サイボウズ社のkintone(キントーン)は、さまざまな業種・業務で使える汎用性の高い業務効率を上げるプラットフォームサービスです。とはいえ、kintoneはできることばかりではなく、できないこともあります。事前にkintoneの特徴を把握しておかないと、導入後に「改善したい業務をkintoneに組み込めない」といったトラブルが生じるかもしれません。
この記事では、kintoneができること・できないことや、具体的なメリット・デメリットを詳しく解説します。kintone導入を検討している方は、ぜひご一読ください。
kintone(キントーン)の仕組み
kintone(キントーン)は、「アプリ」と呼ばれる業務システムを組み合わせて作る仕組みです。必要なアプリを導入すれば、自社の業務を効率化・最適化できます。
kintoneアプリは、プログラミングの知識は不要で、ドラッグ&ドロップの簡単操作で作成できます。
また、さまざまな業務に活用できるアプリのひな型(テンプレート)である「サンプルアプリ」が200種類以上用意されているのも魅力のひとつです。その他、部署や業種別のサンプルアプリをまとめた「パッケージ」もあります。
kintoneのサンプルアプリについて、下記記事にて紹介していますので、ぜひご覧ください。
▼kintoneのアプリは無料で使える? おすすめのサンプルアプリをご紹介
kintoneアプリは「データベース」と「コミュニケーション」を標準機能として備えています。
データベース機能では、データの蓄積や一覧表示、検索、集計、管理が可能です。kintoneに登録された情報を利用し、レポートを自動で作成するような処理を実装したり、集計してグラフ化し、CSVファイルで出力したりすることもできます。
コミュニケーション機能は、一つひとつのレコード(アプリ内の各フィールドに入力したデータが1つにまとめられたもの)にコメントや指示を書き込めます。ユーザー同士でデータに紐づいたやりとりを行えるため、コミュニケーションの活性化にもつながるでしょう。
kintoneができること・得意なこと4つ
kintone(キントーン)ができること・得意なことは、主に次の4つに分けられます。
- 業務アプリの作成・仕様変更
- 外部サービス連携
- グループウェア機能
- マルチデバイス対応
具体的に解説します。
1.業務アプリの作成・仕様変更
kintoneは、ローコード・ノーコードで独自アプリの作成や仕様変更に対応しています。
方法は簡単で、アプリ作成画面から必要な項目をドラッグ&ドロップで設定するだけです。「アプリ作成は難しくて苦手だ」と感じる方でも、直感的な操作によってオリジナルアプリを作れるため、初心者の方にも使いやすいツールではないでしょうか。
他にも、データの管理状況や用途に応じて、次の手法でアプリの作成・カスタマイズが可能です。
- Excel(エクセル)やCSVファイルを読み込む
- 他のアプリを再利用して新たに作る
- JavaScript/CSSによるカスタマイズ
JavaScriptによるカスタマイズでできることの詳細は、こちらをぜひご覧ください。
▼kintoneでJavaScriptを活用し、さらなる業務改善へ!
2.外部サービス連携
プラグイン(拡張機能)による外部サービスとの連携は、kintoneの得意分野です。kintoneとAPI連携できるクラウドサービスは多く、100種類以上のプラグインがあります。メール送信システムや、販売管理サービスなどの多様な外部サービスに対応しています。
ただし、kintoneの外部連携プラグインは有料利用が一般的のため、導入前に利用コストを試算しておきましょう。コストはかかりますが、現在利用中の外部サービスと連携すれば、kintone上で情報を一元管理化し、業務改善につながります。
キントーンで外部サービスとの連携を行うには、スタンダードコース以上の契約が必要です。
3.グループウェア機能
kintoneは、情報共有やコミュニケーションなどのグループウェア機能が充実しています。経費の申請・承認、顧客・案件進捗の管理などを素早く情報共有することが可能です。グループウェア機能には次のようなものがあります。
- データに紐づけたコメント、メンション
- リマインド通知
- チーム単位でチャットができるスペース機能
- スペース内で話題を分けられるスレッド機能
さらに、上記のスペースには社外の人も参加できる「ゲストスペース」が実装されています。社内外を問わず円滑なやりとりが実現できるでしょう。
kintoneでの経費精算業務について、下記記事にて解説しています。
▼kintone(キントーン)で経費精算業務をシステム化する方法を解説
4.マルチデバイス対応
マルチデバイスに対応している点も、kintoneの強みです。kintoneの使用には、PCやスマホ、タブレットなどの端末による制約を受けません。WebブラウザやOSなどの動作環境を満たしていれば、さまざまなデバイスからアクセスできます。
スマホ・タブレットはWebブラウザからの利用だけでなく、モバイル専用アプリも用意されています。iOS・Androidのどちらにも対応しているため、OSの違いによる制限もありません。
kintoneができないこと・苦手なこと2つ
kintone(キントーン)は、利便性の高いソリューションです。しかし、以下2つのようにできないこと・苦手なこともあります。
- kintone自体に本格的な会計システムやSFAはない
- 大容量データの保管には向いていない
- 標準機能の出力・印刷では帳票形式に対応していない
詳しい理由を見ていきましょう。
1.kintone自体に本格的な会計システムやSFAはない
kintoneは多くの作業をシステム化できますが、あくまで業務改善プラットフォームです。
専門サービスのような特化した機能はなく、中でも会計システムやSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)としての機能は豊富ではありません。
例えば、会計ソフトに多い下記のような機能は、kintone単独での利用は未対応です。
- OCR(Optical Character Recognition/Reader:光学的文字認識)を使ったレシート読み取り機能
- 金融機関と連携した帳簿の自動仕訳、AI学習
- 電子帳簿保存法への対応
これらの機能を使うためには、一からアプリを作成し、プラグインによる外部サービスとの連携が必須です。プラグインを利用するには別途料金が発生します。kintoneに本格的な会計機能をつけるには、有料の外部連携が前提となる点を理解しておきましょう。
SFAとして多くの企業で利用されているセールスフォース社の「Salesforce」は、営業活動や顧客情報管理に役立つ豊富な機能を備えるサービスです。
Salesforceは導入すればすぐに使い始められる点が魅力であるのに対し、kintoneはアプリの作成やプラグインの導入など、営業管理・顧客管理システムを構築し始めることからスタートしなければなりません。SFA目的でkintoneを導入するとなると、システム構築の期間が必要となります。
kintoneとSalesforceの比較について、関連記事や資料を用意していますので併せてご覧ください。
▼Salesforceとkintoneどちらを選ぶ? おすすめの利用シーンも解説
【事例】Salesforceからkintoneへ移行。費用対効果を高めるSFAをkintoneで自由に構築
2.大容量データの保管には向いていない
kintoneで保管できるデータ容量は多くなく、ディスク容量の上限は1ユーザーにつき5GBまでです。上限を超えると通知メールが届き、一定期間を超えても対応しないと利用を停止される場合があります。
また、添付ファイルの容量制限は1GBです。kintoneに蓄積する情報は業務で用いるデータにとどめ、大容量データの保存・共有はオンラインストレージやファイル転送サービスの利用をおすすめします。
関連記事をご用意しています。
▼kintoneのディスク容量オーバーを回避する方法
3.標準機能の出力・印刷では帳票形式に対応していない
帳票出力については、kintoneの苦手なことのひとつです。
標準機能でレコードを印刷することは可能ですが、これはレコード詳細画面をそのまま印刷するイメージであり、取引先と交わす見積書や請求書、契約書といった帳票形式の印刷に適していません。
kintoneの帳票出力について、便利な機能を豊富に備え、帳票の出力機能を向上させるプラグインがいくつか提供されています。おすすめのプラグインを下記記事にて解説していますので、ぜひご参考にしてください。
▼プリントクリエイターでkintoneの帳票印刷をラクにしよう!
kintoneを導入するメリット3つ
kintone(キントーン)を導入すると、次の3つのメリットを得られます。
- スムーズな情報共有
- 利用する場所や時間を問わない
- 導入・運用サポートが充実
順番に説明します。
1.スムーズな情報共有
kintoneは、情報共有・管理に役立つ機能が豊富です。スペース機能を用いれば、スピーディーな情報確認とコミュニケーションを行えます。データに対して直接アドバイスや質問などのコメントをつけられるため、他のツールを介する必要がありません。
また、登録されたデータの全文検索にも対応しています。アプリのデータ、スペースの投稿、ユーザープロフィールから検索結果が表示され、必要な情報へすぐにたどり着けます。検索範囲の絞り込みも可能です。
kintoneを活用すれば、情報の共有・確認・管理がスムーズになるでしょう。
2.利用する場所や時間を問わない
kintoneはクラウドサービスのため、インターネットにアクセスできる環境があれば利用する場所や時間を問いません。マルチデバイス対応のため、端末の制限もなく使えます。
外出先や自宅、移動中にシステムへアクセスできるため、いつ・どんな場所でも承認・申請作業を行うことが可能です。
さらに、リモートワークへの移行も容易になります。在宅勤務を導入する際の課題として、タスク管理やコミュニケーションの難しさがあります。
そうした課題を解決する手段に「ICT(Information and Communication Technology)ツールの導入」がありますが、kintoneがあれば対応可能です。ICTツールの中心となるコミュニケーションツールや、進捗管理・情報共有に役立つアプリを備えているからです。どこでも利用できるkintoneは、柔軟な働き方の実現手段として活躍します。
3.導入・運用サポートが充実
kintoneならではのメリットとして挙げられるポイントが、充実したサポート体制です。専門スタッフによる「キントーンオンライン相談」や各種セミナー・イベントを実施しており、導入前からの支援体制が整っています。
オンライン相談の利用は、Webフォームから申し込みが必要です。
他にも、kintoneオフィシャルパートナーへの相談窓口が用意されています。アプリの設計・開発、導入環境の構築、運用定着支援などの依頼が可能です。さまざまな角度からサポートを受けられるため、IT関連のノウハウが少ない会社でも安心してkintoneを導入できます。
kintoneを導入するデメリットと対策3つ
kintone(キントーン)はメリットばかりではなく、次のような3つのデメリットも存在します。事前にデメリットへの対策を講じておきましょう。
- アプリの乱立
- 有料プラグインの費用負担
- 不適切な設計によるリスク
それぞれ、対策方法と併せて紹介します。
1.アプリの乱立
kintoneは誰でも簡単にアプリを作れるため、アプリが乱立する恐れがあります。例えば、案件・進捗管理などの情報を扱うアプリを、いくつも作ってしまい混乱するかもしれません。管理ツールが乱立すると使い勝手が悪くなり、業務効率の悪化や伝達ミス、入力漏れが生じるリスクが高まります。
kintoneのアプリはむやみに量産せず、担当者に任せることが大切です。あるいは、アプリ作成の全体ルールを作って周知を徹底しましょう。必要なアプリのみをそろえ、メンバー全員が運用しやすいシンプルなkintone構造を目指しましょう。
2.有料プラグインの費用負担
有料プラグインを数多く導入すると、費用負担が重くなります。
kintoneの役割は業務改善プラットフォームです。専門機能は外部サービスのほうが豊富なため、必要に応じてプラグインを追加することになれば、当然ながらプラグインの数が増えるほどコストは増大します。
有料プラグインを追加する前に、本当にkintoneと連携する必要があるのか検討しましょう。kintoneに集約する必然性がない業務は、その業務だけを行う専門システム内で完結させたほうがコストの節約になります。
予算の都合も考えつつ、kintoneで行うと効率が上がる業務とそうでない業務を洗い出してみてください。
また、プラグイン同士が競合し、不具合を起こす恐れもあります。プラグイン導入の際は、必ずテスト環境で検証し、動作に問題がないか確認してから導入しましょう。
3.不適切な設計によるリスク
kintoneを利用する上で気を付けてほしいのが、不適切な設計によって生じるリスクです。
kintoneは自由にアプリ作成や無料プラグインの追加を行えますが、専門的な開発知識がないと「この状態は適切な設計なのか」を判断できません。そのため、気付かないうちに不適切な設計になってしまう可能性があります。
例えば、情報を参照できなくなったり、kintoneアプリ間の連携ができなくなったりする問題が生じる可能性があります。また、追加した無料プラグインの更新・改修が行われず、ぜい弱性のリスクが生まれる恐れもあります。こうしたトラブルを回避するためには、システム全体の管理・定期メンテナンスが欠かせません。
社内にノウハウがないのであれば、kintone公認カスタマイズサービスの開発・運用サポートがおすすめです。専門家によるアプリの仕様設計・見直し、メンテナンスを依頼できるため、より専門的にkintoneをカスタマイズして活用したり、セキュリティを強化したりすることが可能です。
kintoneのセキュリティについて、下記記事にて解説しています。
▼kintoneのセキュリティは安心? 製品の各種機能と設定を解説
kintoneが向いている・向いていないケースとは
ここまでご紹介したkintoneの特徴をもとに、kintone導入が向いているケース・向いていないケースを紹介します。
導入検討中の方は、判断材料のひとつとしてお役立てください。
kintone導入が向いているケース
kintone導入が向いているのは、以下のいずれかに当てはまるケースです。
- 複数のシステムで行っている業務や部署間をまたぐ業務をまとめたい
- ひとつのプラットフォーム上で情報共有をしたい
- アナログ業務やExcel管理から脱却したい
- ランニングコストを抑えたい
kintoneは、複数の業務や付随する情報共有の一元化が得意です。作業ごとに他のツールに切り替える手間が省けるため、業務全体のスピードアップが図れます。
導入コストが比較的低いため、システム関連のコストを削減したい場合にもおすすめです。
kintone導入が向いていないケース
下記のいずれかに当てはまるのであれば、kintone導入は不向きといえます。
- 専門システムの機能で充分足りている
- 専門システム並みの機能がほしい
- アプリの構築をしたくない、わからない
- 多数の有料プラグインが必要
kintoneはさまざまな機能を組み合わせて使うため、そもそも多くの機能を求めていない場合はコストパフォーマンスが良くありません。反対に、専門システムと同一の機能を期待しても、kintone単独で実現するのは困難です。有料プラグインを追加すれば、ある程度の機能を備えられますが、別途コストが生じます。
なお、向いていないケースに当てはまる場合でも、kintoneのオフィシャルパートナーに相談すれば、導入時の問題を解決してくれるでしょう。お悩みの方は、相談を検討してみてはいかがでしょうか。
▼kintoneのパートナー企業を活用してみよう!
できること・できないことの理解が大事
kintone(キントーン)はできることが多い便利なサービスですが、大容量データの保存と専門機能の単独実装は苦手としています。kintone は、できること・できないことを理解した上で導入しましょう。
導入する際は、オフィシャルパートナーに相談すると導入から運用までトータルの支援を受けられます。kintone導入に関して不安がある方は、kintoneオフィシャルパートナーであるテクバンへの問い合わせもご検討ください。
※本記事の内容は2024年12月時点のものです。kintoneの仕様や利用環境は変更する場合があります。
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テクバンではkintoneの開発支援を受け付けております。日々の運用でお困りの方は以下より弊社サービスをご覧ください。
また、kintoneの標準機能に加えて、拡張機能であるプラグインを利用することで kintoneの活用の幅がより広がります。プラグイン選定から導入までサポートいたします。
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