では、早速 Power Apps を使って在庫管理アプリを作成する方法を紹介します。
Power Apps の主要作成フォームには「キャンバス アプリ」「モデル駆動型アプリ」「ポータル」「Microsoft Dataverse」の4つがありますが、今回は最もシンプルなキャンバス アプリでアプリ作成する手順を紹介します。キャンバス アプリは様々なデータソースからデータを取り込み、キャンバスに絵を描くようにグラフィカルなアプリ設計が可能です。
既存の Excel で作成された在庫管理表を Power Apps に取り込む方法をこの後に説明してますが、Excel 以外で在庫管理を行っている場合には、Power Apps の「Inventry Management」という在庫管理用アプリテンプレートを利用した作成方法もあります。
まずExcelをPower Appsに取り込むために、管理物品一覧をリスト化したデータのテーブル化を行います。これはテーブル化を行う範囲を選択した状態で[挿入]タブの[テーブル]を選択して実施できます。
Excelのテーブル化ができたら、Power Appsにサインインし、取り込み元のアプリであるホーム画面のExcelをクリックします。
取り込む在庫管理表のデータが保存されているサービスを選択します。今回はGoogle Driveを利用していますが、OneDriveやDropboxなどのサービスからも取り込み可能です。
取り込む在庫管理表のファイルおよびテーブルを選択します。この時にテーブル欄に何も表示されていなければ、テーブル化に失敗していますので在庫管理表のテーブル化設定を再確認しましょう。
データの取り込みが完了すると、在庫管理アプリができあがります。
かなりシンプルなアプリですが、ものの数分で在庫管理アプリが作成できます。トップに表示する情報や詳細画面の項目順、入力項目の追加などはカスタマイズ可能です。もちろんシステム間の連携や高度なカスタマイズも可能なため、お好みのアプリを作成できます。2022年5月現在、マイクロソフトブログの記事でPower Appsの様々なナレッジ情報が公開されていますので、作成時に参考にしてみると良いでしょう。
Microsoft Power Apps公式ブログはこちら
ご紹介したような手順で簡単に在庫管理アプリを作成することができるPower Appsですが、実際に在庫管理業務をPower Appsへ移行すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に解説します。
繰り返しになりますが、Power Appsでのアプリ作成は従来のプログラミングのような専門性が必須ではありません。非IT部門でも現場ごとに簡単にアプリ作成ができます。
開発と利用部門が別の場合、現場が求める機能要件をすり合わせるのに時間がかかり、認識のズレも生まれやすくなります。実際に利用する部門でアプリを作成したほうが、より効果的なアプリができあがるでしょう。
在庫管理システムをイチから構築しようとすると、アプリの作成や関連システムとの連携などが必要になります。アプリ開発をアウトソーシングする場合、要件定義や詳細設計、テスト、リリースなどといった流れで作成が進みますが、完了までに小規模なものでも数か月程度は見積もっておく必要があります。自社でアプリを内製する場合も開発環境の準備を考えれば、1か月程度は見積もっておく必要があるでしょう。コスト面においても、外注の場合は依頼費用、内製の場合は環境構築費用がかかります。
一方、Power Appsはライセンス契約後すぐにアプリ作成が可能で、簡単なアプリであれば1日で作成できます。コスト面においても、依頼費用や環境構築費用と比べて低コストで利用できます。導入までのリードタイムやコストを抑えたアプリ作成にはPower Appsの利用がおすすめです。
現在、在庫管理業務をExcelで行っている方は多くいらっしゃるでしょう。Power AppsはExcelなどマイクロソフト製品と親和性が高く、データの移行がスムーズです。また、アプリの作成にはExcelで使い慣れた関数の大部分を利用できます。Excelで在庫管理業務を行っている場合には、特にPower Appsへの移行がおすすめです。
Power Appsはマイクロソフト製品との連携が非常に便利です。例えば、「Microsoft Power Automate」と連携すれば、在庫数が一定以下になった場合に自動でメール通知や発注処理を行えます。また、在庫数に変動があった際に「Microsoft Teams」に通知を送り、メンバー内で共有できます。その他にもマイクロソフト製品との連携で様々な使い方ができるため、より効率的な在庫管理ができるようになるでしょう。
Power Appsでうまく在庫管理を行うための3つのポイントを解説します。
先述しましたが、Power Appsはマイクロソフト製品との連携することで、より利便性の高いアプリを作成できます。Power Automateによる自動化の他に、「Microsoft Power BI」や「Microsoft Dynamics 365」と連携すれば、在庫の変動推移を可視化し、今後の在庫予測や変動要因の分析などができるようになります。Power Apps自体、非常に強力なツールですが、在庫管理業務の効率化や生産性向上を図るために、マイクロソフト製品との連携を検討すると良いでしょう。
Power Appsは非IT部門でもアプリ作成が行える分、管理がブラックボックス化しやすいというデメリットがあります。VBA(Visual Basic for Applications)で作成したプログラムが管理者の不在によりメンテナンスできなくなってしまったという経験をお持ちの方も多くいらっしゃるでしょう。Power Appsも同様の状況に陥りかねません。放置されたアプリには、管理上の問題だけでなくセキュリティ上の問題も発生します。
管理のブラックボックス化を防ぐために、アプリの管理ルールを整備しましょう。作成者の退職後や長期休暇時でもアプリのメンテナンスができるよう、管理担当者を決め、ドキュメント整備など適切な引き継ぎがなされるような仕組みの構築が必要です。
Power Appsは非IT部門でも簡単にアプリ作成が行えるツールですが、複雑な機能の実装や高度なシステム連携を行うためには、ある程度のITの知識やリテラシーが必要です。システム連携などを考慮せずに場当たり的にアプリ作成を行うと、管理のブラックボックス化を誘発しかねません。自社の環境に合わせた最適なアプリを作成し、システム連携を行うためには、支援サービスの利用を適宜検討すると良いでしょう。支援サービスを行うITの専門家に相談することで、より効果的なPower Appsの利用ができる可能性が高まります。例えば、マイクロソフト社公認のパートナー企業への相談がおすすめです。テクバンも技術力を誇る経験豊富なパートナー企業です。ぜひ一度お問い合わせください。
※本記事の内容は2022年8月時点のものです。Microsoft製品の仕様や利用環境は変更する場合があります