受注・発注業務は機会損失や過剰在庫を防ぐ重要なものです。しかし、手作業でアナログ管理すると、どうしてもミスが発生します。受発注管理システムの導入を考えても、どこに開発を依頼すればいいかわからない、依頼するだけの予算がないという企業も多いでしょう。
そこでおすすめなのが、「kintone(キントーン)」による受発注管理です。
本記事では、kintoneによる受注・発注管理方法がどんなものか、メリット・デメリット、販売管理システムとの連携についてご紹介します。この機会に、ぜひ受発注管理の仕組みを見直してみてください。
kintoneで行える受注・発注管理業務は?
kintoneは、従来のアプリ開発では必須だったプログラミングといった特別なITスキルや知識がなくても、簡単に業務用の「アプリ」を開発できるローコード・ノーコード開発ツールです。
kintoneがあれば、業務の利用シーンに合わせて柔軟な受注・発注管理アプリの導入が実現します。さらに、kintoneは政府のセキュリティ基準を満たしており、サイボウズ社が提供するクラウドサービスとして多くの企業に導入されています。
kintoneのセキュリティについて、下記記事にて解説しています。
▼kintoneのセキュリティは安心? 製品の各種機能と設定を解説
kintoneの受注・発注管理アプリで実行できる業務の例としては、以下が挙げられます。
- 受注・発注先および受注・発注品目のデータベース管理
- データベースを基にした受注・発注書の作成
- 受注・発注情報の集計
kintoneには、アプリ間のデータ連携機能があり、よく利用する発注情報をまとめてデータベース管理することが可能です。スムーズな発注書の作成が可能となり、また、受注・発注情報はリアルタイムに集計してグラフ化できるため、発注の分析や見直しに役立ちます。
アプリ連携機能については、下記記事をご覧ください。
▼kintoneのアプリ間連携を活用して業務効率化を実現しよう

Excelでの受注・発注管理の問題点
受発注管理にExcel(エクセル)を利用している企業もありますが、Excelでの受発注管理には以下のような問題点があります。
- 共同編集がしにくい
- ファイル管理が属人化しやすい
- バージョン管理や復元がしにくい
共同編集がしにくい
Excelはデフォルト設定では共同編集ができず、誰かがファイルを開いている際に別のユーザーがファイルを開くと読み取り専用になるため、個別で共同編集ができるように設定が必要になります。また、社内だけでなく社外から編集を行いたいという事例では、OneDriveにファイルをアップロードするなど、クラウド上での共有方法を検討する必要があります。
加えて、共同編集ができるように環境を整えた後も、ユーザーの誤操作によりファイルが破損するリスクへの対策が必要です。Excelによる管理では、誤って関数が入っているセルに情報を入力してしまう、入力欄外のセルに情報を入力してマクロが壊れてしまうなど、人為的なミスが発生しがちです。
Excelで共同編集を行う場合には、共同編集が行える環境準備と誤操作対策が必要になる点が課題といえるでしょう。

ファイル管理が属人化しやすい
Excelは多くの企業で使われており、使用に慣れているユーザーが多いものの、関数やマクロの知識が十分というユーザーは多くないでしょう。Excelファイルに関数やマクロを使用して自動集計や帳票出力機能などをつけている場合、メンテナンスできる人材が限られてしまい、管理が属人化しやすくなります。
管理者の休暇や退職などがあると、ファイルのメンテナンスができなくなるリスクがある点には注意が必要です。また、バージョンのアップデートにより、マクロが正常に動作しなくなるリスクがあり、管理が難しい点も課題といえるでしょう。
また、Excelファイル自体の管理も煩雑になりやすいです。
バージョン管理や復元がしにくい
Excelは、デフォルトの状態だと変更履歴を記録する機能が有効化されていないため、変更履歴を管理しようとすると個別に設定が必要になります。Googleスプレッドシートのような、変更履歴を記録する機能のプレビュー版が展開されているため、今後機能が実装される可能性はありますが、現時点では変更履歴の管理がしにくい点が課題といえるでしょう。
また、ファイルを更新する際に別ファイルとして保存する場合には、どれが最新のファイルかわかりにくくなるという点もデメリットです。最新のファイルを保存する場合の命名規則や古いファイルをどこに格納するかのルール決めなど、運用面での対策が必要になるでしょう。
kintoneはExcelと簡単に連携も可能です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
▼ kintoneのExcel連携方法は? 事例や拡張機能をご紹介
kintoneで受発注管理を行うメリット
Excelでの受発注管理に比べ、kintoneを活用することで得られるメリットを紹介します。
- 誰でもメンテナンスや管理がしやすい
- 脱Excelでバージョン管理や復元がしやすい
- 多様なシステムと連携しやすい
誰でもメンテナンスや管理がしやすい
繰り返しますが、kintoneは専門的な知識がなくても、誰でも簡単に業務に合わせたアプリを作成できます。基礎的な使い方やExcelライクな関数のノウハウなどは必要になりますが、基本的なアプリであればすぐに作成できるようになるでしょう。
また、すべての情報がkintoneアプリに集約されることにより、情報を探す際もスムーズです。過去の受注内容を検索したり、過去の発注を複製したりすることが可能なため、作業効率の向上を期待できます。
情報が複数のアプリに分かれていたとしても、「ルックアップ」機能で他のアプリから情報を参照することが可能です。手入力で転記する手間が省け、正しい情報を自動で反映します。
ルックアップについては、下記記事をご覧ください。
▼kintoneのルックアップ機能とは? 使い方や利用メリットを紹介
脱Excelでバージョン管理や復元がしやすい
kintoneアプリで受注・発注管理を行えば、ユーザーは指定された項目をフォームに入力する操作だけになるため、Excelでの課題となっていた関数セルの上書きやマクロの動作不具合などによるトラブルを防げます。意図しない操作でファイルが破損するリスクがなくなり、安定して運用できるでしょう。
また、kintoneのアプリは、アプリの変更日時や変更者、変更内容などが自動でレコードとして保存されるようになっています。レコードを見れば、どのタイミングで誤った変更が行われたのか確認でき、すぐに変更前のバージョンに復元することも可能です。Excelよりもバージョン管理が容易、かつ自動で変更履歴を残せる点もメリットです。
さらに、レコード詳細画面にはコメント機能があり、チャット形式でコミュニケーションをとることも可能です。データに紐づいたコミュニケーションを行えるため、見落としや確認漏れを防げるでしょう。
多様なシステムと連携しやすい
kintoneには機能を拡張する様々なプラグインが提供されており、kintoneアプリで行える業務の幅を広げます。また、kintoneはビジネスチャットツールやクラウドストレージなど多様なシステムと連携でき、プラグインや外部システムとの連携を活用すれば、業務の自動化や情報の一元管理を実現します。
例えば、作成した発注書を発注先にメールで自動送信する、発注書の内容をチャットツールに自動送信してチーム内に共有する、発注書をクラウドストレージに自動保存するということも可能です。アイデア次第で様々な業務フローを自動化し、定型業務にかける時間を削減できます。
既に導入しているクラウドシステムやツールがあれば、kintoneとの連携をおすすめします。
関連記事をご用意しております。
▼kintoneのAPI機能で外部システムと連携する
kintoneで発注管理を行うデメリット
kintoneによる発注管理で得られるメリットは大きいですが、以下のようなデメリットが発生する点も認識しておきましょう。
- コストがかかる
- Excelと比べるとナレッジが少ない
- 高度な利用には専門性が求められる
コストがかかる
kintoneの利用には、ユーザーごとの月額費用がかかります。加えて、有料のプラグインを利用する場合には、その分の費用もかかります。Office製品を既に導入している企業は、Excelで発注管理を行えばコストを最小限にできるでしょう。
しかし、kintoneでの発注管理は、ユーザー数が増えるほどコストがかさんでしまう点はデメリットといえます。
こういったデメリットを抑えるためには、kintoneの利用範囲を決めるなどの工夫が重要です。Excelなどのツールと比べて、追加でかかるコストと導入による業務効率化・生産性向上効果のパフォーマンスを考えて導入を検討すると良いでしょう。
まずはスモールスタートで導入し、導入効果を検証してから本格的な導入を行うのがおすすめです。
kintoneの費用について、下記記事をご参考にしてください。
kintoneの料金は高い? プラン別費用について解説
Excelと比べるとナレッジが少ない
Excelは、kintoneが登場する以前から多くの企業の業務で利用されていることから、インターネット上に関数やマクロの作り方、トラブルの対処方法など様々なナレッジが公開されています。Excelに比べてkintoneは公開されている情報が少ないため、困った時に自己解決が難しい場合がある点はデメリットといえます。
ただし、基本的な使い方であればマニュアルが用意されており、kintoneユーザーのコミュニティも役立つでしょう。
kintoneユーザー向けオンラインコミュニティ「キンコミ」
さらに、サイボウズ社のサポートを受けることも可能です。もしサポートの範囲内で解決が難しければ、kintone活用をサポートするサイボウズ社公認のパートナー企業への相談もおすすめです。
テクバンもサイボウズ社公認のパートナー企業であり、お客様のお困りごとに対し、解決するまで丁寧にサポートしております。詳しくはこちらをご覧ください。
テクバンのkintone導入・開発支援サービスとは?
高度な利用には専門性が求められる
単純な受注・発注管理アプリのみであれば開発は簡単ですが、業務フローの自動化や効率化のために高度なシステム連携などをしようとすると、プログラミングをはじめとする専門的な知識が必要です。エンジニアを用意するか、専門企業に相談することになります。
しかし、昨今のIT人材不足を考えると、エンジニアを早急に用意できないケースも多いでしょう。その場合、専門企業に相談する必要がありますが、その分のコストがかかります。コスト分の成果を得るためには、専門性が高く信頼できる企業に相談することが重要です。
例えば、サイボウズ社が公認したパートナー企業なら、専門性と信頼性が担保されているといえます。判断材料のひとつとして認定パートナー企業であるか調べてみると良いでしょう。
kintoneで受注・発注管理を行う方法と注意点
kintoneで受注・発注管理を行う方法と、その際の注意点について解説します。
受注・発注管理を行うための準備
kintoneで受注・発注管理を行えるようにするには、以下の手順に沿ってアプリの作成が必要です。
- マスタアプリを作成
- 受注・発注管理アプリに必要な項目を設定
- 受注・発注管理アプリにマスタアプリの情報を紐づけ
手順1の「マスタアプリ」には、受注・発注の際に参照する基本情報(顧客・製品情報など)をすべて登録します。マスタアプリは複数のアプリで参照するケースが多いため、あらかじめ作っておくと便利です。
手順2の「受注・発注管理アプリ」は1つのアプリにまとめても、受注管理アプリ・発注管理アプリと分けて作成しても構いません。都合の良い方でアプリを作成してください。
基本的な項目は、受注・発注番号/受注・発注日/取引先名/商品名/数量/金額/納期/ステータス(連絡待ち、出荷待ち、出荷済みなど)です。必要に応じてフィールドの追加や変更をしましょう。
また、数量と単価から合計金額を自動算出する設定や、入力必須項目の設定なども可能です。入力漏れや計算ミスを防げるため、入力データの精度を高められるでしょう。
関連記事をご用意しております。
▼kintone計算式の設定|使い方・関数一覧・利用シーンを紹介
手順3の受注・発注管理アプリとマスタアプリの紐づけは、先述した「ルックアップ」機能を利用します。例えば、マスタとして顧客管理アプリがあれば、顧客管理アプリから情報を参照して受注・発注管理アプリの「取引先名」のフィールドに自動で転記します。また、案件管理アプリから案件名をルックアップしても良いでしょう。
ルックアップできる項目は、積極的にルックアップの設定をしてみてください。
kintoneで受注・発注管理を行う際の注意点
kintoneで受注・発注管理を行う際は、以下の点にご注意ください。
- アプリの担当者・管理ルールを決めておく
- 有料プラグインの利用や専門会社への相談を検討する
マスタからのデータ参照は、入力作業の効率化やミス防止にメリットがありますが、マスタが適切に管理されていなければ、デメリットの元にもなります。特に、アプリの担当者・管理ルールが定まっていないと、おのおのがマスタ情報を更新する、データの参照先を変更するなどが原因となり、データの不整合が生まれやすくなるでしょう。
アプリの乱立などの原因にもなるため、アプリの担当者・管理ルールを明確化しておくことが大切です。
有料プラグインの利用やkintoneの運用支援を行う専門会社への相談は、コストがかかるため避けたくなるものですが、これらを活用することで、より大きな業務効率化・自動化効果を得られます。適宜有料プラグインの利用や専門会社への相談を行い、より自社の業務に最適化した運用を行えるようにするといいでしょう。
kintoneアプリと販売管理システムの連携
kintoneの利用により、簡単かつ効率的な受注・発注管理を行えるようになりますが、さらに販売管理システムと連携させ、受注から入出金など販売業務全体をシステム化するとシナジー効果が高まり、様々な業務の自動化・効率化を実現します。
例えば、販売管理のデータをkintoneに自動登録し、部門や製品、顧客ごとなど細かいデータ集計・分析が可能になります。また、入金や発注期日などのアラート管理や、通年での販売量の可視化なども可能です。簡単な操作で販売データの見える化とレポートの作成にも対応しているため、経営的な改善も行いやすくなるでしょう。
さらに、販売管理システムは請求書の作成・送付に関する機能を備えているものも多いです。kintoneと連携すれば、受注から発注、請求書の送付まで一貫して行うことが可能となるため、作業時間を大幅に削減できるでしょう。
kintoneによる販売管理については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
▼kintoneの標準機能で販売管理ができない理由と解決方法を紹介

kintoneで効率的な発注管理を実現しよう
kintoneを利用すれば、現場に合わせた柔軟な受注・発注管理アプリを簡単に作成できます。さらに、拡張プラグインの利用や外部システムとの連携により、業務の効率化や自動化を実現します。
テクバンでは、kintoneの幅広い導入・開発支援サービスを提供しています。kintoneと販売管理システムの連携サポートも実施しており、販売管理業務を改善したいとお考えのお客様はぜひ一度ご相談ください。
テクバンのkintone導入・開発支援サービスとは?
さらに、kintoneの開発やカスタマイズ、導入を考えるための資料を豊富にご用意しております。ぜひご覧ください。
kintoneのお役立ち資料
※本記事の内容は2025年6月時点のものです。kintoneの仕様や利用環境は変更する場合があります。
開発支援承ります
テクバンではkintoneの開発支援を受け付けております。日々の運用でお困りの方は以下より弊社サービスをご覧ください。
また、kintoneの標準機能に加えて、拡張機能であるプラグインを利用することで kintoneの活用の幅がより広がります。プラグイン選定から導入までサポートいたします。
kintone開発支援サービス
kintoneプラグイン