軽減することが可能です。
ストレージサービスの比較です。OCIのストレージサービスは、高速で低コストのブロックストレージとオブジェクトストレージを提供しており、大量のデータを効率的に格納できます。AWSでは、S3やEBSなどのストレージオプションがあり、データのバックアップ、アーカイブ、データ分析など、さまざまな用途に対応しています。
コスト面での比較に関しては、OCIは通常、AWSよりも低価格で提供される傾向があります。特にデータ転送料金が安価であるため、大規模なデータ処理を行う企業にとっては魅力的です。一方で、AWSは料金体系がやや複雑ですが、使用状況に応じた柔軟な料金プランを選択することができ、使用頻度やビジネスニーズに応じてコストを最適化することが可能です。
このように、OCIとAWSはそれぞれ異なる強みと特長を持っており、企業の特定のニーズや予算に応じて、最適なクラウドサービスを選択することが重要です。
OCI | AWS | |
マルチテナント仮想マシン | Vitual Machines | Amazon Elastic Compute Cloud(EC2) |
次に紹介するストレージ・サービスには、主にオブジェクト・ストレージ/ブロック・ストレージ/ファイル・ストレージの選定が重要となります。
OCI | AWS | |
オブジェクト・ストレージ | Object Storage | Amazon Simple Storage Service(S3) |
ブロック・ストレージ | Block Volumes | Amazon Elastic Block Store(EBS) |
ファイル・ストレージ | File Storage | Amazon Elastic File System |
ネットワーク、及びエッジ・サービスについては、以下の通りです。
OCI | AWS | |
仮想ネットワーク | Virtual Cloud Network | Amazon Virtual Private Cloud |
サイト間接続 | サイト間VPN | AWS VPN |
DNS、及びクエリー管理 | Amazon Route 53 | |
トラフィック・ロード・バランサー | Flexible Load Balancing | AWS Elastic Load Balancing |
電子メール配信サービス | Email Delivery | Amazon Simple Email Service(SES) |
DDoS保護 | Layer 7 DDoS保護 | AWS Shield |
管理サービスでは、監視やログ確認など、各コンポーネントの稼働状況を確認する機能を提供します。
OCI | AWS | |
監視 | Monitoring | Amazon CloudWatch |
ロギング | Logging | Amazon CloudWatch Logs |
コストの比較
各クラウドサービスの見積ツールを使用し、以下3つのサービスについてコストを算出しました。以下の価格は、2023年8月下旬時点での価格です。
OCI | AWS | |
コンピュート・サービス | 74.81USD/月 (2OCPU 32GBメモリ100GBストレージ) |
206.78USD/月 (4vCPU 32GBメモリ100GBストレージ) |
ストレージ・サービス | 25.24USD/月 | 25.60USD/月 |
仮想ネットワーク | 0ドル(10TBまで無料) | 116.74USD/月 |
なお、テクバンではMicrosoft Azureも含めて比較資料を提供しています。こちらからダウンロードの上、ご活用ください。
失敗しないパブリッククラウドの選び方。AWS/Azure/OCIの3つを徹底比較
テクバンのクラウド導入支援サービス
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Oracle Cloud Infrastructure(OCI)導入支援
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Oracle Cloud Infrastructure(OCI)導入支援サービス
Amazon Web Services(AWS)導入支援サービス
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Amazon Web Services(AWS)導入支援サービス
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本記事では、Oracle CloudとAWSのメリット・デメリットを解説しつつ、サービスの比較についてご紹介しました。クラウドサービスを導入する際は、自社にあったサービスを選択することが最も重要です。
例えば、Oracle Databaseをはじめ、すでにオンプレミスでOracle製品を使用している場合は、Oracle Cloudの方が移行がスムーズでしょう。逆に、現在のシステムをクラウドで構築する際にOracle Cloudではサービスが足りない場合は、AWSを検討すると実現できる可能性があります。
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