働き方の多様化やリモートワークの普及により、ビジネスの現場で重要視されるようになった「エンドポイントセキュリティ」。エンドポイントセキュリティの導入は、PCやモバイル端末をサイバー攻撃から守り、被害の最小化に貢献します。
この記事では、エンドポイントセキュリティとは何か、具体例を交えて解説します。
エンドポイントセキュリティの概要から導入メリット、製品の選び方を知りたい方はぜひ参考にしてください。
エンドポイントセキュリティとは
エンドポイントセキュリティとは、エンドポイントに対して行うセキュリティ対策のことです。エンドポイントは「終点」や「末端」を意味する言葉で、ITの分野においては、ネットワークに接続された終端の機器を指します。具体例を挙げると、業務で使用するPCやモバイル端末などがこれに当たります。
エンドポイントセキュリティの目的は、エンドポイント(機器や端末)とそこに保存されている情報を、サイバー攻撃や内部不正から守ることです。不審な挙動やアクセスがないか常に監視し、マルウェアの侵入や情報漏えいを未然に防ぎます。
昨今では、エンドポイントから社内ネットワークや基幹システムに侵入し、情報を盗み出すサイバー攻撃も増えています。エンドポイントのセキュリティ強化は重要であり、急務となっています。
- エンドポイントの具体例
エンドポイントセキュリティにおける「エンドポイント」には、以下のようなものがあります。いずれも通信回線やネットワークに接続されていることが条件となります。
- デスクトップパソコン
- ノートパソコン
- タブレット
- スマホ
- プリンター、スキャナー、コピー機
- サーバー
- ルーター
近年、働き方改革の推進やリモートワークの普及に伴い、エンドポイントは多様化しています。社内で使用するものだけでなく、社員が在宅勤務や外出先で使用するデバイスもエンドポイントに含まれます。
エンドポイントセキュリティが重要な背景
エンドポイントセキュリティが重要視されるようになったのには、いくつかの理由があります。ここでは、3つの主な理由を紹介します。
1.エンドポイントの増加と多様化
まず一つ目の理由として、エンドポイントの増加と多様化が挙げられます。
これは、近年の働き方改革やリモートワークの普及に伴い、社外で仕事をする人が増えたためです。各ユーザーが様々な場所で、外部の通信ネットワークを使って業務を行うようになれば、当然セキュリティリスクは高まります。
例えば、「公衆Wi-Fiを利用して社内ネットワークにアクセスする」「個人所有の端末を業務に使用する」といった行為には、マルウェア感染のリスクが潜んでいます。
2.クラウドサービスの普及
ビジネスシーンでクラウドサービスの普及が進んだことも、エンドポイントセキュリティが必要とされる理由の一つです。
近年、クラウド技術を活用したサービスが次々とリリースされ、多くの会社が導入しています。
インターネット環境さえあればどこからでもアクセスできる便利さがクラウドサービスの魅力ですが、そこにはセキュリティ面のリスクもあります。社内ネットワークを経由しないアクセスが増えれば、その分マルウェア侵入や情報漏えいのリスクが上がります。
3.サイバー攻撃の高度化
サイバー攻撃の増加と高度化も主な要因です。
あらかじめターゲットを決めて巧妙に侵入する標的型攻撃や、データを暗号化して身代金を要求するランサムウェア攻撃など、企業の存続を脅かす悪質なサイバー攻撃は後を絶ちません。
侵入口として、ぜい弱性のあるエンドポイントが狙われるケースも多く、隙のないセキュリティ対策を講じる必要があります。
エンドポイント・ゲートウェイ対策の違い
エンドポイントセキュリティと混同されやすいものに、「ゲートウェイセキュリティ」があります。
エンドポイントセキュリティとゲートウェイセキュリティでは、目的や保護対象が異なるため、違いを正しく理解しておくことが重要です。
エンドポイントセキュリティとゲートウェイセキュリティ、それぞれの特徴を以下にまとめました。
<エンドポイントセキュリティ>
- 目的:エンドポイント(機器や端末)とそこにある情報の保護
- 保護対象:接続されているエンドポイント
- 機能:先進的かつ高度な機能でエンドポイントのセキュリティリスクを低減
(振る舞い検知、封じ込め、調査分析、データ暗号化など)
<ゲートウェイセキュリティ>
- 目的:ネットワークから侵入するマルウェアや不正アクセスの防止
- 保護対象:社内ネットワークと外部ネットワークの境界線
- 機能:外部から侵入しようとするマルウェアなどをゲートウェイで遮断
(ファイアウォール、IDS、IPSなど)
エンドポイントセキュリティの目的は、エンドポイントと呼ばれる端末やそこに保存されている情報を、様々な脅威から守ることです。業務で使用するパソコンやモバイル端末、サーバーなどを監視し、マルウェア侵入や不正アクセスを防ぎます。
一方、ゲートウェイセキュリティは、社内ネットワークとインターネットの境界に位置するゲートウェイを監視し、そこから侵入するマルウェアや不正なアクセスをブロックします。ゲートウェイセキュリティは、社内ネットワークの内部にある端末や情報を保護するものであり、社内ネットワークの外にあるエンドポイントは対象外となります。
つまり、リモートワークで在宅勤務をしたり、コワーキングスペースを利用したりする場合など、社内ネットワークから切り離された環境では、ゲートウェイセキュリティは意味をなさないということです。
従来、セキュリティ対策といえば、ゲートウェイセキュリティが主流でしたが、リモートワークの普及とエンドポイントを狙うサイバー攻撃の増加により、それだけでは不十分となっています。多様なセキュリティリスクを回避するには、エンドポイントセキュリティの導入が必要です。
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エンドポイントセキュリティの種類と機能
エンドポイントセキュリティ対策には、いくつかの種類があります。代表的なものは次の通りです。
- EPP
- EDR
- NGAV/NGEPP
- DLP
それぞれ詳しく見ていきましょう。
EPP
EPPとは、「Endpoint Protection Platform」の略で、日本語に訳すと「エンドポイント保護プラットフォーム」という意味になります。
EPPの役割は、マルウェアによる攻撃を水際で防ぐことです。各エンドポイントにインストールし、パターンマッチング方式を用いて既知の脅威を検出、ブロックします。
なお、パターンマッチング方式とは、過去に検出されたマルウェアをデータベース化し、検査対象のファイルに同様のデータパターンがないか照合する方法です。データベースに蓄積されたマルウェア情報をもとに、脅威の有無を確認します。
EPPは、従来のウイルス対策ソフトに多く使われている手法であり、既知のマルウェア対策に効果を発揮します。脅威の判定にデータが必要になるため、未知のマルウェアは検知することができません。
EDR
EDRとは、「Endpoint Detection and Response」の略で、日本語に訳すと「エンドポイントの検知と対応」という意味になります。EDRは、マルウェアによる被害を最小限に抑えることを主な目的とし、脅威の検知に加え、被害の拡散防止、調査分析、駆除などが可能です。
万が一、マルウェアの侵入を許してしまった場合に、可能な限り被害を最小化し、早期解決を図ることがEDRの役割となります。
EDRは、エンドポイントやネットワークを常に監視し、不審な挙動を検知すると即座に管理者へアラート通知を行います。また、脅威を検知した際に自動でネットワークを遮断する機能や、被害状況を調査する機能などもあり、サイバー攻撃に対して迅速に対処できます。
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NGAV/NGEPP
NGAVは、「Next Generation Antivirus」の略で、日本語では「次世代アンチウイルス」という意味になります。
一方、NGEPPは「Next Generation Endpoint Protection Platform」の略で、直訳すると「次世代エンドポイント保護プラットフォーム」となります。
NGAVとNGEPPは、どちらもEPPを進化させたもので、マルウェアの侵入防止を目的とします。AIや機械学習などの最新技術を利用し、「振る舞い検知」と呼ばれる方法で既知・未知問わず、あらゆる脅威を検出します。
振る舞い検知は、マルウェア特有の挙動や特徴をもとに異変を検知するため、パターンマッチング方式では検知できない新種のマルウェアや、これまでに報告のない未知のマルウェアにも対抗できます。
NGAVについては、以下関連記事で詳しく解説しています。参考にしてください。
▼NGAV(次世代型アンチウイルス)とは? 従来型対策やEPP・EDRとの違いも解説
DLP
DLPとは、「Data Loss Prevention」の略で、日本語では「情報漏えい対策」と訳されます。その言葉の通り、情報漏えいを防ぐことを目的としたものです。
DLPは、エンドポイントやネットワーク上に存在するデータを監視し、不正な操作やアクセスがないかリアルタイムでチェックします。不審なイベントを検知した際は、管理者にアラート通知を送り、社内の機密データや重要情報の漏えいを防ぐことが可能です。
DLPはデータそのものを監視する対策であるため、外部からのサイバー攻撃だけでなく、関係者による内部不正も阻止できます。
これまでお伝えしたように、エンドポイントセキュリティには様々な対策方法があります。複数の対策を組み合わせれば、より強固なセキュリティを確立できます。
エンドポイントセキュリティのメリット
エンドポイントセキュリティ製品を導入して対策を行うことには、数多くのメリットがあります。代表的なメリットをいくつか紹介します。
脅威を早期に検出できる
エンドポイントセキュリティ製品を導入することで、マルウェアや不正アクセスの早期検知が可能になります。不審な挙動を検知すると、管理者にアラート通知が発信されるため、早い段階で適切に対処できます。
NGAVやNGEPPが搭載されている製品であれば、既知のマルウェアだけでなく、未知のマルウェアの検知も可能です。新たな攻撃手段でエンドポイントを狙うケースも増えており、NGAVやNGEPPの導入は非常に有効です。
問題の全容を速やかに把握できる
エンドポイントセキュリティ製品の多くに、調査・分析機能が搭載されています。そのため、マルウェアがいつどこから侵入したか、どの範囲まで感染が広がっているかなどを、速やかに把握できます。
被害状況をグラフやレポートでわかりやすく表示する機能などもあり、問題の全容把握と対応策の検討がスムーズに進みます。
被害の拡大を抑えられる
EDRを搭載したエンドポイントセキュリティ製品は、マルウェア侵入後の被害軽減に役立ちます。マルウェアの侵入をいち早く検知し、封じ込め、脅威の排除を行います。
具体的には、以下のような対策を自動で実行します。
- ネットワークの遮断
- 感染したエンドポイントの隔離
- アプリケーションソフトウェアの非アクティブ化
- 不審なプログラムの強制停止
- 危険性の高いファイルの削除
万が一、マルウェアの侵入を許してしまった場合でも、必要な対策を自動で実行するため、被害を最小限に抑えられます。
社内の端末を一元管理できる
エンドポイントセキュリティ製品の中には、IT資産に関連する情報を一元管理できるものも存在します。例えば、「業務で利用されている端末がどれくらいあるか」「誰が使用している端末なのか」などを管理画面で確認できるため、端末の数や種類、使用者の把握が容易です。
オフィス内だけでなく、リモートワークで使用されている端末もすべて管理・制御可能なため、エンドポイントのセキュリティが向上します。
エンドポイントセキュリティ製品選びの要点
エンドポイントセキュリティ製品には様々な種類があり、それぞれ機能や特長が異なります。ここでは、これから製品を検討する方に向けて、選ぶ際のポイントを紹介します。
- 機能やウイルスの検知方法
製品によって搭載機能が異なるため、どのような特徴や強みがあるのか確認することが重要です。特に注目したいのが、マルウェアの検知方法と効果の範囲です。万全なセキュリティ対策を講じるのであれば、先進的な検知方法でマルウェアの侵入を防ぐNGAVと、感染後の被害軽減対策が可能なEDRを組み合わせた製品などが適しています。
仮に、NGAVとEDRがセットになった製品を導入した場合、次のようなセキュリティ対策を実現できます。
- エンドポイントに侵入する前の脅威に対応
(既知のマルウェア+未知のマルウェアを検知し、侵入を防ぐ) - エンドポイントに侵入した後の脅威に対応
(侵入したマルウェアの早期検知、封じ込め、駆除)
エンドポイントのセキュリティ対策を強固なものにするには、「脅威が侵入する前段階での防御対策」と「脅威が侵入した後の被害軽減対策」の両方が重要です。
- エンドポイントに侵入する前の脅威に対応
- 運用方法
エンドポイントセキュリティ製品の運用方法には、クラウド型とオンプレミス型があります。クラウド型は、インターネット上でベンダーが提供するサービスをそのまま利用する方法です。導入までのスピードが早く、短期間で利用を開始できます。初期費用や運用コストを抑えられる点もメリットです。
一方、オンプレミス型は、自社にサーバーを設置し、運用や管理を行います。カスタマイズ性が高く、既存システムと連携しやすい点が特長です。高度なセキュリティ要件を満たす必要がある場合や、セキュリティ対策を自社で完結したい場合に多く選ばれています。
- コスト
初期費用や運用コストは、製品によって様々です。クラウド型の場合は、ベンダーと契約を交わし、月額や年額の料金を支払う形となります。通常、ライセンス数(保護するエンドポイントの数)によって料金が変動します。
オンプレミス型では、導入時にサーバー設置やシステム構築が必要なため、初期費用が高額になる傾向があります。管理運用のための体制や人員の確保も求められます。
- サポート体制
サポートの有無や内容も確認しておきたいポイントです。製品を利用してセキュリティ対策を行うには、ある程度の知識が必要になります。導入時の設定や導入後の運用に不安がある場合は、サポート体制が充実している製品を選ぶと安心です。
「どのような手段での問い合わせが可能か」「24時間365日対応しているか」など、サポートについて事前に確認しておきましょう。
エンドポイントセキュリティ導入の注意点
エンドポイントセキュリティ製品は、適切に運用してこそ、その効果を発揮します。アラート発生時には確認作業やその後の対応が必要になるため、IT人材の確保と運用体制の構築が必須となります。
もし、社内にITスキルのある人材がいない場合は、専門知識を有する人材の採用やIT部門の設立から始めなければなりません。そうなるとエンドポイントセキュリティ対策を実行するまでに、長い時間を要する可能性があります。
このようなケースでは、エンドポイントセキュリティに関する業務を外部委託するのも有効な選択肢となるでしょう。
企業のセキュリティ対策は専門家に相談を
「自社に適したエンドポイントセキュリティ製品がわからない」「運用や問題発生時の対応に不安がある」という場合は、専門家のサポートを受けるのもおすすめです。
テクバンでは、高度化するサイバー攻撃に対抗すべく、多彩なセキュリティソリューションを提供しています。高度な検知技術と処理能力を搭載したEDR製品の導入支援も行っています。
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増えるデバイスへの、エンドポイントセキュリティ対策
【事例】高い運用負荷、デバイスへの悪影響。これを刷新するエンドポイントセキュリティ
エンドポイントセキュリティ対策は必要不可欠
この記事では、エンドポイントセキュリティの概要や導入メリット、製品の選び方などを解説しました。働き方が多様化した現在のビジネスシーンでは、エンドポイントのセキュリティ対策が不可欠です。エンドポイントを狙ったサイバー攻撃も多発しており、脅威を侵入させない対策と、侵入されても被害を最小化する対策の両方が求められます。隙のない対策を講じて、エンドポイントをあらゆる脅威から守りましょう。
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