社内の案件情報はどのように管理されていますか? 各自が管理していては二重対応や属人化のリスク、そして進捗状況が見えずその都度確認が必要になるなど、非効率な業務を強いられます。
kintone(キントーン)は顧客管理や在庫管理、請求書管理などに活用されていますが、案件管理ツールとしても最適です。案件情報に関連する必要な情報を一元管理し、効率的な営業活動を実現する機能を備えています。
本記事では、kintoneで行う案件管理について、メリットや活用方法などをご紹介します。
kintoneの案件管理で何ができる?
kintoneは「アプリ」と呼ばれる業務システムを作成します。アプリにデータを登録・蓄積したり、kintone内で情報共有を行ったりすることで、業務改善を実現するビジネスプラットフォームです。
プログラミング知識は不要で、ドラッグ&ドロップの簡単操作でアプリを作成でき、開発工数もかけずにすぐに使い始められる点が魅力です。
現在、案件管理をExcel(エクセル)やスプレッドシートで行っている組織も少なくないでしょう。それらのファイルで案件管理を運用していると「フォーマットが統一されていない」「記入の漏れ・ミスが多い」「過去のファイルを探すのに時間がかかる」「営業活動や商談の履歴が残っていない」などの問題が発生しがちです。
ファイルを用いた管理業務は、煩雑になりやすいデメリットがあります。
それらの問題を解消するのが、kintoneです。
案件に関するすべての情報をkintoneに集約し、活動状況を一目で確認することが可能です。また、案件情報からデータ分析を行い営業活動に生かしたり、外部クラウドサービスと連携して管理業務の手間を減らしたりなど、あらゆる業務の効率化を期待できます。
案件管理の情報を顧客管理や予実管理、タスク管理など他の管理業務へと連携することも可能なため、データを有効活用できるでしょう。
関連記事をご用意しております。
▼kintoneでできること・できないことは何? 導入メリット・デメリットも解説
kintoneで案件管理を行うメリット
kintoneで案件管理を行うと、どのようなメリットがあるのでしょうか。主な4つのポイントを解説します。
- 案件情報に関連する情報も一元管理化できる
- 脱Excel・データベース化で過去情報も参照しやすい
- 進捗や工数の可視化
- レポート機能によるデータ分析
案件情報に関連する情報も一元管理化できる
先述の通り、kintoneはアプリ間の連携機能を使うことで、案件情報を顧客管理や予実管理などに連携できます。
アプリ間連携には「ルックアップ」機能が便利です。例えば、案件管理に顧客情報を入力するフィールドが必要だとします。もし、kintoneで顧客管理も併せて行っていれば、顧客管理アプリから該当する情報を取得し、案件管理アプリへ自動で反映します。
入力の手間が省け、情報の誤入力も防げるため、ルックアップは積極的に活用したい機能のひとつです。
顧客情報以外にも、案件のタスクやスケジュール、見積り、請求書、予実(予算と実績)といった情報と紐づけることも可能なため、アイデア次第でより効率的な使い方ができるでしょう。
ルックアップについて、詳細は下記記事をご覧ください。
▼kintoneのルックアップ機能とは? 使い方や利用メリットを紹介
脱Excel・データベース化で過去情報も参照しやすい
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進により、脱Excelに取り組んでいる組織は多いでしょう。そんな組織にkintoneは最適なツールです。
Excelによる案件管理だと、複数人で同時に編集できなかったり、管理が煩雑になってどのファイルが最新なのかわからなくなったり、また同じ案件のファイルが2つ以上存在してしまったりといった問題が発生しやすいでしょう。
kintoneでは、レコード(各フィールドに入力した情報がひとつにまとまったもの)上に変更履歴が残るため、誰が・いつ情報を更新したのかが確認できます。また、レコード一覧画面にある絞り込み機能を使用すれば、該当のレコードを検索できるため、過去情報の参照もスムーズに。
扱う情報が多くなるほど、情報を集約する場所は1か所に”データベース”として管理することが、業務効率や生産性の向上につながる近道です。
進捗や工数の可視化
案件の進捗状況はkintoneで可視化できます。
kintoneアプリには「プロセス管理」機能があり、この機能を使えば、未着手/処理中/処理済み/確認中/完了などのステータスを設定できます。常に正しいステータスを更新しておけば、レコード一覧画面からすべての案件のステータスを把握することが可能です。
プロセス管理機能は、複数人のユーザーでレコードの編集・確認をするためのワークフローを設定できる機能のため、申請・承認業務などに利用されます。
案件管理アプリにおいては、案件が処理済みになった後に上長への確認が必要という場合、プロセス管理機能で上長へ確認依頼を出すことが可能です。多くのワークフローが存在している組織は、利用してみるとよいでしょう。
プロセス管理機能の詳細は、こちらの記事をご覧ください。
▼kintoneのプロセス管理|ワークフローの設定例を紹介
また、計算フィールドを利用してタスクにかかった工数を算出できます。例えば、担当者ごとに案件にかかった工数を入力するフィールドを設置し合計値が算出されるように設定すれば、工数もレコード一覧画面から一目で確認できます。
工数が予想以上にかかってしまっている案件や、納期に遅れそうな案件などを把握でき、トラブルを回避できるでしょう。
計算フィールドの使い方について、関連記事をご用意しております。
▼kintone計算式の設定|使い方・関数一覧・利用シーンを紹介
レポート機能によるデータ分析
kintoneには、アプリのデータを定期的に集計し、集計結果を記録する機能があります。1時間ごと・毎日・毎月など集計する期間を選択でき、レポートが出力されたタイミングで、設定したユーザーに通知が送信されます。
この機能を使って、案件管理アプリに登録されたデータを分析すれば、適切な営業活動の施策検討や、ネクストアクションの考案など、より合理的に導くことが可能になります。データ分析による最適な営業活動は、組織の利益向上やビジネス成長につながるでしょう。
近年は、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールとkintoneを連携させ、より綿密なデータ活用を行っている組織も多いようです。
kintoneの定期レポート機能について、こちらのページをご確認ください。
案件管理におすすめのサンプルアプリ
kintoneには、アプリのひな型である「サンプルアプリ」が無料で提供されています。サンプルアプリをお使いのkintoneに追加して、そのまま使うことも一部設定をカスタマイズすることも可能です。
kintoneで案件管理を行う際におすすめのサンプルは、以下の3つがあります。
- 案件管理
- 営業支援パック
- 顧客リスト
「案件管理」は、案件ごとに受注の確度や金額、活動の履歴も記録できるアプリです。担当者別の案件数やその確度、月の売上金額などを集計することもできます。
売上・案件数・確度などを簡単に集計できるため、報告や途中経過の確認も時間をかけずに行えます。
案件管理としてはシンプルな構成ですので、まずはこちらから使い始めてみるとよいでしょう。
「営業支援パック」は、顧客や案件、商談を管理することを目的としたアプリパックです。顧客管理アプリ・案件管理アプリ・活動履歴アプリの3つのアプリで構成されています。
これら3つのアプリは、それぞれアプリ間連携機能(ルックアップ・関連レコード一覧表示・アプリアクション)がすでに設定されています。グラフ機能や通知機能などを活用して、さらに使いやすく設定をカスタマイズしてみましょう。
「顧客リスト」は、会社名・担当者名・連絡先など顧客の情報を登録するアプリです。レコード一覧画面から、キーワード検索/地域等の条件での絞り込み/リストのCSV入出力などを行えます。
現在、利用中のデータをこのアプリに移行したり、他システムにデータを読み込ませたりというように活用できます。 入出力できるユーザーを制限できるため、情報漏洩も防げるでしょう。
また、マスタアプリとして情報を登録し、他のアプリにてこのアプリから顧客情報をルックアップすることが可能です。
サンプルアプリについて、関連記事をご用意しております。
▼kintone(キントーン)のアプリ作成例が知りたい! 使い方やサンプルアプリを紹介
案件管理アプリをより効率的に使うには
先述したkintoneで案件管理を行うメリットを基に、案件管理アプリの活用方法を紹介します。
【活用方法1】案件・顧客情報を一元管理
前章でも紹介しましたが、案件と顧客情報を紐づけた管理としてkintoneは最適なツールです。
例えば、営業メンバーが各自で顧客情報を管理していては、二重管理や属人化を生む原因となります。また、情報共有も適切になされていない場合、同じ顧客に複数の営業メンバーが出向き、二重対応してしまう可能性もあるでしょう。
営業側で二度手間になるだけではなく、顧客には情報共有が適切にされていないことが明らかになり、信用を失ってしまう恐れもあります。これでは効率的な営業活動とはいえません。
kintoneは、案件を管理するアプリと顧客情報を管理するアプリをそれぞれ作成し、アプリ間連携機能を使って一元管理することが可能です。登録した情報を簡単にメンバー間で共有することもできます。
情報を有効活用できるため、組織としても生産性の向上やビジネス発展につながるでしょう。
アプリ間連携については、下記記事をご覧ください。
▼kintoneのアプリ間連携を活用して業務効率化を実現しよう
【活用方法2】メンバーや案件の状況を見える化
営業メンバーが個人で活動していると、案件全体の進捗把握のためには、メンバーそれぞれに確認しなければなりません。営業担当者に確認したところで担当者は多忙なため、リアルタイムで状況を把握することは難しいでしょう。
さらに、個人の活動をヒアリングして進捗管理できたとしても、それらの情報の追加・変更やグラフ化には作業負荷がかかります。
kintoneはクラウドサービスのため、リアルタイムに情報を反映・共有でき、各部署が状況に応じた対応を柔軟に行うことが可能です。各担当者が抱えている案件はすべて案件管理アプリに登録すれば、アプリを通して他のメンバーへ共有できます。
また、レコード詳細画面にはコメント機能があり、チャット形式でコミュニケーションをとることが可能です。そのため、レコードの情報に紐付いた連絡や相談ができ、コミュニケーションの活性化にもつながるでしょう。
【活用方法3】コミュニケーションを活性化
レコード詳細画面でやりとりができると説明しましたが、コメント機能だけでは複数メンバーが関わる案件において、全員が正しく情報を把握することが難しい面もあります。特に必要な情報を、チャットのログをたどって確認するのには時間がかかります。
そこでkintoneは、ポータル画面(TOP画面)に重要なファイルや情報など掲載できます。例えば、案件管理アプリでデータ分析した結果を、案件に関わるメンバーだけでなく全社的に共有したい場合は、ポータル画面をカスタマイズして、グラフや表などわかりやすい形で配置することが可能です。
お知らせ掲示板として、ポータル画面をカスタマイズしてみましょう。
また、ポータル画面にある「スペース」とは、チーム単位で必要なコミュニケーションやアプリを集約できる”場”のことをいいます。参加メンバーを選び、スペース内で議論したり重要な情報を共有したりなど、円滑なコミュニケーションにつながるでしょう。
さらに、スペース内で複数の話題がある場合には、スペースに「スレッド」を追加しましょう。話題ごとにスレッドを分け、必要なメンバーだけを招集すれば、スペース内でコミュニケーションを整理できます。
スペースについて、下記記事にて詳細を解説しています。
▼kintoneのスペースをカスタマイズする方法とは?
【活用方法4】外部連携でデータを最大限活用
既にCRM(Customer Relationship Management)やSFA(Sales Force Automation)を導入している組織も多いでしょう。
kintoneは外部クラウドサービスとの連携が柔軟なため、既存システムのデータと連携することが可能です。例えば、それらのシステムと案件管理アプリを連携させれば、案件管理アプリにデータを移行する必要もなく、既存システムのデータを活用できます。
CRMやSFA以外にも、マーケティングオートメーション(MA)ツールやファイル管理サービス、名刺管理サービスなど、様々なクラウドサービスとの連携が可能なため、既存のクラウドサービスがあれば、kintoneとデータ連携を行い、業務の効率化を目指してもよいでしょう。
kintoneと外部システムのデータ連携について、下記記事にて解説しています。
▼kintoneでデータ連携! 他システムとつなげる方法を解説
なお、外部システムとの連携には「スタンダードコース」以上の契約が必要で、さらにkintone開発者ライセンスへの申し込みが必要となります。
スタンダードコースの詳細は、下記記事をご覧ください。
▼kintoneのスタンダードコースとは? 他のコースとの違いを解説
kintoneでの案件管理を行った事例
kintoneで案件管理を行い、業務改善につながった2つの事例を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
Excelでの案件・顧客管理から脱却
西武ライオンズ社の法人営業部では、案件情報や顧客情報がすべてExcelで管理されており、さらに個々の営業担当者で管理していたため、引継ぎや売上計上、傾向分析などにおいて大きな課題を抱えていたようです。
そこでSFAの導入を検討し、「どんな営業担当者でも使いこなせる」「自分たちでシステムをカスタマイズできる」点を重視しました。kintoneはITの素人でも直感的に操作でき、簡単に設定を変更可能な点に魅力を感じ、kintoneの導入に至りました。
kintone導入後は、案件管理・顧客情報・担当者情報・請求管理など、各種情報ごとにアプリを作成し、変更がある度にアプリの情報を更新するように運用しました。
基本的な情報に加え、取引先のキーマンの情報やどこにどのような広告を出しているのか、狙いや指向性といった詳細な情報を記録できるようになったため、営業にとっては有益な情報が蓄積されたとのことです。
メンバーの異動・退職によって引継ぎを行う際にも、kintoneのアプリを見るだけでスムーズに引継ぎができるため、かつて課題となっていた引継ぎ時の情報のロスが格段に減ったと実感されたようです。
今後は、会計システムとkintoneの連携を考えており、事務処理の負担を削減したいとのことです。ゆくゆくは、地域貢献活動を行うコミュニティーグループや、野球興行のボールパークグループなど、営業部以外での部門での課題解決に、kintoneを活用していくことを考えているようです。
非エンジニアでも手軽にアプリを作成
芙陽工業社は、紙やExcelなどによる属人的な情報管理を脱却すべく、生産管理・勤怠管理システムの導入といったデジタル化に注力していました。
しかし、営業や生産現場の情報は各部門長だけが握っている状況の中、各案件の見積り根拠や経緯の記録は営業メンバーがそれぞれ管理しており、製造の進捗は現場まで赴いて担当者に聞かないとわからないといった問題を抱えていました。
様々なツールを導入し、社内のIT化が進んだ半面、それぞれの業務に個別の仕組みを構築したことで、システム間の連携が十分に行われず業務の無駄が顕在化したそうです。そこで、注目したのがkintoneでした。
kintoneはクラウド環境で利用するため、どこでも業務を進められる点に魅力を感じたとのことです。また、手間のかかるサーバー運用管理を削減したいことも、kintoneなら可能。標準機能だけでもある程度のことができるとわかり、案件管理や工程管理のアプリを作成しました。
製造現場では、製造負荷管理アプリをはじめ、作図依頼アプリ、外注加工依頼アプリなど合計250を超えるアプリを作成。現場にあるiPadからkintoneに情報を入力することで、誰でも最新情報を確認できるようになったようです。
現場の見える化により部門間連携ミスが激減、出荷ミスがゼロになるなど、かつてのトラブルも大きく改善されました。営業側では、顧客ごとの傾向をデータから読み解き、適切な営業活動につなげるなど、kintoneの導入効果を感じているとのことです。
参照:https://kintone-sol.cybozu.co.jp/cases/fuyo-industrial.html
案件管理に役立つプラグイン
ここでは、さらに効率的な案件管理を実現するおすすめのプラグインを紹介します。
- プロジェクト管理プラグイン「KEIKAK」
- データのダッシュボード化「krewDashboard」
KEIKAKは、プロジェクトやタスクの状況を様々な視点から可視化するプラグインです。ガントチャート/カンバンボード/カレンダーの3つの形式で表示します。
「組織のすべての案件を横断的に把握したい」「案件に関する各タスクも一元管理したい」という場合は、こちらのプラグインがおすすめです。
krewDashboardは、アプリのデータを多様なグラフで可視化するプラグインです。アプリのデータが更新されると、ダッシュボードも自動的に最新情報に反映され、常に正確な情報を把握できます。
案件の進捗状況を多視点で分析し、施策検討につなげられるでしょう。
kintoneで業務改善を実現しよう
kintoneで案件管理を行うメリットや事例についてご紹介しました。
kintoneはあらゆる業務に対応しているため、アイデア次第で業務の効率化やDXの推進などを実現します。
しかし「どのようなアプリ構成にすれば業務改善につながるのか」「kintoneで業務改善できるとわかったが、自社ではどのように効率化できるのか」といったお悩みを抱えている組織も少なくないようです。
そのようなときは、サイボウズ社認定のオフィシャルパートナーに相談することをおすすめします。テクバンもkintoneオフィシャルパートナーです。kintoneの導入・開発・運用に関するサポートを行っており、お客様にとって最適なkintone環境を提供します。
関連記事をご用意しております。
▼kintone開発は外注すべき? サポート会社に依頼するケースとは
※本記事の内容は2025年11月時点のものです。kintoneの仕様や利用環境は変更する場合があります。
開発支援承ります
テクバンではkintoneの開発・伴走支援を受け付けております。日々の運用でお困りの方は以下より弊社サービスをご覧ください。
また、kintoneの標準機能に加えて、拡張機能であるプラグインを利用することで kintoneの活用の幅がより広がります。プラグイン選定から導入までサポートいたします。
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