Power Appsとは、マイクロソフト社が提供するプログラミングの知識がなくても業務アプリを作成できるクラウドサービスです。
ローコードでアプリを作成できるため、専門的な開発言語や開発ツールは必要ありません。Excelの関数が使える程度の知識があれば、システムエンジニアでなくても、担当者自身で業務のニーズに合ったアプリを作成できます。
Power Appsで作成したアプリは、WindowsとMac、iOSとAndroidに対応しているため、使用する環境ごとにアプリを作り直す手間はかかりません。作成後のアプリを編集したり、機能を追加したりすることも容易で、面倒な作りこみも省ける便利なツールです。
Power Appsは、統合プラットフォーム「Microsoft Power Platform」のサービスの1つでもあります。Power Platformについては、次項で解説いたします。
Power Platformとは、マイクロソフト社が提供しているクラウドサービスで、データの分析やビジネスアプリを構築・運用するためのプラットフォームです。本記事で紹介しているPower Appsを含む主に5つのサービスから構成されています。以下で各サービスについて解説します。
こうしたPower Platformのサービスと連動させることで、定型業務の自動化やデータ分析などが可能です。例えば、Power Appsから入力したデータをPower Automateのフローから自動でTeamsに投稿したり、Power Appsで登録したデータをPower BIで集計・グラフ化したりできます。
Power Platformについては、以下記事でも詳しく解説しています。
▼Power Platformとは? 業務改善ツールとして注目されている理由
▼Power Platform(パワープラットフォーム)の機能とメリットを解説
▼【導入事例】Microsoft Power Platform|システム活用の効果とは
開発ツールとの大きな違いは、Power Appsがアプリを「開発」するのではなく、「作成」するツールということです。
一般的にアプリ開発というと、プログラミング言語の知識や高度なスキルを有するエンジニアがプログラミングして開発するものです。しかし、開発ツールごとに開発言語が異なるため、専門技術を持ったエンジニアでなければアプリを開発できないという課題がありました。
対してPower Appsは、「作成ツール」のため、複雑なプログラミングは不要でエンジニアでなくてもアプリを作成できます。編集画面からアプリに表示させるパーツを選んで配置したり、必要なデータを別システムから連携させたりと、初心者でも簡単に設定できるようになっています。直感的なクリック操作、Excel感覚で関数を入力するだけで作成可能という手軽さが開発ツールとの違いです。
Power Appsには、作成できるアプリが3種類あります。それぞれレイアウトの自由度や特徴が異なるため、各アプリについて以下で解説します。
- モデル駆動型アプリ
モデル駆動型アプリは画面のパターンがあらかじめ用意されているため、レイアウトの自由度はあまり高くありません。大量の数字やデータ管理に適しているため、主にダッシュボードに活用されることが多いです。キャンバスアプリで作りこみが複雑になった場合や、業務のモデルが明確でPower Appsを業務システムとして活用したいケースにおすすめです。
システム構築の難易度が高いため、しっかり構築する分、保守性が高いとされています。
- キャンバスアプリ
Power Appsといえばキャンバスアプリのイメージが強い方も多いでしょう。デザイン性があり自由度の高いレイアウトが可能です。PowerPointのようなドラッグ&ドロップのマウス操作や、Excelのように関数を活用するだけで作成できます。
モデル駆動型アプリよりも敷居が低く、システム構築経験がない人でも手軽にアプリを作成できます。しかし、ライトに構築した分保守性に課題がでるとされています。
- ポータル
フォームやビューなど、デフォルトで用意されている機能を組み合わせることでWebサイトを手軽に作成できます。キャンバスアプリと同じように、ローコードでページやコンテンツ作成が可能です。また、社内だけでなく、社外のユーザーにも公開可能なWebサイトを作成できるため情報共有に役立ちます。組織の内外に公開可能な高度なWebサイトの構築・管理を実現できます。
Power Appsではアプリ作成が容易になる、コストがかからないなど様々なメリットがあります。以下では、4つのメリットを紹介します。
通常のアプリ開発では自社での作成が難しいため、外部へ依頼する方が多いでしょう。
開発を依頼すると要件定義、開発、開発中の調整、テストという工程が発生し、数か月単位の期間が必要になります。開発工程中には何度も調整や修正が発生し、加えてアプリ完成後も、業務内容に変更があれば修正の要件定義、開発、テストを繰り返すため非常に時間と手間がかかってしまうのです。
さらに、開発費や外注先の管理にコストがかかることから費用面も課題となっていました。
そこでPower Appsを使用すれば、低コストかつ短期間でアプリの作成が可能です。自社で作成するため開発費がかからず、現場主導で必要なアプリを作成しすぐに運用を開始できます。
また、アプリ作成後も現場で柔軟に修正でき、業務担当者だけでアプリを改善していけるため最終的に業務ニーズに適した満足度の高いアプリを完成させられるのです。
アプリ開発を外部に委託すれば、企業の情報を提供する必要があります。そのため企業の機密情報の漏えいや、悪用などセキュリティリスクが高まるのです。
しかし、Power Appsでアプリを作成する場合は、Test Studioという機能でテストケースを作成して自動でテストが実行できるため、外部に自社のデータを渡す必要はありません。そのため、外部に委託する場合よりもPower Appsを使い自社で作成した方が、セキュリティリスクを回避できます。
Power Appsは、Web上で動作するツールのため、Webブラウザ上でアプリ作成が完結します。専用の開発環境を用意する必要もなく、開発PCのOSに制限もありません。普段使っているWebブラウザであれば作成できますが、EdgeやChromeが推奨環境とされています。
Power Appsは、SharePoint、Office 365、Dynamics 365などMicrosoftサービスと簡単に連携できます。Power Appsには、コネクタと呼ばれるインターフェースがあり、それを利用することで既存のMicrosoftサービスとの連携が可能になります。
他にも、GoogleスプレッドシートやGmail、Google Taskなど外部サービスとも連携も可能で、様々なサービスと連携するためのコネクタが用意されています。
Power Appsは、これまで紹介してきたように多くのメリットがある便利なツールです。しかし、そのようなPower Appsでも注意点があります。以下に注意点をまとめました。
外部のユーザーは、Power Appsで作成したアプリにアクセスできません。Power Appsで作成したアプリはクラウド上で動作するため、クラウドへのアクセスができなければ使用できないのです。外部のユーザーにアクセス権を与えアプリを使用できる状態にもできますが、それではセキュリティリスクが高まります。
そのため、Power Appsでアプリを作成する場合は、外部の人が関わるような業務には使用せず、社内向けのアプリに活用した方がよいでしょう。
Power Appsで、プログラミング言語を用いた一般的なアプリ開発ほど複雑なシステムの構築は難しいでしょう。そのためHTMLやCSSを使ったアプリに比べ、細かいカスタマイズができずデザインの自由度が高くありません。凝った作りにはできないため、社内向けのアプリといえます。
Power Appsは誰でも簡単にアプリを作成できるといっても、ある程度必要な知識があります。専門的なプログラミング言語の知識は必要ありませんが、Excel関数の知識やOfficeソフトウェアの操作知識は必要です。加えて、要件定義や設計は自身で行う必要があるため、実現したい業務プロセスに対する理解や、データの連携に関する知識があるとよいでしょう。
より良いアプリを作成するためには、プログラミングの知識ではなく、プログラミング的思考がある程度必要になるため注意が必要です。
Power Appsはすべてのプランで利用できるわけではありません。特定のプランに加入している場合、Power Appsを無料で利用してアプリの作成ができます。対象となるプラン一覧を以下の表にまとめました。
Dynamics 365プラン
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- Dynamics 365 Sales Enterprise
- Dynamics 365 Sales Premium
- Microsoft Relationship Sales
- Dynamics 365 Customer Service Enterprise
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Microsoft 365/Office 365プラン
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- Microsoft 365 E3/E5/F3
- Office 365 E1/E3/E5/F3
- Office 365 A1/A3/A5
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上記プランを契約していない場合は、スタンドアロンサービスを契約することでPower Appsの利用が可能です。
ライセンスに関する詳しい情報は以下をご参考にしてください。
Microsoft Power Platformライセンスの概要
※本記事の内容は2023年2月時点のものです。Microsoft製品の仕様や利用環境は変更する場合があります。