サイボウズ社が提供するkintoneは、企業内の様々な業務をシステム化するプラットフォーム型サービスです。
組織や企業にとって重要な顧客管理業務も、kintoneに組み込むことによって簡単かつ確実に一元管理できます。
この記事では、kintoneで顧客管理する方法やメリットを解説する他、必要なアプリや注意点、アプリ以外の方法も詳しく紹介します。
kintoneは顧客管理を効率化できるか?
kintoneで顧客管理を行う方法を解説する前に、紙ベースやExcel(エクセル)といった従来型のツールと、kintoneでの顧客管理において、運用のしやすさを比較します。
アナログ・Excelによる顧客管理のデメリット
紙ベースやExcelによる顧客管理には、どのようなデメリットがあるのでしょうか。例として、以下の問題点が考えられます。
- 同時に作業できないため、作業の順番待ちが発生する
- 編集履歴を残せず、内部不正やミスの予防ができない
- 外出先からデータの閲覧・更新がしづらく、リアルタイムの情報共有が難しい
- 顧客データベースの作り方が各部署でバラバラになりやすい
- 紙ベースの保管は紛失リスクが高く、保管コストも生じる
これらのデメリットは、業務効率の低下につながります。
また、顧客管理業務は、取引先の氏名や連絡先など基本情報を保管するだけではありません。マーケティングに活用するために、自社サービス利用者の属性や、顧客ごとの購買・サポート履歴などの情報管理も必要です。
このように、企業が管理すべき情報は増加しており、顧客管理の効率化は企業における重要課題のひとつといえます。
社内に点在する顧客情報をkintoneでの一元管理化、またはCRM(顧客管理システム)化に成功した事例を紹介しています。ぜひ、ダウンロードしてご覧ください。
【事例】点在する顧客情報をkintoneでデータベース化。横展開できるCRMに構築
顧客管理のkintone移行メリット
紙ベース・Excelからkintoneへ顧客管理を移行すると、以下3つのメリットを得られます。
- 一元管理による業務効率化
- 最新情報に同期される
- 担当者や進捗状況の可視化
具体的なメリットを、詳しく説明します。
1.一元管理による業務効率化
社員のデバイスやExcel、紙などに点在する顧客情報をテンプレート化し、kintoneのアプリ上で1か所にまとめると、業務効率向上が見込めます。
一元化されれば、すぐに顧客情報にアクセスでき、複数ユーザーによる同時編集も可能です。
また、kintoneは各データに直接コメントをつけられるため、やり取りや伝達事項もすべてkintoneに集約できます。コミュニケーションツールを別途用意する必要がありません。
2.最新情報に同期される
kintoneはクラウドで提供されているため、入力した顧客情報などのデータは個別のローカルPC環境下ではなく、クラウド上で常に最新状態へと同期されます。
古い情報による誤った対応や、メンバーそれぞれの環境下で別々に更新されてしまう事態を防げる上に、スマホやタブレットからの利用もkintoneでは可能です。
外出が多い営業社員でも、外出先からリアルタイムに最新の顧客情報を確認・編集できます。
3.担当者や進捗状況の可視化
案件の担当者や進捗状況を可視化できる点も、kintoneに移行するメリットのひとつです。
情報の一元管理について前述しましたが、集約された情報の中で担当者の対応件数や案件の進捗ステータスが表示され、社員の稼働状況を可視化します。また、案件やタスクの一覧表示により、二重対応や対応漏れといったミスを防げます。
さらにレポート機能では、顧客ごとの利益や売り上げなどの情報を集計し、グラフを自動生成します。
kintoneの徹底した可視化機能があれば、社員ごとの案件対応数がわかりやすくなり、リソースの最適化や負担軽減を実現できるでしょう。
過去の顧客情報もkintone内に蓄積され、顧客掘り起こしにも効果的です。
「この顧客にはこういったサポートが必要」「商談やマーケティングの反応」といった細かな項目を記載すれば、情報や知識が共有され、次のアクション(営業活動)や課題に取り組みやすくなるでしょう。
担当者の人事異動や退職があっても、スムーズな顧客の引き継ぎが可能となり、営業管理にも活用できます。
kintoneの導入メリットについて、さらに詳しくはこちらの記事でご紹介しています。
▼kintoneでできること・できないことは何? 導入メリット・デメリットも解説
kintoneのサンプルアプリを使う
kintoneの「サンプルアプリ」とは、あらかじめ業種ごとに適した形に作られたアプリの“ひな型”のようなもので、kintone内のアプリストアから無料で追加できます。
さらに、標準機能で使えるサンプルアプリを用途別にまとめた「パッケージ」も用意されています。顧客管理に適したパッケージは、下記2つがおすすめです。
- 営業支援(SFA)パック
- 顧客サポートパック
詳しい機能や特徴を紹介します。
1.営業支援(SFA)パック
営業支援(SFA)パックは、案件管理アプリと顧客リストアプリを含むパッケージです。顧客情報と紐づけて、商談履歴や案件の詳細をまとめて管理できます。
顧客ごとの管理画面には、以下の情報が表示されます。
- 顧客の氏名、電話番号、メールアドレス、住所
- 会社名、部署名
- 担当者名
- 顧客ランク
- 案件情報、商談履歴
営業担当者別の売上金額はグラフ表示され、営業成績の確認・分析に活用可能です。顧客リストの検索機能も搭載されているため、目的の情報へ迅速にたどり着けます。
kintoneでできる営業支援(SFA)について、さらに詳しくはこちらの記事でご紹介しています。
▼kintoneで構築する営業支援(SFA)システムとは?
2.顧客サポートパック
顧客サポートパックは、「顧客リストアプリ」「問い合わせ管理アプリ」「サポートFAQアプリ」の3つで構成されています。
サポート部門向けに特化しており、顧客情報とサポート履歴を紐づけるパッケージです。
例えば、問い合わせ管理アプリには、顧客ごとの問い合わせ内容と対応履歴が記録されます。対応履歴は時系列順に整理されるため、顧客の最新状況を一目で確認できます。
また、サポートFAQアプリは、サポートセンターに蓄積されたよくある質問と回答をまとめるアプリです。カテゴリー選択やキーワード検索により、お客様対応をしながら質問・回答を素早く探せます。
質問・回答に関連URLを貼れるため、さらに詳細な解説ページへの誘導も可能です。
サンプルアプリの注意点
kintoneのサンプルアプリは簡単に追加できる上に、仕様変更もドラッグ&ドロップで行えます。
ただし、利便性と自由度が高い反面、アプリを追加しすぎてしまう点に注意が必要です。不要なアプリがあるとストレージを圧迫するばかりか、複数アプリへの情報散逸により業務効率が悪化する危険があります。
また、必要な項目や動作・役割などの全体図を考えずにアプリを設計した場合も、使い勝手の悪いUI(ユーザーインターフェース)によって作業が滞る恐れがあります。
なんとなくアプリを作ってみたり、同じ情報を別々のアプリで扱ったりしないことが大切です。
対策として、アプリ作成のガイドライン策定をおすすめします。必要なアプリに絞ったほうが、適切な導入効果が望めるでしょう。
アプリの作り方については、下記記事をご参考にしてください。
▼kintone(キントーン)のアプリ作成例が知りたい! 使い方やサンプルアプリを紹介
kintoneにプラグイン(拡張機能)を追加
kintoneには、外部サービスとの連携や機能追加ができる「プラグイン(拡張機能)」があります。無料で提供されているプラグインもありますが、顧客管理プラグインは基本的に有料のものが多いです。
ここでは、顧客管理プラグインの主な機能3つと対応サービスを紹介します。
- 名刺登録
- 地図連携
- 名寄せ・データクレンジング
詳しく解説します。
1.名刺登録
名刺情報をkintoneのデータベースに一括登録する機能です。名刺登録に特化したプラグインは多数ありますが、中にはAI OCR機能を備えているものもあります。
AI OCR(Optical Character Recognition:光学文字認識)機能を持つプラグインの一例として挙げられるのが、「AI名刺解析プラグイン」です。
スマホで撮影した名刺の文字を読み取り、該当フィールドへ自動出力・登録します。訪問後の移動中などの隙間時間に活用できるため、入力忘れや名刺紛失による顧客情報の管理漏れを防ぎます。
kintoneでできる名刺管理について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
▼kintoneで名刺管理|アプリやプラグイン連携を紹介
2.地図連携
kintoneにデータベース化している顧客・施設情報を、地図上へ表示させる機能です。
例として、PC版の「カンタンマップ プラグイン」とiPhone・iPad版の「カンタンマップ アプリ」が挙げられます。
顧客情報がマップにポイント表示されるため、効率の良い顧客訪問ルートの構築が可能です。
施設点検などのメンテナンス業務においても、現地で点検履歴の確認や点検後の写真登録が行えます。
3.名寄せ・データクレンジング
名寄せやデータクレンジング機能があるプラグインは、膨大な顧客情報の整理手段として効果的です。
例えば、プラグイン「krewData」は、kintoneアプリ間のデータを集計してデータクレンジングを行います。
データクレンジングとは、「(株)」や「株式会社」といった表記ゆれを補正し、一貫性のあるデータ管理を可能にする機能です。ノンプログラミングで扱えるため、難しい条件設定などの作業は必要ありません。
プラグインの注意点
プラグイン利用時の注意点のひとつに、適切なkintoneの料金プランを選択することが挙げられます。
プラグインを利用できる料金プランは、スタンダードコースのみです。ライトコースは利用できないため、プラグインを使いたい場合はスタンダードコースを選びましょう。
スタンダードコースについて、下記記事にて詳細を解説しています。
▼kintoneのスタンダードコースとは? 機能や月額料金、ライトコースとの違いを解説
そして、高機能なプラグインは、基本的に有償利用です。有料プラグインをむやみに追加すると費用がかさむため、適切な費用対効果を得られない恐れがあります。
すでに専門のSFA(Sales Force Automation)やCRM(Customer Relationship Management)システムでの顧客管理で十分に効果を発揮できている場合、kintoneとの連携にメリットはそこまでないかもしれません。
まずは、kintoneで顧客情報を管理する目的を明確にしましょう。プラグインを追加する前に、費用に見合った効果を得られるか検討することが重要です。
また、高機能で無料のプラグインは、基本的に有料版のサンプルとして提供されています。機能制限があるだけでなく、動作保証やサポートも期待できません。無料プラグインは、お試しとしての活用をおすすめします。
kintoneのプラグインについて、下記の記事で詳しくご紹介しています。
▼【2024年】無料版kintoneプラグインのおすすめをご紹介!
▼kintoneのプラグイン開発|必要なファイル、開発手順を紹介
kintoneのカスタマイズサポートを利用
顧客管理するために、kintoneをカスタマイズすることも挙げられます。
kintoneはJavaScript開発によるカスタマイズも可能です。JavaScript開発はサンプルアプリやプラグインよりも自由度が高く、自社に合う顧客管理システムを設計できます。具体的には、アプリの独自仕様や複雑な計算処理などの実装が可能です。
kintoneでできるJavaScript開発について、詳しい記事をご用意しています。
▼kintoneでJavaScriptを活用し、さらなる業務改善へ!
とはいえ、kintoneを適切に開発するためには、一定のコーディング知識と技術が求められます。
そこでおすすめしたいのが、カスタマイズサポートの利用です。カスタマイズサポートでは、kintoneのカスタム開発・導入支援や運用サポートを委託できます。社内の開発スキルに不安がある場合は、費用はかかりますがカスタマイズサポートの利用を検討してみてください。
カスタマイズサポートの注意点
カスタマイズサポートに依頼するのであれば、kintoneのオフィシャルパートナーをおすすめします。
オフィシャルパートナーとは、kintoneを提供するサイボウズ社公認の協力企業です。オフィシャルパートナーではない会社の場合、kintoneの理解度が低い恐れがあります。要望をうまく汲み取ってもらえず、意図しない仕様になるかもしれません。
一方のオフィシャルパートナーは、サイボウズ社から製品学習などの活動支援を受けています。kintoneについて熟知したプロによる、専門的なサポートが期待できます。さらに、顧客管理機能の開発に加えて導入・運用を含む依頼もオフィシャルパートナーでは請け負っています。
kintoneに関するトータルサポートを望む場合、オフィシャルパートナーの活用を候補に入れてみてください。
kintoneオフィシャルパートナーのサービス
サイボウズ社に認定された kintoneのオフィシャルパートナー企業は製品知識が豊富で、企業ごとに適した運用提案や開発支援を行っています。トライアル導入段階から、トライアルでの適切な効果検証が行えるようアプリを開発することも可能です。
テクバンも、kintoneのオフィシャルパートナー企業です。具体的なサービス内容は、以下をご覧ください。
- アプリの要件定義、設計、開発
- 導入済み kintoneの現状のヒアリング、改修
- カスタマイズアプリのご提案、アドバイス
- 月間20時間のお問い合わせ対応、運用定着支援 など
kintoneの開発依頼先をお探しの方は、ご検討ください。
kintoneで困ったときに頼れるオフィシャルパートナーについて、詳しくはこちらの記事でご紹介しています。
▼kintoneのパートナー企業を活用してみよう!
kintoneの顧客管理で情報共有、業務の可視化
Excelや紙の顧客管理からkintoneへ移行すると、管理作業がスムーズになります。リアルタイムの情報共有やマルチデバイスの活用により、業務効率の向上が期待できます。
kintoneで顧客管理を行う方法は、サンプルアプリやプラグインの追加、カスタマイズサポートの利用の3つです。kintoneを柔軟に設計したいと考えるなら、カスタマイズサポートの利用がおすすめです。
kintoneの案件管理機能やその他便利な機能について、さらに詳しい記事をご用意しております。ぜひ参考にしてください。
▼kintoneの顧客・案件管理|営業活動に役立つ機能を紹介
▼kintoneのカレンダー表示機能|便利なプラグインも紹介
▼kintoneのプロセス管理|基本設定とワークフローの設定例
※本記事の内容は2022年5月時点のものです。kintoneの仕様や利用環境は変更する場合があります。
開発支援承ります
テクバンではkintoneの開発支援を受け付けております。日々の運用でお困りの方は以下より弊社サービスをご覧ください。
また、kintoneの標準機能に加えて、拡張機能であるプラグインを利用することで kintoneの活用の幅がより広がります。プラグイン選定から導入までサポートいたします。
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