「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」は、商用データベースで高いシェアを誇るオラクル社が提供するクラウドサービスです。同じくパブリッククラウドサービスであるAWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureよりも後発ですが、優れた特長を持っています。
本記事では、OCIの概要やメリット・デメリット、OCI導入が向いている企業について解説します。
OCIとは
OCIとはどのようなサービスなのか、詳しくみていきましょう。
OCIは、Oracle Cloudのひとつ
「Oracle Cloud」は、オラクル社が提供するクラウドサービスです。Oracle Cloudで利用できるサービスは、大きく以下の2つに分かれます。
- SaaSを提供するOracle Cloud Applications
- PaaS/IaaSを提供するOracle Cloud Infrastructure(OCI)
Oracle Cloud Applicationsは、ERPやSCM(サプライチェーン・マネジメント)など、様々なアプリケーションをクラウドから利用できます。
対してOCIは、仮想マシンやデータベース、ネットワークなどのインフラ、およびアプリケーションが動作するのに必要なプラットフォームとなるサービスが提供されています。
Oracle Cloudは、SaaS/PaaS/IaaSすべてにおいて幅広いサービスを展開しています。続いては、OCIのメリット・デメリットについて解説します。
OCIのメリット
OCIが持つ、他社のクラウドサービスと比較して優れている点を解説します。
- パブリッククラウド(PaaS/IaaS)、プライベートクラウドどちらにも対応
オラクル社は、Oracle Cloudが持つ機能をそのまま自社内のデータセンターで利用できるサービス「Oracle Cloud@Custemer」「Oracle Dedicated Region」などを提供しています。従来のクラウドサービス(パブリッククラウド)だけでなく、自社内のみに限られたクラウドサービス(プライベートクラウド)も対応可能です。 - オンプレミスのOracle製品をまるごと移行できる
オラクル社は「Oracle Database」や「Oracle Weblogic Server」「Java」など、多数の製品を提供しています。特に「Oracle Database」は、データベース製品でトップクラスのシェアを持ち、多くの企業で採用されています。
OCIを利用すれば、これらオンプレミスで運用していたOracle製品をまるごと移行し、クラウド上で利用できます。
- 圧倒的なコストパフォーマンス
OCIは、他社クラウドサービスと比較してコストパフォーマンスが高い点もポイントです。また、使用感を試したい場合は30日間無料トライアルの他、利用可能範囲に制限はあるものの無期限で利用できる「Always Free」サービスといった方法も用意されています。
他社クラウドサービスとの価格比較については、次の章で詳しく解説します。
- 高いセキュリティ
OCIは、多層防御による強固なセキュリティ環境を実装できます。このセキュリティの高さは、政府が運営する政府情報システムのためのセキュリティ評価制度「ISMAP」に登録されていることでも裏付けられています。 - Oracle製品のライセンス数を節約できる
例えば、AWSやMicrosoft Azureといったオラクル社以外が提供するクラウドサービス上でOracle Databaseを利用する場合では、OCI上で利用する場合と比較して、同じスペックでもライセンス数が2倍になります。
そのため、Oracle製品をそのままクラウドでも利用する場合は、OCIであればライセンス数の節約が可能です。
OCIのデメリット
続いて、OCIのデメリットとして留意しておきたい点をご紹介します。
- 他の著名なクラウドプラットフォームと比較すると、サービスが少ない
Oracle Cloudはクラウドサービスの中でも後発ということもあり、歴史が浅く提供されるサービスが少ないという点が挙げられます。例えば、AWSやMicrosoft Azureが200以上のサービスを提供しているのに対し、Oracle Cloudは100以上にとどまります。
しかし、基本的なサービスは一通り揃っているため、一般的なニーズには十分対応可能です。
- 公開されている情報が少ない
主要クラウドサービスと比べてシェアが小さいため、公開される情報も少ないです。なにか問題が発生した場合、AWSやMicrosoft AzureならWeb上で情報が見つかるものの、Oracle Cloudに関しては情報が見つからない、という状況が起こりえます。
その場合はオラクル社が提供するサポートに問い合わせるか、自力で解決する必要があります。
企業によっては、OCI導入や運用の支援サービスを提供しているところもあります。本記事の最後にテクバンが提供する導入支援サービスを紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
OCIのサービスを紹介
OCIで提供されている、代表的なサービスジャンルとその内容をご紹介します。
コンピュート
コンピュートは、インスタンスと呼ばれるマシンを提供するサービスです。仮想マシンとベアメタル(物理サーバー)が提供されており、幅広い要件に対応できるよう様々なタイプが選択できます。
例えば、NVMeベースのSSDがアタッチされた高パフォーマンス向けのものや、NVIDIAグラフィック・プロセッサが搭載されたものなど大規模ワークロードに適したタイプを低コストで利用可能です。
ストレージ
ストレージは、大きく3つのサービスが提供されています。コンピュート・インスタンスのブロックデバイスとして利用する「ブロック・ボリューム」、共有ストレージとして利用する「ファイル・ストレージ」、非構造体データを格納する「オブジェクト・ストレージ」です。
オブジェクトストレージは、さらに頻繁にアクセスする「標準」のものと、長期間保存用の「アーカイブ」の2つのタイプがあります。
Autonomous Database
Autonomous Databaseは、機械学習によりデータ管理のライフサイクルを自動化する自律型データベースです。それまでDBA(Database Administrator)が実施してきたデータ管理のライフサイクル(チューニングやセキュリティ管理、バックアップなど)を自動で行うため、運用コストを抑えつつデータベースを利用できます。
他のクラウドサービスとの価格比較
クラウドサービスは、利用するリソースによって課金される従量課金制が一般的です。この単価はクラウドサービスによって異なり、費用を見積るためのツールが用意されています。
今回、OCI費用見積りツールと、AWS料金見積りツールを使用して、2つのサービスにおいて価格比較を行いました。なお、価格は2023年10月時点の、各クラウドサービスの見積りツールを用いて算出したものです。価格は改定されることもあるため、あくまで参考としてください。
コンピュート
仮想マシン1インスタンス1か月(720時間)利用した場合の、月額費用は以下の通りです。
※1OCPU=2vCPUで換算
サービス | OCI(Virtual Machine) | AWS(EC2) |
コンピュートサービス | VM.Standard.E4.Flex (2OCPU 32GBメモリ) 100GBストレージ |
r5a.xlarge (4vCPU 32GBメモリ) 100GBストレージ |
月額 | 74.81USD | 206.78USD |
※金額はすべて、2023年10月10日時点での各サービス提供元の公式サイト上の表示金額です。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。
ストレージ
ストレージ(Standard)1TBの月額費用は、以下のとおりです。
サービス | OCI | AWS |
ストレージサービス | オブジェクトストレージ | Amazon Simple Storage Service(S3) |
月額 | 25.24USD | 25.60USD |
※金額はすべて、2023年10月10日時点での各サービス提供元の公式サイト上の表示金額です。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。
ネットワーク
1か月、1TB アウトバウンド通信の月額費用を比較しました。OCIでは、アウトバウンド・データ転送は月10TBまで無料となっているため、費用が発生しません。
ネットワーク(1か月利用、1TB アウトバウンド通信)の月額費用は、以下のとおりです。
サービス | OCI | AWS |
仮想ネットワーク | 仮想クラウド・ネットワーク(VCN) | Amazon Virtual Private Cloud (NATゲートウェイ) |
月額 | 0USD(10TBまで無料) | 108.75USD |
※金額はすべて、2023年10月10日時点での各サービス提供元の公式サイト上の表示金額です。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。
OCIはこんな企業におすすめ
OCIは、特に以下のような状況にあてはまる企業に向いているサービスです。
オンプレミスでOracle製品を使っている
オラクル社はデータベース製品で高いシェアを誇る「Oracle Database」や人気のプログラミング言語であるJavaなど、多くの大規模システムで採用されている製品を扱っています。
これらの製品を利用している企業では、OCIがおすすめです。
オンプレミスのOracle Databaseを、同じスペックのままAWSなど他社のクラウドサービスへ移行する場合、ライセンス費用が2倍ほどかかります。また、OCIだとOracle Databaseにおいて可用性を高めるReal Application Cluster構成でも、そのまま移行が可能です。
以上から、コストや移行および運用のしやすさを考慮した際、オラクル社製品を使用している環境をクラウドサービスへ移行する場合は、OCIがよいでしょう。
ハイブリッドクラウドを構築したい
ハイブリッドクラウドとは、オンプレミス、クラウド両方でシステムを構築して連携する構成のことです。企業によっては、自社が管理する機密性の高いデータは自社内で保持したいと考えるところもあるでしょう。
そのような場合に、データの特性によって格納場所を変え、オンプレミスとクラウド両方のメリットを得る構成です。OCIでは、オンプレミスとクラウドで同じ製品およびサービスを利用できるため、併用や連携が容易です。
なるべくコストを抑えたい
OCIは、コストパフォーマンスという面で大変優れています。他社クラウドサービスと比較して提供されるサービスは少ないものの、基本的なサービスは一通り揃っており、低コストで高性能なリソースが利用できます。
クラウドで運用するシステムにおける必要なサービスをしっかりと見極めた上で、できるだけコストを抑えて運用したい場合は、OCIはクラウドサービス選定の有力な候補です。
OCI導入支援サービスのご紹介
テクバンでは、導入だけでなくその後のサポートまで一気通貫で支援する導入支援サービスを提供しています。OCI導入をご検討の方は、お気軽にご相談ください。
OCI導入支援サービス
OCIは、オンプレミスと同等の高スペックな環境が得られるだけでなく、コストパフォーマンスに優れたクラウドサービスです。オンプレミス環境との連携も容易であるため、基幹システム含め導入を検討中の方もいるでしょう。
テクバンが提供するOCI導入支援サービスは、要件定義からOCI上での環境構築、移行計画のご提案から本番運用まで一気通貫で導入を支援いたします。ハイブリッドクラウド、他社クラウドサービスとの連携など複雑な構成においても幅広く支援が可能です。
OCI導入支援サービスについて詳しい情報をお求めの方は、「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)導入支援」をご覧ください。
Oracle CloudインターネットVPN接続サービス
オンプレミス環境とOCIでVPN接続を行いたい場合や、他社クラウドサービスとOCIを接続する場合などでは、インターネットVPN接続が重要です。インターネット通信は外部から攻撃を受ける可能性があるため、セキュリティ品質の高い通信を実現しなければいけません。そのため、インターネットVPNやネットワークセキュリティについて深い知識やノウハウが必要です。
テクバンが提供する「Oracle CloudインターネットVPN接続サービス」は、お客様の環境からOCIへのセキュアな接続を実現するためのサービスです。
テクバンが持つ豊富なノウハウを生かし、インターネットVPN接続のための機器選定や設定、実装まですべてをサポートいたします。
詳しい情報をお求めの方は、「Oracle CloudインターネットVPN接続サービス」をご覧ください。
MySQL Database Service / HeatWave導入支援サービス
MySQL Database Service(MDS)は、オンプレミスのMySQLと同じように利用できる、OCIのマネージドサービスです。MySQLの開発元であるオラクル社からサポートが受けられる他、Enterprise Editionが安価に利用できる点が特長です。
また、OCIではMySQLのオプション機能のHeatWaveが利用できます。Heatwaveは分析処理に特化したエンジンで、DWHのような膨大なデータの分析処理もETLツールを使用せず実現が可能です。OCIではこの2つのサービスを導入することで、素早く分析基盤システムを構築できます。
テクバンでは、OCIにノウハウがないお客様にもご安心いただける導入支援サービスを提供しています。導入支援サービスについて詳しい情報をお求めの方は、「MySQL Database Service / HeatWave導入支援サービス」をご覧ください。
OCI導入ならテクバンへお気軽にご相談ください
OCIは、コストパフォーマンスに優れたクラウドサービスです。また、オンプレミスとクラウドで同じ製品を扱っているため移行がしやすいという点も大きなポイントです。特にオンプレミスでオラクル社製品を扱っている企業、ハイブリッドクラウドの構築を検討している企業にはおすすめのクラウドサービスといえるでしょう。
ただし、実際にクラウドを導入する場合や、インターネットVPNでオンプレミスとクラウドを連携したい場合では、考慮すべき点が多くあります。
テクバンでは、そのような課題に対して豊富なノウハウを生かした導入支援サービスを提供しています。OCIの導入を検討されている人は、ぜひお気軽にご相談ください。