サイボウズ社が提供するkintone(キントーン)は、企業内の様々な業務をシステム化するプラットフォーム型サービスです。データベースとして活用できるため、進捗管理やタスク管理、予実管理、営業管理など、あらゆる管理業務を効率化させます。
組織や企業にとって重要な「顧客管理」も、kintoneに組み込むことによって簡単かつ確実に一元管理できます。
この記事では、kintoneで顧客管理する方法やメリットを解説する他、必要なアプリや注意点、アプリ以外の方法も詳しく紹介します。
kintoneとは? 顧客管理が可能?
kintoneは業務改善を実現するクラウドサービスであり、導入企業数は30,000社を超えています。中小企業から大規模企業、官公庁など、幅広い業界・業種で活用されているツールです。
kintoneは「アプリ」と呼ばれる業務システムを、ローコード・ノーコードで誰でも簡単に作成できる点が特長のひとつです。プログラミングをはじめとする専門知識が不要で、非エンジニアでもすぐにアプリを作成できます。作成したアプリに業務で必要な情報を登録し、管理・共有することで業務改善を図ります。
顧客管理(CRM:Customer Relationship Management)においても、kintoneは大変有効なツールであり、従来の顧客管理方法の問題点を解決できます。では、どのような問題を解決できるのでしょうか。次項にて解説します。
アナログ・Excelによる顧客管理のデメリット
紙ベースやExcelによる従来の顧客管理の問題点として、以下のことが挙げられます。
- 情報が社内に点在しやすい
- 編集履歴を残せず、内部不正やミスの予防ができない
- 外出先からデータの閲覧・更新がしづらく、リアルタイムの情報共有が難しい
- フォーマットの作り方が各部署でバラバラになりやすい
- 紙ベースの保管は紛失リスクが高く、保管コストも生じる
取引する顧客が多くなればなるほど管理は煩雑になります。また、顧客管理業務は取引先の氏名や連絡先など、基本情報を保管するだけではありません。顧客ごとに進んでいる案件の進捗を管理したり、マーケティングに活用する際には、自社サービス利用者の属性や顧客ごとの購買・サポート履歴などの情報を管理したりすることも必要です。
企業が管理すべき情報は増加しており、顧客管理の効率化は企業における重要課題のひとつといえます。
また、紙やExcelの顧客管理では「どのファイルが最新なのか」「誰が・いつ更新したのか」といった情報を可視化することも難しく、それらの情報が知りたくても探すのに時間がかかってしまいます。スムーズに情報を見つけ出せない環境は、業務効率や生産性が低下し、結果、組織としての利益損失につながるでしょう。

kintoneへ顧客管理の運用を移行するメリット
紙ベース・Excelからkintoneへ顧客管理を移行すると、以下3つのメリットを得られます。
- 一元管理による業務効率化
- 最新情報に同期される
- 担当者や進捗状況の可視化
具体的なメリットを、詳しく説明します。
kintoneの導入メリットについて、さらに詳しくはこちらの記事でご紹介していますので、併せてご参考にしてください。
▼kintoneでできること・できないことは何? 導入メリット・デメリットも解説
1.一元管理による業務効率化
社員のデバイスやExcel、紙などに点在する顧客情報をテンプレート化し、kintoneのアプリ上で1か所にまとめると、業務効率向上が見込めます。情報が適切に一元化されれば、迅速に求めている顧客情報にアクセスでき、情報を探す手間と時間を削減します。
情報管理における便利な機能を、kintoneの標準機能になくても追加することも可能です。
例えば、Web上で情報を管理する際、複数人が同じ情報を閲覧・編集する機会も多く発生するでしょう。
kintoneの標準機能では、複数人による同一レコードの同時編集は行えません。複数のユーザーが同じレコードを編集しようとした場合、最初に保存したユーザーが優先され、後から保存したユーザーには「レコードを再読み込みしてください。編集中に、ほかのユーザーがレコードを更新しました。」とエラーが表示されます。しかし、プラグイン(拡張機能)をアプリに適用させることで同時編集が可能となります。
このように、kintoneには標準機能から拡張させるための手段が豊富にあります。
また、レコード詳細画面から各データに直接コメントをつけられるため、やり取りや伝達事項もすべてkintoneに集約できます。コミュニケーションツールを別途用意する必要もなく、情報に紐づいたコミュニケーションを行えることにより、コミュニケーションの活性化につながるでしょう。
2.最新情報に同期される
kintoneはクラウドで提供されており、入力した顧客情報などのデータは個別のローカルPC環境下ではなく、クラウド上で常に最新状態へと同期されます。
そのため、データをグラフ化したものも最新の状態で表示され、いちいちグラフを作り変えたり更新したりする手間も必要ありません。古い情報による誤った対応や、メンバーそれぞれの環境下で別々に更新されてしまう事態も防げます。
最新の情報を正しく知れることで、ビジネススピードに後れをとらず、迅速な経営判断にも役立つでしょう。
また、kintoneはマルチデバイスに対応しており、スマホやタブレットからアクセスして情報を確認することが可能です。外出が多い営業社員でも、外出先からリアルタイムに最新の顧客情報を把握できます。
3.担当者や進捗状況の可視化
案件の担当者や進捗状況を可視化できる点も、kintoneに移行するメリットのひとつです。
情報の一元管理について前述しましたが、集約された情報の中で担当者の対応件数や案件の進捗ステータスが表示され、社員の稼働状況を可視化します。また、案件やタスクの一覧表示により、二重対応や対応漏れといったミスを防げます。
さらにレポート機能では、顧客ごとの利益や売り上げなどの情報を集計し、グラフを自動生成します。kintoneの徹底した可視化機能があれば、社員ごとの案件対応数がわかりやすくなり、リソースの最適化や負担軽減を実現できるでしょう。
過去の顧客情報もkintone内に蓄積され、顧客掘り起こしにも効果的です。
「この顧客にはこういったサポートが必要」「商談やマーケティングの反応」といった細かな項目を記載すれば、情報や知識が共有され、次のアクション(営業活動)や課題に取り組みやすくなるでしょう。
担当者の人事異動や退職があっても、スムーズな顧客の引き継ぎが可能となり、営業管理にも活用できます。
顧客管理に役立つkintoneのサンプルアプリ
kintoneの「サンプルアプリ」とは、あらかじめ業種ごとに適した形に作られたアプリの“ひな型”のようなもので、kintone内のアプリストアから無料で追加できます。
さらに、標準機能で使えるサンプルアプリを用途別にまとめた「パッケージ」も用意されています。顧客管理に適したパッケージは、下記2つがおすすめです。
- 営業支援パック
- 顧客サポートパック
詳しい機能や特徴を紹介します。
1.営業支援パック
営業支援パックは、案件管理アプリ・案件管理アプリ・活動履歴アプリの3つのアプリで構成されているパッケージです。すでにアプリ間での連携機能(ルックアップ・関連レコード一覧の表示・アプリアクション)が設定されているため、顧客情報と紐づいた案件や商談の詳細をまとめて管理できます。
顧客ごとの管理画面には、以下の情報が表示されます。
- 顧客の氏名、電話番号、メールアドレス、住所
- 会社名、部署名
- 担当者名
- 顧客ランク
- 案件情報、商談履歴
営業担当者別の売上金額はグラフ表示され、営業成績の確認・分析に活用可能です。顧客リストの検索機能も搭載されているため、目的の情報へ迅速にたどり着けます。
kintoneでできる営業支援(SFA)について、さらに詳しくはこちらの記事でご紹介しています。
▼kintoneでSFA(営業支援システム)を構築するには?
2.顧客サポートパック
顧客サポートパックは、顧客情報アプリ・問い合わせ管理アプリ・サポートFAQアプリの3つで構成されています。
サポート部門向けに特化しており、顧客情報とサポート履歴を紐づけるパッケージです。
例えば、問い合わせ管理アプリには、顧客ごとの問い合わせ内容と対応履歴が記録されます。対応履歴は時系列順に整理されるため、顧客の最新状況を一目で確認できます。
また、サポートFAQアプリは、サポートセンターに蓄積されたよくある質問と回答をまとめるアプリです。カテゴリー選択やキーワード検索により、お客様対応をしながら質問・回答を素早く探せます。
質問・回答に関連URLを貼れるため、さらに詳細な解説ページへの誘導も可能です。
サンプルアプリの注意点
kintoneのサンプルアプリは簡単に追加できる上に、仕様変更もドラッグ&ドロップで行えます。
ただし、利便性と自由度が高い反面、アプリを追加しすぎてしまう点に注意が必要です。不要なアプリがあるとストレージを圧迫するばかりか、複数アプリへの情報散逸により業務効率が悪化する危険があります。
また、必要な項目や動作・役割などの全体図を考えずにアプリを設計した場合も、使い勝手の悪いUI(ユーザーインターフェース)によって作業が滞る恐れがあります。なんとなくアプリを作ってみたり、同じ情報を別々のアプリで扱ったりしないことが大切です。
対策として、アプリ作成のガイドライン策定をおすすめします。必要なアプリに絞ったほうが、適切な導入効果が望めるでしょう。
アプリの作り方については、下記記事をご参考にしてください。
▼kintone(キントーン)のアプリ作成例が知りたい! 使い方やサンプルアプリを紹介
アプリの乱立を防ぐハウツーを下記資料にてまとめています。ぜひダウンロードしてご覧ください。
kintoneアプリの乱立を防ぎ効率的に活用

kintoneの顧客管理に役立つプラグイン(拡張機能)の紹介
kintoneには、外部サービスとの連携や機能追加ができる「プラグイン(拡張機能)」があります。無料で提供されているプラグインもありますが、顧客管理プラグインは基本的に有料のものが多いです。
ここでは、顧客管理に活用できるプラグインの主な機能3つと対応サービスを紹介します。
- 名刺登録
- 地図連携
- 名寄せ・データクレンジング
名刺登録には「AI名刺解析プラグイン」がおすすめです。AI OCR(Optical Character Recognition:光学文字認識)機能を持つプラグインであり、スマホで撮影した名刺の文字を読み取り、該当フィールドへ自動出力・登録します。顧客の訪問後、移動中などの隙間時間に活用でき、誤入力や入力漏れなどのヒューマンエラーを防ぎます。
kintoneでできる名刺管理について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
▼kintoneで名刺管理|アプリやプラグイン連携を紹介
また、顧客の住所や施設などを地図上に表示できると、効率のよい顧客訪問ルートを構築できるでしょう。それには「カンタンマップ プラグイン」がおすすめです。
地図に航空写真やハザードマップを重ねて視覚的に情報を判断したり、地図上に写真やメモを残したりすることが可能です。また、タブレットから入力が可能なため、現場で簡単に情報登録が行えます。
たくさんの顧客情報を複数のメンバーが入力すると、表記にズレが生じることもあるかもしれません。「krewData」は、アプリ間をまたがる集計を可能にするプラグインですが、名寄せ・データクレンジングにも活用できます。データクレンジングとは、「(株)」や「株式会社」といった表記ゆれを補正し、一貫性のあるデータ管理を可能にする機能です。ノンプログラミングで扱えるため、難しい条件設定などの作業は必要ありません。
設定方法について、詳細はこちらのページをご覧ください。
プラグイン利用時の注意点
プラグイン利用時の注意点のひとつに、適切なkintoneの料金プランを選択することが挙げられます。
プラグインを利用するには「スタンダードコース」以上の契約が必要です。最も低額のライトコースはプラグインを利用できないため、プラグインを使いたい場合はスタンダードコースを選びましょう。
スタンダードコースについて、下記記事にて詳細を解説しています。
▼kintoneのスタンダードコースとは? 他のコースとの違いを解説
そして、高機能なプラグインは基本的に有償利用です。有料プラグインをむやみに追加すると費用がかさむため、適切な費用対効果を得られない恐れがあります。すでに専門のSFA(Sales Force Automation)やCRM(Customer Relationship Management)システムでの顧客管理で十分に効果を発揮できている場合、kintoneとの連携にメリットはそこまでないかもしれません。
まずは、kintoneで顧客情報を管理する目的を明確にしましょう。プラグインを追加する前に、費用に見合った効果を得られるか検討することが重要です。
また、販売されている有料プラグインは基本的に無料お試し期間を設けており、1か月程度その使い勝手を試すことができます。まずはお試し期間を利用して、自社にとって本当に必要なプラグインなのか判断するとよいでしょう。
kintoneのプラグインについて、下記の記事で詳しくご紹介しています。
▼【2024年11月】無料版kintoneプラグインのおすすめをご紹介!
▼kintoneのプラグイン開発|必要なファイル、開発手順を紹介
kintoneでの顧客管理を成功させた事例
テクバンにて、お客様のkintoneでの顧客管理システム構築をサポートさせていただいた事例について簡単に紹介します。
A社では、部署ごとに顧客情報が管理されている状態で、全社的に顧客情報を集約するデータベースがありませんでした。組織としてはいわゆる「縦割り」で、横とのつながりはかなり薄かったようです。そのため、顧客情報の管理方法も部署ごとで異なり、それぞれ別のCRMを導入していたり、Excelで管理していたりと、統一されていませんでした。
そこで全社統一できるCRMとしてkintoneを導入。
すでに顧客情報が蓄積されている既存システムと連携し、すべての情報をkintoneで一元化しました。また、プラグインや外部クラウドサービスと連携し、顧客の購入履歴から顧客分析とスコアリングを算出するような仕組みを構築したのです。スコアリング結果を基に、ネクストアクションを導き出し、合理的な営業活動の実施へとつなげることができました。
これまで実施しなかったクロスセル・アップセルを行えるようになり、以前と比べ顧客獲得につながりやすくなったり、アプローチした顧客から問い合わせが増えたりと、kintoneの導入効果を得られたようです。
このように、点在する情報をkintoneに集約し、データ分析を行えば、利益向上につながる活動をkintoneから導くことが可能です。
さらに詳しくkintoneの導入メリットや得られた効果について知りたい場合は、下記資料をダウンロードしてご覧ください。
【事例】点在する顧客情報をkintoneでデータベース化。横展開できるCRMに構築
kintoneの顧客管理で情報共有の効率化
Excelや紙の顧客管理からkintoneへ移行すると、管理作業がスムーズになります。リアルタイムの情報共有やマルチデバイスの活用により、業務効率の向上が期待できます。
kintoneで顧客管理を行う方法は、サンプルアプリやプラグインの追加、カスタマイズサポートの利用の3つです。kintoneを柔軟に設計したいと考えるなら、カスタマイズサポートの利用がおすすめです。
kintoneの案件管理機能やその他便利な機能について、さらに詳しい記事をご用意しております。ぜひ参考にしてください。
▼kintoneの顧客・案件管理|営業活動に役立つ機能を紹介
▼kintoneのカレンダー表示機能|便利なプラグインも紹介
▼kintoneのプロセス管理|基本設定とワークフローの設定例
※本記事の内容は2025年4月時点のものです。kintoneの仕様や利用環境は変更する場合があります。
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テクバンではkintoneの開発支援を受け付けております。日々の運用でお困りの方は以下より弊社サービスをご覧ください。
また、kintoneの標準機能に加えて、拡張機能であるプラグインを利用することで kintoneの活用の幅がより広がります。プラグイン選定から導入までサポートいたします。
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