Power BI を導入する効果は?
マイクロソフト社のBIツール「Power BI」の導入を検討している場合、実際にどのような成果や効果があるのか気になるところです。
そこで、国内外で Power BI を導入した企業の事例と Power BI を活用するときのポイントをご紹介します。複数の成功事例を把握することで導入後のイメージがつかめるでしょう。多業種の事例を厳選していますので、ぜひ参考にしてください。
国内での Power BI 導入事例
まずは、国内企業での Power BI 導入事例として6つご紹介します。Power BI はどのようにビジネスへ役立てられるかイメージをつかむため、ぜひチェックしてみてください。
- AIチャットボットの精度向上に Power BI活用した製造業
- Power BI で1,000本弱のレポートを自動更新してビジネスを強化した人材紹介大手
- 建設業界の働き方改革に Power BI を活用
- 短期間のデータ可視化運用に Power BI を活用した物流大手
- Power BI で現状をスピーディーに可視化、未来を目指す教育現場
- Power BI によるスピーディーな物件分析で業務効率化を実現した不動産大手
1.AIチャットボットの精度向上に Power BI活用した製造業
光学機器の製造を始め分野を問わず多彩なビジネスを展開するA社は、いち早くリモートワークを開始しました。その際に多様な働き方に適応するため、社内向けのチャットボットを導入することにしました。しかし、チャットボットの導入には、下記の2つの不安があったそうです。
- 社内ヘルプデスクへの質問が多岐にわたること
- チャットボットが的確な回答をできるのか精度への不安
そこで、チャットボットの精度を向上するために、Power BI と自動化サービスの Power Automate を導入しました。
チャットボットのログを Power BI で解析し、レポーティング作業を自動化します。データはすぐに可視化できるだけでなく、他のマイクロソフト社製ツールの各種機能との連携が可能です。その結果、チャットボットの導入から6か月ほどで約8人月分の工数カットを実現しました。社内のチャットボットの成功により、ユーザーサポートでの活用の筋道もできました。
2.Power BI で1,000本弱のレポートを自動更新してビジネスを強化した人材紹介大手
人材紹介サービスなどを提供しているB社では、営業支援システムである Microsoft Dynamics 365と Power BI を使い、独自の「セルフサービス BI」を実現しました。
Power BI により自動更新される社内レポートは数百本に及び、営業活動での提案書作成や経営会議など至るところで活用されています。B社では単にツールを導入したのではなく、社内に浸透するように下記の3段階に分けて導入を推進しました。
- BI 環境整備期:データの整備やセキュリティの強化を実施
- パワーユーザー育成期:転職メディア事業部を中心に週次定例の勉強会などを実施し、Power BI のデータ活用方法を共有する
- 拡大展開・浸透活動:転職メディア事業部以外にも Power BI を広げる啓蒙活動を推進
この3段階を踏み、セルフサービスBIを有効活用できる基盤を整えました。Power BI が社内に浸透したことで、無駄な作業を削減し本来の業務に集中できるようになりました。
3.建設業界の働き方改革に Power BI を活用
建設業のC社では、すべての現場で1つ以上の新しいスマート生産を進める方針を立て、チャレンジしています。そこで建築現場では情報共有が重要課題となっているため、この課題を解消するために Power BI と Teams を導入しました。
Teams と Power BI を始めとする複数のマイクロソフト社製ツール・サービスを連携し、情報の一元管理をスタート。この一例として杭工事情報共有システムでは各担当者が Microsoft Forms に進捗状況を入力すると、Microsoft SharePoint Online や Power BI の画面に反映される仕組みとなっています。それぞれのシステムが連携しているため、複数システムを使う必要がなく、進捗確認のスピードが向上しました。
また、杭工事の期間中は Power BI の画面が現場所長室のモニターに常時表示されており、進捗状況をリアルタイムで共有できるようになりました。従来の杭工事の確認は1日1回手作業で行っていたため、業務効率化やDX(デジタル・トランスフォーメーション)化につながった好事例だといえるでしょう。
4.短期間のデータ可視化運用に Power BI を活用した物流大手
物流事業を展開するD社は、全営業所の状況を把握できるデータ可視化基盤が必要だと考えていました。そこで、オペレーション実績速報システムをリリース。このシステムにより、荷物に関する様々なデータの抽出や集約、データマートの作成ができるようになりました。
しかし、データの可視化が課題となり、Power BI Premium を導入することを決断。繫忙期までには1か月ほどしかなく、スピード感を持ち開発ができ管理や変更がしやすいところが決め手だったといいます。
実際に1か月ほどで最初のダッシュボード開発を終え、その後のプラン変更もスムーズに実施できました。現在は8種類のダッシュボードを活用し、各営業所と管理部門が共通認識を持ち、現状を把握できる基盤が整いました。その結果、複数の営業所をまたぐ意思決定がしやすくなっています。
5.Power BI で現状をスピーディーに可視化、未来を目指す教育現場
都内E区は教育ICT環境の充実を目指して、区内の全小中学校に1人1台PCを貸与しています。E区が掲げるビジョンを実現するために、ここで得たデータをどのように活用すればいいのか試行錯誤していました。
児童生徒の生活記録のダッシュボード開発に着手しましたが、教員の負担を増やさない前提条件があります。そこで、Microsoft Azure にデータを集約して、Power BI で可視化をする仕組みを整えました。
一部学校での試行や教員からのフィードバックを経て、E区の26校でライフログ・ダッシュボードの導入を開始。操作についての質問は想像よりも少なく、情報共有にかかる時間が削減できた、チーム連携がしやすくなったといった声が挙がりました。
そして、可視化したデータから児童生徒の深刻な悩みを発見し、早急に対応できた事例もあり、今後のさらなる活用に期待が高まっています。
6.Power BI によるスピーディーな物件分析で業務効率化を実現した不動産大手
不動産事業を展開するF社では、2018年末より Power BI の導入を開始。従来は対象の物件を案内した後に紙面のアンケートに回答してもらい、Excel で集計をしていました。
Power BI の導入を機にタブレット端末でアンケートを収集し、基盤システムに情報を蓄積、Power BI による可視化という手順に移行しました。
以前はそろっていなかった評価項目も統一化、どの物件も同じ視点で分析できるようにしつつ、Power BI がアンケートの集計や分析にかかる時間を大幅に削減しました。
また、スピード感が必要な現場での意思決定をサポートするツールとしても、大きな助けとなっています。
国外での Power BI 導入事例
Power BI は国内の企業だけでなく、海外の企業でも有効活用されています。ここからは、国外企業で Power BI を導入した好事例4つをご紹介します。
- Power BI の分析結果を意思決定に活用
- データの統合を成功させた Power BI
- レポートを社内に浸透させた Power BI
- Power BI で業務効率化につなげた
1.Power BI の分析結果を意思決定に活用
アメリカの医療機関であるG社は、データセットを標準化し最大限に活用するために、Power BI を導入。その結果、各システムごとに分断されていたデータを使いやすく可視化することができました。医療ケアの質の差別化につながる指標の分析にもつながったそうです。中でも、医療費にかかるコストを細かく把握することで、臨床上の適切な意思決定ができるようになりました。
また、新型コロナウイルスのワクチン接種に関しては Power BI に蓄積されたデータを活用し、人口のうちのどのセグメントが接種を終えているか把握することができたそうです。
2.データの統合を成功させた Power BI
エネルギーの生産や供給を行うH社は世界中に多くの拠点を持っており、データの統合に課題を抱えていました。
そこで Power BI を活用し、どの拠点からでも同じ情報にアクセスできるダッシュボードを開発。Power BI は膨大なデータを集約できるだけでなく、シンプルで使いやすいところも魅力だったようです。Power BI を使いダッシュボードを実装できたことで、情報の分析や将来のビジョン設計に役立てています。
3.レポートを社内に浸透させた Power BI
乳製品ブランドI社では、大量のデータを収集、分析しビジネスに活用できる指標にするために時間を要していました。
そこで、大量のデータから課題を抽出するために、Power BI と連携可能なソリューションを導入。これにより Power BI で作成したレポートを整理し、外部と共有しやすい状態が構築できました。中でも Power BI で作成している年間事業計画はとても見やすく、他社との比較検討や意思決定に活用されています。
また、Power BI で新たなレポートを作成した際にはスタートアップガイドを作成し、会社全体でファクト情報として扱えるように努めているそうです。
4. Power BI で業務効率化につなげた
自動車部品などを扱うJ社では、配送センターと倉庫のデータ統合に悩んでいました。当初はスプレッドシートと2つの専用ソリューションを使用する計画でしたが、データの標準化や処理に課題を感じていました。
そこで、Power BI を始め複数のサービスを連携し、労務計画アプリケーションを構築。その結果、生産性が向上し何百時間もの労働時間の削減につながったそうです。
業務内容別の Power BI の活用例は、下記で詳しく解説しています。
▼Power BI の使い方と業務別の活用事例を詳しく紹介
事例からひも解く Power BI を有効活用するポイント
導入事例から浮き彫りになった Power BI を有効活用するための3つのポイントをご紹介します。どのような点に留意しながら導入を検討するべきか参考にしてください。
1.導入する目的を明確にする
Power BI はデータを集約し分析、可視化をするツールです。収集するデータや分析の対象が決まっていないと有効活用ができないため、あらかじめ導入の目的を決めておくといいでしょう。
ご紹介した事例では顧客情報の分析やチャットボットの精度向上、複数の営業所や支店の情報管理などさまざまな目的で導入されています。現状の課題や問題点を抽出しながら、なぜ Power BI が必要なのか検討してみてください。
2.分析のためのデータがそろっているか確認する
Power BI を有効活用するには、分析対象のデータが必要です。目的に応じて、十分なデータが蓄積できているのか確認しておきましょう。例えば、顧客管理のデータや売上データ、進捗状況、在庫管理データなど、まずは現状を分析するためのデータが必要です。
このときに Power BI と連携しやすいデータベースであれば、スムーズに導入が進められます。分析対象のデータの量とデータ形式を把握し、Power BI を活用できそうか判断してみてください。
3.効果測定を行いPDCAが回せるようにする
Power BI は導入して終わりではなく、導入後の変化や改善点を把握し、PDCAサイクルを回すことが欠かせません。事例では Power BI の導入により、業務効率化や生産性の向上、意思決定に活用できている声がありました。
導入後の変化を明確にすることで、今後の運用方法やレポートの作成などに役立つでしょう。改善点がある場合も明確にして運用方法やレポートの出力方法などを見直すと、よりPower BIが有効活用できるようになるはずです。
導入時に知っておきたいライセンスについては、下記の記事で解説しています。
▼Power BI のライセンスによる違いとは? 価格や機能、選び方を解説
Power BI のスムーズな導入をサポート
ここまでご紹介したように、Power BI は国内外の多くの企業で導入されています。自社でも Power BI を活用し、問題解決を図りたいと思った方も多いのではないでしょうか。
マイクロソフト社から認定を受けたパートナー企業であるテクバンは、Power BI のスムーズな導入をサポートします。新規導入から環境構築、最適化までワンストップで提供しています。Power BI の導入に不安や疑問がある場合は、お気軽にお問い合わせください。
テクバンのPower BI 導入・活用支援サービス
Power BI の導入で企業の課題を解決
国内外の企業の導入事例から分かるように、Power BI を活用することで企業の課題の解決や利益拡大につながります。
単にツールを導入するのではなく、業務効率化や意思決定スピードの加速、IT化など多くの導入成果を残しているところは Power BI ならではと言えるでしょう。
今回ご紹介した成功事例を参考にしながら、自社の課題や目的に応じて Power BI を有効活用してみてください。
※本記事の内容は2023年3月時点のものです。Microsoft 製品の仕様や利用環境は変更する場合があります。