Power BI を導入する際に気になるのが、ライセンスによる価格の違いではないでしょうか。企業の規模や業務内容によって適したライセンスは異なるため、単純に最安のライセンスを選べばいいわけではありません。
この記事では、Power BI の価格や、費用を抑えるための契約ライセンスの考え方を紹介します。具体的な計算例も解説しますので、ぜひご活用ください。
そもそも Power BIとは?
そもそも Power BIとは、マイクロソフト(Microsoft)社のBI(ビジネスインテリジェンス)ツールです。自社に蓄積されたさまざまなデータを取得・分析し、グラフなどの見やすい形式に再構築した「レポート」を作成します。さらに、作成した複数のレポートを閲覧する際に役立つのが、ダッシュボード機能です。ダッシュボードに複数のレポートをまとめられるので、必要な情報を1つの画面へ集約させられます。
Power BI を利用する際は、「Power BI Desktop」と「Power BIサービス」の2つのツール(製品)を中心に使う方法が一般的です。
Power BI Desktop はPCにインストールするデスクトップアプリで、データの収集とレポートの作成を行います。
一方の Power BI サービスは、Webブラウザでアクセスするクラウドサービスです。他のユーザーとレポートを共有する際に用います。その他、スマホやタブレットからレポートを閲覧する「Power BI モバイルアプリ」も利用可能です。Power BI を活用することで、経営戦略などの意思決定の迅速化が図れるでしょう。
Power BI の基本から詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
▼Power BI とは? Microsoft が提供する分析ツールの特徴を解説
Power BI の価格一覧
Power BI のライセンスは、以下の4種類です。
- 無料版
- Power BI Pro
- Power BI Premium Per User(PPU)
- Power BI Premium容量
それぞれの価格やポイントは、次の一覧表をご覧ください。
項目/ライセンス |
無料版 |
Power BI Pro |
Power BI Premium Per User(PPU) |
Power BI Premium容量 |
価格(月額) |
無料 |
1,250円 |
2,500円 |
624,380円 |
ライセンス単位 |
1ユーザー |
1ユーザー |
1ユーザー |
1容量 |
利用方法 |
個人利用 |
組織利用 |
組織利用 |
組織利用 |
ライセンス単位の違いに注意
Power BI の料金プランを比較する際は、ライセンス単位の違いに注意しましょう。「無料版」「Pro」「PPU」の3つは、ユーザー単位のライセンスです。ユーザー1人あたりの月額料金ですので、月額に利用人数分を乗じた総額が Power BI にかかる毎月の費用になります。
残りのPremium容量のみ、容量単位で契約するライセンスです。他3プランと比較して月額料金が非常に高いのは、企業や学校などの組織が取得するライセンスだからです。ユーザー1人ひとりが契約するわけではありません。また、詳しくは後述しますが、Premium容量を利用したい場合は、ProまたはPPUの有料ユーザーライセンスもあわせて契約します。
「Microsoft 365 E5」ユーザーは「Power BI Pro」の契約不要
マイクロソフト社のサブスクリプションサービス「Microsoft 365 」のうち、「Microsoft 365 E5」には「Power BI Pro」が含まれています。Microsoft 365 E5 とは、Microsoft 365 の最上位契約プランです。Microsoft 365 E5 を契約中の会社は、すぐに Power BI Pro を利用開始できます。
ただし、Microsoft 365 E5 のユーザー企業であっても、Proの上位プラン「Power BI Premium Per User(PPU)」を利用したいのであれば別途契約が必要です。Power BI Pro の利用を検討する際は、まずは自社の Microsoft 365 の契約プランを確認しましょう。これから Microsoft 365 を導入する場合は、Power BI Pro の利用も含めて契約プランを比較してみてください。
Microsoft 365 E5が向いている企業
Microsoft 365 E5 が含まれる「Enterprise(エンタープライズ)」プランは大企業向けのライセンスです。さらにE5、E3、F3の3つのプランに細分化され、E5は最上位プランに位置します。月額費用は1ユーザーあたり7,130円ですので、決して安価ではありません。
月額費用が高い分、E5プランは高度な機能が充実しています。たとえば、ID管理や情報保護、コンプライアンス機能が豊富です。そのため、E5プランは、自社のセキュリティと内部統制を強化したい企業にもおすすめできます。
Microsoft 365 E5プランの詳しい記事をご用意しております。ぜひご覧ください。
Microsoft 365(M365)E5 の基本機能や3つの特長
Power BIの費用を抑える契約ライセンスの考え方
Power BI の使い方は、企業によってさまざまです。最安値のライセンスを利用者の数だけ契約すればもっともお得になるわけでもなく、Power BI を使いこなせるわけでもありません。ここでは、Power BI の費用を計算する上で、重要な考え方を解説します。
容量ライセンスは単独契約しない
容量ライセンスである「Premium容量」は、単独契約するものではありません。容量ライセンスのみ契約しても、レポートは作成できないためです。
前提として、Power BI のライセンスは、「ユーザーライセンス(無料版、Pro、PPU)」と「容量ライセンス(Premium容量)」に分かれます。Power BI でレポートの作成・閲覧をする際は、ユーザーライセンスが必須です。さらに、ユーザーライセンスの中で、レポートを他ユーザーと共有できるのは有料のProとPPUの2つのみです。無料版には他ユーザーとの共有機能はありません。
つまり、レポートを作成し、なおかつ他者と共有したいのであれば、有料ユーザーライセンス(ProまたはPPU)が必要です。そのため、容量ライセンス(Premium容量)を契約するなら、「レポートを作成する人数×Pro(PPU)」+「Premium容量」の契約が前提となります。
容量ライセンスの利用シーン
「レポートを作成できないなら、容量ライセンス(Premium容量)の使い道は何?」と疑問に思う方もいるでしょう。Premium容量は、大勢の閲覧者に向けてレポートを共有したい場合に用います。大まかな流れは、以下の通りです。
- 有料ユーザーライセンス(ProまたはPPU)を持つ人が、レポートを作成する
- レポート作成者が、作成したレポートをPremium容量のワークスペースに公開する
- レポートを作成せず閲覧のみ行うユーザーは、無料版ライセンスを使ってPremium容量のワークスペースにアクセスし、レポートを閲覧する
Premium容量は、上記のように「無料版ユーザーに向けたレポート共有場所」として活用します。
「ユーザーライセンスのみ」か「ユーザーライセンス+容量ライセンス」か?
ここまでの前提を踏まえ、最後に「ユーザーライセンスのみ」と「ユーザーライセンス+容量ライセンス」のどちらの契約形態のほうが費用を抑えられるかを検討します。重要となるのが、Power BI の作成者と閲覧者の総数です。
そもそも、有料のユーザーライセンス(Pro・PPU)のユーザー同士なら、作成したレポートを簡単に共有し合えます。したがって、共有目的のためだけにわざわざ容量ライセンスを追加する必要はありません。反対に、共有目的のために容量ライセンスを追加しなければならないのは、利用人数が非常に多い企業です。具体的に利用人数が何人以上だと容量ライセンスを追加したほうが安価になるのか、次の章で解説します。
ユーザーライセンスと容量ライセンスどちらがお得? 3つの価格計算例
Power BI のライセンス価格について、以下3つの計算例を紹介します。
- 利用ユーザーが50人の企業
- 利用ユーザーが100人の企業
- 利用ユーザーが500人の企業
なお、Power BI のライセンス価格のみの単純計算なので、あくまで参考値である点にご注意ください。実際にかかる正確な費用は、マイクロソフト社のサポート窓口や公式パートナー企業など導入支援会社に相談しましょう。
テクバンはマイクロソフト社の公式パートナーです。Power BI のライセンスや費用、導入や活用についてのご相談に応じています。ぜひご検討ください。
テクバンのPower BI導入支援サービス
1.利用ユーザーが50人の企業
1例目は、Power BI のレポート作成者と閲覧者の合計が50人の企業です。「ユーザーライセンスのみ」と「容量ライセンスを追加する」の2パターンを計算し、総額を比較します。
ユーザーライセンスのみのパターン
50人全員がユーザーライセンスを契約する場合、月額料金は次の通りです。
- Pro
Pro月額1,250円×50人=月額62,500円 - PPU
PPU月額2,500円×50人=月額125,000円
容量ライセンスを追加するパターン
「レポート作成者1人+閲覧者49人」と仮定すると、容量ライセンス追加時の最低価格がわかります。閲覧者49人は無料版ライセンスを使うため、費用はかかりません。
- Pro
Pro月額1,250円+Premium容量624,380円=月額625,630円 - PPU
PPU月額2,500円+Premium容量624,380円=月額626,880円
比較結果
利用ユーザー50人の企業でProを使うなら、容量ライセンスは追加せずに「Proライセンス×50人」を契約したほうが安くなります。PPUを使う場合でも、同じく「PPUライセンス×50人」のほうが安価です。Premium容量を追加すると、月額料金が大きく跳ね上がってしまいます。そのため、たとえレポート作成者が1人しかいない会社であっても、他者とレポートを共有したいならば人数分の有料ユーザーライセンスを契約しましょう。
2.利用ユーザーが100人の企業
続いて、Power BI の利用ユーザーの総数(レポート作成者+閲覧者)が100人の企業の計算例を見ていきましょう。
ユーザーライセンスのみのパターン
100人全員が有料ユーザーライセンスを契約した場合、トータルの月額料金は次のようになります。
- Pro
Pro月額1,250円×100人=月額125,000円 - PPU
PPU月額2,500円×100人=月額250,000円
容量ライセンスを追加するパターン
わかりやすく、レポート作成者は1人、閲覧者は99人と仮定します。1例目と計算式は同じですので、ProとPPUの月額はそれぞれ下記の通りです。
- Proに容量ライセンスを追加する場合
Pro月額1,250円+Premium容量624,380円=月額625,630円 - PPUに容量ライセンスを追加する場合
PPU月額2,500円+Premium容量624,380円=月額626,880円
比較結果
費用面だけを考慮するなら、利用ユーザーが100人の企業は、有料ライセンス×ユーザー数の契約形態で問題ありません。「Proライセンス×100人」の月額料金は、容量ライセンスを追加した場合の月額料金の半額以下です。PPUも同様に、容量ライセンスを追加するよりも「PPUライセンス×100人」で利用したほうが安くなります。
3.利用ユーザーが500人の企業
3例目は、Power BI の利用ユーザーが500人の企業です。
ユーザーライセンスのみのパターン
レポート作成者と閲覧者の内訳にかかわらず、500人全員が有料ユーザーライセンスを契約した場合の総額を計算します。
- Pro
Pro月額1,250円×500人=月額625,000円 - PPU
PPU月額2500円×500人=月額1,250,000円
容量ライセンスを追加するパターン
レポート作成者は1人、閲覧者は499人として算出します。1例目・2例目と同じ計算を行うと、ProとPPUのそれぞれの最低価格は下記の数値になります。
- Proに容量ライセンスを追加する場合
Pro月額1,250円+Premium容量624,380円=月額625,630円 - PPUに容量ライセンスを追加する場合
PPU月額2,500円+Premium容量624,380円=月額626,880円
比較結果
利用ユーザーが500人の企業は、ProとPPUのどちらも容量ライセンスを追加したほうが安くなります。閲覧者は無料版ユーザーライセンスを使い、Power BI の費用を抑えましょう。
なお、Proの「容量ライセンスを追加した方がお得になる利用人数」の分岐点は、例と同じく500人です。PPUの分岐点は、以下の計算により「利用人数252人」以上とわかります。
- PPU月額2,500円×252人=630,000円(容量ライセンスと追加した総額626,880円を上回る)
Proは利用人数500人以上・PPUは利用人数252人以上を目安に、契約形態を検討してみてください。
Power BI で異なるのは価格だけではない
ここまで費用のみ考慮して計算例を紹介しましたが、実際にライセンスを選ぶ際は価格だけでなく機能面の違いも見比べてみましょう。また、例として以下のような項目についてあらかじめ明確化しておくと、選定がスムーズになります。
- 業務における Power BI の使い道、利用者の人数
- Power BI に接続するデータ量
- Power BI に求める機能やリソース
機能と費用の両面から違いを比較し、総合的にコストパフォーマンスが優れるライセンスを選びましょう。
ライセンスごとの主な特徴
ライセンスごとの主な特徴は、次の表からご確認ください。
項目/ライセンス |
無料版 |
Power BI Pro |
Power BI Premium Per User(PPU) |
Power BI Premium容量 |
サインアップ方法 |
個人のメールアドレス |
組織のメールアドレス |
組織のメールアドレス |
組織のメールアドレス |
特徴 |
レポート作成などの基本機能はProとほとんど変わらないが、共有機能はない |
レポート作成に加え、Power BI サービスによる共有が可能。スタンダードなプラン |
Proの上位互換ライセンス。高度なAI機能が追加され、ストレージ上限が大幅に増加 |
レポート作成はできない。ワークスペース内に公開されたレポートは、無料版ユーザーも表示可能 |
利用シーン |
企業内の1人のデータ分析担当者 |
複数人よるレポート共有、および共同編集 |
高度な分析を求める企業、扱うデータ量が多い企業 |
閲覧者が多い企業、オンプレミスのレポートサーバーを使用したい企業 |
ライセンスごとの詳しい違いは、次の記事も参考にしてみてください。
▼Power BI のライセンスによる違いとは? 価格や機能、選び方を解説
注意点:Power BI の無料版は組織的な利用にはおすすめしない
Power BI には無料版があり、レポート作成に関する機能は有料のProとほとんど変わりません。月額費用を抑えるために、無料版を中心に使いたいと考える企業も存在するでしょう。しかし、Power BI の無料版は、組織的な利用には向いていません。
Power BI の無料版は、個人利用を前提として提供されています。そのため、Power BI サービスによるレポート共有は不可能です。無料版で作成したレポートを他者と共有するには、Power BI レポートの「.pbixファイル」を直接配布し、各自ダウンロードしてもらうしかありません。
ですが、「.pbixファイル」を配布しても、当然ながらユーザー間でレポートは同期されません。ユーザーの誰か1人でもレポート内容を更新するたびに、再配布する手間が発生します。全ユーザーのレポートを最新状態に保つのが難しいため、無料版の組織的な利用はおすすめできません。
企業における「無料版」の利用目的
ビジネスで個人的に使う場合をのぞき、無料版を使う機会があるのはレポートの閲覧者が多い企業です。「容量ライセンス(Premium容量)」のワークスペースにレポートを公開することで、無料版ユーザーにも共有できます。なお、Premium容量のワークスペースに公開できるのは、ProまたはPPUユーザーが作成したレポートです。無料版ユーザーが作成したレポートは公開できませんので、注意しましょう。
Power BIの機能と活用方法
Power BIの機能や活用法に加えて、テクバンのサービス内容をご紹介。Power BIを知らない方にもわかりやすく解説しています。
Power BI の費用を算出してコストパフォーマンスが高い契約プランを選択しよう
ビジネスで組織的にPower BI を使う際は、有料ユーザーライセンスの「Power BI Pro」もしくは「Power BI Premium Per User(PPU)」が必要です。社内のレポート閲覧者が多い企業は、容量ライセンスの「Premium容量」を追加しても良いでしょう。
この記事ではライセンスごとの価格による違いを中心に紹介しましたが、Power BI の選定時は機能面の比較も重要です。各ライセンスのメリット・デメリットを把握して、自社にもっとも適したライセンスを選びましょう。
Power BI を活用したいものの、導入や運用に不安を感じる方は、導入支援サービスの利用もご検討ください。
テクバンのPower BI導入支援サービス
※本記事の内容は2023年3月時点のものです。Microsoft 製品の仕様や利用環境は変更する場合があります。